Episode18「深淵に潜む牙」
西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。
だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。
やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。
悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…
バミューダトライアングル。フロリダ半島、バミューダ諸島、プエルトリコを結ぶ三角形の海域のことで、この海域では、過去に多くの船舶や航空機が行方不明になっていることから、魔の三角海域とも呼ばれている。
原因は様々だが、この海域からの生存者はほとんど無く、辛うじて生き残った者も精神崩壊している有り様のため、未だに解明されていない。
ポイントネモ。地球上で最も陸地から離れた地点、いわゆる到達不能極で南太平洋の南緯48度52分、西経123度23分付近に位置し、周囲に陸地がほとんどない孤立した場所である。
使用済みの人工衛星などが大気圏に再突入する際の目標地点として宇宙船の墓場とも呼ばれているが、人類の到達が難しく、孤立した場所であるため謎が多く、加えてその海域は水深4000mにも達し、水圧も高く、通常の探査船では調査に向かうことが不可能な領域のため、探査は全く進んでおらず、調査に向かったとしても、ここもバミューダトライアングル同様の海難事故に逢い、いずれも消息不明となっている。
唯一、この海域に踏み込んだのは1889年、ネモと名乗る航海士がこの海域に向かい、消息を経ったため、ポイントネモという名前も彼の名にちなんで付けられたが、当時、彼はその海域のことを最初から知っていたかのような素振りを見せていたため、その海域と何からの関係性も疑われたが、残念ながら、彼の出生、経歴は一切不明だったため、それが解明されないままとなった。
それから100年以上経った1997年、米軍の海洋気象台が南米チリ西方1750kmの沖合、水深4000mある深海から謎の音をキャッチし、その音は人の耳では聞き取れない超低周波を含み、更に音源から500km離れた場所で観測される程、広範囲に渡っており、当初は海底火山による活動か、爆発音によるものではないかとされたが、その音が余りに不特定で、ある一部の学者から自然音や人工物が発した音ではないとの可能性が示唆され、その音が生物が発したものではないかとされた。
しかし、その音が鳴き声と仮定して導きだされた大きさが200mもあり、そんな生物が存在するはずがないとの意見が多数あったため、この説は否定されたが、その音が発した数時間後、その付近を通っていた日本の貨物船が突如、消息を経ち、その乗組員と思われる人物がロサンゼルスの海岸に流れ着いたのが発見され、保護されると、その人物から信じられない証言があった。
その貨物船は120m以上ある巨大なサメ型の怪物に襲われ、更に上空にドラゴンのような翼を持った巨大ヘビ型の怪物も現れ、船を噛み砕いたとのことだった。
そんな状況の中で、どうやって生き残れたのかという問いには貨物船が噛み砕かれて海に放り投げられる直前にウサギに似た巨大生物が現れ、巨鮫を踏み台にして貨物船に跳び移り、自らを抱えたとのことで、それ以降のことは気絶して覚えていないとのことだった。
その人物は大使館を通じて日本に送還されたが、その話が余りに荒唐無稽であったため、本国でも信じるような者はいなかったが、数日後、その人物は自宅で水死体として発見された。
捜査では、当初は自殺かと思われたが、発見された部屋は台所から離れており、しかも、水の入った桶が無く、しかも浸水にあったかのように部屋全体が水浸しとなっていたが、水浸しになっていたのはその部屋のみという余りに不可解な事件であり、真相は闇の中となった。
しかし、その事件後、その海域を通り掛かった船が謎の環礁による座礁や雷雨によって航行を阻止された事例が起き、僅かながらもそのことを信じる者も出始めた。
そしてそれから数世紀後、悪魔の審判によって人類文明がデーモンビーストに滅ぼされたが、果たしてその事件がデーモンビーストと関わりがあるのか、それとも未知の存在なのか、それは誰も知るよしもない…
ロンドンにあるホテップ社本社、そのビルの最上階でCEOと思われる人物が佇み、そこにマッド・ブリンガーCEO代理が立ち寄った。
「マスター。」
「マッドか…状況は……?」
「はい、ご子息は予定通り、ロックフェルド会長の養子となって時期財団会長になることが決定され、例の会長の令嬢が議長選に勝利しました。」
「これで、モーゲンソウ前議長相手に妥協しなかったコロニー連邦もようやく重い腰を上げられるということか……」
「ただ…」
「ん……?」
「特務隊が取り逃がしたというザエボスらしきデーモンビーストがイギリス海峡辺りで目撃された情報があったそうです…」
「軍が取り逃がしたネズミがこんなところにも彷徨いているのか…由緒正しきこの場所にまで彷徨かれるのは少々不愉快だ…総督府を通じて軍に伝えろ。失態を犯した穴埋めでもさせてやれ。」
「Yes、Master。」
イギリス海峡を泳ぐザエボスは何かに怯え、それから逃げるように周囲を警戒しながら、進んでいき、更にその身体には以前、山東半島でセラヴィムとの戦闘の時よりかなり抉りとられたような傷痕が残り、更に牙も幾つか折られていた。
その背後にザエボスを遥かに凌駕する影が潜み、ザエボスが振り向くと、巨大な口と牙を開き、襲い掛かってきた。
評議会ビルの最上階に来たラルドとマルコはヘレナの議長就任を祝っていた。
「ヘレナ議長。この度の議長就任おめでとうございます!」
「もうっ! マルコ。そんな改めないで! 今まで通り、ヘレナでいいわよ。」
「えっ…でも、議長を呼び捨てにするわけには……」
「別に議会にいるわけじゃないから、ここでは特別よ!」
「(て言われても、何か調子狂うな…)」
「それより、ヘレナ。大丈夫なの? もう財団には戻れないんじゃないの?」
「大丈夫よ! しばらくはここで暮らすつもりだし、それにお父様は私とほとんど会わないから…ところで、ノアは? 来てないの?」
「あっ…いや、ここに戻るまで色々あったから、今は会えないって…」
「(なぁ、ラルド。まさか、ノアのこと秘密にするつもりなのか?)」
「(だって、言えないだろ。 まさか、僕のセラヴィムに乗ってデーモンビーストと戦ってたなんて…)」
「(でも、今、ノアは軍の方に預かってるんだろ? それも、どこまで隠し通せるか…)」
「何、ヒソヒソ話してるの?」
「あっ…いや、こっちの話。」
「議長。財団のロックフェルド会長が是非、お会いしたいとのことですが…」
「わかった! すぐに行くわ。」
「えっ…大丈夫なの? 酷い叱りとか受けたりするんじゃないの?」
「心配しすぎよ! 今までなら、そうなってたけど、今の私は議長よ。もう、そんなことにはならないわ。それにちょっと会うだけだし…」
「わかった。でも、気を付けてね。」
「2人もね!」
「さて、そろそろ、僕も行かないと…ノアが心配だ。」
「とにかく、ヘレナには余計な心配させないようにな。」
「わかってるよ! それに今、心配なのはノアの方だ…」
ラルドが軍本部に向かうと、そこでは、マッカーシーらが保護したノアの調査をしていた。
「おお、オルスター特務二等兵。来てくれたか。」
「すみません。議長閣下の件で少し遅れました…」
「構わんよ。」
「ところで、ノアの状態はどうなんですか?」
「今のところは軽い昏睡状態で、特にこれといった問題はないが…ホントにこの少女がセラヴィムに搭乗した上に乗りこなしたというのか⁉」
「はいっ、間違いありません。」
「しかも、その時のコクピット内での記録によると、以前、セラヴィムの暴走と同じ状態にも関わらず、意識があったそうではないか…
彼女に会ったのが君らしいが、本当に彼女の経歴を知らないのか?」
「いえ、全く…(やっぱり、あの時の教会のこと話すべきなのかな…いや、あの時での僕以外での目撃者であるマルコもあの時の記憶が無くなってたし、第一、あの教会にはその跡は無い。証拠が無いから、どのみち話しても信じてもらえることは出来ない…)」
「更に不可解なのは、デーモンビーストによってセラヴィムの右肩が貫かれたと同時に彼女の右肩も同様に傷付き、実際出血もしているとのことだ。丸でパイロットの肉体と機体がシンクロしているかのようだが…こんな例は初めてだ。」
「技術者の話によりますと、ASはパイロットの脳波に作用して、その動きに連動した動きが可能ですが、機体と肉体が直結するようなことは有り得ないとのことです。」
「オルスター特務二等兵は、セラヴィムが損傷を受けた時、何処か、肉体に傷が付いたことは?」
「いえ…(…いや、でも…最初は確かにそうだけど、前の暴走状態になって以降は少しずつだけど、機体が傷付いた時に痛みが感じた時はあったな……)」
「オルスター特務二等兵ですら、起きなかった現象とは…もう少し、彼女の経歴を調べる必要がありそうだな。」
「ただ…」
「オクタヴィス特務大尉、何だ?」
「医者によると、傷の回復速度が常人のそれではなく、右肩の傷も1日も経たない内に回復したそうです…」
「何だと⁉ 回復の早い人間でも早すぎるぞ! これは身体検査もしておいた方が良さそうだな…」
「やあ、マッカーシー特務大佐。」
「ブラッディ特務少佐、来てたんですか?」
「セラヴィムに乗った少女がいると聞いて駆け付けたんだが、どうやら、思いの外、不可解な要素がありそうだね。」
「はい、経歴は一切不明ですが、ただの民間人とは思えない程で…」
「ラルド、この子に両親はいないのかね?」
「いえ…というか、そもそもいるのかすら、わからない状態でして…」
「ふむ…この子、しばらく、私に預けてくれないかね?」
「特務少佐がですか?」
「ヘレナが議長に就任して、財団に帰れない状態のため、余裕がなく、例の孤児の少年も仕方なく、孤児院に入れてる中、彼女まで孤児院に入れるわけにはいかないだろ?」
「しかし、よろしいのですか? 特務少佐には息子のブラッディ特務二等兵が…」
「クトラなら、心配ない。というか、そもそもアイツは私とは大して会わないし、今は特務隊を抜けてKCIAのセメタリーファングにいて、世話はオルドー元帥がするから、何も問題はない。」
「それなら、構いませんが…」
「そうそう! 先程、KCIAに寄ってる時に妙な話を聞いてな。」
「何でしょうか?」
「実はセラヴィムが斬り落とした例の未確認のデーモンビーストの左腕を分析したところ、DNA情報が他の個体にはない部分があったそうでな。」
「他の個体にはない部分?」
「デーモンビーストにはそれぞれ特性を持つ生物と同じDNA情報が入っているのは知ってるな?」
「はいっ! なので当初、デーモンビーストは既存の生物が突然変異したものではないかという説が一時期挙がっていましたが…」
「だが、あの個体にはそれを覆す要素が入っていた!」
「一体、何なんですか?」
「実は、あのデーモンビーストには…人間のDNA情報が入っていたんだよ!」
「なっ…‼」
財団本部にある宮殿に向かったヘレナは父である財団会長と再会していた。
「ヘレナ、議長就任したようだな。」
「はっ…はい! お父様。」
「良かったではないか。 これで少しは老後の心配も無さそうだ。どうだ? せっかくだし、その祝いもしてやってもいいが…」
「いえ、議長としての仕事があるので、そんな余裕はありません…(何だか、今日のお父様、やけに優しいわ…ここに前議長のモーゲンソウさんや辞職した財団派の議員が多数匿われているのに…)」
「そうか…まあ、仕方ないか。だが、今日、お前を呼んだのは会わせたい者がいるからだ。」
「会わせたい者?」
「来なさい。」
ロックフェルド会長が呼んで、現れたのは12歳ぐらいで、褐色肌ではあったが、その容姿はクトラとよく似ていた少年だった。
「紹介しよう、この子はナイル・イリウス。私の養子にして時期財団会長だ。」
「ナイル…」
「実は以前から、ホテップ社出身で我がロックフェルド家の遠縁であるイリウス家と養子縁組をしていて、議長選と同時に行われていた財団総会で時期財団会長になることが決定し、私の養子となった。
この子は4歳の時から秀才と呼ばれてる程の子で、現在はホテップ社が運営しているミスカトニック大学の大学生にもなっている。時期財団会長としては申し分ない期待の逸材だ!
それに私の養子だから、お前の義弟でもあるし、ちょうど死んだカイルに似た名前だ。
お前はカイルが死んでから、そのことを引きずっていたようだが、これからはその心配はない。今日から、ナイルが新しいカイル、すなわち、お前の弟だ。」
「父上、いきなり、そんなこと言っても、御姉様が僕を受け入れるのは流石に無理ですよ! もう少し時間を掛けないと、流石に困惑します。」
「ハハッ、そうだったな! お前の言う通りだな。流石、イリウス家のご子息だ。それこそ、我が息子にも相応しい!」
「(あんなに嬉しそうなお父様見るの久しぶり…あんな表情見るのは私がまだ幼くて、カイルと一緒にいる時以来だったわ……
カイルとお母様が死んでから、お父様は厳しくなって反財団派も糾弾するようになった…)」
「それと、マッド・ブリンガーCEO代理から、お前を通じて軍に伝えるよう頼まれてな。」
「えっ…」
財団会長の件を済ませたヘレナは評議会ビルに戻り、ラルドやマッカーシーら特務隊を呼び寄せて財団会長からの伝言を伝えた。
「イギリス総督軍がイギリス海峡辺りでザエボスらしきデーモンビーストを目撃し、その後、姿を消したが、方角からメキシコ湾に向かった…とのことですか?」
「お父様…いえ、財団会長がブリンガーCEO代理から聞いた話ではそうらしいわ。」
「まさか、あのバケモノが大西洋辺りにまで彷徨いていたとはな…」
「ちょっと待ってください。議長! それなら、何故、イギリス総督軍はその時、討伐しなかったんですか?」
「討伐はするつもりだったんだけど、戦闘せず、向こうからそのまま逃げてしまったそうよ。丸で何かに怯えながら逃げていったとも聞いたわ。」
「山東半島であれだけ、我々を手こずらせたアイツが怯える程って…そこまで強力なバケモノが更に潜んでいるとでも言うのか…」
「特務大佐、これは絶好の機会です! デーモンビーストが自然発生による突然変異ではなく、人為的な人造生物の可能性が生まれた今、対策や正体の判明のためにも、より多くのデーモンビーストのサンプルが必要です! ここは捕獲に乗り込むべきでは…」
「かといって、我が特務隊が討伐どころか、大したダメージを与えることが出来なかった相手の捕獲等、出来るのか…ましてや、我が軍のASには水中戦用の機体も…」
「それなら、問題ない。」
「特務少佐?」
「バジリスク戦での戦闘データを元にAS用の水中ユニットの開発に成功したのでな!
他にも、飛行ユニットや例のポイントネモのこともある。それに備えるため、今回のは量産を兼ねた試作型だ。」
「それは頼もしい。では、早速、その水中ユニットを…」
「ただ、さっきも言った通り、その水中ユニットは試作型のため、2機しかない。作戦行動をやるにしても、ザエボスを捕獲するための2機を決めねばならない。」
そこに声を上げたのはラルドだった。
「特務大佐、この僕をその作戦の囮役にしてもらえないでしょうか?」
「いきなり、何を言ってるんだ? 君は…」
「確証はありませんが、これまで特務隊が相手したデーモンビーストは明らかに僕を狙っていました!」
「君を…だと? どういうことだ⁉」
「これまでデーモンビーストと戦う度、僕は僕の失われた記憶の断片のようなものを思い出した。」
「記憶が蘇った…どんなのかね?」
「今まで交戦したデーモンビーストより遥かに強大で恐ろしい怪物が街を破壊して市民が逃げ惑う光景でした。
破壊していた街はメトロポリスではなく、技術がもっと進んでいたというか、高層ビルばかりが並んでいるようでした。」
「⁉ それで、街を破壊していた怪物とは…」
「角のようなものや突起物が生えていたようなものでした。」
「‼⁉」
それを聞いたマッカーシーは暫く黙り込んで考え込んでいた。」
「特務大佐…?」
「あっ、いや! とにかくデーモンビーストが君を狙っていたというか、ザエボスも君を狙っていたのか?」
「はいっ、間違いありません!」
それを聞くとマッカーシーは再び黙り込んだ。
「マッカーシー特務大佐!」
「あっ、すまない…では、ザエボス捕獲作戦の囮役をオルスター特務二等兵、君に任せよう!」
「はっ!」
「それと…今回の作戦が終わったら、さっきの話を詳しく聞かせてくれないかね?」
「いいですけど…」
その言葉にラルドは少し疑問を持った。
「では、もう1機、水中ユニットを装備する機体は…」
「私のミカエルにやらせてください!」
「オクタヴィス特務大尉…」
「彼に囮役という危険な任務をやらせるなら、その護衛は上官の私にやらせてください!
それなりに戦闘経験を積んだとはいえ、彼は半人前…それもまだ子供です。その子供を軍に入れさせ、戦闘に介入させるなら、その責任は大人である私たちが取るべきです! それに私はこれまで彼を守れたことはありませんから…」
「わかった。では、もう1機はオクタヴィス特務大尉のミカエルに任せる!」
「特務大佐!」
「何でしょうか? ブラッディ特務少佐。」
「今回の作戦指揮は私にもやらせてください!」
「技師長のあなたがですか? しかし…」
「なあに、私が前線に出るわけではない。それに今回の作戦には護衛としてハイライト特務二等兵もつけといたからな!」
「ハイライト特務二等兵…ってどういうことですか⁉」
「クトラがKCIAに飼われてしまったため、特務隊に空きが出てしまっただろ! そこでヘレナ嬢が議長になった後、その空きを彼に就かせることにしたのだよ! 彼の実績は君も知っているから、文句はないだろ?」
「そんな…私の知らない間にそんなことを……」
「なあに、ヘレナ嬢が議長になったオカゲで統制連合艦隊も特務隊に協力するようになったし、しかも、今回の作戦のために統制連合艦隊の潜水艦やアルケーダ及びミカエル専用の麻酔弾入りライフル提供してくれたんだからな!」
「手配が早いですな…」
「こう見えても、用意周到なんでな! それにじっとここにいるのも、どうも退屈でな。」
「わかりました! 作戦指揮にはブラッディ特務少佐も加えます。では、これからの作戦内容は艦内で説明する!」
統制連合艦隊が提供した潜水艦に乗り、メキシコ湾に到達した後、マッカーシーはその作戦内容をラルドたちに説明した。
その内容はラルドの乗るセラヴィムを囮役として海中に先行し、そこからある程度距離を置いたオクタヴィスのミカエルがその後を続いて、セラヴィムがザエボスと接触してその注意を引いている間に麻酔弾入りライフルで狙いを定め、ザエボスの口に向けて発砲するというものだった。
ザエボスらしき生体反応をキャッチした艦は推進2500m近くに入ったところで停止し、水中ユニットを装備したセラヴィムとミカエルが作戦行動に入った。
水中ユニットが2機しかないのは、海中にあるデーモンビーストが陸上と比べて数が少なく、水中戦向きのASが開発されていないことであり、また、ポイントネモとバミューダトライアングルの海域が不気味な黒い霧に覆われて立ち入り禁止区域となっていたため、最新装備を備えた統制連合艦隊の潜水艦が調査のためのものとして発展しなかったためであった。
作戦行動に入ったセラヴィムは反応のあった場所に向かって潜行していった。
「それにしても、水深2500mぐらいだというのに、セラヴィムは全く影響を受けていない…セラヴィムを開発した人は僕の記憶にも関わっているのかな?」
「オルスター特務二等兵! 反応が強くなった。その場で待機しろ!」
艦内のブラッディ特務少佐の指示に従い、その場で立ち止まり、目の前にザエボスが現れた。
「来た!」
しかし、目の前に現れたザエボスは以前のような風格と違い、かなり抉りとられたような傷痕と自慢の牙が幾つか折られていたという無惨な姿となっていた。
「あれが、僕たちを苦しめたザエボスだって…ホテップ社の話は本当だったんだ。」
艦内の映像を見たマッカーシーらも驚愕していた。
「まさか、これほどの傷を追うとは…特務少佐! バミューダトライアングルとの関連性は?」
「無いとは言えん。だが、今は任務が最優先だ。オルスター特務二等兵! 作戦行動に入れ!」
「はいっ!」
指示に従ったラルドはセラヴィムをザエボスの真正面に移動し、それに気付いたザエボスは以前同様にすかさず、セラヴィムに向かって巨大な口を開き、襲い掛かってきた。
ラルドは以前の戦闘での経験があり、水中にも関わらず、その噛み付きを難なく回避し、尻尾を掴んで投げ飛ばした。
しかし、ザエボスはセラヴィムを顎で捕らえるように噛みつくような攻撃しかせず、以前のようなパワーと持ち前の耐久力を活かした攻撃はしなかった。
「何だ…コイツ、さっきから動きが単調だ…というより、僕を捕まえてさっさとこの場から離れたいという焦りが感じられる。
僕とヤマトたちでさえ、ダメージを負わせられなかったコイツがこれだけの傷が付いているということは、やはり、それだけ強力な個体もこの近くにいるということか…
だったら、尚更、僕たちも余り時間を割いているわけにはいかないが、これだけ動きが単調なら、読みやすく、直ぐにケリが付きそうだ。」
ザエボスが再び巨大な顎を開けたその時、セラヴィムはブレードメイスで挟んで閉じるのを防いだ。
「特務大尉、今です! 麻酔弾を‼」
オクタヴィスのミカエルが麻酔弾入りのライフルを迎え、発砲しようとしたその時、特務隊のレーダーから謎の音をキャッチした。
「どうした?」
「水深4000mから、謎の音をキャッチ…そこから強力な高エネルギー反応も確認! 真っ直ぐ、セラヴィムとミカエルのいるところに向かっています‼」
「何だと⁉」
特務隊の艦のレーダーが謎の音をキャッチすると同時にザエボスはそれに気付いて周囲を見渡し、コクピットにいるラルドもその音に気付き、再び謎の怪獣が登場するビジョンが脳裏に映ったが、今度は街を破壊するようなものではなく、巨大怪獣が深海を潜行し、遺跡のようなものを熱戦か光線のようなものを吐いて破壊し、そこから、その怪獣の巨体すらも遥かに凌駕するタコのような触手が無数に現れ、怪獣を捕らえ、引きずり込もうとした。
そのビジョンを見たラルドは恐怖心を抱き、動揺していった。
「い、イヤだ…来るな…来るな~‼」
セラヴィムが突然、動きを止め、ザエボスの口に狙いを定めたミカエルは停止したセラヴィムが障害になって発砲することが出来なかった。
「おい、オルスター特務二等兵! 何をしている? 何故、動かない‼」
セラヴィムが停止したのに気付いたザエボスはブレードメイスを剥がしてセラヴィムを咥えて接近してくる何かから逃げるように直ぐ様、その場を去った。ミカエルはその後を追うが、艦からの通信で静止された。
「オクタヴィス特務大尉、艦に戻れ!」
「何故です⁉ 今、奴を逃してしまえば…」
「強力な高エネルギー反応が猛スピードでこちらに向かっている! それもザエボスとは比較にならない程の巨体とスピードだ! 今すぐ艦に戻れ‼ 下手したら、喰われるぞ‼」
「何⁉」
ブラッディの普通じゃない慌てぶりを聞いた聞いたオクタヴィスは背後を見るとそこに120m以上はあるかと思われる巨大な影が猛スピードで近付いていき、深海のため、はっきりとした姿はわからなかったが、その形はとてつもない巨大なサメのようなもので、両目を赤く発光させ、巨大な口を開いた。
艦に戻る前に追い付かれると悟ったオクタヴィスは麻酔弾を3発口の中に向けて発砲し、艦は魚雷を発射して全弾命中し、その間にミカエルの艦に入り、艦は猛スピードでその場を離れたが、巨大なサメのようなものな怪物は目を赤く発光させながら、開き、何事も無かったかのようにその後をゆっくり追っていった。
セラヴィムを咥えたザエボスは深海の洞窟にまで進み、そこでセラヴィムを離した。
セラヴィムに未だ動きがないのを見たザエボスは爪でコクピットのハッチをこじ開け、ラルドを引きずり出そうとしたが、ラルドは先程のビジョンで平静さを失うどころか、我を忘れ、セラヴィムが再び暴走状態となったが、ザエボスは負けじとセラヴィムを抑え、セラヴィムを押し潰そうとしたが、コクピットだけは引き剥がすために巨大な顎を咥えた。
セラヴィムは尚も抵抗を続け、ザエボスの力を押し返す勢いとなったため、コクピットだけでも引き剥がそうと更に力を加え、牙がコクピットハッチに食い込んだが、その時、何処からか、謎の影がザエボスの頭部を踏み台にしてジャンプし、セラヴィムを引き離した。
怒ったザエボスは尻尾で凪払おうとしたが、その影はザエボスの目では捕らえることが出来ない程の凄まじいまでの機動力で攻撃を全て回避し、翻弄した。
怯んだ隙に影はザエボスの顎に強烈な一撃を喰らわせ、ザエボスを気絶に追い込んだ。現れた影の正体はウサギのような耳をした怪獣だった。
我を忘れて暴走状態のセラヴィムはその怪獣にも襲い掛かったが、その機動力で咄嗟に背後に回り、手刀で転倒させ、その衝撃でラルドは気絶した。
動きがないのを見た怪獣はセラヴィムを抱え、洞窟の奥の方にまで進んでいき、その肩にはある人物が座っていた。
特務隊の艦はセラヴィムの捜索を続けたが、セラヴィムの反応が無く、捜索は困難を極めていた。
「どうだ? まだ、見つからないか!」
「駄目です! セラヴィムからの識別信号が捕らえられません…」
「考えられるのはザエボスに機体を破壊されたか、あるいは……」
「まさか、さっきの正体不明の怪物に…」
「可能性は無くはないが、もしくはレーダーに引っ掛からない場所にいることも考えられる。」
「そんな場所があるんですか?」
「この海域はバミューダトライアングルともそう遠くはない。そんな場所があってもおかしくはないが…」
「特務大佐! 4時の方向から水深音が...いや、さっきと同じ高エネルギー反応も確認しました‼ 距離9100!」
「速度は?」
「約9ノット、さっきより遅いです。」
「また、追ってきやがったか! 迎撃かい…」
「待て! 特務大佐。 高エネルギー反応から察するにこの艦で太刀打ち出来る相手じゃない。
近くの岩礁に隠れて全艦停止しろ!」
「はっ!」
ブラッディの指示に従い、特務隊の艦は巨大な岩礁に隠れ、停止した。
「ライトを切れ! 奴がやり過ごした後、艦を起動して捜索を再開する。」
「わかりました! (普段は恐れるものがないような特務少佐があんなに警戒するとは…あの怪物のことやポイントネモ、バミューダトライアングルのことも何か知っているのか?)」
「奴は?」
「距離7600、方位速度及び変化無し。」
「我々に気付いてないのでしょうか?」
「それにしては不気味すぎる……」
「距離4000。」
「…………」
「特務少佐…」
「しいっ!」
「距離1500、まもなく本艦の横を通ります。」
巨大サメの怪物は特務隊の艦をゆっくり横切っていった。
「やり過ごせたか…」
その時、巨大な尻尾が岩礁を破壊し、その衝撃で艦が吹っ飛ばされ、巨大サメの怪物の身体から無数の触手が現れ、艦を捕らえた。
触手の力は強く、艦を押し潰す勢いで徐々に艦内がその圧力で浸水していった。
「振りきれんのか⁉」
「駄目です! 艦のパワーが足りません!」
「浸水を確認! このままでは艦が耐えられません‼」
「クソッ!」
「オクタヴィス特務大尉! 何処へ行く⁉」
水中ユニットを装備したオクタヴィスのミカエルはスナイパーライフルで赤く発光した片目を狙撃し、それが効いたのか、触手は艦を離した。
「触手が艦から離れました!」
「エンジン全開! 奴から距離を取れ!」
艦は全速力でその場から離れたが、そうはさせじと巨大サメの怪物も追いかけていき、艦は魚雷で迎撃したが、堪えなかった。
「全弾命中! 目標健在!」
「クソッ、なんて奴だ!」
「俺も出る!」
「待て! ハイライト特務二等兵。水中ユニットはないんだぞ!」
「艦にしがみつきながら、奴にメガアンカーをお見舞いする。艦の攻撃用であるメガアンカーなら、魚雷よりダメージを与えられるはずです!」
「わかった! だが、無理はするな。」
「はっ!」
艦から出たロバストハンターは艦にしがみついて魚雷と並走してメガアンカーを巨大サメの怪物に向けて砲撃した。
暫く気を失っていたラルドが目を覚ますと、目の前に1人の女性が立ち、その後ろには先程のウサギに似た怪獣が佇んでいた。
「…⁉」
「警戒しないで…私はあなたの敵じゃないわ。もちろん、この子も。
ラルド・オルスター君ね! アンティラクスがここまで運んでくれたから、ザエボスも早々追いかけてはこないから、大丈夫よ!」
「アンティラクス?」
「そう、この子の名前よ!」
「一体、何だ…ソイツは…ザエボスみたいにデーモンビーストの感じがしない……それにどうしてザエボスと僕の名を……?」
「説明してあげてもいいけど、今は言えないわ。とにかく私のことはルナって呼んで! アンティラクスは…そうね。ザエボスがデーモンビーストなら、この子はスピリットビーストってところね!」
「スピリットビースト?」
「あ、それと。あなたの機体セラヴィムだけど、さっき、ザエボスが咥えたから、装甲に結構傷が付いていて、それもしっかり修理したわ!」
ラルドがセラヴィムの元に駆け寄り、調べると出撃前と同様に修復されていた。
「凄い…あなたが修理したのですか?」
「う~ん、私は専門外だから、私の仲間がやったの。ただ、私の仲間は他のことでも忙しいから、もう、ここにはいないけど…」
「あなた、一体、何者なんですか? これだけの整備が出来るなんて所属は何処なんですか?」
「それは、企業秘密ってとこだから、言えないわ。」
「……なら、僕の名はどこで知ったんです? あなたは僕の何を知ってるんですか!」
「全てよ。あなたの過去も、キールさんのことも、そしてあなたの正体もね…」
「なら、教えてください‼ 僕は一体何者なんですか! デーモンビーストと対峙するときに僕の記憶に映るあの怪物のことも僕と何の関係があるんですか⁉」
「言ってあげてもいいけど、それは言えないわ…それを今言ってしまうと、あなたにはショックが大きいわ。 もし、どうしても知りたいって言うなら…」
そう言うとルナは上を指差し、
「空…?」
「そう、宇宙よ! 彼処にいけば、あなたの過去やあなたが何者かを知る手掛かりが掴めるわ。そしてその後のことはあなた自身が調べて自分と向き合いなさい。」
「自分と向き合う…」
「あなたのことは話せないけど、キールさんのことはある程度話せるわ。」
「あなたはキールさんとはどういう関係なんですか?」
「私たちの大切な仲間よ! 仲間思いでとってもいい人だったわ。あの人が犠牲になったのは悲しいけど、あの人は君に未来を託すために自らその犠牲を受け入れた。だから、私たちはあなたの死を無駄にしないわ。」
それを聞いてラルドが辺りを見渡すと、そこは先程の洞窟ではなく、高度な文明があったかを物語る遺跡が幾つか存在する場所だった。
「ここは…?」
「ここは生き残ったアトランティス人の仮の住居よ。」
「アトランティス?」
「今の時代に生きるあなたは知らないかも知れないけど、今から1万3000年前、大西洋にあった大陸で高度な文明を築いた人たちのことよ。
それまではその人たちは平和に暮らしていたけど、太平洋にあるもう一つの大陸にあるムーと激しい戦争を繰り広げて大陸が海に沈み、滅亡の危機に瀕したその生き残りが住んでいた場所よ!」
「1万3000年前に文明があったなんて…」
「もちろん、伝説だから、千年前の人たちもおとぎ話か神話で語り継がれるようなものだと思ってるけど、この遺跡は本物よ。
さっき、私たちがいた洞窟から繋がっていたから。」
「⁉ てことはここは海の中なんですか‼」
「そうよ!」
ラルドは試しに遺跡内で川のように流れている水を舐めてみたら、それはしょっぱい正真正銘の海水だった。
「ホントだ…でも、有り得ない! 1万3000年前にこんな海底都市を築ける人間なんているはずが…」
「確かに有り得ない話ではあるわ。そもそも人類が文明を築いたのは今から4000年以上前になるわ。」
「それがどうして⁉」
「現代の人類がこれを見付けるには余りに未開の地だからよ! 言うなれば、ここは失われた地でもあるわ。」
「ここで一体何が起こったんですか! 何故、アトランティスの人たちはムーと戦争になってこの地にいなければならなくなったのか…」
「それは…」
その時、突然、地面が揺れ、地中からザエボスが現れた。
「ザエボス‼」
「ちぃっ! しつこいわね‼ こんなところまで追ってきたの。 アンティラクス!」
ルナの呼び掛けに応じてアンティラクスは驚異的な跳躍力でザエボスの顎に強烈な蹴りの一撃を喰らわせた。
ザエボスはそれに怯まず、喰らおうとしたが、持ち前の機動力で背後に回り、再び攻撃の姿勢を取ったが、尻尾で凪払われ、左腕を噛みつかれ、かなりの出血をした。
「アンティラクスだけじゃ、厳しいようね…」
アンティラクスが苦戦しているのを見たルナがスイッチを押すとその背後からアンティラクス同様にウサギの耳っぽいアンテナをしたASが現れ、瞬時に乗り込んで両膝に装備していたキャノン砲を取り出し、ザエボスの顎と腹に砲撃を加えた。
貫通こそはしなかったものの、直撃を喰らった顎と腹は多大な火傷を被った。
「あの人もASのパイロット⁉ でも、あの形状…軍のものじゃない。それにデーモンビーストとは違う感じの種を飼い慣らしているなんて、一体何者なんだ…?」
砲撃でアンティラクスを離し、目標をルナのASに向けたが、アンティラクス同様の機動力でそれを回避した。
「いくら、パワーが高いからといって所詮は図体のデカい木偶の坊にね! アンティラクス!」
彼女の呼び掛けに応じたアンティラクスは尻尾を伝って頭部にまで登っていき、耳でザエボスの目を封じた。
必死に抵抗する間、ルナのASは2つのキャノン砲を1つの砲身にするよう合体させ、狙いを定めた。
「今度は火傷程度じゃ、済まないわ! 私のアンティラクスを傷付けた報い、受けなさい‼ レンジバスターキャノン、発射‼」
1つの砲身となったキャノン砲が放たれるとアンティラクスはその場を離れたが、ザエボスはそれに気付くことが出来ず、脇腹を直撃し、しかも火傷どころか、そのまま貫通した。
「あのザエボスの強固な皮膚を貫通する程なんて…」
「さて、次はフィニッシュとさせてもらうわ。あんたのオカゲで厄介なものまで呼ばれたから、その代償も払わせてもらうわ!」
「厄介なもの?」
その時、突然地震のような揺れが起き、遺跡が崩れ落ち、更に地面から海中入っていった。
「⁉ この揺れは…」
「もう来たのね!」
遺跡に通じる洞窟には巨大な存在が巨体に有無を言わせて周りを破壊しながら洞窟内に入っていった。
そして海水は遺跡を飲み込み、遂にラルドやルナ、アンティラクスまで巻き込まれた。
「しまった! ウォレスラビットは水中戦向きじゃないし、アンティラクスも泳げないから、身動きが取れない!」
しかし、水中ユニットを装備したセラヴィムはルナのASとアンティラクスを掴んで潜行していった。
「ラルド!」
「水中ユニットがあって助かりました。」
その状況でも、ザエボスは力を振り絞って尚もラルドたちを狙って追っていった。
「もう! ホントしつこいわね‼」
ルナのASが再びレンジバスターキャノンを放とうとするが、発射出来なかった。
「てっ…しまった! レンジバスターキャノンも水中じゃ、使い物にならないんだった!」
ザエボスに追い付かれそうになったその時、背後からザエボスを遥かに凌駕し、特務隊の艦を襲っているのと同じ巨大なサメのような存在が現れ、目を赤く発光させると身体のあちこちから無数の触手を出し、ザエボスを拘束した。
ザエボスは必死に抵抗するが、その触手はザエボスのパワーをものともせず、引きずり込み、巨大な口を開けると尻尾から順番に貪り食っていった。
ギュヤオォ~‼
ザエボスは悲痛な叫び声を上げ、そこから脱しようとしても、無慈悲に喰らい続け、噛み砕かれた肉片も触手に回収され、山東半島でラルドたちを苦しめたデーモンビーストは肉片1つ残らず無惨に貪り喰われていった。
やがてその巨大なサメはラルドたちまで狙い始め、再びラルドの脳裏に巨大怪獣が巨大なタコの触手に引きずり込まれるビジョンが映り、ラルドの身体が震え、徐々にセラヴィムの動きが止まっていき、追い付かれそうになった。
「ラルド! しっかりして‼ 飲まれちゃダメよ‼」
万事休すかと思われたその時、目の前に巨大サメと同サイズはあるかと思われる環礁のようなものがラルドたちに近付いていった。
「あれは…」
ロバストハンターは尚も艦にしがみつきながら、追いかける巨大サメの怪物にメガアンカーをや何発も撃ち込んだが、全く堪えず、艦の砲弾も徐々に限界に達し、距離が縮まると巨大サメの怪物は身体から幾つもの触手を繰り出し、艦を捕らえて動きを封じ、ロバストハンターを艦から引き離そうとし、再び艦を押し潰そうとした。
「ぐっ、まさか、狙いは俺か⁉」
「特務大佐、特務少佐、駄目です! これ以上は持ちこたえられません‼」
「クッソゥ…」
万事休すかと思われたその時、巨大な環礁が巨大サメの怪物に体当たりし、艦は引き離され、更にその環礁からセラヴィムが現れ、艦にしがみついた。
「オルスター特務二等兵! 無事だったか‼」
「特務大佐、ここは危険です! 直ちに離脱してください‼」
「どういうことだ? 何があった!」
「説明は後です! 早くここを‼」
「わかった…」
ラルドの警告に従い、特務隊の艦は直ぐにそこから離脱し、環礁は巨大サメの怪物と共に深海へと消えていった。
To be continued
次回予告
正体不明の巨大サメ型怪獣の襲撃とザエボスを引きずり込んだ謎の巨大なタコの触手によって再び記憶の一部の断片を思い出したラルドだが、マッカーシーらはその記憶からラルドがコロニー出身ではないかと仮定し、新議長となったヘレナが以前計画していたコロニー連邦大統領との会見の際に同行し、ラルドの出生を調べるために宇宙に向かうことになった。
次回 「コロニーへ」 宇宙への道は新たな記憶を呼び覚ます




