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Episode17「ヘレナの決意」

 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。

 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。

 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。

 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…

 アスモゲルデがデーモンビーストを追い払い、安全地帯に避難した人々はジオフロントに戻り、街の復興活動を行い、ラルドやヘレナたちも手伝う中、ゲリングが立ち寄った。


 「お嬢さん、ちょっとよろしいかな?」


 「ゲリング!」


 「たくっ! どこほっつき歩いてやがったんだ! オカゲでこっちはかなり手を焼いたし、アスモゲルデだってボロボロなんだぞ‼」


 「すまないな。こっちも向こうの件でかなり手こずってな…最も、何とか、お嬢さんをマクマリー議員のところまで送ってやれそうになった。」


 「え…てことは…」


 「ああ! もう、マクマリー議員に会うことが出来る。議長選までそこまで後はない…そろそろ出発だ。」


 「やっとここから出るのか…けど、俺まで同行は無理だぞ! 何せ、アスモゲルデはさっきの戦闘でボロボロだからな!」


 「それに関しては問題ない! KCIAにも発見されていない通路を見付けたのでな。それを通ってヘレナ嬢をマクマリー議員の元に向かわせるつもりだ。だから、君の任務はここまでだ。」


 「ふん! まあ、いい。けど、俺のアスモゲルデの修復はあんたがしとけよ!」

 

 「それも心配いらない。軍のASは全て私が管理してるからな!」









メトロポリス、KCIA本部。オルドー元帥はホワイト副議長と通信を取っていた。


 「では、評議会で議長が議長選に出ることが決定し、もし、ヘレナ嬢が生存していたら、議長選までに始末せよとのことですか?」


 「そうだ。仮に生きていたとしても、反財団派と手を組んでいる可能性が高い。生存と所在が確認次第、早急に始末しろ!」


 「このことは会長殿は知っていると?」

 

 「会長は元より、時期会長としてホテップ社から養子をもらった御子息の方に期待を寄せていて、あの小娘には最初から期待していない。不慮の事故にしておけば気にしないだろう…」


 「わかりました! 生存と所在が確認次第、こちらで対処します。」


 「失敗は許されんぞ…」


 通信を切った後、マードックが立ち寄った。


 「無慈悲にも程がありますね。あれだけ期待を寄せておきながら、敵に回る可能性があると思った途端、始末しろとは…これじゃ、火に油を注ぐだけだというのに……」


 「現議長も含め、ホテップ社との関係をより強固にするためなら、民衆や派閥のことなど、どうでもよいのだ。

 ASの開発によって地球圏の支配を取り戻しつつあるが、例のザエボスを初め、デーモンビーストの進化は止まることを知らない…

 完全な殲滅には宇宙の技術が必要…そのためには地球圏、コロニー双方の経済をも掌握しているホテップ社を後ろ楯にすれば、コロニーとの交渉は有利になり、宇宙の技術も手に入る…それが現議長と副議長の考えだ。そのためには多少の犠牲は厭わない姿勢だ。

 それより、ここに来たと言うことは何か報告があるんだろうな?」


 「はいっ! セメタリーガーディアンと同行させ、ゾーンの住民に紛れ込ませた工作員から、モグラかネズミに似たデーモンビーストによる襲撃の際に、避難民の中からヘレナ・ロックフェルドらしき女性が発見されたとの情報があり、しかも、そのデーモンビーストとアスモゲルデが交戦したため、統制連合艦隊に保護されている可能性があるかと…」


 「副議長の懸念通り、やはり、既に統制連合艦隊と関わりを持ったか…だが、連中の元で保護されたとあっては、こちらの部隊は動かせまい…」


 「だからこそ、デーモンビーストを利用するのですね! 実は地下都市を調査していた部隊から未確認のデーモンビーストが発見されたとの報告があり、その後の通信は途絶えましたが、ソイツを利用する手がありますな。」


 「未確認となると、ソイツの詳細は把握していないから、利用するにはかなりリスクは伴うが、まっ…今となってはこれが一番の手だろう。

 最も、仮にあの小娘の始末に失敗して議長選に間に合って勝ったとしてもあの性格なら、時期会長となるホテップ社の御子息を義弟として迎え入れるだろうから、財団との関係はこれまで通り、変わらないだろうし、反財団派もホテップ社を敵にような愚かなことはしまい。

 議長は納得しないかもしれんが、いずれにせよ、財団との関係はこれまで通り、変わらないから、問題ない。それより、警戒すべきは例の機体だな…」


 「と…言いますと、地下都市の別の部隊を襲撃したあの所属不明機ですか?」


 「映像は残っているんだろうな?」


 「はいっ! それによりますと、形状は我が軍のASに類似してはいすますが、該当するデータはありませんでした。」


 「テロリストに関与している可能性が高い。全部隊に捜索命令と調査を急げ!」


 「はっ!」


 「(それとも、軍内部に反財団派とは別に裏切り者でもいるのかな…)」





 







 ゲリングに連れられて地下通路を通るラルドたち、その通路は既に数百年は経っていると思われる代物だった。

 

 「まだ、こんな通路があったなんて…」


 「地上を蹂躙するデーモンビーストが万が一、このジオフロントにまで侵入した場合のことを想定してその避難経路として作られた場所だ。

 最も数世紀前のため、大分痛んでて掘り起こすのに結構苦労したがな。」


 ゲリングに付いていって通路を突き進み、上の扉を開いて入るとそこは病院で、デーモンビーストに襲われて重傷を負った者、または難病に罹った患者が多数いた。


 「この病院って…」


 「デーモンビーストによって行き場を失った者、ジオフロント内での過酷な環境で不治の病に罹った者のいる病院だ。最も人手不足で全員の世話が出来ない状態だがな…」


 「そんな! どうして議会はこの病院にもっと人員を増やそうとしないの⁉」


 「軍資金に金を掛けているからだ。議会はデーモンビースト殲滅のために新型ASの開発を急がせているのが主な名目だが、それは財団出身の議員がホテップ社との関係をより強固なものにするために進めているだけに過ぎない…だから、こういった病院には余り手を入れていないのだ。」


 「そんな…」


 病院を出ると、そこに送迎車と統制連合艦隊と思われる軍の護衛も一緒にいた。


 「マクマリー議員のところには彼等が送ってくれる。私はここまでだ。」


 「あなたはどうするの?」


 「私はまだ、仕事があるのでね。心配することはあなたの安全は彼等が保障してくれる。」


 「わかりました!」

 

 「それと…ラルド君。」

 

 「はい…」


 「ヘレナ嬢を頼むよ!」


 「はいっ!」


 護衛がヘレナとラルドを送迎車に乗せた後、ゲリングの元に通信が入った。


 「私だ。…………何だと⁉ では、こちらに向かっていると⁉ …………わかった。私も直ぐに対処する。」


 「やはり、あのカプセルの中身が近くにいたのか…首都に向かっているとなると、やはり、狙いは……」












 評議会ビルにてモーゲンソウ議長が議員の前で演説を行っていた。


 「KCIAの報告から、現在消息不明となっているヘレナ・ロックフェルド嬢はデーモンビーストの襲撃によりお亡くなりになられた。」


 それを聞いて議員たちは動揺し、議会は騒然としていた。


 「しかし! 私はヘレナ嬢の死を無駄にしないために彼女の意思を継ぎ、コロニーとの関係性をより強固にし、これまで我々人類を脅かしてきた忌まわしき悪魔を1匹残らず駆逐するべきために再び議長選で再選するつもりです! 皆様、どうか…この私に力をお貸しください!」


 議長の演説に議員たちは拍手喝采をし、テレビ中継でもそれは盛り上がっており、その様子をオルドーとマードックも見ていた。


 「よく言いますね。反財団派と手を組む恐れがあるから、始末しとけと要請してきたことを棚に上げといて…しかし、よろしいんですか? 諜報員からの報告によると、ヘレナ嬢を乗せた送迎車がメトロポリス内で走行していたとのことですが…もし、議長殿にこのことが知られると……」


 「言い訳等、いくらでもつけられる。それにモーゲンソウが再び議長選に勝ったところでコロニーとの関係もどうせ変わらん! ましてや、少しでも政変を起こさないとコロニーも動きはせんだろう…」


 「最も、そのコロニーもホテップ社の資金力が目当てですから、実質、争奪戦のようなものです。」


 「財団然り、議会然り、どの連中も結局はホテップ社の資金力が欲しいのだ。最もそのホテップ社もそういった連中は天秤に掛ける方がやりやすいからな…」


 「冷戦時での米ソもそうですが、世界経済を掌握するほどの力を持つ企業は実質的に世界を支配しているようなものですから、表立って政治に顔を出すより、裏で操作する方が楽ですからね。

 ところで、例の未確認のデーモンビーストは指令通り、泳がせておいてよろしいんですか?」


 「何か、問題でも?」


 「あの未確認の個体…どうも、他の個体とはかなり危険な匂いがしますので、万一のことがありましたら…」


 「その時は予め監視役として送った部隊を動かせばいいし、何より一番警戒しなければならないのは、例の所属不明機だ…」










 ラルドとヘレナたちを乗せた送迎車が向かったのは意外にも、ブラッディの別荘であり、そこに待っていたのはマクマリー議員だけでなく、ヤマトとブラッディもいた。


 「ヤマト! 無事だったんだね! でも、どうしてブラッディさんと…?」


 「あの後、KCIAに捕まったけど、ブラッディさんが助けてくれてこっち側に来てくれたんだ。」


 「こっち側って…」


 「そうだ…これを見て欲しい…」


 ブラッディがテレビを付けると、モーゲンソウ議長がヘレナが死んだことを告げる演説の中継だった。


 「そんな…まさか、議長が…」


 「議長は財団との関係を強化するために君を時期議長に期待していたが、君が反財団派に入れば、その関係は崩れる。

 だから、君を死んだことにして自ら議長選に再選したんだ。これでわかっただろう…財団とその支持派はただ、特権を独占したいだけだと……」

 

 「じゃあ…私のやってきたことは……」


 「だが、そう悲観することはない。君が今までしてきたこととその思いは父親のためでもなければ、財団のためではない。君自身が望んでやってきたこと。だから、決して傀儡ではない!」

 

 「おじ様…」


 「それに、君がそのために議長になるなら、君を議長選に当選させるためにマクマリー議員は自ら議長選から降りたんだ。」

  

 「え…でも、それって……」


 「君が私たち反財団派も受け入れてくれるなら、別に構わない。むしろ、私は君のような若者の方が期待を抱いているのだからな。」

 

 「マクマリーさん…」


 「さあ! 議長選まで、もう後僅かになる。急いで評議会に向かおう!」


 その時、カイルがまた何かを感じ取ったように低い唸り声を上げ、それと同時に統制連合艦隊の兵士が報告に現れた。


 「どうした?」


 「報告します! 未確認のデーモンビーストがメトロポリス内に壁を破壊しようとし、我が軍が食い止めてますが、予想以上に苦戦し、援軍の要請が来ており、メトロポリス内で避難勧告が発令しています!」


 「何だと⁉」


 「それと別の隊から、セラヴィムらしきASが目撃され、メトロポリスに向かっているとの情報も入りました!」


 「セラヴィムが⁉」


 「なら、俺がロバストハンターで出てソイツを食い止める!」


 「ヤマト! 僕もいかせて!」

 

 「お前は自分の機体がないだろ!」


 「だからって、こんなところでじっとしているわけにはいかない! それにセラヴィムが動いているなら、それに乗っているパイロットが誰かも突き止めないと…」


 「……わかった。空きのアルケーダはありますか?」


 「ちょうど1機残っている。」


 「よし、ラルド! お前はそれに乗れ!」


 「わかった!」


 「マクマリーさんはヘレナを連れて安全なところへ逃げてください!」


 「わかった。」





  メトロポリス全体を覆う壁の前で未確認のデーモンビーストが統制連合艦隊と交戦状態にあり、部隊の大半が撃破されていた。

 未確認のデーモンビーストは顔は若干ベルゼボアに似ているが、4足歩行型のベルゼボアと違い、人型のスタイルを持ち、更に両手からベルゼボアの尻尾に似た鞭のようなものを収納していて、それを出すと、統制連合艦隊のアルケーダを捕らえたり、引き裂いた。また口から出す衝撃波といった攻撃手段を持ち合わせており、それらを駆使して統制連合艦隊をを壊滅させていた。


 「何なんだ! このデーモンビースト! 丸で歯が立たないぞ‼」


 「怯むな! 何としても奴を首都に入れさせるな‼」


 しかし、その応戦も虚しくデーモンビーストは残りのデーモンビーストも鞭で捕らえ、そのまま潰そうとしたその時、突然現れたセラヴィムの蹴りの衝撃で捕らえたアルケーダを離した。


 「セラヴィム? 何故、こんなところに…」


 「何、アイツ…さっきの奴よりイヤな匂いがするけど、今の私なら…ハアァー‼」


 ノアの乗るセラヴィムがブレードメイスを振りかざして攻撃を仕掛け、デーモンビーストはそれを腕でガードし、再び出した鞭で捕らえようとしたが、すかさず肩のポッドからミサイルを放ち、それを阻止した。

 鞭で捕らえることが困難と判断したデーモンビーストは口からの衝撃波による攻撃を仕掛け、すかさず、セラヴィムもブレードメイスでそれを防ぎ、再び、攻撃を仕掛けたが、その時、ノアの脳内に教会で深淵の使者に襲われた時のビジョンが映った。


 「えっ…何? このビジョン…私の記憶なの……やめて…来ないでー‼」


 ビジョンに映る深淵の使者を見て錯乱したノアは正常な判断が出来ず、闇雲に攻撃を仕掛けるといった単調な攻撃しか出来なくなり、その隙をついたデーモンビーストはアイアンクローでセラヴィムを締め上げた。


 「グッ…アァァッー‼!」


 機体のダメージがそのまま自分にも伝わるようにノアは自分の頭を抑え、そこから離れようとブレードメイスでデーモンビーストの腕に突き刺すが、応えてないのか、威力が小さかったか、定かではないが、デーモンビーストは全く動じず、もう片方の手から出した鞭でセラヴィムの右肩を貫いた。


 「アァァッー‼!」


 ノアの右肩に激痛が走り、その痛みで気絶し、セラヴィムは沈黙した。止めを刺そうと言わんばかりに踏み潰そうとしたその時、ロバストハンターが現れ、拳の一撃でデーモンビーストをダウンさせた。


 「間に合ったようだな。それにしても、一体、あのセラヴィムに誰が…」

  

 「パイロットが誰かはともかく、早く出して上げないと!」


 「わかった! 奴は俺が引き受ける!」


 ロバストハンターから降りたラルドはコクピットハッチを開けてパイロットの姿に驚愕した。


 「!⁉ ノア…どうして君が……」


 一瞬、戸惑いはしたものの、気絶したノアを担いで、大破した機体から脱出して避難しようとした兵士に、


 「民間人がまだ、残っています! この子をお願いいたします。」

 

 「君はどうするのだ?」


 「僕はまだ、戦えます! だから、この子を…」


 「わかった!」


 他の兵士にノアを任せたラルドはセラヴィムに乗り込み、攻撃体勢に入った。


 「右肩の間接が少しイカれているけど、何とか動きそうだ。」


 セラヴィムはロバストハンターが鞭を抑えている隙をついてブレードメイスを振りかざして攻撃を仕掛けたが、デーモンビーストはそれを読んでいたかのように瞬時に回避し、セラヴィムとロバストハンターに向かって衝撃波を放った。

 セラヴィムはブレードメイスで、ロバストハンターは持ち前の耐久力で防いだが、ラルドの脳内にかつて孤児時代の時に同じ孤児が小型のベルゼボアに殺されるビジョンが映った。


 「…⁉ 何故、こんな時にあの時の記憶が……?いや、今はそんなこと気にしている場合じゃない!」


 体勢を立て直したセラヴィムは再び攻撃を仕掛けたが、その瞬間、今度は育て親でもあるキールが中型軽のベルゼボアに殺される記憶が甦り、攻撃の手が緩むと、デーモンビーストはそれを狙っていたかのようにセラヴィムの頭部を掴み、そのまま叩き付けた。

 

 「グワアァッ! クソッ、何でこんな時にあの時の記憶が……もう、僕はあの時のような弱い自分は捨てたはずなのに…僕に余計なもの見せるな~‼」


 ノアが乗った時と同様にセラヴィムの目が赤く発光すると、一気に出力が増し、デーモンビーストを振り切ってそこから脱出した。


 「オマエカ…オレノホッシテイルモノハ……」


 「何だ…? 声が…」


 「オレノトコロニコイ…」


 「聞き間違いじゃない…この声一体何処から…? いや…耳からじゃない…頭から聞こえるようだ……まさか…これは…テレパシー?」


 「ハヤクコイ…」


 「まただ…さっきから、何なんだ? 来いとかって、誰のことだ? まさか、僕…」


 デーモンビーストはロバストハンターもいるにも関わらず、それが眼中にないようにラルドの乗るセラヴィムを狙い続けた。

 

 「コイツもやはり、僕が狙いなのか…何でだ? 何で僕ばっかり狙う奴が現れるんだ…」


 「ナニシテル…コッチニコイ……」

 

 「また、この声だ…けど、この声があのデーモンビーストからで、僕に向かっているのなら…お前は何者だ! 何故、僕を狙う⁉」


 しかし、ラルドの声が聞こえてないのか、単に聞く耳を持たないのか定かではないが、問答無用で尚も襲い掛かってきた。


 「駄目か…やはり、こんなバケモノ相手に話し合いだって無理みたいだ……」


 交渉は不可能とみたラルドはミサイルを放ってデーモンビーストを怯ませ、その隙を狙ってブレードメイスで頭部を突き刺そうとしたが、デーモンビーストはミサイルで怯んだように見せ掛けてラルドの死角から両手の鞭を展開してセラヴィムの両腕を拘束した。


 「しまった‼」


 鞭で拘束したまま、セラヴィムを地面に叩き付け、更に追い討ちを掛けるように両手の拳で叩き付けた。


 「グワアァッ!」


 その衝撃でラルドは気絶し、今度は鞭でコクピットを狙い撃ちしようとしたが、そうはさせじとロバストハンターがメガアンカーでデーモンビーストを後退させ、それに気付くと先にそちらから始末した方がいいかと判断したのか、狙いをロバストハンターに向けたが、同時にセラヴィムを追っていたマッカーシーとオクタヴィスのミカエルも砲撃を加えた。

 

 「無事だったか! ハイライト二等兵。」


 「マッカーシー特務大佐にオクタヴィス特務大尉!」


 「セラヴィムの回収は後だ。先にコイツを片付ける!」


 ロバストハンターと2機のミカエルがデーモンビーストと交戦しているとき、気絶しているラルドの脳内には今度は培養カプセルのようなものに入れられているビジョンが映った。


 「何処だ…ここは…これも僕の記憶なのか……?」


 そしてビジョンの培養カプセルが割られた後、いつも映る巨大怪獣の姿が再び現れた。


 「また、コイツだ…お前は一体何者だ? 何故、僕の記憶のように現れる……お前は僕のことを知っているのか?」

 

 その問いに巨大怪獣はしばらく黙っていたが、何かを呼び覚ますように咆哮を上げると、


 「……そうだ…アイツは敵だ。そして僕は全てを破壊する…」


 ラルドの目が覚ましたと同時にセラヴィムの目が再び赤く発光し、姿を消した。

 交戦中のミカエル2機とロバストハンターは何とか善戦するも、デーモンビーストは他の個体以上に人間的な知性と耐久力で次第にヤマトたちを追い詰めていった。そして、右手から出した鞭でコクピットを貫こうとしたその時、その鞭が一瞬で斬られ、セラヴィムが現れた。


 「セラヴィム…まだ、動けたのか⁉」


 ようやく獲物が来たかと言わんばかりに再びセラヴィム中心に狙い始めたが、セラヴィムはさっきより数倍以上の機動力を出してデーモンビーストの攻撃を全て回避し、姿を捕らえることが出来ず、デーモンビーストは翻弄されていた。


 「凄い…何だ…あのスピードは……」

 

 「あの機動力…先程、バルガを倒した時と同じ…いや、それ以上だ! だとしたら、あのセラヴィムのパイロットは別の人間なのか……」


 捕らえることが出来ず、イライラしたデーモンビーストは両手の鞭を振りかざしたが、セラヴィムはそれを掴んで、その巨体ごと投げ飛ばした。

 直ぐ様、体勢を立て直し、尚も襲い掛かってきたが、ブレードメイスで左腕を斬り落とした。これ以上は不利とみたデーモンビーストは斬られた左腕を押さえながら、その場を去り、斬り落とされた左腕にはまだ、生命力が残っているかのように指がピクピク動いていた。















 セラヴィムがデーモンビーストと交戦していた間、評議会はモーゲンソウ議長の演説の時より、更に荒れていた。


 「外はどうなっているのです‼ 我々はここにいて大丈夫なんですか⁉」


 「議長! 状況を説明してください‼」


 「慌てないでください! 既に特務隊が既に対処してます。ですから、ここにいる限りは安全です。議会はこのまま続けます。」


 「このまま続けるって…市民はおろか、我々の命がどうなるかわからないこの状況でも議会を続けるって正気ですか⁉ 議長! 第一、ヘレナ嬢の死も確かな情報なんですか‼ もう少し説明をください!」

 

 「そうだ‼」


 「ですから、先程も申し上げました通り……」


 「皆さん、静かにしてください!」


 その時、マクマリー議員と共に議会で姿を現したヘレナ嬢が声を上げ、議会は騒然とした。


 「ヘレナ嬢…」


 「生きておられたんですか…」


 「では、議長の話は……」

  

 「オオ~! これはこれはヘレナ嬢! ご無事だったんですか⁉ KCIAからデーモンビーストの襲撃によって死亡したとの情報があって、どうなるかと思ってましたが、生きておられたとは私も安心しました。 やはり、時期議長はあなたしかいません!」


 ヘレナに媚びうるような態度を取るモーゲンソウ議長にマクマリー議員は少し睨み付けたが、ヘレナは怒りの表情を出さず、


 「議長、この場をお借りしてよろしいでしょうか?」


 「構いませんよ!」


 議長の許可を得たヘレナは議員たちの前で演説を行った。


 「私はこの旅の間、様々なものを見ました! 世界には未だ、悪魔と呼ばれるデーモンビーストが蔓延り、私の拾った孤児のように苦しめられている人々がいました。

 この時代に生まれた私は苦しんでいる人々はそういった人たちばかりだと思っていました。しかし…現実はそれだけではありません。

 地上を人類の手で取り戻そうとしている中、財団を支持する者たちは財団を後ろ楯にし、丸で過去の貴族主義や特権階級のように振る舞い、自分たちがこの国を牛耳るように権力を握っています。

 その象徴こそが現在、ゾーンと呼ばれるジオフロントなのです。私はその地で財団支持派によって貧困と不当な扱いを受け、その地でデーモンビーストに襲われても、軍を動かさない有り様を見ました!」


 それを聞いて議会は騒然とし、慌てた議長は誤魔化すように、


 「ヘレナ嬢! それは誤解です! 彼処は地上の首都とは連絡が付かないこともあって、軍を動かしにくいのはもちろん、物資が行き届かないことがありますので…」


 「議長! それはどういうことですか⁉ そんな事情は我々も知りません! ましてや、ジオフロントなら、既に廃棄されたはずじゃないですか‼」


 議会がまたざわめく中、ヘレナは演説を続け、


 「人類の存亡を脅かす敵と戦う中、未だ、過去の愚行を繰り返すようなことをして、私たちは生き残れるのでしょうか?

 今、こうしている間にも、その敵と戦っている者がいます。ここにいる皆さんはそんな人たちのように戦うことが出来るのですか?

 もちろん、私も彼等のような力と悪魔と戦えるような強い意思はありません…ですが、そこから逃げてしまっては待っているのは死のみです。皆さんはそれで良いのですか?

 それを望んでいないのなら、現実から目を背けないでください!

 私がこの議長選に勝利し、議長になった暁には財団も反財団派も関係ない、この地の悪魔を全て駆逐し、人類の新たな未来を築ける国家にすることをここに宣言します!」


 ヘレナの迷い無い演説に議員たちは拍手喝采を上げ、議会は盛り上がりを見せた。

 そしてこの演説の後日、遂に迎えた議長選で圧倒的多数で勝利し、地球圏連合国最高評議会第33代議長に就任したヘレナは反財団派も迎えることを宣言し、ホワイト副議長を引き続き副議長に付けず、マクマリー議員を新たな副議長に据えた。

 これに対し、納得のいかない財団派と財団出身の議員は議長の座を追われたモーゲンソウの後を追って多数辞職し、ヘレナは反財団派の支持も得るようになった。

 同様に父親である財団会長もこの決定に反発したものの、議長選と同時に行われた財団の総会でホテップ社出身のガイラ・イリウスの息子が時期財団会長になることが決定され、その息子が正式に会長の養子となったため、この決定に対し、ホテップ社は引き続き財団への資金援助を行うと共にコロニーとの関係のために議会にも働きかけると約束したため、会長は静観するようになった。

 しかし、議長の座を追われたモーゲンソウを初め、財団派の議員は財団内部に匿われながら、密かに機会をじっと伺っていた。


 To be continued

 次回予告


 セラヴィムによって討伐され、回収したデーモンビーストの死骸から人間の遺伝子情報が検出され、デーモンビーストが元は人間、人造生物である可能性が示唆され、デーモンビーストの解析のためにデーモンビーストの捕獲を急ぐ中、討伐し損なったザエボスがメキシコ湾で目撃された情報が入り、ラルドはその捕獲任務に当たったが、それを遥かに凌駕するサメ型の怪獣に襲われてしまう。


 次回 「深淵に潜む牙」 深淵の底から現れる牙は全てを噛み砕く

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― 新着の感想 ―
ヘレナの著しい成長が感じられた回でした。様々な妨害もありましたが最終的に世の中の人々にとってベストな形で議長選が収束したのかなと思います。でも、まだまだ財団派による一悶着が今後も続きそうで目が離せない…
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