Episode20「自警団暁」
西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。
だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…
連邦や軍、警察も把握されていない場所にあるスパルタカス党本部、そこでブラッド総帥がある3人を呼んだ。
「こんな時に何の用だ? あいにくこっちも暇じゃないんでな…さっさと要件を聞かせてもらおうか。」
「口を慎め‼ 傭兵の分際で! 可能なら、この場で銃殺してやるぞ!」
「止せ。」
「そっ、総帥⁉」
「傭兵でも、コイツらはアレが寄越した者だ。下手にコイツらに逆らって援助が絶ちきれたら、計画は全て水の泡だ。」
「無駄口はいいから、さっさと要件を聞かせてもらおうか。下らんものなら、御免だが…」
「ある場所への襲撃をお願いしたいのだ。」
「例の月の遺跡を発見した連邦のお偉方を始末したいということか?」
「察しがいいな。あの遺跡を見付けたブレックは更に増長して、本日、地球から来たあの小娘議長にそれを見せる計画を企んでいる。
アレが公表すれば、我が党の存在は危うくなる。それはお前たちも例外ではない。」
「確かに、あの遺跡の発掘は我がマスターの望みでもある。あんな連中の手に渡るのは戴けないな。」
「そこで、お前たちにあの遺跡を回収出来る分だけ回収し、残りを破壊、可能なら、連中も始末して欲しいのだ。」
「地球の議長も一緒にか? しかし、それはお前たちの計画としては早すぎないか? 我がマスターも納得するとは思えないが…」
「私はあくまで可能であればと言っただけで、遺跡の回収が最優先事項だ。
最もどのみち、奴を葬ることに変わりは無いし、その辺の埋め合わせは我々がする。」
「いいだろう、ただし条件がある。」
「条件?」
「回収した遺跡を我がマスターに献上したいのだ。」
「何だと⁉ あの遺跡は我々が使うものではなかったのか‼」
「お前たちはあの遺跡に関してはマスターから聞いている範囲しか知らないだろう?
つまり、その全容と使い方を知らないお前たちが持ったところで、カビの生えたガラクタにしかならん! だが、我がマスターなら、あれの使い方を知っている。その後でお前たちの自由に使えばいい。それなら問題はなかろう。」
「貴様っ!」
「いいだろう。だが、失敗は許されんぞ…」
「お前たちも計画が失敗して我がマスターの失望を買わんようにな…」
そう言って3人の傭兵はその場を去った。
「よろしいのですか⁉ 総帥! あんな奴等に任せて…」
「傭兵といっても、奴等は軍人ではないため、軍を動かさんし、それに我々が支援している地球の反連合国のテロリストのような破壊活動とも違う方法も使わん。
我が党による行為だと知られないためには連中を使う方が一番良い。最も計画が成功すれば、奴等は不要だがな。
それより、例の歴史資料館の件は?」
「はいっ、例の月の遺跡の一部を本日、公開とのことで、我が党の工作員が潜り込み、徹底的に破壊工作をする予定です。」
「よし、なら、抜かり無くやれ!」
「はっ!」
コロニー内部にて、ラルドは歴史資料館に立ち寄ったが、余り気が進まない様子であった。ここに立ち寄る前、大統領官邸にて、ヘレナはラルドにある提案を出した。
「えっ⁉ ヘレナが月面基地を訪問している間に僕が歴史資料館に行くだって‼」
「そうよ! このまま私に付いていたら、コロニーから悪魔の審判に関する情報が中々取れないじゃない。だから、あなたはしばらくコロニーで情報を集めてきて。元々それがあなたの任務だし…」
「だからって、一応護衛としても来ている僕がヘレナから離れるわけにはいかないし、第一、僕がいなくなったら、大統領だって疑うかもしれないし…」
「大丈夫! 私にはグリスがいるし、大統領には私が話すから、安心して!」
「ま、まあ…そこまで言うなら…」
「あんなこと言ったけど、上手く誤魔化せてるのかな…ヘレナって割りと天然なところがあるから、余計心配だけど…一応議長だし、流石に変な言い訳はしないから、大丈夫か。」
そして、ヘレナとグリスはブレックの親衛隊と共に月面基地に向かい、もてなしを受けた。そんな中、秘書がブレックの元に立ち寄り、
「本当によろしいのですか?」
「何がだ?」
「護衛の1人がコロニーの環境に慣れず、体調を崩している等と言い訳して同行させないとは…まさか、我々の動向を探るためのスパイとして…」
「考えすぎだ。あの小娘にそこまで考える程の器と思うか?」
「しかし、それでも財団の者に変わりはありません。指示を受けている可能性も…」
「それも問題ない。そのために代わりの護衛の1人をあの男に付けてやったのだ。何か妙な行動があれば、直ぐに報告してくれる。
それにこれから見せる月面の遺跡を目の当たりにすれば、度肝を抜くだろう…」
ヘレナたちを乗せた宇宙船が月面基地に向かう中、 月の周囲を漂う小惑星の裏で3体の巨大な影がその様子を見てじっと佇んでいた。
歴史資料館にて、ラルドは幾つもの 資料等を漁ったが、どれもコロニーに関係するものばかりで、悪魔の審判に関連するようなものは何一つ無かった。
「ここも同じか…ヘレナが招かれた月にある遺跡の一部分が展示されているから、何か情報があるんじゃないかって言ってたが、骨折り損だったみたいだ…」
半ば諦める中、月で見付かったとされる遺跡の一部が目立たないとこれで展示されていた。
「こんなところに例の遺跡が…こんな展示方法は何かオマケみたいな感じ出し、それにこんな欠片みたいな形状じゃあ、全体像が掴めない…」
「君がこの遺跡が何か知りたいのか?」
その時、ラルドの前に30代前半と思われる男が現れた。
「あなたは?」
「気にしなくていい。この博物館の常連だよ。」
「あなたはこの遺跡が何かわかるんですか?」
「そうだな…仮説ではあるが、人の作ったものではないかな…」
「それはどういうことですか?」
「それ以上は言えない。答えは君自身で見付けるんだな。」
そういって男はその場を去った。ラルドはその言葉に少し引っ掛かっていたが、スタッフ以外立入禁止の部屋にあるものを運ぶ3人組が入っていったが、それを不審に思ったラルドはそれに付いていき、気付かれないように入っていった。
その様子を見ていたら、3人組が運んでいたのは時限爆弾のようなものであった。爆破装置をセットしようとしたところをラルドはすかさず、阻止しようと襲い掛かった。
気付いた3人組が応戦したが、ラルドは軍にいた経験もあってか、苦戦することなく、蹴散らしていった。
また、3人組が時限爆弾を使って何をしようとしていたのか聞き出すために殺さないよう、気絶させることに専念していた。
ただ、今までデーモンビーストを相手にしていたこともあり、生身の人間を相手にしたことがなく、人間を敵としたくないという少々お人好しと言える良心が相まって殺さず、気絶させるようにするための手加減が出来なかったため、気絶しなかった1人がやむを得ず、その場で爆破しようと装置をセットし、ラルドはそれを阻止しようとしたが、時既に遅く、爆破し、博物館は炎に包まれ、ラルドはそれに巻き込まれて瓦礫の下に埋もれた。
爆破し、炎上した博物館の元に消防専門のガーディアントルーパーが対処に向かったが、そのどさくさに紛れ、ある1体の人型ロボットが瓦礫の下からラルドを担いで気付かれずにその場を去った。
ヘレナとグリスが向かった月面基地と月面コロニー、そこは悪魔の審判から800年間、デーモンビーストに蹂躙された地球と違い、デーモンビーストによる支配を受けなかったため、平和を保ち続けてきたスペースコロニー「オデッセイ」、しかし、8世紀以上の歳月により、過剰な人口増加をコロニー内で補うことが出来ず、300年前に地球帰還計画を立て、派遣隊を地球に降ろしたが、それが失敗に終わったため、その代用として建造されたのが月面コロニー「ムーンシティ」と月面基地であった。
その様子をヘレナは見惚れていたが、グリスはムーンシティにいる人々が裕福な家庭を持つ者ばかりしかいないのを見て、ブレックを少し睨み付けるように見た。
「コイツ…財団と同類のような奴か…」
グリスがヘレナの護衛に選抜されたのはヘレナの意向だけではなく、実はマクマリー副議長とブリュースター中将による選抜もあった。
ヘレナが議長に就任したとはいえ、前議長モーゲンソウは未だ財団の元で息を潜めていて、再び財団派の権力が強大化するのを防ぐため、アークとの関係性強化に務めようとしたが、ブレックの狙いはそれとはかけ離れていた。
月面コロニー「ムーンシティ」はオデッセイ同様のコロニー都市が建設されているが、実は先に建設されたのは月面基地の方だった。
人類がコロニーに逃げ延び、デーモンビーストによる支配を受けなかったため、軍の不要論が飛び交い、武装解除をアーク政府に求めた。
アークはそれに応じたが、オデッセイ内での治安維持を目的とし、軍の役割を担う警察としてのソルジャーポリスを新たに創設した。
それから、500年の歳月が経ち、増加した人口をコロニー内で補うのが不可能と見た当時のアーク大統領政府は500年の間に計画していた火星や木星等、太陽系惑星の移住が失敗に終わったため、地球帰還計画を立て、デーモンビーストを殲滅するべく、ソルジャーポリスの軍復帰のため、再び軍の創設を開始し、民間人による武装化を防ぐため、その前線基地として月面基地が建設された。
しかし、地球に向かった派遣隊が1人も帰還しなかったため、軍強化のため、過剰な人口増加を補うためのコロニー建設を名目にムーンシティが建設され、そこにアーク政府や軍関係者及び資金援助を行う軍事企業のみを移住させたことにより、地球でのメトロポリスやジオフロントと似たような格差社会が生まれ、スパルタカス党創設の遠因にもなった。
ブレックが月面基地やムーンシティのことをヘレナに話す中、いよいよ本命の月面遺跡の方へ向かうこととなった。
月面遺跡はブレック曰く、ムーンシティ拡大建設の際、偶然発掘されたもので、それが地球の歴史を覆し、人類の技術を更に向上していく代物だと話した。
そしてその遺跡を目の当たりにすると、ヘレナは言葉が出せなかった。
「実に圧巻のものです。ヘレナ嬢…これがいつのものか、わかりますか?」
「財団やホテップ社が残した人類史の記録では人類が初めて月面に着陸したのは西暦1969年だと聞いています。」
「アポロ計画…今となっては1200年以上前の話となりますが、しかし、この遺跡は地層を調べたところ、1万年以上前のものと判明しました。」
「‼? 1万年前って…その時、まだ人類は…」
「そうです! その時の人類は精々石器を使う程度の技術しかありませんでした。
しかし、年代測定に間違いはなく、その年代にそれも月にこれだけの宇宙船が存在していたことは当時の学会でも、物議を醸しました。
だが、この遺跡のオカゲで我がアークは新たな可能性を見出だすことが出来ました。」
「新たな可能性…?」
「未知の地球外生命体。これが人間の手によって作られたものとは到底考えられない! 即ち、これは1万年以上前に月に降り立った地球外生命体が今の我々以上の技術を持った生命体が存在しているということになります。
最も、遺跡内部では、それらしき遺体や骨格は見当たらず、その生命体がどうなったのかは不明ですが、この宇宙船を解析すれば、我々はその技術によって、このコロニー以外にも太陽系外の惑星にも進出することが可能となり、過剰な人口増加に悩まされる心配は無くなります!」
「!⁉ (なるほど、そういうことか…連合国とアークの軍でデーモンビーストを駆逐して地球圏の支配を取り戻した後、スパルタカス党や厄介な奴等を地球に追いやって、その処理を連合国に押し付けて、ムーンシティの連中はこの宇宙船の技術で太陽系外の惑星にトンズラするって腹か…
それなら、不可侵条約を破ることにもならないから、リスクは負わない。コイツ、とんだ食わせ者だな…ましてや、お人好しみたいなコイツを利用するとなると、ますますこっちが面倒なことになる。場合によってはコイツの命を…)」
「私は必ずしもそれが良いとは思いません!」
突然出たヘレナの発言にグリスとブレックが驚かずにいた。
「何故です⁉ 我々が宇宙に進出することは人類の発展にとって喜ばしいことです!」
「技術の進歩は確かに喜ばしいことです。しかし、あなた方のやることは私たちの生まれた母なる地球を棄てることになります。」
「我々には地球を再生する技術はあります。ですが、地球上に再び国家を返り咲いたとしても、領土の小競合いや移民問題が起き、同じ過ちを繰り返すだけでしょう。
ましてや、劣悪な地球環境を2000年以上前の状態に戻すことや増加しすぎた人口を地球上で補うことは最早不可能…
ならば、我々は新天地を求め、人類の更なる発展のために尽力すべきです!
このコロニーの建造も元はと言えば、そのため…例え、地球を棄てる行為でも、絶滅という道は何としても避けなければなりません。」
「あなたの言う移民問題の元々の原因はその人たちには国を愛する気持ちが足りなかったことでしょう?」
その言葉に対し、ブレックは少し驚いた。
「例え、その国が住めない土地だとしても、それはその人たちが生まれ育った大地です!
だからこそ、人は生まれ育った土地に感謝し、愛さなくてはなりません。例え、地球が短い期間しか人類が住めない星になっても、私は地球を地球を愛し、地球で暮らしたいのです!」
その言葉にブレックはおろか、グリスも驚きを隠せなかった。今まで単なる箱入り娘と揶揄していたヘレナが自分を利用しようとするブレックの提案を拒絶することは予想外であったのである。
その時、警報が鳴り、兵士がそれに気付いた。
「何事だ⁉」
「所属不明の3つの物体がこちらに接近! 速度350キロ!」
「物体だと⁉」
その物体には生体反応があり、その正体は宇宙船ではなかった。やがて、ブレックやヘレナたちの見える位置まで来、姿を現した。
現れたのは蜂とミノカサゴの特徴を合わせたまたは合成させたような姿をしたのを先頭にその左右にはシャチとマンモスを合わせた者、イグアナとトンボを合わせたといった異形の姿をした3体のデーモンビーストだった。
「な、何だ…あれは……?」
「わかりません! データに無い種です!」
「バカな…ここは宇宙だぞ。まさか、デーモンビーストは宇宙にも存在した生物種とでも言うのか…」
3体のデーモンビーストは月面に降り、遺跡の近くまで立ち寄り、シャチとマンモスを合わせた姿をしたデーモンビーストは口から青色の溶解液を出して、遺跡の周りの岩を溶解し、イグアナとトンボの合わせた姿をしたデーモンビーストは両手の強靭な爪で岩を削り取り、遺跡を掘り起こそうとした。
「あのバケモノ共、遺跡が狙いか⁉ 遺跡を奪われてはならん! あのバケモノ共を攻撃しろ‼」
ブレックの指示に従い、ガーディアントルーパー隊が一世射撃を行ったが、全く応えず、それ故、3体のデーモンビーストは攻撃されていることに気付いていない或いはおちょくるためにわざと気付いていないふりをしているのか、遺跡を降り起こし、取り出すことにひたすら専念していた。
「ぬぬぬ…やむを得ん! スラスターレールガンを出せ‼」
「しかし! あれを撃ちますと遺跡にまで被害が及びませんか⁉」
「遺跡を奪われるよりはマシだ。何としてもあのバケモノ共を一掃しろ!」
「了解しました!」
「スラスターレールガン?」
「そういえば、ヘレナ嬢にはまだ、お話ししてませんでしたな。デーモンビースト殲滅兵器として連合国に提供する試作機。
地球に降りてから披露するつもりでしたが、お見せしましょう!」
ブレックの指示に従い、ガーディアントルーパーは巨大な砲塔の形状をしたレールガンを運び出し、その砲身を3体のデーモンビーストに向けてカウントダウンを開始し、発射した。
全てのガーディアントルーパー隊が砲塔を支えても、凄まじい砲撃音と爆風により、ガーディアントルーパー隊が砲塔ごと後退し、その爆風によってブレックやヘレナたちの乗る宇宙船の強化ガラスにもヒビが入った。
「フフフ、まさか、こんな形でこの兵器を披露することになるとはな…デモンストレーションの的にされたことを光栄に思うが良い。」
「3体の生体反応を確認‼」
「生体反応だと⁉」
やがて、姿がハッキリ見えるようになったが、3体とも全くの無傷だった。
「まさか、あれを喰らって無事な生物がいるとは…」
2体は遂に遺跡を取り出し、それを運び込もうとした。
「遺跡を渡すな! 全軍一世射撃を!」
「しかし、スラスターレールガンが通用しない相手にこれ以上の攻撃は…」
「構わん! 何としても阻止しろ‼」
引き続き、一世射撃を行うガーディアントルーパー隊に対し、蜂とミノカサゴを合わせた姿をしたデーモンビーストが気付き、口、尻尾から更に毒針状の爪をミサイルのように無数に発射し、その命中精度は高く、一体一体確実に串座にしていった。
更に毒針で串刺しにされた機体は腐食していった。
残りの隊も応戦するが、毒針の雨に太刀打ち出来ず、全ての機体が串刺しにされ、更に毒針による腐食で破れた紙のように粉々に崩れていった。
「ガーディアントルーパー隊全滅しました!」
「クソッ! 我が軍が手も足も出ないとは…」
更に蜂とミノカサゴのデーモンビーストは装填した毒針状の爪を今度はブレックやヘレナたちの乗る宇宙船に向けた。
それを見たグリスは咄嗟にヘレナを庇った。そんな時、蜂とミノカサゴのデーモンビーストはヘレナがブレックと密接になっているのを見て、毒針を発射するのを止め、遺跡を運び込んだ2体のデーモンビーストと共にその場を去り、遺跡を運ぶ2体の内の1体のシャチとマンモスのデーモンビーストは宇宙中に響く程の甲高い咆哮を上げ、それによってワームホールを形成し、3体のデーモンビーストはその中に消えていった。
「助かったのか…?」
その様子にヘレナとグリスは呆気に取られていた。
気絶していたラルドが目を覚ますと、そこには無数のパソコンや何やら機密情報と思われる資料、そして部品があちこちに散らばっている部屋だった。
辺りを見渡すと、散らかっている箇所を片付けたり、掃除している人間に近い形状をした人型ロボットの姿があった。。やがて、その人型ロボットがラルドに気付くと、
「目が覚めましたか?」
「ここは…?」
「安心してください! ここは我々自警団暁のコロニー支部です。我々以外の者は立ち入らないよう、厳重に強いてありますから、問題ありません!」
「自警団暁?」
「おっと、これはつい口を滑ってしまいました! 詳しいことはマスターが直接話すべきなのに私の悪い癖で…」
その時、ラルドは自分が気絶している間、何者かに担ぎ上げられている感触を思い出した。
「もしかして、あの時、僕を助けてくれたのは君なの?」
「挨拶が遅れました! 私はマキシマス。マスターの指示であなたをスパルタカス党のテロから守るよう言われたものです。
本来なら、スパルタカス党の工作員が動く前に連中を始末してあなたをここへお連れするはずだったんですが…何せ、あなたが連中に接触してしまったんで…」
その時、もう1人の人型ロボットが現れ、その形状はポリスガーディアンに似ていたが、頭部を初め、所々異なっている部分があり、ラルドはそれが別物だとわかった。そしてその別の人型ロボットがマキシマスに伝えた。
「マスターがお帰りになります。」
「オオッ! J。 では、こちらへお連れを…」
Jという名の人型ロボットが連れてきたのは資料館で会った人物だった。
「マスター! どちらへ行ってたんですか⁉ この辺、スパルタカス党の諜報員もいるんですよ!」
「すまん…色々立て込んでいることがあってな。ラルドは無事だったんだな。」
「僕を知っているの?」
「ラルド・オルスター特務二等兵。特務隊所属…いや、今はヘレナ議長の護衛だったかな?」
それを聞いたラルドは驚きを隠せないでいた。
「どうして、僕のことを?」
「君のことは以前から知ってるよ! 君自身のこと…そして君の知りたい過去のことを…」
「知ってるなら、教えてください!」
「教えてもいいが、今、それを君に教えると色々とショックが大きいというか…話が呑み込めないかもしれない…
ただ、1つ言うことはセラヴィムは君にしか乗りこなせない。それは知ってるね?」
「はい、セラヴィムは僕にしか受け入れはしないです。」
「だが、ただ1人乗りこなせる子がいることも知ってるね? 確か、ノアって少女…」
「ノアのことも知ってるんですか⁉」
「君の失われた過去を今、教えることは出来ない。だが、知るキッカケとするなら、彼女だ。彼女は君の知りたい過去を知る鍵となっている。
つまり、彼女のことを知れば、君の知りたい過去のことを知ることが出来るようになるだろう。
だが、恐らく今、彼女は特務隊やKCIAに利用されるかもしれない。そうなれば、彼女も君も危うくなるだろう…」
「それはどういうことですか?」
「それは言えない…しかし、そうなることは何としても避けなければならない。
もし、君の力で彼女が駒にされかねることを防げない場合はスカル・デナムとヤマトの力を借りると良い。彼等なら、君の力になれるだろう。それにこれは君のために死んだキールのためでもあるからな…」
「あなた、一体何者なんですか? どうしてキールやヤマトたちのことを…」
「おっと、残念だが、ここまでのようだ。これ以上長居をすると議長のお嬢様も心配するだろうし、スパルタカス党の諜報員に見付かると面倒だ。
このビルにある地下を使いたまえ。彼処からコロニーのメインゲートに繋がるから、直ぐに合流出来るだろう。
ここ、エリア11は地球で言うところのジオフロントのようなところでな。AIの技術に過信したアーク政府によって追いやられた多くの失業者や労働者が住まう場所だ。
そのため、そういった連中の中からスパルタカス党に入党する輩が現れる。最も俺たちのような加わらないものもいるが、スパルタカス党は俺たちのような者も目の敵にしてテロを起こしたりしている。まさにここは無法地帯だ。」
「そうなんですか…」
「さっ、早く出たまえ! ここは君のいるところではないからな。」
「ありがとうございます! ところで、あなたの名は…」
「俺は自警団暁のケイド・フォートレスだ。」
「ケイドさん、ありがとうございます!」
ラルドがJの先導でその場を立ち去ると、そこにゲリングが現れた。
「彼は上手く行ったかな?」
「隊長! いるならいるって言ってくださいよ!」
「彼に私がいることをバレるわけにはいかないだろう。」
「隠す必要ないと思いますが、ま、隊長が来たってことはアレを聞きに来たんでしょ?
例の遺跡、連中に奪われましたよ! それも大統領護衛の部隊全滅してね。」
「ヘレナは狙われなかったのか?」
「狙いはしましたが、止めたそうです。連中にとっては、今殺すのは得策じゃないと見たのでしょう。
それにルナから報告がありましたが、アレの覚醒も近くなっているそうです。」
「敵の動きが活発になるとなると、こちらも大きく出る必要があるな。」
「上も色々と揉めていますし、俺たちで行くしかないでしょう。ノアって少女も既に特務隊に入隊となってKCIAの目にも入ったそうです。オマケに新型も完成したらしいですし。」
「それはデナムとヤマトに任せよう。そのために選んだ2人だ。」
「とはいえ、敵の動きは出来るだけ抑えたいですけどね…」
「絶対に奴の覚醒は阻止せねばならない。そして、俺を罠に嵌めた奴等にも引導を渡すために…」
To be continued
次回予告
自身が何も守れない非力な存在と悟ったノアは特務隊に入隊してコロニーにいるパイロット不在のセラヴィムのパイロットとして、クトラと並ぶ程の戦績を出し、ラルド以上にのりこなしていった。
そんな時、オルドー元帥の旧友であるハロルド・ウェズリー大佐が彼女を見兼ねて、財団とKCIAが共同開発したASを越える対デーモンビースト用決戦兵器のテストパイロットに選んだ。
次回 「ノアの試練」 誰かを守れる力を得るために少女は更に力を望む




