表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

Episode13「迷える少年」

 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。

 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。

 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。

 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…

 国家や軍にも知られておらず、どこにあるのかもわからない未開の地にある悪魔の審判の爪跡を残す廃墟となった街中を深夜、デーモンビーストらしきものが歩いていき、歩みを止めるとそのまま転倒し、そこに何処の部隊かわからない兵士たちが街中を捜索していた。


 「いたか?」


 「いえ、こっちも外れです。」


 「報告では奴はまだ、この近くにいる。絶対に逃すな!」


 「しかし、隊長。ホントにここにいるんですかね?」


 「上層部からの確定情報だ。間違いない。」


  「隊長!」


 1人の兵士の叫びを聞いて、部隊がそこに向かうと、巨大な何かが倒れたような跡を示すように周囲の建物が転倒していた。


 「本体は何処だ?」


 「わかりません。周囲には足跡もないんです!」


 兵士たちがその周辺を捜索する中、半裸の少年が街中を走り去っていった。


 


 


 


 


 


 


 円明園の爆破テロは本国の首都メトロポリス(旧ワシントン)にも届き、更にヘレナがそのショックで過去のトラウマを思い出し、PTSDを発症したという情報は評議会にも届き、議員の間でかなりの波紋を呼び、評議会ビルの入口の前にいる議長候補であるフーバー・マクマリー議員が市民の前で演説を行っていた。


 「円明園による爆破テロによって、ヘレナ議員は精神的なショックを受けて議長選に出られない状態に陥っている。このような悪質なテロを起こすテロリストに我が連合国は絶対に屈してはならない! 最早、彼等は話し合いではなく、武力によって我が国を壊滅へと導こうとしているのだ。

 だがしかし、このような時に財団派の者はテロリストと手を組んだ我々反財団派の者による犯行ではないかと声高に叫んでいるが、そんなものは財団派の議員や権力者たちが自分たちの特権が失われることを恐れ、それを防ぐための口実に過ぎない!

 それにましてや、ASの開発に成功したことによって連合国を大国に成長させた功績があるとはいえ、ホテップ社の財力を後ろ楯にして勢力を拡大し、評議会の議員はその大半を財団出身が占め、その権限を握る等、これは最早、財団の独壇場であり、独裁でもある!

 その上、財団出身ではない者や労働者はかつて我が国が建国される前、デーモンビーストの襲撃から逃れるためのシェルターの役割を果たしていた地下都市に追いやり、そこをゾーンと呼び、彼等は地上に出られず、財団出身の者によって虐げられる有り様となっている。

 このような格差社会によって我が国は信用を失われ、あのようなテロリストを生み出してしまったのだ! 人類の脅威たるデーモンビーストを駆逐し、人類が1つになろうとしているこの状況に再び負の歴史を繰り返してはならない!

 私は必ずや議長となって、不平等と格差という差別政治を終わらせ、人類の統一に相応しい国家と世界を作ってみせる!」


 それを聞いた市民は拍手喝采を上げ、同時に軍に復帰し、休暇でジオフロントに帰っていたグリスもテレビ中継でその様子を見ていた。


 「あの女め、ザマァみろ…」


 財団本部の最上階で、その演説の様子をテレビで見ていたハリー・ロックフェルド会長はワインの入ったグラスをテレビに投げつけ、


 「クソッ‼ 建国当初はたかだか、世界最小の小国に過ぎなかった国をここまで育て上げてきたのは一体、何処の誰だと思っている! かつてアメリカの技術王であり、パラディウス家の血縁者でもある初代ロックフェルドの血を引き、その財力でホテップ社を設立し、更にはASを開発して大国にまで成長させた我がロックフェルド家だぞ‼ 

 それだけの功績がある我々が政治の表舞台に立って何が悪い⁉ そんな我々から権力を奪う等…恩知らずにも程がある‼ クソッ! やはり、あの小娘を出すべきじゃなかった! せめてユウナさえいれば…オノレェ~‼」


 同時期、評議会ビルの最上階の議長室で、モーゲンソウ議長とホワイト副議長もマクマリー議員の演説の様子をテレビで見ていた。


 「マクマリーめ、この期に乗じて随分追い上げていったな…」


 「オマケに反財団派の連中も、このチャンスを逃がさまいと言わんばかりに財団本部の前でデモを行っているようですな。」


 「ホテップ社から、何か報告は無いのか…?」


 「ありません。というのも基本的に彼処は政治には不干渉ですので…」


 「しかし、参ったな…ヘレナ嬢がもし、議長選に出られなければ…」


 「ヘレナ嬢の代わりとなる候補者も探さねばならないですな。」


 「そうなれば、順を言えば、副議長たる君が出るべきはずだが…」


 「それは出来ません、議長。財団出身である私が出れば、それこそ、反財団派の動きが更に活発化し、火に油を注ぐだけです。むしろここは議長が再選すべきです。」


 「私が?」


 「そうです! 財団指示派とはいえ、元々財団出身ではなく、大規模な公共事業と国土開発によって、我が連合国はかつてのアメリカやロシア、中国すら凌駕する程の大国にまでなりました! その議長殿が再び出れば、再選は間違いないかと…」


 「ふ~ん…取り敢えず、この件はヘレナ嬢が帰国してからにしよう。まだ、ヘレナ嬢が出られないと決まったわけではない。」


 「とはいえ、次の議長選までそこまで猶予はありません。出来るだけ早くご決断を…」


 「わかっている。それはそうと、時期財団会長も決まっているのかな?」


 「そちらも厄介な状態です…何しろ、あの事件でユウナ殿を失い、現会長には御子息がおられません。」


 「とすると、パラディウス家から養子を貰うのか?」


 「既に話は付けてあります。ユノラ・パラディウスCEOから相応しい人物が決まっており、近々その方を御養子としてお連れします。とはいえ、流石にこの状態ではメトロポリスにお連れすることは出来ませんので、議長選後になりますが…」


 「そうか…一体、どんな方なのだ?」


 「それは後のお楽しみとしてください。」


 


 


 


 


 


 


 インドや東南アジアに活動しているテロリストが本拠地としているシンガポール基地が所属不明の謎の機体によって破壊され、北京軍によるテロ鎮圧の遠征は中止されたが、テロリストが壊滅されたと確認されたわけではなく、近くに残党が潜んでいる可能性があるとして、ウー総督は引き続き香港前線基地に留まり、その指揮を取った。

 議長選が徐々に迫り、これ以上北京に留まれば、ヘレナの精神状態が危うくなると帰国の許可を本国の議長から得たマッカーシーはタオの支援を経て、新たな艦と一部の護衛部隊を得てヘレナやラルドたちを乗せて本国首都に向かっていき、アラスカに入っていった。司令部にはマッカーシーが鎮座し、その横にアウダ・オクタヴィス特務大尉もいた。


 「まもなく、アラスカに入ります。」


 「このまま順調に行けば、議長選までに本国に帰還出来るな…」


 「しかし、特務大佐。議長選に間に合ったとしても、肝心のヘレナ嬢があの状態では…」


 「この事は既に議長閣下にお伝え、ヘレナ嬢が議長選に出れない場合は議長閣下が再選することになっているが、果たして財団会長は納得行くかどうか…

 ホテップ社の資金力を持つ財団がその財力でASを開発し、デーモンビーストを駆逐出来る程の戦力を持ち、ここまでの大国に成長した我が国だが、その財団の協力が無くなれば…」


 「ですが、特務大佐! 財団の功績は認めます。しかし、財団は余りに権力を持ちすぎです! これでは独裁と見なされ、議会や市民から反発を招くのも無理はありません。それに仮にマクマリー議員が当選したとして、財団が解体されたり、支援が断ち切られるわけではないでしょう。」


 「特務大尉!」


 「はっ…」


 「我々、軍人は国家と市民のために尽くすものだ。いたずらに政治に口出しするものではない。」


 「しかし!」


 「もう、それ以上は何も言うな。」


 「…」


 その事にオクタヴィスは納得いかない表情をした。


 「それより、オルスター特務二等兵の様子はどうだ? また、セラヴィムが暴走したと聞いたが…」


 「デナム大尉によると、以前のように意識を失うこと無く、機体を操作していたそうです。」


 「ということはウー総督の改良で、あの状態の機体を制御出来るようになり、その性能を引き出せるようになったのか?」


 「ところがそうでもないんです。」


 「何だ?」


 「本人に聞くと、その時の記憶が無いと…」


 「何⁉」


 


 


 


 


 


 

 機体が保管されている倉庫で、デナムはマルコと共にセラヴィムの前でラルドに山東半島でのデーモンビースト戦でのことを話した。


 「本当に何も覚えていないの?」


 「映像見た限りでは、意識はあるようだが…」


 「あの時、アイツの咆哮を聞いたら、頭の中にアイツよりもっと恐ろしいデーモンビーストみたいなのが浮かんで、別の意識というか、別の人格に僕の頭を乗っ取られたようになって、それ以来、その時の記憶が無いんだ…」


 「別の人格…? 二重人格ってヤツですかね?」


 「だったらあの時、こちらの通信に応じなかったのは何故だ? 仮にその人格が好戦的なバーサーカーだとしても肉体が同じという以上、記憶は互いに共有しているのだから、こちらのことは当然知っているはず。返事くらいはしてもいいはずだが…」


 「それに、デナムさんが戦ったデーモンビーストは悪魔の審判でデーモンビースト第1号と共に人類を滅ぼしたザエボスと同種で、それより遥かに…それも中東で俺たちを襲ったアイツよりも強いらしいけど、それと渡り合える程の出力まで出せるなんて…」


 「あれ以来、機体に変化は無かったのか?」


 「一応チェックしてみましたが、特にこれといった異常はありませんでしたし、タオさんやウー総督もセラヴィムに関してはあれ以上は何も言えないって有り様だったし…」


 「とすると、あの異常性はセラヴィムではなく、ラルド自身によるものということか…」


 「デナム大尉、これからどうするんですか?」


 「この事はマッカーシー特務大佐にも伝えてある。本国に帰還した後、彼とセラヴィムはKCIAに預からせるということに決定した。」


 「KCIAというと…まさか、」


 「そう、Community Central Intelligence Agency(コミュニティー セントラル インテリジェンス エージェンシー) 通称KCIA(カシア)。テロリストに対抗するために現議長とロックフェルド財団によって設立された地球圏連合国の中央情報局にして諜報機関だ。」


 「彼処なら、十分な医療設備は整ってますから、任せて大丈夫ですね!」


 「うん…まあ、そうだな…」


 その時のデナムは何処か心配そうな表情をしていた。


 「あの、デナム大尉。僕は今、何をすればいいのでしょうか?」


 「ラルド、お前は引き続き、ヘレナ嬢の護衛だ。幸い、あの時の戦闘でお前の精神や身体に異常が無かったとはいえ、必ずしも安全とは言いきれない。もし万が一、テロリストやデーモンビーストとの戦闘が起きた場合はハイライト二等兵とブラッディ特務二等兵に任せろとの特務大佐の指示だ。」


 「…わかりました。」


 指示を受けたラルドはヘレナのいる部屋に向かい、扉の前では既にヤマトがいた。


 「どう、調子は?」


 「今のところは問題ないよ。それより、ヘレナは?」


 「相変わらず、1人で部屋に閉じ籠っている。そのオカゲでノアも別の部屋で閉じ籠る始末だ。」


 「そう…」


 「お前が落ち込むことはない。お前はお前のやるべきことをやっただけだろ?」


 「そうだけど…結局、僕は彼女の何の力にもなれなくて…」


 「全く、相変わらずお前はネガティブだなぁ…まあ、俺もそうだったけど…」


 「えっ、ヤマトも…」


 「あ、いや…こっちの話…」


 そのことに疑問を感じたラルドは首を傾げたが、周囲にクトラの姿は無かった。


 「ところで、クトラは?」


 「あいつなら、ルシファロイドのコクピットで待機してる。」


 「ルシファロイドに?」


 「何でも、ウー総督に見かねて北京軍に加わった際、ベトナムの抵抗勢力を1人で壊滅した功績を称えて未完成だが、北京軍が開発した飛行ユニットを与えられて、それをルシファロイドに装備されている。」


 「でも、何でそこに? 僕たちと同じヘレナの護衛じゃないの?」


 「中東の件があって、またいつ、この艦が襲われる可能性があるから、1人でも直ぐに出撃できる人材としてあいつが選ばれたんだよ! 現状、飛行ユニット装備して飛べるのはあいつの機体しかないからな。」


 「そうなんだ…」


 「それより、そろそろ持ち場に付いてくれないか? 只でさえ、一番狙われやすいのはこっちだから…」


 「あ、ゴメン!」


 


 


 


 


 


 


 


 特務隊の艦が海岸沿いに沿って移動する中、太平洋上に巨大な黒い影が潜行し、特務隊の艦にゆっくり付いていった。その時、突然、艦のレーダーと通信システムが乱れていった。


 「どうした?」


 「外部から異常な電波が発生し、艦の通信システムが全てイカれてます!」


 「異常な電波だと⁉(まさか、北京と同じテロリストによる通信妨害か…)」


 同時に海中に潜行している黒い影は巨大な潜水艦のようなもので、海上から出したポッドから4発のミサイルが発射され、特務隊の艦を襲った。


 「太平洋上から、複数の飛行物体…いや、ミサイルが接近してきます‼」


 4発のミサイルが全て艦に直撃し、体制が崩れた。


 「右舷に直撃‼ 艦のバランスが崩れました!」


 「何故、迎撃しない⁉」


 「正体不明の妨害電波によって、レーダーがイカれてて、敵艦の位置を補足できないんです!」


 「何だと⁉」


 太平洋上の黒い影は更に続けてミサイルを放ち、全弾、艦に命中した。


 「第3ブロック、被弾しました!」


 「クソッ、我々を嬲り殺しにするつもりか!」


 「特務大佐! ルシファロイドがハッチを開けようとしています‼」


 「何⁉ どういうつもりだ? ブラッディ特務二等兵! 出撃を要請した覚えはないぞ!」


 「こういう時のために待機させたんだろ? なら、出撃してあれを潰す。」


 「待て! 敵の正体がわからないこの状態での戦闘はリスクが高い。 それに妨害電波の影響で貴様の機体も…」


 「特務大佐!」


 「ん?」


 「妨害電波で、我が軍のASはまともに動けない状態にありますが、ルシファロイドだけは辛うじてその影響を受けていません。ここは彼に…」


 「…わかった。出撃を許可する。だが、やるからには徹底してやれ!」


 「言われるまでもなく…」


 ブリッジから射出されたルシファロイドは北京軍から拝借した未完成の飛行ユニットを装備して艦を攻撃する所属不明の潜水艦に向かっていった。

 所属不明の潜水艦は飛行するルシファロイドに向かってミサイルを撃ち込み、それをサブマシンガンとアームブレードで迎撃した。通常のミサイルは通用しないと見た潜水艦は別のポッドから発射されたミサイルをルシファロイドに向かって撃ち込んだ。ルシファロイドはそれを難なく避けるが、その1発のミサイルは方向を変え、再びルシファロイドに向かっていった。


 「誘導弾か…」


 更に潜水艦は通常のミサイルも発射し、逃げ場を無くそうしたが、ルシファロイドは誘導弾を掴んでそれを投げつけ、サブマシンガンで全弾迎撃したが、さっきの誘導弾は囮かのごとく、いつの間に背後から別の誘導弾が飛行ユニットに直撃し、更にまたミサイルが発射され、それらも直撃し、体勢を崩すと止めと言わんばかりに潜水艦はレールガンも発射し、ルシファロイドの右肩に直撃すると、海中に落下した。


 「ルシファロイド大破!」


 「何だと⁉」


 そして、レールガンの矛先は艦に向くと、弾丸は艦を直撃し、ヘレナのいる部屋にも被害を被った。その衝撃で吹っ飛ばされたラルドとヤマトが気付くと、ヘレナが鉄塔にしがみついて落ちそうになっていた。

 ヘレナの手が鉄塔から離れそうになったその時、ラルドはヘレナの手を握り、ラルドの身体をヤマトが支えた。


 「ラルド!」


 「大丈夫‼ 絶対に離さないよ!」


 しかし、追い討ちを掛けるように潜水艦の砲撃は尚も続き、その衝撃でヤマトは体勢を崩し、ラルドとヘレナはそのまま落下してしまう。


 「ラルド! ヘレナ!」


 だが、その時、別のASと思われる謎の機体が何処からともなく飛行し、落下していくラルドとヘレナをキャッチしてそのまま何処かへ跳びさっていた。その後、潜水艦は突然、砲撃を止め、海中に潜航して姿を消していった。


 「何だ…あの機体は…?」


 「特務大佐! 艦の推進システムがやられました! このまま不時着します‼」


 エンジンをやられた艦は体勢を崩し、そのまま地面に激突した。


 


 


 


 


 


 


 

 ラルドとヘレナをキャッチした謎のASは森の中に入ると、気絶したラルドとヘレナをゆっくりと下ろし、辺りを見渡した後、直ぐにその場を去った。それから数分後、ラルドは目を覚ました。


 「此処は…?」


 そして、下を見るといつの間にか自分は気絶したヘレナを抱き抱えるように倒れていて、ヘレナも目を覚ました。


 「う、う~ん…あれ、ラルド?」


 「う、ウワアァ~‼」


 赤面したラルドは慌てて、その場を離れた。


 「ご、ゴメン!」


 「あれ、もしかして…さっきからその状態だったの?」


 「いや、気絶していたから、いつからそうなっていたのか、わかんないけど、もちろん、決してやましいつもりじゃ…」


 「ふふ、そういうとこ、ラルドらしいわね。」


 「やっと笑えたね。」


 「???、どういうこと?」


 「だって、さっきまでずっとあんなに落ち込んでたヘレナが笑ってくれるなんて…僕もどう話し掛ければわからなくて…」


 「私のこと心配してくれたの…」


 「僕だけじゃないよ! もちろん、マルコやノアだって…」


 「ノアも…」


 「ノアも、ヘレナのことスッゴく心配してて、ずっとヘレナの部屋の前で考え込んでいたんだよ!」


 「そう…ノアが…」


 「君のお母さんが死んだことは親のいない僕には痛い程わかるよ。でも、君がいつまでも悲しんだら、ノアや他の皆だって悲しむ。それに、僕や僕のような親のいない子供たちに希望を与えてくれたのは君なんだ。だから、君には笑顔でいてくれて欲しいんだ。」


 「皆、私のこと心配してくれてたのね…ご免なさい。私のせいで皆に迷惑をかけて…」


 「いやいや、ヘレナが謝ることはないよ。」


 「ところで、ラルド。ここは何処なの?」


 「うん、そこは僕も気になっていたんだけど、艦から落ちたら、ASみたいなのに捕まれて気絶したら、いつの間にかここにいたんだ。」


 「じゃあ、ここが何処かわからないの?」


 「うん…(それにしても、あのASみたいなの、連合国軍のものじゃなさそうだし、仮にテロリストの機体だとしたら、本拠地に連れてこられるはずなのに、こんなところで置いてくなんて、一体、あの機体は何者なんだ?)」


 「ねぇ、ラルド。そんなに考え込んでどうしたの?」


 「え…うん、何でもないよ! とにかくここにいてもしょうがない。艦に戻ろう。もしかしたら特務隊が探してて、近くにいるかもしれないし…」


 「そうね、行きましょう。」


 道無き道を進んでいくが、この森が何処まで続いているのか、そもそも出口や艦のある方向は何処なのかすらわからなかったが、ヘレナをこのままにはするわけにはいかないとラルドは進み続けたが、その時、何かを感じた。


 「どうしたの?」


 「感じる…何かを…」


 「何かって?」


 「わからない…でも、感じるんだ!」


 何かの直感を便りにラルドは歩くスピードを速め、その方向に突き進んでいく中、ヘレナが何かに気付くと、そこにボロボロの衣服を着込んだ少年が倒れていた。


 「ラルド! あれ…」


 「人だ…ねぇ、君、大丈夫! 大丈夫かい⁉」


 直ぐ様、ラルドがその少年の元に立ち寄り、返事を呼び掛けたが、返答はなく、呼吸の確認もしたが、息はちゃんとあるようで、見たところ意識が無い様子であった。


 「どうして、こんな小さな子がこんなところで倒れているの?」


 ヘレナがそっと少年を抱き抱え、その容姿を見て、ラルドはノアと初めてあった教会での不可解な現象の時にあった少年のことを思い出し、年こそは教会であった少年と同じく12歳前後ではあったものの、容姿はクトラとよく似ていたのに対し、目の前の少年は銀髪で少しラルドに似ていたようで明らかに別人であった。


 「(あの時の少年かと思ったけど、どうやら、違ったみたいだ。)」


 「この子、こんなに痩せこけているし、あちこち怪我しているわ。早く手当てしないと!」


 「そうだね。早く、何処か手当て出来る場所を探さないと…」


 少年をおんぶしたラルドはヘレナと共に応急措置の出来そうな場所を探し回っていった。


 


 


 


 


 


 


 

 太平洋上での謎の潜水艦による砲撃を受け、不時着した艦がいた場所はスコーミッシュで、立ち往生せざるを得なくなった特務隊は艦の修復を行っていた。マッカーシーは作業員の元を訪れ、


 「どうだ?」


 「駄目です! 推進システムやエンジンも完全にやられています。」


 「修復はどれぐらい掛かる?」


 「少なくとも28時間は掛かるかと…」


 「クソッ! 首都まで後少しだというのに…」


 そこにラルドとヘレナを捜索していた特務隊の兵士が戻ってきた。


 「マッカーシー特務大佐!」


 「どうだ? ヘレナ嬢とオルスター特務二等兵は?」


 「付近を捜索しましたが、見付かりませんでした。」


 「そうか…」


 「特務大佐、あの機体の識別信号は捕らえてはいるのでしょうか?」


 「捕らえてはいる…だが、軍のデータベースにあれと照合するものはない。所属不明機だ。」


 「では、やはり…テロリストの機体と…」


 「中東の例がある。他にもあれと同じような機体が無いとは言えん!」


 「特務大佐! あれがテロリストの機体だとしたら、オルスター特務二等兵とヘレナ嬢はテロリストの本拠地に連れていかれた可能性があります。ただちに捜索範囲を広げましょう!」


 「しかし、今、艦が…」


 「でしたら、特務大佐。私とハイライト二等兵にやらせてください!」


 「方向はわかるのか?」


 「ハイライト二等兵が機体の飛び去った方向を知っています。それに北米大陸にはテロリストの本拠地がある情報はありませんし、もしかしたら、応援を呼ぶための仮の基地がある可能性もあるかもしれません。艦の修復をしている間に我々が捜索致します! 指示を…」


 「特務大佐…もし、ヘレナ嬢がテロリストの人質になったら、一大事です!」


 「わかった。艦の修復が終わったら、我々も合流する。ただし、何としてでも見つけ出せ!」


 「はっ!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 少年をおんぶしたラルドはヘレナと共に応急措置の出来そうな場所を探す中、ラルドは何かに気付いた。


 「どうしたの?」


 「しぃっ、誰か来る!」


 その時、突然、草むらから槍と20世紀後半で使用された旧式の銃を持った人々が現れ、ラルドたちを一気に取り囲んでしまった。ラルドはヘレナを守るように庇ったが、取り囲んだ人々は敵意と同時に何かに恐怖しているような目もしていた。


 「この人たち、僕たちを怖がっているのか…?」


 「お願いです! 怪我している子がいるんです! お願いですから、そこを通してください‼」


 だが、取り囲んだ人々はそれに応じる様子は無かったが、その人たちの間に割っては入るように30代後半ぐらいで特に屈強で、おそらくリーダーと思われる男が現れ、怪我し、気絶している少年を見ると、その人たちに聞いたこともない言語で説得すると、その人たちは武器を下ろし、男はラルドたちを案内する素振りを見せ、ラルドたちはそれに従い、付いていった。

 しばらく歩いていくと、着いたのは尚も悪魔の審判の爪跡が残すかのごとく、破壊され、木々が生い茂った悪魔の審判以前の建築物を住居に再利用した村だった。住居から顔を出した人たちはよそ者か得たいのしれないものを見るかのようにラルドたちを睨み付け、そんな中、その中でも特に大きく村長か長老の住居と思われるところにまで案内された。

 案内した男は少年を使用人と思われる者に預かられ、別の部屋に移動させられ、ラルドとヘレナはそれとは別の部屋に入れられ、待つとそこに女性の長老が男と共に現れ、先程、男が人々を説得する時に話した謎の言語ではなく、ラルドたちと同じ標準語で話した。


 「アルアから聞いたよ。お前さんたち、ここに迷い込んだよそ者らしいね。」


 「僕たちの言葉がわかるの?」


 「ほっほ、もう何百年も前の言葉じゃ、わしらンガイ族はよそ者を嫌っておるから、誰も使わない言葉となっている。せいぜいこの言葉を使ってるのはわしと孫のアルアぐらいじゃ、最もお前さんたちのようなよそ者が来た時のために覚えていたのだが、まさかホントに来るとはな…」


 「ンガイ族…? それがあなたたちの名前ですか?」


 「あれを見なさい。」


 女性の長老が後ろを指差すと、とんがり帽子を被っているのか、それが身体の一部かわからない人間が数人森にいて、その森が不死鳥のような巨大な鳥のようなものに燃やされる様子を描いた絵巻が飾られていた。


 「もう何百年か、何千年かはわからないが、わしらの先祖はここから随分離れたところにある森に暮らしていた。最もその森で何をしていたかはわしらの親御や爺さんたちは一切何も話さなかった。

 唯一教えてくれたのはあの森は炎に包まれた巨大な怪物に燃やされ、わしらの先祖はここに逃れてきた。まあ、わしが言えることはここの者たちはよそ者が嫌いということじゃ。じゃが、お前さんたち、好きでここに来たわけじゃないな…そうじゃろう? アルア。」


 「お前が連れていたあのあの小僧が怪我していたのを見て、お前たちの言葉に嘘偽りは無かった。だが、あの小僧を助けるためなら、ここに居座るつもりは無いんだろう?」


 「…」


 「なら、あの少年とやらが無事に治ったら、さっさとこの村から出るんじゃな。それまでゆっくりしておくとよい…」


 そう言われ、ラルドとヘレナは少年のいる部屋に移動させられ、しばらくそこにいるようになった。ヘレナは与えられた小道具で少年の看病と傷の手当てをした。

 ラルドも手伝おうとしたが、ヘレナがいつも以上に一生懸命にやっていたため、むしろ邪魔になるのではないかと思ってしばらく様子を見守るようになった。

 ヘレナが財団の元で保護されている孤児たちのために一生懸命にやる姿は以前から見ていたから、珍しいことではなかったが、目の前の少年に対しては他の孤児たち以上に付き添い、丸で自分の弟かのように大事に振る舞っているようであり、その様子にラルドはヘレナの精神状態がやはり普通ではないと痛感していた。

 しかし、彼の気にするところはそれだけではなかった。ンガイ族と呼んだ長老が話す通り、この部族はよそ者を嫌っていて自分たちを歓迎していないのは長老と会う前から気付いていたが、対応に少し奇妙さすら感じた。

 事情を知っているため、一応治療のための小道具や食事は与えてはくれるものの、その渡し方が丸で檻にいる動物に餌を与えるようなもので、使用人とされる者たちは自分たちが逃げたりしないように部屋の前で見張りをしていた有り様だった。

 助けた少年の看病が終わったら、村から出ていって欲しいということはまんざら嘘というわけではなかった。もちろん、ここで長居するつもりは無いのだが、艦から落ちて離れた自分やヘレナを血眼になって捜している特務隊と合流していないことを考えると、この村から出ていって再び放浪すると、特務隊との合流が更に厳しくなってしまう恐れがある。

 只でさえ、通信機も落下の影響で壊れ、ろくに食糧も保持していないため、特務隊が来るまでしばらくここに留まる方が安全策のはずだが、仮に長老を特務隊が来るまでしばらくここに留まるよう説得しようとしても、場合によっては殺される可能性があるし、もし特務隊がこの村に来れば戦闘になるという最悪な事態もあり得る。

 この村とのトラブルを避け、安全のためにここから離れるか、それとも、3人分の食糧を自力で探し、艦のいる場所を探すリスクを避けるためにここに留まるか、どちらを選ぶのか、ラルドの悩みは更に深まり、夜も眠れず、ガラスの無い窓から外を眺めながらずっと考えていた。


 「どうすればいいんだろう…」


 そんな時、何やら地震の予兆のように地面が少し揺れたような感じがした。ラルドは感じた揺れが気になったが、ここに留まるか、離れるかのどちらかを取るかのことで一杯でむしろそれどころではなかった。しかし、その下には巨大な何かが潜んでいた。

 翌朝、気付けば、考えすぎて自然に眠ったのか、ラルドが目を覚まし、部屋を見渡すとヘレナは少年と共にぐっすり眠っていて、その寝顔は少し幸せそうで、少年も助けるまで衰弱していたのが嘘かのように健康的な様子で寝ていた。その様子を見てラルドは少し安心したが、少年の身体に問題が無さそうなのも見て、これからのことを考えると少し喜べない状態だった。そこにアルアが部屋に入り、


 「そろそろ、潮時のようだな…」


 「あの…」


 「長老が呼んでいる。お前だけでも来い!」


 「…はい。」


 ラルドはそれに従うことしか出来ず、そのまま長老のいる部屋に入った。


 「例の少年、割りと早く良くなったようじゃの。」


 「…」


 「さて、もうここに用がないじゃろ。そろそろお帰り願いたいのじゃが…」


 ゴゴゴ…


 その時、地面の揺れが夜の時より更に激しくなり、即座に窓から外を除くと、突然、村の中心が陥没していき、住居や村人たちがその中に引きずり込まれていった。

 この揺れにヘレナと少年も目を覚まし、部屋が崩れそうな勢いの中、ヘレナは少年の手を握り、直ぐにその場から離れた。アルアは長老を連れて外に出、ラルドはヘレナたちを連れていこうと部屋に向かった際に部屋から出た2人と遭遇した。


 「ヘレナ!」


 「ラルド! 一体、何が起こっているの?」


 「わからない、とにかく早くここから出よう!」


 2人を連れて住居を出ると、陥没は更に広がり、丸で巨大な蟻地獄のようなものとなって村と村人たちを次々と呑み込んでいった。


 「何だ、あれは…」


 その時、突然、巨大な蟻地獄の中心から髑髏のような不気味な顔をした巨大なムカデが現れた。


 「デーモンビースト⁉」


 村人たちは必死になって、巨大な蟻地獄から脱出しようとしたが、巨大ムカデは必死にもがく村人たちを1人ずつ食らい付き、そのまま補食していった。


 バキッ! グシャ! バキャッ‼


 骨が砕ける音と共に村人たちは次々と巨大ムカデに喰われていき、その様子をラルドとヘレナは恐怖した。アルアは長老を連れてこの場から離れようとしたが、長老が足を挫いた一瞬の隙を狙って巨大ムカデは長老を食らい付き、そのまま噛み砕かれて補食されてしまった。その姿にアルアは唖然としていたが、その後、ラルドたちの方を向いて睨み付き、


 「お前らか…お前らのせいか…」


 突然、アルアはラルドに向かって飛び掛かり、両腕でその首を締めた。


 「カッ、ガハッ!」


 「お前らのせいだ! お前らが来たから、あのバケモノが来たんだ‼ お前らさえ来なければ…‼」


 ラルドは必死に抵抗したが、アルアの握力が強く、首閉めによる拘束を解くことは容易ではなかった。ヘレナに抱き抱える少年がその姿を見ると、突然、ヘレナの元から離れてアルアに向かって飛び付き、一撃で殴り倒してしまった。


 「ウゥゥ…貴様も何だ…? アイツを呼んだのはお前か…お前か~‼」


 取り乱したアルアは今度は自分を殴り倒した少年に向かって襲い掛かってきたが、巨大ムカデはすかさず、少年に襲い掛かってきたアルアに食らい付いた。

 下半身が牙の中に食い込まれながらも、アルアはそこから脱しようとしたが、巨大ムカデはそのまま噛み砕いてアルアの腰が大量出血し、上半身だけになってそのまま地上に落ちていった。

 上半身だけになりながらも、尚もその場から逃げようとしたが、巨大ムカデはさっきまでと違い、直ぐに食らい付かず、必死に地面に這いつくばりながら逃げるアルアをおちょくるようにゆっくり近付いていった。青ざめた表情をしたアルアが後ろを向いた途端、巨大ムカデは上半身だけになったアルアを飲み込んでしまった。

 ヘレナは足が透くんで動けず、それに気付いた巨大ムカデが襲い掛かろうとし、ラルドがそうはさせまいと彼女の前に立ち塞がったその時、少年が巨大ムカデにしがみついて殴り付けた。

 巨大ムカデはそれを振り払って、少年は地面に叩き付けられ、巨大ムカデは今度は少年を食らい付こうと襲い掛かり、それを見たヘレナの脳裏に目の前の少年とは別の少年がデーモンビーストに切り裂かれるビジョンが映った。


 「イヤアァッ~‼」


 それを見たラルドはヘレナのトラウマを広げないためにすかさず、少年を助け、ヘレナの手をしっかり握り、直ぐにその場から離れようとしたが、地面や陥没は更に広がり、ラルドたちはそれに飲み込まれ、巨大ムカデはそのまま地中に隠れた。


 ラルドが目を覚ますと、そこは地下であり、ヘレナと少年もそこにいて2人とも怪我は無いものの、2人ともラルドの背中の上で倒れていた。


 「ヘレナ…大丈夫?」


 「だ、大丈夫よ。」


 「良かった。取り敢えず先に起きてくれないかな…?」


 起き上がったヘレナや少年と共に辺りを見渡すと、過去に地下鉄があったとされる巨大な空洞となっており、周りには悪魔の審判以前にあったとされる車両も幾つか存在し、同時にその巨大な空洞の中に巨大な何かも存在していた。

 先程、ラルドたちを襲った巨大なムカデは実は尻尾であり、その胴体はクワガタのような顎をした巨大な蟻地獄の姿をした怪獣だった。間違いなくデーモンビーストではあるのだが、胴体と尻尾がそれぞれ別の生物になっているのは見たことはない個体であった。

 尻尾の巨大ムカデは地中に落ちていった残りの村人を1ヶ所に集め、1人ずつ生きたまま補食していき、骨が噛み砕かれる音が空洞全域に響いていた。ラルドはこれ以上、ヘレナを混乱状態にさせまいと、彼女の両耳を塞ぎながら、ゆっくりデーモンビーストから離れていったが、デーモンビーストはいきなり補食を止め、触覚を揺らすと、身体を後ろに向け、気付かれないようにゆっくり移動しているラルドが気配を感じて後ろを向くと既に尻尾の巨大ムカデの顔が目の前にいた。

 ラルドは咄嗟にヘレナと少年を小さい穴に避難させ、自分は襲い掛かってくる巨大ムカデの牙を両腕で押さえ付けた。


 「早く‼ 僕がコイツを抑えている間に逃げて!」


 「で、でも…」


 「いいから! 早く‼」


 それを聞いたヘレナは仕方なく少年を連れてその場から離れ、ラルドは堪えたが、流石に限界が近付き、巨大ムカデがヨダレを垂らしながら、ラルドを食らい付こうとしたその時、突然、頭上から砲撃の音がしたと同時に空洞が崩れ始め、巨大ムカデの顔は岩の下敷きになり、その隙にラルドはそこから脱してヘレナや少年と共に地下鉄の線路に沿って必死に逃げていった。

 体勢を立て直したデーモンビーストは巨大な顎で地面を掘り進み、逃げていくラルドたちを執拗に追い掛けていった。空洞の中とはいえ、そのデーモンビーストは全長100m以上はあると思われるが、その巨体に似合わず、移動速度は速く、徐々に距離が詰められていき、尻尾が再び襲い掛かってきたその時、頭上からドリルのように地中を掘り進んだ何かが現れ、剣のようなもので尻尾を突き刺し、デーモンビーストは身動きが取れなくなり、現れた謎の存在に疑問を持ちながらも、好機と見たラルドはヘレナや少年を連れて線路に沿って出口に向かって走り続けた。

 ようやく地上から出た後、デーモンビーストは尻尾から先に地上に現れ、遂に地上でその全貌を現し、同時に先程地中に潜ってデーモンビーストを攻撃した謎の存在も地上に姿を現した。現れたのはデーモンビーストではなくASであり、中東で艦を襲った正体不明機とは全く違うもので、両腕にダイヤモンドのような光沢をした巨大な双剣をシールドと共に両腕に装備し、頭部は何処と無くセラヴィムに似た系統のようなものだった。

 その姿にラルドは見覚えがあるようだったが、それは紛れもなく、謎の潜水艦の砲撃を受けた際にヘレナと共に自分を助けた機体だった。


 「あの機体って…」


 デーモンビーストは尻尾で正体不明のASに襲い掛かったが、そのASは瞬時に避け、一瞬の内に背後に周り、双剣をその背中にブッ刺した。しかし、デーモンビーストにはそれほどのダメージは無く、尻尾で謎のASを払いのけ、森の中に突き跳ばれてしまった。

 尻尾の頭部は尚も襲い掛かったが、謎のASは直ぐ様、体勢を変え、先程の瞬時に移動するその凄まじい機動力でデーモンビーストの胴体の目の前にまで来た。デーモンビーストは黒と緑が混ざった謎の液体をASに向けて放ち、ASはそれらも全て、謎の液体が当たった地面が溶解していった。

 それはバジリスクに似た溶解液ではあったが、毒も含まれているようだった。溶解液から避けたASはデーモンビーストの足元に入り、双剣で複数あるムカデの足やその身体を斬り裂きながら、足元を通り、頭部に乗ってその脳天を双剣で突き刺そうとしたが、尻尾によってそれが防がれ、その隙を狙って溶解液を発射してASは双剣をシールド代わりにして防いだが、その双剣はネバッと付いただけで全くの無傷だった。

 しかし、その溶解液が防がれるのはデーモンビーストにとっては想定内らしく、巨大なクワガタのような顎でASを捕らえた。ASはそこから脱しようと抗ったが、顎の力が強力で脱出は困難かと思われたが、ASは突然、パワーを上げると巨大な顎を簡単にへし折り、内1本を緑色の腹に突き刺し、片腕の剣を引っ込めて取り出したスナイパーライフルで腹を撃ち込み、そこから溶解液が流れ、デーモンビーストは苦しみ出した。

 腹から溶解液が流れたことによって、デーモンビーストは徐々に弱るようになっていったが、ASを完全に破壊するべく尻尾で襲い掛かるも、ASは取り出したスナイパーライフルを引っ込めて再びラッチを回転させてブレードを展開し、尻尾の頭部を一刀両断した。

 しかし、頭部を失っても尚も襲い掛かり、ASを粉砕しようとしたが、それらも全て受け止められ、更にへし折ったもう1本の顎を投げつけ、デーモンビーストの頭部に突き刺さった。

 その様子に呆気に取られる中、少年が何かを感じ取ってその場から離れると、それに気付いたヘレナはその後を追った。


 「あ、待って!」


 先端を失いながらも尻尾を鞭のようにして攻撃するデーモンビーストだが、ASはその尻尾を双剣で斬り落として徐々に短くなり、遂に完全に斬り落とされると、腹から溶解液を噴き出しながら、最後の力を振り絞ってその巨体で突進してきたが、ASは地中に掘り進んだのと同様に双剣を突き出し、錐揉み回転しながら突進してくるデーモンビーストの頭部目掛けて突っ込むと、その頭部を胴体ごと貫き、緑色の血で血まみれになったASが巨大な穴が開いたデーモンビーストから現れ、デーモンビーストは完全に絶命した。

 ASの圧倒的なスペックにラルドは言葉も出せない状態にいたが、気付くと周囲にはヘレナと少年の姿はなく慌てて2人を探し、森の中に入っていった。デーモンビーストを倒したASが後ろを振り向くとラルドたちの姿は消えており、その様子を見るとその場を後にした。


 To be continued

 次回予告


 謎の機体によって助けられるも、ヘレナや少年とはぐれてしまったラルドたち、2人を探しに森の中を彷徨った。そんな折り、少年を追ったヘレナの前に謎の黒い男が現れ、ヘレナは少年と共にその音に誘い込まれるとそこは不気味な森だった。


 次回「ンガイの森」その誘いは少女を破滅へと導く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
新たなデーモンビーストの恐怖がじわじわと迫ってくる感覚に圧倒されました。そんな絶望的な状況の中で現れた謎のASの存在が、物語に新たな色を付け加えた気がします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ