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Episode31「修験者と鬼神の少年」

 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。

 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。

 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。

 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…

 西暦3120年、ASの開発により、デーモンビーストの討伐に成功し、領土を取り戻しつつあった地球圏連合国。とはいえ、全てのデーモンビーストを把握しているわけでも、その生態や起源に関しては不明な点が多く、如何にASという強力な兵器を開発出来たとしても、敵の情報が乏しい状態ではいずれ、ASを越える個体が現れ、再びデーモンビーストの支配する時代を迎える恐れがあった。

 そのため、不可解な現象により、連合国が立入を禁じているポイントネモ即ちムー大陸の眠る海域に政府と軍上層部はその海域にデーモンビーストの起源があるのではないかと睨み、太平洋の何処かに調査用としての前線基地を建設する計画を立てた。

 この時はモーゲンソウがまだ議長時代の時であり、モーゲンソウは連合国の支配領域でない日本に派遣部隊を送り、そこを制圧し、前線基地を建設することを議会に求めた。

 最もその日本には正体不明のデーモンビーストが生息しているとして、永らく制圧は見納めとなっていたが、少なくとも、ポイントネモよりはまだマシで、デーモンビースト殲滅に必要な作戦であると強く求めたため、優柔不断の議員も渋々同意し、その議会の決定に軍上層部も同意せざるを得なかった。

 だが、しかし、前線基地を置くというのは口実に過ぎず、これにはホテップ社の指令を受けたモーゲンソウを初め、スパルタカス党の関係者がホテップ社とスパルタカス党の計画の障害となる存在の排除であった。


 「議長殿。」


 「ブラッディ技士長、君の推測通りだ。やはり、あの島国ホテップ社と我等の計画の障害となるキトラの民の本拠地であることはほぼ確定した。」


 「議長殿は四神というのをご存じですか?」


 「ウー総督から聞いている。」


 「どうやら、その内の1体の朱雀とされる怪物の片割れがロックフェルド家と通じ、例のアーク計画を推し進めていることも判明しました。」


 「我々に屈したロックフェルド家の裏切りであるハリーは現財団会長として、財団の実権を握らせているが、その協力者を潰さねば、ロックフェルド家が再び息を吹き返すことになる。」


 「だからこそ、そのための計画なんですよ! 前線基地建設の派遣部隊を送るというのを口実としてね…」

 

 「派遣部隊に討伐させるということか? だが、派遣部隊の誰かがこれを露見したら、どうする? そうなると、今までの工作が無駄に終わるぞ。」


 「いえ、派遣部隊は口封じの部隊です?」


 「何?」


 「派遣部隊には口実通りのことを命じて派遣し、討伐にはホテップ社が我々スパルタカスのために開発してくれた生物兵器に任せ、派遣部隊共々消してしまうのです。 そして、派遣部隊は正体不明のデーモンビーストによって全滅し、殉職したということにしておけば、何も露見される心配はありません。」


 「つまり、スパルタカス党の革命の障害となる者を派遣部隊として選抜し、まとめて消すということか? その部隊の選抜に目処が立っているのか?」


 「はいっ! オルドー元帥に頼んで該当しそうなものを徹底的に調べ上げましたので、それらに付かせればいいのです。 ただ、問題なのはその朱雀とやらがどこまで強いかということです…

 もし、ホテップ社の生物兵器でも討伐出来なければ、それこそ、全てが水の泡となります。念のため、ブラッド総帥にも地中間弾道核ミサイルの発射許可をもらっては?」


 「リーパーメタルが開発したあの兵器か…」


 「あの兵器は地中を通って発射されるもの、センサーに引っ掛かる心配はありませんので、連合国の軍上層部にも感づかれません。 それに、800年前の悪魔の審判では使用されず、放置したままだったため、アレを試す良い実験になるでしょう。」


 「確かに…君がそういうなら、私からも、総帥に頼んでみよう。我々はスパルタカスの革命のために工作員として、総帥からこの地球に派遣されて今の地位に至ったのだ。何としても、連中は排除せねばならない。」


  「では、早速、オルドー元帥に選抜された者を呼んで参ります。」


 「それとだが、ブラッディ技士長、パラディウスCEOから、君の養子にしたい者がいるそうだ。」


 「ホテップ社CEOから? 誰です?」


 「名はクトラ・アベラス。」


 「アベラス…パラディウスCEOの本姓ということは、ご親族ですか?」


 「詳しいことは知らないが、君の養子として、軍に所属せよとのことだ。」


 「わかりました。CEOの指令なら、喜んで引き取ります。」


 

 

 オルドー元帥に選抜された者たちはモーゲンソウに呼ばれ、派遣部隊に所属するようになった。隊長に選抜されたのはゲイリー・マッカーシー中佐。ブリュースター准将やテイラー中将の信頼が強く、当時の地球圏連合国軍のASの中でも最もスペックが高いケルビムのパイロットであり、当時、階級がまだ伍長のマルス・マッカーシーの兄でもあった。

 しかし、連合国の実権を握り、専横を極めるロックフェルド財団のことは煙たがっており、会長のハリーも更迭したがっていた人物であり、議長時代のモーゲンソウに何度も訴えていた。最も、軍内部での功績はオルドー元帥に次いでおり、そう容易に更迭しづらく、しばらく地位を保っていた。そして、その機会は訪れ、彼に悲劇が置きようとしていた。

 派遣部隊には彼の部下であるキール・ブロッケンマイヤー大尉とマイク・ランピー少佐が所属するようになり、部隊はASを乗せた戦艦で日本に向けて出発した。


 「それにしても、ポイントネモ調査のための前線基地建設の派遣部隊に我々を就かせるとはな…あの国には得体の知れないデーモンビーストが生息しているとして聞く。 上層部は厄介事を俺たちに押し付けようとしているのが目に見えている。」


 「だが、これは好機かもしれない。」

 

 「何がです?」


 「その調査の間には、前線基地を我々が預けることが出来る。そうなれば、財団が軍を掌握し、クーデターを起こした場合の際にここをその鎮圧のための部隊として動かすことも出来る。」


 「最も、それが成功出来ればの話ですけどね…」




 

 日本に到着した派遣部隊は東京に上陸した。前線基地建設の候補には首都が適任としていた。しかし、上陸した東京はタワーごと倒壊したスカイツリー、上半分だけ倒壊している東京タワー、瓦礫と化した国会議事堂等が草木が生い茂っている状態で、悪魔の審判の惨劇による被害を物語っていた。


 「この状態ですと、生存者はいないようですね…」


 「いや、地下鉄等、隠れられる場所はいくらでもある。だが、この状態では、生存者はいても、国家までは形成してないと見える。」


 「とはいえ、まず、これらの廃墟を何とかしない限りは前線基地建設は流石に骨が折りますよ…」


 「だが、廃墟があるなら、それはそれで好都合だ。これらから、再利用可能なもので、建設の際に利用できるだろう。」


 「では、建設場所はここになりますか?」


 「上層部はポイントネモ調査と命じている。とすれば、位置を考えても、太平洋に面しているここになるだろう。」

 

 「わかりました! では、早速作業に移ります。」


 「ん?」


 「どうしました?」


 「いや、今、誰か、こちらを見たような気がしたが…」


 ゲイリーが辺りを見渡すと、人の気配は感じなかった。


 「気のせいか…よし、このまま作業に移れ!」


 しかし、瓦礫の下から、10代前半の少年のような人物が隠れ、その様子を見た後、忍者のような素早さと跳躍力を持って、その場から去った。

 派遣部隊はASも使って、瓦礫と化した廃墟を片付け、それらを再利用しながら、前線基地の建設を続けた。そんな中でも、ゲイリーは所々ある視線を感じ、落ち着かない様子だった。


 「中佐、どうなされました?」


 「ちょっと、この周辺を偵察してくる。君たちはそのまま作業を続けてくれ。」


 「待ってください! ASに乗らず、そんな軽装備で…」


 「心配ない、ただの偵察だ。そう深刻になることはない。」


 「しかし、ここにどんなデーモンビーストが生息しているのか、わかりませんよ?」


 「私の長年の勘だ。この気配はデーモンビーストではない。」


 「はぁっ…」


 

 ゲイリーのその目には、何かに興味を持つ少年のようで、前線基地から離れ、視線を感じながら、歩き進めていった。しばらく歩いた後、何か殺気のようなものを感じて止めたその時、背後から、弓矢がゲイリーの蟀谷を掠って、木に刺さった。その矢は形状からしてコンパウンド・ボウのようなものだった。

  ゲイリーはパルススナイパーライフルを取り出し、周囲を警戒するが、人の姿は見えなかった。そして、2発目の弓矢が放たれ、今度は足指先スレスレに当たった。ゲイリーは放たれた方向に撃ち込んだが、直撃の様子は無かった。


 「何処だ…一体何処なんだ…⁉」


 得体の知れない先住民族にでも狙われたかのように恐怖したゲイリーはなりふり構わず、パルススナイパーライフルを乱射した。しかし、直撃したのはどれも草木ばかりで、生物や何かに直撃した様子は無く、その後、放たれた3発目はパルススナイパーライフルを貫通して射貫いた。

 パルススナイパーライフルが使い物にならないと見たゲイリーはすかさず、拳銃を取り出そうとしたが、放たれた4発目はそれすらも射貫き、そのまま地面に串刺しにされた。武器を失ったゲイリーは両手を上げ、降伏の構えを取った。それに応じたのか、五発目は放たれず、何者かが木に跳び移りながら移動し、遂に矢の持ち主の姿が現れた。

 ホイトイーストンボウを手に持ち、腰にリボルバーとランボーナイフを携帯した12歳ぐらいの少年だった。


 「馬鹿な…こんな少年がさっきまで私と戦っていた者の正体だと…」


 「命が惜しければ、さっさと立ち去れ!」


 別の方向からも、人は現れた。山伏(修験者)のような格好をした老人だった。


 「君たちがここの生存者かね?」


 「生存者? わしらは先祖の代からこの地におった。最も、戦の時代を知らぬ平和ボケした輩なら、この国にはおらん! この時代なら尚更な…」


 「立ち去れということは、ここに我々の手に負えない存在がいるということか?」


 「半分は正解だ。じゃが、わしとしては、何処の馬の骨ともわからぬ輩が土足でこの地に踏み入れたくないだけだ。丸でここが自分たちの土地と主張するようにあの歪な建物を建てるのがな!」

 

 「誤解されているようだが、我々は上層部から太平洋のポイントネモの調査のために前線基地を建設しただけだ。それにこの国の首都たるこの地に生存者がいなかったため、放棄していたと思っていたが…」


 「ポイントネモ? ああ、全てに破滅をもたらす存在が眠る場所か…彼処は近寄らん方が良い。お前たちでは手に負えるものではない。」


 「ポイントネモを知っているんですか⁉」


 「知ってるも何も、彼処は我等の先祖のかつての故郷だった大地。じゃが、お前たちに話す必要はない…」


 「いえ、是非とも聞かせてください!」


 それを聞いた少年はリボルバーを取り出し、銃口をゲイリーに向けた。


 「知ってどうする?」


 「この地球を脅かすデーモンビーストを駆逐し、地球を人類の手で取り戻すために!」


 「そんなものは詭弁じゃろう…お前たちの国は綺麗事を並べて、世界を自分たちの意のままにしたいだけじゃ。」


 「確かに、我が祖国はロックフェルド財団の支配下にいますが、この前線基地はその財団の専横を更に極めないための目的も兼ねています!」


 「ロックフェルド? ロックフェルド家のことか…」


 「現当主は財団の会長にして、我が地球圏連合国の実質的な元首でもあるものです!」


 「その財団とやらを話せ。話によっては、お前を信用しても良いぞ。」


 その後、ゲイリーはロックフェルド財団について知ってること全てを修験者の老人に話した。


 「うむ、それを聞けば、お前の話も満更、嘘では無いようだな。じゃが、それでもお前を信用したわけではない。スサノが未だに銃口を下げないのは、その後ろにわしらのことを監視している不届き者がいるからじゃ。」


 それを聞いたゲイリーが後ろを向くと、キールとランピーが現れた。


 「お前たち、来てたのか…」


 「はいっ、命令違反なのは承知してますが、中佐の身にもしものことがあってはならないとして来ました。ですが、来たのは我々2人だけですので、軍法会議で裁くのは我々2人だけで十分です。」


 「命令違反は許せないが、君たちを裁くことは出来ない。君たちはこれからの連合国にとっては必要な人材だ。だが、命令違反として君たちには一週間の謹慎を命じる。」


 「感謝します! 中佐。」


 「お前たちの事情はわしらには関係ない。じゃが、ロックフェルド家のことを話してくれたなら、こちらも話さねばならない。」


 「もしや、財団が何しようとしているのか、連合国をどうしようとしているのかも知っているのですか⁉」


 「それを話す前にわしより詳しい御方を呼ばなければならない。あの方はムーよりこの地に渡ってからキトラの民を支配した五神の1人だ。じゃが、あの方は他の四神より過激故、会ってくださるかわからない。最悪、会わずにその歪な建物と共にお前たちを消す可能性もある。 話はつけるが、まだ、お前たちを信用したわけがないので、監視役としてスサノをつける。」


 「スサノ…? それがその少年の名前か?」


 「聞きたいなら、まず、そちらから名乗るのが道理じゃろう。」


 「失礼しました! 私は地球圏連合国軍、統制連合艦隊所属ゲイリー・マッカーシー中佐。」


 「同じく、キール・ブロッケンマイヤー大尉!」


 「同じく、マイク・ランピー少佐です!」


 「わしは実雲行信。この者はわしの弟子、神下須佐之(スサノ)。良い報告が出ると良いが、もし、わしが戻ってくるまで、何か変な行動をすれば、あの方が手を出す前にスサノがお前たちを潰すだろう。しかと胸に刻んでおけ!」


 「心得ました!」


 行信が去った後、キールのポケットからハエが現れ、飛び去っていったが、それはハエ型の小型監視ロボットで、その監視カメラを通じての一部始終をブラッディが見ていた。


 「フフフ、マッカーシーを送り付ければ、奴が餌に食い付くと思っていたが、早速かかってくれたようだな! オカゲでスパルタカスが開発したばかりのプロトタイプとホテップ社が奴等の殲滅のために用意してくれた生物兵器の実践テストにちょうど良い。 さあ、マッカーシーよ! 十分に役目を果たしてくれ。」

 

 To be continued

 次回予告

 

 スサノが派遣部隊を監視する中、ゲイリーはスサノに興味を持ち、彼にも派遣部隊と同じ訓練をやらせた。そして、行信が五神の1人を連れるが、同時にホテップ社とスパルタカス党の生物兵器が襲撃し、惨劇が起こることになる。仮面の戦士が何故、仮面を被り、組織を創ったのか、その謎が明かされる!


 次回「仮面の復讐鬼」祖国に裏切られた男は実の名と顔を捨て、復讐と使命のために身を投じる。

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