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Episode12「破壊の牙」

 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。

 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。

 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。

 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…

 ヤマトの乗るロバストハンターがギラガスを討伐する2時間前、ベトナム。チベット同様、ここでも反連合国の抵抗勢力が活動しており、連合国軍による鎮圧に対し、徹底抗戦を掛けていた。


 「第一防衛ライン、突破されました‼」


 「どうなっている⁉ 敵の戦力はどれぐらいだ?」


 「確認出来ているのは1機だけです!」


 「1機だと⁉ たった1機だけでここまで苦戦されているのか!」


 「それが…敵のASの性能がこちらの予想を越えるもので…」


 「まさか、敵の新型か⁉ チベットの同盟組織が全滅し、死守していた例の新型機も行方不明なこの状況、今の我々には連合国軍に対抗出来る戦力はない…かといってここが奪われれば、インドや東南アジアにある本拠地も更に危うくなる…何としても守り抜くのだ‼」


 「駄目です‼ 敵のASの戦闘力余りに未知数です!」


 「最終防衛ライン突破されます‼」


 「何⁉」


 その時、反連合国の抵抗勢力が守る指令室の窓の目の前に連合国側機体が現れ、腕のブレードでそれを両断し、1機だけで一瞬の内に壊滅させてしまった。ベトナムの反連合国の抵抗勢力を壊滅させたのはルシファロイドだった。


 「任務完了…」


 その後、コクピットにいるクトラの元に通信が入り、


 「ブラッディ特務二等兵、聞こえるか? 状況を説明しろ。」


 「こちら、ブラッディ特務二等兵。 目標は完全に壊滅した。」


 「ご苦労! すぐこちらに戻れ。次の命令があるまで待機しろ!」


 「了解…」


 指令を受けたクトラはすぐにその場所に向かっていき、通信の相手は香港にある北京軍前線基地の司令官だった。

 香港は清帝国時代に起きたアヘン戦争によってイギリス領となり、パラディウス家の別荘を初めホテップ社に関わる施設も建築され、それ以来、ウー家との関係も深まっていた。

 地球圏連合国軍によって再制圧され、現ウー家の当主にして総督に就任したシェン・ウーによってチベット及びインドや東南アジアを中心に活動する自警団によって結成された反連合国の抵抗勢力によるテロ鎮圧のため、パラディウス家の別荘を北京軍の前線基地に改装し、北京軍最大の軍事基地となっていた。


 「それにしても、我々が多少手こずっているテロ鎮圧の助っ人として用意した人材とはいえ、たった1機でそれも数十分で壊滅させるとは…総督は一体何処であんな機体と人物を用意したのだ⁉」


 「何でも、総督の昔馴染みであるヨシフ・ブラッディ技士長の息子だそうです。そしてあの機体も技士長自ら設計した新型機とのこと。」


 「ブラッディ特務少佐のだと? 特務少佐はあの小僧に一体どんな教育を…」


 「そこは企業秘密って扱いらしいですが…」


 「司令、インドに潜入している偵察部隊から、映像が届きました。」


 「映像だと? 繋げ!」


 繋いだ映像には、中東の砂漠でラルドたちを襲撃した正体不明機が飛行していた様子が映し出されていた。


 「この機体は…」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ヤマトがロバストハンターと名付け、自ら搭乗した鹵獲対象の機体に搭乗し、ギラガスの討伐に成功した後、マッカーシー率いる護衛部隊に伴ってこの事をウー総督に伝えるべく北京に帰還したラルドたちだったが、既に北京は円明園の爆破テロで騒いでおり、北京総督府にはマスコミが押し掛けている始末だった。

 マッカーシーとラルドたちははやむなく裏口を通って総督府に入り、ウー総督に会おうとしたが、ウー総督はラルドたちが北京に帰還する前にテロへの報復としてインドや東南アジアを中心に活動しているテロリスト鎮圧のために全ての軍を香港の前線基地に向かわせ、自ら指揮を取ると声明を発表し、マッカーシーとオクタヴィスはその留守を預かるタオに会い、状況を伝え、同時に北京での状況を聞いた。


 「まさか、そんなことが…ヘレナ嬢はどうなったのですか?」


 「幸い、無傷で済んでいますが、爆破テロの被害を受けたショックで個室に閉じ籠ったままとなっております。」


 「それにしても、テロ鎮圧のために全ての軍を出動させた上に総督自ら指揮を取るとは…本国の評議会は御存じなんですか⁉」


 「御安心を…声明発表前から既にこの旨を評議会に伝え、承認を得た後、議長命令で軍を動かしたそうです。」


 「それにしても、総督が不在なんて…」


 「総督は就任前から軍に所属しており、就任後も北京軍の総司令を兼任しております。だから、総督が自ら指揮を取られた場合は私が総督代理を務めております。」


 「しかし、全ての軍を移動させては、こちらには護衛がいないのではありませんか?」


 「それも御安心を…足りない分は財団支部が提供してくれますから。」


 「しかし、特務大佐。これからいかが致しましょうか? 予定通りなら、北京訪問後は本国の首都に…」


 「いや、マスコミが総督府に押し掛けている以上、下手に動くことは出来ない。それに我々は中東での戦闘で部隊の大半を失っている上に北京軍がここにいない以上、今、首都に帰還して再びテロリストとデーモンビーストの襲撃を受けたら、今度こそ終わりだ。ましてや、ヘレナ嬢があの有り様なら尚更…」


 「既にこの事は本国の議長にも伝えております。命令があるまでこちらで待機しろと指令を受けましたので、暫くはこちらで…」


 「やむを得ん、それまで我々も待機しよう。オクタヴィス特務大尉、デナム大尉もよろしいか?」


 「仕方ありません。」


 「異論は無いが…ところで総督代理とやら、1ついいか?」


 「何でしょうか?」


 「その例の爆破テロは本当にテロリストの仕業ですか?」


 「ええ…現場で発見した爆破物は5年前の爆破テロと同じものが使用されてたもので間違いないかと…」


 「内部の手による可能性は考えられなかったのですか?」


 「それはどういうことです?」


 「デナム大尉、それぐらいにしろ! まさか、総督を疑っているのか⁉」


 「いえ…ただ、内部に敵がいるのではないかと思って…ご無礼を掛けたのなら、今の言葉は取り消します。」


 デナムとマッカーシーの様子を見て、オクタヴィスは納得いかなそうな表情と何かあるように疑問視した。


 


 


 


 


 同時にラルドとヤマトも円明園爆破テロ後の状況をマルコから聞いた。


 「それで、ヘレナは…」


 「あの爆破テロのショックで個室にずっと閉じ籠ったままなんだ。やっぱりあの時のトラウマを思い出したみたいのようだ…」


 「あの時のトラウマって…?」


 「実は、ヘレナの母、現会長夫人のエリザベス・ロックフェルドさんは3年前に爆破テロで殺されたんだ…」


 「ヘレナのお母さんが⁉」


 「3年前、デーモンビースト殲滅のために連合国に加盟していない地域に活動している自警団を取り込もうと評議会が何度も加盟を求めたけど、一向に応じなかったため、一番勢力が大きい中東の自警団を取り込めば、他の自警団もそれに応じるとして議長と財団会長が交渉のために自らエルサレムに赴いてその時にヘレナの家族も同行してたけど、その時に起こった爆破テロに巻き込まれ、エリザベス夫人がヘレナを庇って亡くなってしまったんだ。思えば、あの時から、反連合国のテロリストとの戦いが始まったんだよな。」


 「どういうこと?」


 「爆破テロに激怒した議長と財団会長が報復のために徹底的なテロ鎮圧を軍に命じ、それ以来、自警団は反連合国のテロリストとして活動するようになったんだ…」


 「そんな…おかしいよ!」


 「ラルド…?」


 「だって僕たちの本当の敵はデーモンビーストじゃないか! なのに何でまた人間同士が争わなきゃいけないんだよ‼ 僕たちは…軍はデーモンビーストの脅威から守るために戦っているんだよ! なのに何でテロを起こして憎しみを広げるようなことをするんだよ…そんなのおかしいよ…」


 ラルドの肩をヤマトは優しく触れ、


 「何も、自警団の人たちが全てそういう人ばかりじゃない。キールだってそうじゃないか? おまえと同じ孤児を必死で守って、だから、あの機体を託したんじゃないか⁉」


 「う、うん…ん? ヤマト、どうしてキールさんのことを…?」


 「えっ…いや、ただ、何となく…」


 それを聞いたラルドは不思議そうにヤマトを見た。


 「それより、マルコ。今の話だが…」


 「何?」


 「爆破テロに使用された爆破物は5年前に使用されたものと同じものだったんだろう? それなら、犯行は中東のテロリストのはずだ。それなのに何故、インドや東南アジアに活動しているテロリストの犯行だと断言出来るんだ?」


 「インドや東南アジアに活動しているテロリストが中東のテロリストと繋がっていることが判明したんだ。香港前線基地でも、俺たちを襲ったのと同じ正体不明機がインドに向かって飛行していた映像が取れているらしいし…」


 「しかし…円明園と言えば、総督府同様、24時間体制で護衛部隊が警護に当たり、しかも出入りには必ず、IDの確認と顔及び指紋認証、荷物の検査等、かなり厳重に行われているはずだ。 

 とても外部による犯行とは思えない。なら、内部による者の犯行の可能性は十分考えられるはずだ。何故、そう考えられなかったのだ?」


 「いや、俺が知っているのはニュースで言われていることぐらいだから、そこまでは…ていうか、何でおまえがそこまで事細かに知りたいの?」


 「あっ…いや、連合国内部には反財団派の者がいるだろう? もちろん他にも評議会政府や財団に反抗する勢力も少なくはないから、もし、内部による犯行だったら、それこそ、ヘレナの身が…」


 「考えすぎだよ! 第一そうだとしても、そこまでは出来ないでしょ?」


 「そうだったな…悪い。気を悪くしたなら、今の話は忘れてくれ。」


 その話を聞いたラルドは不思議そうな表情をした。


 


 


 


 


 


 


 


 


 中東の砂漠の地下の何処かにあるサンドシャークの基地、そこの司令室で隊長と思われる人物が通信を取っていた。


 「わかりました、では、そのように手配します。」


 コン、コン、


 ノックの音がすると、隊長らしき人物は通信を切り、


 「入れ。」


 「隊長、例の女が持ってきたガーフェラのサンプル、思った以上に使えます。これで、ガーフェラの音波を応用した兵器と機体の開発も出来そうです。」


 「それはご苦労。」


 「ところで、隊長。いくらサンプルを手に入れることは出来たとはいえ、財団の令嬢は捕らえることは出来ず、北京入城を許してしまったんだぞ! おかげで俺たちは北京に侵入することは出来ないし…」


 「無理もない、あの状態なら、俺でもそうしてた。あの状況でサンプルを手に入れただけでも大したものだ。」


 「隊長はあの女を信用しすぎじゃないか⁉ あんな賞金稼ぎに連合国を倒すという俺たちの使命に共感出来ると思うのか⁉」


 「今の我々は連合国に対抗するための機体も戦力もない。もっと同士が必要だ。特にインドと東南アジアに活動している自警団は北京軍に手を焼いているはずだ。だから、あの女に交渉役として連れていかせた。そうすれば、あの令嬢を捕らえるチャンスは生まれるはずだ。」


 「けどよ! あの女を向かわせるなんて買い被り過ぎじゃないか?」


 「信用してるのはあくまで腕だ。それにあの女は交渉術も上手いと聞くからな。」


 


 


 


 


 


 


 


 ウー総督率いる北京軍の機体は上海の街中を行進していき、民衆はそれを歓迎していた。ウー総督は参謀と思われる人物と共に護衛部隊に守られている装甲車に乗っていた。


 「凄い歓迎ですね!」


 「当然だな! 今回のテロに市民も激怒しているからな。それに応えるために私自ら指揮を取ってるのだから。」


 「それにしても厄介なことになりましたね。あのテロでヘレナ様が閉じ籠もったままと聞いたらしいですが、大丈夫なのでしょうか? 議長選も迫ってますし、もし、これで敗れでもしたら…」


 「楔は打っておく。だが、今はテロリストの鎮圧が先だ。」


 「わかりました。」


 行進する中、1人の兵士が海辺を見て何か違和感を感じた。


 「どうした?」


 「いや…今一瞬、海に何かいたような…」


 「気のせいだろう。それより、グズグズするな! テロリストの鎮圧が先だ。」


 「あ、ああ…」


 その違和感は的中するように海中に巨大な何かが潜んでいて、機会を伺っていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 北京総督府で待機を命じられたラルドはヘレナのことが心配になってヘレナのいる個室に行こうとしたら、個室の前にノアが立ち止まっていて、ノックをしようとしたが、躊躇してそれを止め、そこから立ち去っていった。

 それを見ていたラルドは今、ヘレナのところに行っても慰めにならないと考え、今度はノアのことが心配になってその後を追っていった。

 ノアはベランダのところに立ち、悲しげな表情で夜空を見ていた。その様子をラルドがどう話し掛ければいいかわからず、見詰めているしかなかった。やがてノアがその気配に気付き、ラルドの方を見て、ラルドはあわてふためいた。


 「ラルド?」


 「あっ、いや、何でもないよ! 別に邪な目で見ているわけでは…」


 「ヘレナさんが心配なのね…」


 「やっぱり気付いてたんだね…僕も正直どう話し掛ければいいかわからなくて…」


 「何処で生まれたのか、本当のお父さんやお母さんもわからない私をあんなに温かく迎え入れてくれて、あんなに明るく優しくしてくれる人なんてヘレナさんが初めてだった…

 でも、あんなに急に落ち込んで閉ざしてしまって、私どうすればいいかわからなくなった。あの人を救いたいのに何も出来ない私なんてやっぱり無力なのかな…」


 「そんなことないよ! 人は誰だって自分の力では出来ない時やどうしようもない時だって、僕だって何も出来ない時はいつもキールさんに頼ってたんだし…」


 「そのキールさんって人、ラルドにとって大切な人なの?」


 「こう見えても僕も元は孤児で、お父さんやお母さんの顔も知らず、記憶もなく放浪してた僕を拾って生きる術を教えてくれた人がキールさんだったんだ。今の僕にとってはキールさんが本当のお父さんなんだ。」


 「そう、ラルドもなのね…」


 「ごめん! 気を悪くするつもりじゃないんだ。」


 「気にすることはないわ。ただ、私と同じ立場でもちゃんとお父さんのような人がいるのが、何だか羨ましくて…」


 「そんなことないよ。こんな僕でも結局、キールさんがいなきゃ、何も出来なかったし、そのオカゲで、キールさんが…」


 「どうしたの? そのキールさんに何かあったの?」


 「いや、これ以上は言えない。それを言っちゃうと、ノアを悲しませてしまうから…」


 「…?」


 「余計なこと聞かせてしまったね。僕はここで失礼するよ。(強くなるんだ…誰の手を借りず、自分の手で皆を守れるように…次の出撃が来たら、今度こそ…)」


 


 


 


 


 


 

 ウー総督率いる北京軍が去った後の上海、ここは総督府が置かれている北京同様に復興されていて、市民も平和に暮らしていた。そんな中、市民の1人が海岸沿いで釣りをしていると何か違和感を感じた。


 「ん? 何か海が盛り上がっているような…」


 その言葉通り、突然、海が盛り上がって巨大な何かが現れ、海岸沿いにいた人たちはその津波に巻き込まれ、飲み込まれた。海から現れたのはワニのような頭と無数の牙が不規則に並び、不気味な顔をし、強固な鎧のような表皮と重厚感ある体躯をした90m以上のデーモンビーストだった。

 突然現れた巨大なデーモンビーストでパニックになる上海の市民たち。しかし、巨大なデーモンビーストは構わず、逃げ惑う市民たちを踏み潰しながら街を破壊していった。


 


 


 


 


 


 


 

 北京総督府、本国の評議会からの命令が来るまで、マッカーシーとオクタヴィスは引き続き待機していた。


 「ヘレナ嬢の様子は?」 


 「相変わらずだそうです。」


 「怪我しなかったのは幸いだが、これは不味いな…議長選がもうじき迫っているというのに、このまま続いたら、議長選に出られない可能性も出る。そうなれば、ヘレナ嬢の支持も…」


 「議長や副議長からも、これに対する対策はまだされてないのでしょうか?」


 「それもまだだ。今回のテロでヘレナ嬢の精神にかなりのダメージを与えたのは議長も想定していなかったようだ…」


 「ではやはり、今回の爆破テロの主犯の目的はヘレナ嬢の殺害ではなく、彼女の精神を攻撃するためと…特務大佐も考えているのですか?」


 「私もそう考えている。仮に殺害が目的だとしても、あれだけの護衛と現総督の代理であるタオ・ヤンが優れた体術の持ち主だということを知らないとは思えないだろう。何せ、彼女はウー総督同様、軍にも所属し、その部下でもあったと聞く。」


 「だとしたら、本当に外部のテロリストがやったのでしょうか?」


 「どういうことだ?」


 「さっき、デナム大尉が言ってたこと、私も気になっていたんです…外部の人間がやるにしても、北京での情報をかなり知る必要がありますし、そもそも外部の人間は立ち入りが不可能な程、厳重だと聞きます。であれば、出来るのは内部の人間かあるいは外部のテロリストに情報を提供している内部の者がいるとしか…」


 「では、反財団派の犯行だと…確かに動機は申し分ないが…」


 「それもありますが…」


 「何だ? まだ、何かあるのか?」


 「5年前の事件のことですが…」


 「それがどうした?」


 「ポイントネモ…彼処で起こっている正体不明の現象及び彼処に何かあるということを調査させるための前線基地を建設する計画を進め、その前線基地の建設に適した場所である日本を制圧するために統制連合艦隊の部隊が派遣されたが、突然、その部隊が消息を断ち、帰還した生存者が1人もいなかったため、それ以来計画が中止されたそうですね?」


 「ああ、それがどうした?」


 「公式では部隊が未確認のデーモンビーストに襲撃されたため、それに対抗するための戦力を整えるための新型開発に本国の評議会がウー総督に命じたそうですが、確か、あの部隊を派遣させた上層部の中には総督就任前のウー総督もいたのですよね?」


 「何が言いたい?」


 「あの事件に関する詳細は内密なことが多い。それより、統制連合艦隊の者からあの時の決定に反対する者が多く、それがキッカケで反財団派の動きが活発したとも聞きます。

 あの事件の真相がわかれば、今回のテロを起こした主犯の目的もわかるのでは? それにあの事件で消息を断った部隊の中には確か、特務大佐、あなたの…」


 「それ以上は何も言うな‼ あの事件のことを思い出さないでくれ…」


 マッカーシーの怯える様子を見て、オクタヴィスはそれ以上は何も言わなかった。その時、突然、バタバタし、1人の人物が執務室に向かって廊下を走っていった。

 それに気付いたマッカーシーとオクタヴィスはそれについていき、執務室に入るとさっきの人物がタオにあることを話していた。


 「わかった…」


 「何かあったのですか? 総督代理。」


 「どうやら、面倒なことが起こったようだ…」


 「面倒なこと?」


 「上海に90m超のデーモンビーストが現れ、僅か30分足らずで壊滅し、その後、海に潜った後、この北京に向かっているとのことだ。」


 「何だと⁉」


 「待ってください! それなら、何故、そのことを香港の前線基地に向かっている総督に報告しないのですか?」


 「もちろん、そのつもりだった…だが、妨害電波によって総督と通信が取れないのだ。」


 「妨害電波だと⁉ 何故、このタイミングに…それに一体誰が…?」


 「早急に原因追求と復興を急いではいるが、デーモンビーストがこちらに到着するまで間に合わないかもしれない。」


 「そのデーモンビーストが北京に到着するまで、後どれぐらいなんですか?」


 「この速度だと、3時間ぐらいと推定されます。」


 「3時間だと⁉ クソッ、それだけの時間では仮に今から香港にいる総督に連絡出来ても、とても間に合わない…」


 「特務大佐、私がここに残っている部隊で奴を食い止めます! その間に特務大佐は香港にいる総督にこのことを…」


 そこに割って入るかのようにデナム大尉が執務室に入った。


 「いや、敵が北京が入ってからでは遅いです。私とハイライト二等兵が奴を足止めし、奴を討伐します! ギラガスを討伐した鹵獲機と私のタイタロスであれば、討伐はそう難しくはないでしょう…」


 「ハイライト二等兵がロバストハンターと名付けた例の機体か…確かにあの機体の性能の高さは知っているが、侵攻しているデーモンビーストの戦力が不明な以上、デナム大尉とハイライト二等兵の2人だけで倒せるとは考えにくい…」


 その時、タオが口を開き、


 「でしたら、セラヴィムも出撃させたら、どうでしょうか?」


 「セラヴィムを? 解析は終わっているのですか⁉」


 「総督によりますと、あの機体はパイロットの脳波に異常をきたすバグがあるとのことで、香港に向かわれるまでに既に早急に改良されたと聞きます。ですから、問題ないかと…」


 「バグ⁉ あの暴走のような奇怪な異常は元からあったシステムではなく、バグだったと…」


 「私が聞いた限りでは、そういうことになってますが…」


 「特務大佐…」


 「総督代理、北京にはどれぐらいの部隊が残ってますか?」


 「必要最低限として護衛部隊を残してはありますが、あくまで都市の護衛であって、デーモンビーストを迎え撃つ戦力になるとは言えないが…」


 「特務大佐、特務大尉、やはり、ここは私とハイライト二等兵が奴を迎え撃ちます! そして、特務大佐と特務大尉は万が一の場合に備え、護衛部隊と共に北京の防衛を…」


 「それはいいのだが、何処で奴を迎え撃つのだ?」


 「方向から考えると、奴を迎え撃つには山東半島が適任です。私とハイライト二等兵はそこに奴を誘い込みます!」


 「勝算はあるのか?」


 「私に全ての指揮を任せれば…」


 マッカーシーは一度考え込んだが、腹を括り、


 「わかった、指揮はお前に任せる。だが、決して無理はするな。」


 「心得ております。」


 「では、特務大佐。オルスター特務二等兵は?」


 「改善してると言っても、あの機体には不確定要素が多すぎる…それに彼が出てしまってはヘレナ嬢の護衛がいなくなる。」


 「ちょっと待ってください。それじゃ、ブラッディ特務二等兵は…?」


 その質問にタオが答え、


 「彼は別任務です。」


 「⁉ 別任務?」


 「彼の実力は北京軍に必要な人材だったので、総督にみかねて北京軍が苦戦しているある任務に当たってこちらにはいません。」


 「ある任務とは何だ?」


 「それは私の口からは言えません。」


 「…わかった。デナム大尉、出撃を命じる!」


 「わかりました。では、ハイライト二等兵にすぐ出撃命令を…」


 


 


 


 


 北京総督府にある倉庫で、マルコはロバストハンターの機体調整と更なる武装化を行い、その横でヤマトが見守っていた。


 「どうだ?」


 「これは凄い機体だね! マグマにも耐えられる程の装甲なんて見たこと無いし、オマケに高火力のバスターアンカーなんて装備してるなんて、連合国軍でもこんな機体、1機もないよ!」


 「じゃあ、こいつには武装は必要無いのか?」


 「どうかな…確かにこれは高性能だけど、重量がかなりのネックになってるから、機動性はそこまで期待できないし、長期戦には余り向いてないから、短期決戦でいく方が良さそうだね。

 だから、この機体にはレンジアックスやサブマシンガン、バスターライフルまで装備させて遠距離射撃にも対応出来るようにはした。最も他にも武装増やしたり、改善する部分はあるけど、北京軍がほとんど出て、財団の北京支部を扱っているウーさんが不在だから、今出来るのはこれぐらいかな…」


 「ありがとう。後はパイロットの技量でカバーする。」


 「でも、あんまり無理しないでね。いくら頑丈な装甲だからといって派手に扱うとこれもただじゃ済まないよ。」


 「問題ない。お前が思う程、俺は無謀なことはしない。」


 「まあ、ラルド程、無茶はしないとは思っているけど…」


 「それはそうと、ラルドは?」


 「個室にいるか、部屋中をウロウロしたりしてるよ。やっぱりヘレナがあの状態だから、どう答えたらいいか、わからなくなってるかもね…俺もどう声を掛ければいいか…」


 「そうか…」


 そこにデナム大尉が立ち入り、


 「ハイライト二等兵!」


 「デナム大尉。」


 「上海に現れたデーモンビーストが破壊活動を行い、この北京に向かっているそうだ。直ぐにこの機体に乗って私と共に山東半島に行って欲しい。そこで奴を迎え撃つ!」


 「わかりました。直ぐに出撃します。 早速装備してくれた武器が使えそうだな。」


 「でも、いきなり実戦で使えるかどうかは…」 


 「無いよりはマシだ。ありがとう!」


 「ラルドの分まで頑張れよ!」


 「元よりそのつもりだ。」


 しかし、その様子をたまたま通り掛かったラルドが目撃し、直ぐ様、マッカーシーの元に行った。


 「お願いです! マッカーシー特務大佐! 僕も出撃させてください‼」


 「駄目だ! いくら改善されたといっても、あの機体は問題が有りすぎる。それにお前まで出撃したら、ヘレナ嬢の護衛が誰がやるんだ⁉」


 「そうだけど…でも、このままじっとしているだけなんて嫌だ‼ 何かを守れる力も無いんじゃ、ヘレナや街の皆だって守れないよ!」


 「だが、もしまた、あの暴走になったら…」


 「いいでしょう。許可します。」


 「総督代理!」


 「総督不在の間、今、その決定権は私にあります。許可を出しましたのから、出撃してください。」


 「しかし! 危険が大きすぎます!」


 「特務大佐、ここは彼を信じましょう。」


 「オクタヴィス特務大尉まで、何を…?」


 「確かに、リスクはありますが、彼は我が特務隊の者です。いつまでも、このままにしておくわけにはいきません。

 ラルド、セラヴィムの問題は解決したが、まだ完全とは言えない…それでも行くか?」


 「行きます! いえ、やってみせます‼」


 「よし、では、オルスター特務二等兵にも出撃を許可する。特務大佐、ヘレナ嬢の護衛は私がやります。」


 「わかってるな、アウダ・オクタヴィス特務大尉。もし、彼に何かあれば、その責任は取れるのか?」


 「私が保障します。」


 「わかった。ラルド・オルスター特務二等兵、直ちに出撃し、スカル・デナム大尉の指揮に入れ!」


 「はい、ありがとうございます!」


 マッカーシーの許可も得たラルドはデナムやヤマトと共に自身の機体であるセラヴィムに乗り込み、それぞれ発射ポッドに乗り込み、発射シークエンスに入った。


 「スカル・デナム、タイタロス出撃する!」


 「ヤマト・ハイライト、ロバストハンター出る!」


 「ラルド・オルスター、セラヴィム出ます!」


 発射ポッドが出ると、タイタロス、ロバストハンター、セラヴィムは山東半島に向かっていった。

 ラルドがデナム大尉やヤマトと共にデーモンビーストを迎え撃つために山東半島に向かう中、ヘレナは未だに個室に閉じ籠っていた。


 「御母様…」


 しかし、その個室の扉の前に1人の少年が立ち、不敵な笑みを浮かべた。


 


 


 


 


 


 


 山東半島に到着し、住民の避難を完了させたラルドとヤマトはデナムの作戦の詳細を聞いていた。


 「目標のデーモンビーストは海を潜行しながら北京に向かっている。奴が北京に向かう航路は2つある。1つはこのまま海を潜行しながら山東半島を遠回りするルート、2つ目は山東半島に上陸して地上を進み、再び海に潜行して最短で向かうルート。

 奴がどのルートを通るか定かではないが、我々は奴を山東半島に上陸させて、そこで奴を北京に上陸させる前に討伐する。

 そして作戦の内容だが、奴が山東半島に近付き、上陸せずに海を進もうとしたしたところを私とオルスター特務二等兵が遠距離射撃で奴の注意を引き付けて、奴を上陸させ、その後、ハイライト二等兵が上陸した奴と戦い、私とオルスター特務二等兵はその援護に回る。

 現状、我々の戦力で一番高性能はおまえのロバストハンターだ。奴の戦力は不明とはいえ、それでも、ギラガスを討伐したロバストハンターなら、奴に対抗出来る。つまり、この討伐作戦はおまえに掛かっているということだ。」


 「無論、そのつもりです。」


 「そして、オルスター特務二等兵。おまえは私と共に奴の注意を引く役割だ。」


 「はいっ!」


 「だが、決して無理はするな。セラヴィムの不安要素は取り除かれたとタオは言っていたが、まだ油断は出来ない。もちろん、私もサポートはするが、出来るだけ正面で戦うことは避けるように…」


 「了解しました!(今度こそ…)」


 


 


 


 


 


 


 


 


 ラルドとヤマトがデナム大尉と共に山東半島でデーモンビーストを迎え撃つ中、北京軍率いるウー総督はインドや東南アジア中心に活動しているテロリストの戦力を測るために本拠地のあるシンガポールに偵察隊を派遣していた。


 「偵察隊からの報告はまだか?」


 「何度も通信を呼び掛けていますが、応答がありません。」


 「そろそろ、連絡が来てもいいはずなのだが…」


 「総督! もしや、既にテロリストに全滅させられたのでは⁉」


 「その可能性は捨てきれない…ヘレナ嬢を狙ったあの悪質なテロに我等が気付くことぐらい、連中も把握しないはずはないだろう。」


 「でしたら、ブラッディ特務二等兵をもう一度出撃させましょうか? 彼は先程、ベトナムのテロリストも鎮圧した程ですし…」


 「やれやれ、ブラッディ特務少佐の大事な息子にまた仕事を押し付けるのは癪だが、彼に任せた方が一番の得策のようだな…ブラッディ特務二等兵を直ぐにこちらへ…」


 「総督!」


 「何だ?」


 「アウダ・オクタヴィス特務大尉が面会を求めていますが…」


 「面会だと? 作戦任務中に一体、何用だ? それに何故、通信ではなく、わざわざこちらに来た?」


 「いかがなさいましょうか?」


 「取り敢えず連れてけ! ただし、話は手短にな。」


 香港前線基地に入城したオクタヴィスは北京軍が香港前線基地に向かっている間の旨を伝えた。


 「では、偵察隊との通信が取れないのも、その妨害電波によるものか…」


 「総督! もしや、その妨害電波とデーモンビーストによる襲撃はテロリストによるものでは⁉」


 「クソッ! テロリストめ! そこまでやるか‼」


 「総督! 直ちに軍を北京に引き上げましょう。」


  「いや、おそらくそれがテロリストの狙いだ。この混乱に我々が北京に帰還した隙に本拠地をシンガポールから移すつもりだろう。だとすれば、ここでテロリストを逃がすわけにはいかない!」


 「しかし! 北京をデーモンビーストに壊滅させられたら、元も子もありません。ヘレナ嬢の身にもしものことあれば…」


 「ならば、テロリスト鎮圧のためにここに残す部隊と北京に戻る部隊を決めなければならない!」


 「ところで、ウー総督。ブラッディ特務二等兵は何処へ? 総督の元で預かっていると聞きましたが…」


 「任務が終わってここにいるが…」


 「でしたら、お返し頂けないでしょうか? 彼は我が特務隊の者です。デーモンビースト討伐の任務に当たらせないでしょうか?」


 「彼をですか?」


 「総督、彼の実力は織込み済みです。彼1人だけでも十分な戦力ですので、こちらの戦力をそこまで削りはしないと思います。」


 「わかった。オクタヴィス特務大尉はブラッディ特務二等兵と共にデーモンビースト討伐に向かえ! 我々は引き続きテロリストの鎮圧に当たる。」


 「了解しました!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 待機して1時間後、海中に巨大な背中の刺を出しながら泳いでいくデーモンビーストの姿が見えてきた。


 「よし、来たようだな。」


 デーモンビーストの姿が見えると、タイタロスは機体より巨大なバズーカを構え、更に背中にはセラヴィムのブレードメイスより巨大なソードを装備していて、それを見たラルドは唖然としていた。


 「えっ…? デナム大尉、何ですか? その装備…」


 「タイタロス専用の装備、メガバズーカとバスターアックスソードだ。」


 「タイタロス専用の武器? でも、今までそんな武器って…」


 「今までが緊急時の出撃同然だったこともあって、この装備の調整は出来なかったが、北京にいる間、マルコに頼んでようやく調整が終わった。これでようやくコイツの性能を発揮できる。」


 「(思ったよりデカい…重くないのかな?)」


 「来るぞ! 気を引き締めろよ。」


 「はいっ!」


 メガバスターを装備したタイタロスとライフルを構えたセラヴィムはそれぞれ砲撃の体制を取り、海中のデーモンビーストは陸に向かって進んでいき、旋回する様子は無かった。


 「海中を進まず、上陸して地上を進んで再び海中を通るルートを選んだか…わざわざ遠回りしてまで行く程、知性も低くはないようだな。ま、こちらとしてはむしろ、好都合だが。」


 上陸寸前まで来ると、デーモンビーストは海中から姿を現すと、それは巨大なワニのような顔と不規則に並んだ巨大な牙、屈強な胴体とどっしりとした足、刺々した背中と尻尾、そして表皮は溶岩のようで2足歩行をした95mの巨大なデーモンビーストだった。


 「コイツは…とんでもない大物を引いたようだな。オルスター特務二等兵! 気を引き締めていけ‼」


 「はいっ!」


 タイタロスは挨拶代わりにメガバスターを1発、デーモンビーストの顔にお見舞いし、デーモンビーストは少し怯んだが、特に痛がる様子はなく、こちらを睨んだ。

 タイタロスはメガバスターを装填している間、セラヴィムがライフルを撃ち込み、デーモンビーストはセラヴィムを見て少し笑みを浮かべたような表情をし、それにヤマトが気付いた。


 「ん?」


 装填した後、タイタロスは再びメガバスターを放ち、デーモンビーストの首に直撃させたが、デーモンビーストの表皮は全くの無傷でケロッとしていた。


 「思ったよりタフな奴だな…だが、むしろこういう相手を望んでいた。」


 タイタロスがメガバスターを装填している間にセラヴィムがライフルを撃ち込むサイクルを続けたが、デーモンビーストは構わず、近付いてきたが、その矛先はどちからかというとセラヴィムの方に向かっていた。それを見ていたヤマトは違和感を感じた。


 「変だな…アイツ、セラヴィムが狙いかのように進んでいるようだが…」


 タイタロスがメガバスターを何度も放つ内に、それが鬱陶しくなったのか、タイタロスの方に向き、放ったメガバスターを喰らうように口を開け、それがまともに口の中に入り、口内が爆発したが、デーモンビーストは見せびらかすように口を開き、それも全くの無傷だった。

 その後、デーモンビーストは向きを変え、セラヴィムの方に向かって近付いていった。セラヴィムは引き続き近付いていくデーモンビーストにライフルを撃ち込んだが、それをものともせず、近付いていき、セラヴィムに向かって咆哮すると目の前のデーモンビーストに似たような別の怪物の姿がラルドの脳裏に映った。


 「うっ…何だ? 今の…嫌だ…来るなぁ~‼」


 恐怖したラルドはデーモンビーストに背を向け、逃走してしまった。


 「おいっ! どうした⁉ オルスター特務二等兵!」


 その様子を見たヤマトはギラガスに襲われた時のことを思い出した。


 「やっぱり、アイツもラルドを狙っているのか…しかし、何故?」


 「クソッ! 方向がハイライト二等兵のいるところとは別の方に向かっている…一体、何故こんな時に取り乱したのだ? まさか、アイツは…」


 グオォ~‼


 「とにかく、奴の注意を逸らさねば…」


  タイタロスはデーモンビーストの矛先を変えるため、再びメガバスターを放ち、それに気付いたデーモンビーストは尻尾で凪払おうと襲い掛かってきた。

 タイタロスはメガバスターを捨て、それを受け止めるが、予想以上にパワーが高く、抑えるので背一杯で徐々に後退し、受け止めている両腕も悲鳴を上げた。


 「タイタロスはこういうパワータイプを想定した機体だが、コイツ相手にタイタロスはかなりキツイようだ…」


 両腕を離したタイタロスは瞬時に下に回ってそこから脱出し、取り出したバスターアックスソードで尻尾を突き刺し、腕を通じて角の電流を流したが、全く通用せず、デーモンビーストはタイタロスを踏み潰そうとした。


 「不味い!」


 それを見たヤマトはメガアンカーを放ち、デーモンビーストの注意を逸らそうとした。しかし、デーモンビーストはロバストハンターのいるところをチラッと見た程度で直ぐに目を逸らし、周囲を見渡し、セラヴィムを見付けると一目散に向かって進んでいった。


 「チィッ! やはり、アイツもラルド狙いか…しかし、何故だ? この前の奴といい、何故ラルドを狙う?」


 セラヴィムは慌ててライフルを撃ち込んだが、一切効果は無く、突き進んでいき、タイタロスもそうはさせじとメガバスターを放ったが、向きは変わらなかった。


 「クソッ! 作戦に支障が出るが、この際仕方ない!」


 ロバストハンターはメガアンカーの矛先をデーモンビーストではなく、地面に向け、砲撃するとその衝撃で跳びだし、デーモンビーストの顔にに向かって拳を1発ぶちかまし、デーモンビーストは転倒した。


 「大丈夫か⁉ ラルド!」


 「あ、ありがとう…⁉ ヤマト! 前‼」


 ラルドの叫びを聞いたヤマトが前を見ると、デーモンビーストは何事も無かったかのように立ち上がった。


 「アイツ、思ったよりタフだな。」


 怒り狂ったデーモンビーストはロバストハンターを踏み潰そうと襲い掛かり、ロバストハンターは持ち前の怪力でそれを受け止め、少し笑みを浮かべると尻尾で凪払おうとしたが、タイタロスはその尻尾を掴んだ。

 その隙に足をはね除けたが、デーモンビーストは転倒することなく、体制を立て直した。ロバストハンターはメガアンカーを放ち、後退させたが、それでも皮膚は全くの無傷だった。


 「ハイライト二等兵! 2人で行くぞ‼」


 掴んだ尻尾を離したタイタロスが合図を出すと、ロバストハンターはメガアンカーを放ち、タイタロスもメガバスターを放った。


 「どうだ?」


 爆煙からデーモンビーストの両腕が現れ、それぞれの腕でタイタロスとロバストハンターを鷲掴みにした。


 「ぐっ! コイツ、あの砲撃を喰らっても平気なのか⁉」


 タイタロスとロバストハンターはそれに抵抗して脱しようとしたが、デーモンビーストもそうはさせじと離そうとしなかった。


 「クソッ! 思った以上のバカ力だ…ならば…!」


 タイタロスはバスターアックスソードを取り出し、ソード型からアックス型に変形させ、デーモンビーストの腕に突き刺し、離すとそれを見たヤマトはロバストハンターのパワーで無理やり腕を引き離し、脱することに成功した。

 その後、相応でメガバスターとメガアンカーで砲撃を続けたが、デーモンビーストは怯まず、片足で思いっきり地面を踏むと地面が陥没し、タイタロスとロバストハンターはその衝撃で体制を崩してしまい、その隙を逃さず、尻尾で2機を凪払ってしまう。


 「ハイライト二等兵、大丈夫か⁉」


 「問題ありません! でも…」


 その時、目の前にデーモンビーストが腕の怪力で引き剥がしたビルの残骸を投げつけ、タイタロスとロバストハンターは迎撃しようとしたが、さっきの地面の陥没で体制が不安定なため、照準が合わなかった。


 「クソッ! これでは迎撃が出来ない。」


 更にデーモンビーストは隣のビルをその強靭な顎で噛み砕き、その破片を吐き出し、2機はその残骸と破片で埋もれていった。


 「不味い! これでは地面に埋もれてしまう…」


  タイタロスとロバストハンターが瓦礫の下敷きになったのを見たデーモンビーストはセラヴィムの方を向き、再びその矛先を戻して迫っていった。


 「うっ…来るな、来るなぁ~‼」


 迫っていくデーモンビーストに恐怖したラルドは取り乱して逃げしまい、デーモンビーストは執拗に追いかけ、セラヴィムは倒壊したビルの間に入りながら逃げてもデーモンビーストはそのビルの残骸を噛み砕きながら襲い掛かってきた。

 必死に逃げ回ったものの、徐々にラルドの体力が落ちていき、終いには足が動ける状態ではなくなっていた。やがて遂に追い詰められ、デーモンビーストは咆哮を上げながら、巨大な牙でセラヴィムを食らい付こうとしたその時、ラルドの脳裏に再び目の前のデーモンビーストに似ているが、それより更に巨大で凶暴な姿のデーモンビーストが都市を破壊の限り尽くしていく姿が映ると、セラヴィムは一瞬で姿を消し、デーモンビーストは周囲を見渡すと、セラヴィムは既に背後にいて、それに気付いて尻尾で凪払おうとしたが、それをブレードメイスで受け止めた後、セラヴィムはそれまでとは考えられない程の超スピードで避けた。


 「う、う~ん…大丈夫か? ハイライト二等兵。」


 「俺は大丈夫です。それより、ラルドは…⁉ 何だ、あれは…」


  タイタロスと共に地面から出られたヤマトがデーモンビーストの方を見ると、それは暴走状態の時より更に目を赤く発光し続けたセラヴィムが超スピードでデーモンビーストを翻弄していた。


 「あれは一体…」


 「まさか! また暴走か⁉ オルスター特務二等兵、聞こえるか⁉ 応答しろ‼」


 デナムの通信にラルドは一向に応じなかったが、コクピットの中のラルドは今までと違い、意識を失って気絶している状態ではなく、更にいつものような優しそうな目つきではなく、殺意を持ったような目つきに変わって機体を操作していた。

 デーモンビーストは超スピードで動き回るセラヴィムを掴もうとはしたものの、巨体かつセラヴィムの超スピードに付いてこれず、動き回るセラヴィムを見失うこと無く見続けることしか出来なく、同時に赤く発光し続けるセラヴィムを見て怯えているため、攻撃を躊躇しているようでもあった。

 デーモンビーストを翻弄するセラヴィムは身体のあちこちにライフルを撃ち込め、そこを中心にブレードメイスで突き付けるとその表皮に傷を付けるようになった。それを見たデナムは、


 「メガアンカーとメガバスターをあれだけ喰らっても、傷付けることが出来なかったあの皮膚に傷を付けるなんて…まさか、表皮の薄い箇所を見切って、そこを中心に狙っているというのか…⁉」


 セラヴィムがデーモンビーストの目の前に現れると、ブレードメイスを投げつけ、デーモンビーストがそれを噛み砕こうとするとすると、同時にセラヴィムも投げつけたブレードメイスに追い付き、それで引っ掛けてデーモンビーストの口に入った。

 デーモンビーストはセラヴィムごと噛み砕こうとしたが、セラヴィムは手前の牙を掴み、それを強引に引きちぎり、ブレードメイスを持ってそこから脱した。牙を引っこ抜かれ、少し動揺するも体制を立て直し、セラヴィムを攻撃しようとしたが、タイタロスのメガバスターによる砲撃でそれを阻止した。

 デーモンビーストは尻尾で凪払おうとしたが、別方向による砲撃でそれを阻止し、砲撃したのはオクタヴィスや護衛部隊と共に到着したルシファロイドだった。その隙を狙い、セラヴィムは引っこ抜いた牙でデーモンビーストの右目を突き刺した。

 激痛が走ったデーモンビーストはセラヴィムを振り払い、撹乱してその場から離脱して海に戻り、北京ではなく、太平洋の向こうに行って逃げ去った。デーモンビーストの振り払いから着地し、デーモンビーストが逃げ回ったのを見たラルドの目付きがいつもの姿に戻り、セラヴィムの目も赤ではなく緑に戻ったが、同時にラルドは信じられないような表情をし、さっきまでの記憶がないような様子だった。


 「これは…一体…? 僕は何をしていたんだ…」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 香港前線基地でウー総督は通信機器の復興を急いでいた。


 「どうだ? 様子は…」


 「駄目です! 相変わらず変わりません!」


 「クソッ! テロリストめ!」


 その時、雑音と乱れた映像が司令室に流れた。


 「こち…こちら…偵察…隊…」


 「偵察隊との通信、正常に戻りました!」


 「ようやくか! 偵察隊は無事か⁉」


 「はいっ! それと偵察隊からシンガポールでの映像も届きました!」


 「テロリストの本拠地を突き止めたか! 映像確認次第、直ぐに我が軍はシンガポールで総攻撃を開始する‼」


 「そっ、総督‼」


 「どうした⁉」


 「この映像をご覧ください!」


 「ん?」


 偵察隊から送られた映像を見ると、そこには炎上したシンガポールの基地の様子があった。


 「な、何だ、これは⁉ 何故、テロリストの基地が燃えている⁉」


 「わかりません! この映像は1時間半前に送られたもののようです。」


 「どういうことだ…まさか、まさか、テロリストの派閥同士の争いか…」


 「総督! 映像に正体不明機が‼」


 「何⁉」


 映像を更に見ると、炎上したシンガポールの基地を背に双剣を持った機体が空中を浮遊し、目を赤く発光させた。


 To be continued

次回予告


 ザエボスを退けられたものの、これ以上北京に留まるのは危険と判断したマッカーシーはタオの援助で本国に帰還しようとしたが、その途中でテロリストの襲撃に会い、ラルドとヘレナは特務隊と散り散りになってしまう。彷徨う中、2人は1人の少年に出会う。果たしてその少年の正体は…


 次回「迷える少年」その機体は少年を戦いの運命へ導く。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ヤマトがロバストハンターと名付け、自ら搭乗した鹵獲対象の機体に搭乗し、ギラガスの討伐に成功した後、マッカーシー率いる護衛部隊に伴ってこの事をウー総督に伝えるべく北京に帰還したラルドたちだったが、既に北京は円明園の爆破テロで騒いでおり、北京総督府にはマスコミが押し掛けている始末だった。


 マッカーシーとラルドたちははやむなく裏口を通って総督府に入り、ウー総督に会おうとしたが、ウー総督はラルドたちが北京に帰還する前にテロへの報復としてインドや東南アジアを中心に活動しているテロリスト鎮圧のために全ての軍を香港の前線基地に向かわせ、自ら指揮を取ると声明を発表し、マッカーシーとオクタヴィスはその留守を預かるタオに会い、状況を伝え、同時に北京での状況を聞いた。


 


 「まさか、そんなことが…ヘレナ嬢はどうなったのですか?」


 


 「幸い、無傷で済んでいますが、爆破テロの被害を受けたショックで個室に閉じ籠ったままとなっております。」


 


 「それにしても、テロ鎮圧のために全ての軍を出動させた上に総督自ら指揮を取るとは…本国の評議会は御存じなんですか⁉」


 


 「御安心を…声明発表前から既にこの旨を評議会に伝え、承認を得た後、議長命令で軍を動かしたそうです。」


 


 「それにしても、総督が不在なんて…」


 


 「総督は就任前から軍に所属しており、就任後も北京軍の総司令を兼任しております。だから、総督が自ら指揮を取られた場合は私が総督代理を務めております。」


 


 「しかし、全ての軍を移動させては、こちらには護衛がいないのではありませんか?」


 


 「それも御安心を…足りない分は財団支部が提供してくれますから。」


 


 「しかし、特務大佐。これからいかが致しましょうか? 予定通りなら、北京訪問後は本国の首都に…」


 


 「いや、マスコミが総督府に押し掛けている以上、下手に動くことは出来ない。それに我々は中東での戦闘で部隊の大半を失っている上に北京軍がここにいない以上、今、首都に帰還して再びテロリストとデーモンビーストの襲撃を受けたら、今度こそ終わりだ。ましてや、ヘレナ嬢があの有り様なら尚更…」


 


 「既にこの事は本国の議長にも伝えております。命令があるまでこちらで待機しろと指令を受けましたので、暫くはこちらで…」


 


 「やむを得ん、それまで我々も待機しよう。オクタヴィス特務大尉、デナム大尉もよろしいか?」


 


 「仕方ありません。」


 


 「異論は無いが…ところで総督代理とやら、1ついいか?」


 


 「何でしょうか?」


 


 「その例の爆破テロは本当にテロリストの仕業ですか?」


 


 「ええ…現場で発見した爆破物は5年前の爆破テロと同じものが使用されてたもので間違いないかと…」


 


 「内部の手による可能性は考えられなかったのですか?」


 


 「それはどういうことです?」


 


 「デナム大尉、それぐらいにしろ! まさか、総督を疑っているのか⁉」


 


 「いえ…ただ、内部に敵がいるのではないかと思って…ご無礼を掛けたのなら、今の言葉は取り消します。」


 


 デナムとマッカーシーの様子を見て、オクタヴィスは納得いかなそうな表情と何かあるように疑問視した。


 


 


 


 


 同時にラルドとヤマトも円明園爆破テロ後の状況をマルコから聞いた。


 


 「それで、ヘレナは…」


 


 「あの爆破テロのショックで個室にずっと閉じ籠ったままなんだ。やっぱりあの時のトラウマを思い出したみたいのようだ…」


 


 「あの時のトラウマって…?」


 


 「実は、ヘレナの母、現会長夫人のエリザベス・ロックフェルドさんは3年前に爆破テロで殺されたんだ…」


 


 「ヘレナのお母さんが⁉」


 


 「3年前、デーモンビースト殲滅のために連合国に加盟していない地域に活動している自警団を取り込もうと評議会が何度も加盟を求めたけど、一向に応じなかったため、一番勢力が大きい中東の自警団を取り込めば、他の自警団もそれに応じるとして議長と財団会長が交渉のために自らエルサレムに赴いてその時にヘレナの家族も同行してたけど、その時に起こった爆破テロに巻き込まれ、エリザベス夫人がヘレナを庇って亡くなってしまったんだ。思えば、あの時から、反連合国のテロリストとの戦いが始まったんだよな。」


 


 「どういうこと?」


 


 「爆破テロに激怒した議長と財団会長が報復のために徹底的なテロ鎮圧を軍に命じ、それ以来、自警団は反連合国のテロリストとして活動するようになったんだ…」


 


 「そんな…おかしいよ!」


 


 「ラルド…?」


 


 「だって僕たちの本当の敵はデーモンビーストじゃないか! なのに何でまた人間同士が争わなきゃいけないんだよ‼ 僕たちは…軍はデーモンビーストの脅威から守るために戦っているんだよ! なのに何でテロを起こして憎しみを広げるようなことをするんだよ…そんなのおかしいよ…」


 


 ラルドの肩をヤマトは優しく触れ、


 


 「何も、自警団の人たちが全てそういう人ばかりじゃない。キールだってそうじゃないか? おまえと同じ孤児を必死で守って、だから、あの機体を託したんじゃないか⁉」


 


 「う、うん…ん? ヤマト、どうしてキールさんのことを…?」


 


 「えっ…いや、ただ、何となく…」


 


 それを聞いたラルドは不思議そうにヤマトを見た。


 


 「それより、マルコ。今の話だが…」


 


 「何?」


 


 「爆破テロに使用された爆破物は5年前に使用されたものと同じものだったんだろう? それなら、犯行は中東のテロリストのはずだ。それなのに何故、インドや東南アジアに活動しているテロリストの犯行だと断言出来るんだ?」


 


 「インドや東南アジアに活動しているテロリストが中東のテロリストと繋がっていることが判明したんだ。香港前線基地でも、俺たちを襲ったのと同じ正体不明機がインドに向かって飛行していた映像が取れているらしいし…」


 


 「しかし…円明園と言えば、総督府同様、24時間体制で護衛部隊が警護に当たり、しかも出入りには必ず、IDの確認と顔及び指紋認証、荷物の検査等、かなり厳重に行われているはずだ。 


 とても外部による犯行とは思えない。なら、内部による者の犯行の可能性は十分考えられるはずだ。何故、そう考えられなかったのだ?」


 


 「いや、俺が知っているのはニュースで言われていることぐらいだから、そこまでは…ていうか、何でおまえがそこまで事細かに知りたいの?」


 


 「あっ…いや、連合国内部には反財団派の者がいるだろう? もちろん他にも評議会政府や財団に反抗する勢力も少なくはないから、もし、内部による犯行だったら、それこそ、ヘレナの身が…」


 


 「考えすぎだよ! 第一そうだとしても、そこまでは出来ないでしょ?」


 


 「そうだったな…悪い。気を悪くしたなら、今の話は忘れてくれ。」


 


 その話を聞いたラルドは不思議そうな表情をした。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 中東の砂漠の地下の何処かにあるサンドシャークの基地、そこの司令室で隊長と思われる人物が通信を取っていた。


 


 「わかりました、では、そのように手配します。」


 


 コン、コン、


 


 ノックの音がすると、隊長らしき人物は通信を切り、


 


 「入れ。」


 


 「隊長、例の女が持ってきたガーフェラのサンプル、思った以上に使えます。これで、ガーフェラの音波を応用した兵器と機体の開発も出来そうです。」


 


 「それはご苦労。」


 


 「ところで、隊長。いくらサンプルを手に入れることは出来たとはいえ、財団の令嬢は捕らえることは出来ず、北京入城を許してしまったんだぞ! おかげで俺たちは北京に侵入することは出来ないし…」


 


 「無理もない、あの状態なら、俺でもそうしてた。あの状況でサンプルを手に入れただけでも大したものだ。」


 


 「隊長はあの女を信用しすぎじゃないか⁉ あんな賞金稼ぎに連合国を倒すという俺たちの使命に共感出来ると思うのか⁉」


 


 「今の我々は連合国に対抗するための機体も戦力もない。もっと同士が必要だ。特にインドと東南アジアに活動している自警団は北京軍に手を焼いているはずだ。だから、あの女に交渉役として連れていかせた。そうすれば、あの令嬢を捕らえるチャンスは生まれるはずだ。」


  


 「けどよ! あの女を向かわせるなんて買い被り過ぎじゃないか?」


 


 「信用してるのはあくまで腕だ。それにあの女は交渉術も上手いと聞くからな。」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ウー総督率いる北京軍の機体は上海の街中を行進していき、民衆はそれを歓迎していた。ウー総督は参謀と思われる人物と共に護衛部隊に守られている装甲車に乗っていた。


 


 「凄い歓迎ですね!」


 


 「当然だな! 今回のテロに市民も激怒しているからな。それに応えるために私自ら指揮を取ってるのだから。」


 


 


 「それにしても厄介なことになりましたね。あのテロでヘレナ様が閉じ籠もったままと聞いたらしいですが、大丈夫なのでしょうか? 議長選も迫ってますし、もし、これで敗れでもしたら…」


 


 「楔は打っておく。だが、今はテロリストの鎮圧が先だ。」


 


 「わかりました。」


 


 行進する中、1人の兵士が海辺を見て何か違和感を感じた。


 


 「どうした?」


  


 「いや…今一瞬、海に何かいたような…」


 


 「気のせいだろう。それより、グズグズするな! テロリストの鎮圧が先だ。」


 


 「あ、ああ…」


 


 その違和感は的中するように海中に巨大な何かが潜んでいて、機会を伺っていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 北京総督府で待機を命じられたラルドはヘレナのことが心配になってヘレナのいる個室に行こうとしたら、個室の前にノアが立ち止まっていて、ノックをしようとしたが、躊躇してそれを止め、そこから立ち去っていった。


 それを見ていたラルドは今、ヘレナのところに行っても慰めにならないと考え、今度はノアのことが心配になってその後を追っていった。


 ノアはベランダのところに立ち、悲しげな表情で夜空を見ていた。その様子をラルドがどう話し掛ければいいかわからず、見詰めているしかなかった。やがてノアがその気配に気付き、ラルドの方を見て、ラルドはあわてふためいた。


 


 「ラルド?」


 


 「あっ、いや、何でもないよ! 別に邪な目で見ているわけでは…」


 


 「ヘレナさんが心配なのね…」


 


 「やっぱり気付いてたんだね…僕も正直どう話し掛ければいいかわからなくて…」


 


 「何処で生まれたのか、本当のお父さんやお母さんもわからない私をあんなに温かく迎え入れてくれて、あんなに明るく優しくしてくれる人なんてヘレナさんが初めてだった…


 でも、あんなに急に落ち込んで閉ざしてしまって、私どうすればいいかわからなくなった。あの人を救いたいのに何も出来ない私なんてやっぱり無力なのかな…」


 


 「そんなことないよ! 人は誰だって自分の力では出来ない時やどうしようもない時だって、僕だって何も出来ない時はいつもキールさんに頼ってたんだし…」


 


 「そのキールさんって人、ラルドにとって大切な人なの?」


 


 「こう見えても僕も元は孤児で、お父さんやお母さんの顔も知らず、記憶もなく放浪してた僕を拾って生きる術を教えてくれた人がキールさんだったんだ。今の僕にとってはキールさんが本当のお父さんなんだ。」


 


 「そう、ラルドもなのね…」


 


 「ごめん! 気を悪くするつもりじゃないんだ。」


 


 「気にすることはないわ。ただ、私と同じ立場でもちゃんとお父さんのような人がいるのが、何だか羨ましくて…」


 


 「そんなことないよ。こんな僕でも結局、キールさんがいなきゃ、何も出来なかったし、そのオカゲで、キールさんが…」


  


 「どうしたの? そのキールさんに何かあったの?」


 


 「いや、これ以上は言えない。それを言っちゃうと、ノアを悲しませてしまうから…」


 


 「…?」


 


 「余計なこと聞かせてしまったね。僕はここで失礼するよ。(強くなるんだ…誰の手を借りず、自分の手で皆を守れるように…次の出撃が来たら、今度こそ…)」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ウー総督率いる北京軍が去った後の上海、ここは総督府が置かれている北京同様に復興されていて、市民も平和に暮らしていた。そんな中、市民の1人が海岸沿いで釣りをしていると何か違和感を感じた。


 


 「ん? 何か海が盛り上がっているような…」


 


 その言葉通り、突然、海が盛り上がって巨大な何かが現れ、海岸沿いにいた人たちはその津波に巻き込まれ、飲み込まれた。海から現れたのはワニのような頭と無数の牙が不規則に並び、不気味な顔をし、強固な鎧のような表皮と重厚感ある体躯をした90m以上のデーモンビーストだった。


 突然現れた巨大なデーモンビーストでパニックになる上海の市民たち。しかし、巨大なデーモンビーストは構わず、逃げ惑う市民たちを踏み潰しながら街を破壊していった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 北京総督府、本国の評議会からの命令が来るまで、マッカーシーとオクタヴィスは引き続き待機していた。


 


 「ヘレナ嬢の様子は?」 


 


 「相変わらずだそうです。」


 


 「怪我しなかったのは幸いだが、これは不味いな…議長選がもうじき迫っているというのに、このまま続いたら、議長選に出られない可能性も出る。そうなれば、ヘレナ嬢の支持も…」


 


 「議長や副議長からも、これに対する対策はまだされてないのでしょうか?」


 


 「それもまだだ。今回のテロでヘレナ嬢の精神にかなりのダメージを与えたのは議長も想定していなかったようだ…」


 


 「ではやはり、今回の爆破テロの主犯の目的はヘレナ嬢の殺害ではなく、彼女の精神を攻撃するためと…特務大佐も考えているのですか?」


  


 「私もそう考えている。仮に殺害が目的だとしても、あれだけの護衛と現総督の代理であるタオ・ヤンが優れた体術の持ち主だということを知らないとは思えないだろう。何せ、彼女はウー総督同様、軍にも所属し、その部下でもあったと聞く。」


 


 「だとしたら、本当に外部のテロリストがやったのでしょうか?」


 


 「どういうことだ?」


 


 「さっき、デナム大尉が言ってたこと、私も気になっていたんです…外部の人間がやるにしても、北京での情報をかなり知る必要がありますし、そもそも外部の人間は立ち入りが不可能な程、厳重だと聞きます。であれば、出来るのは内部の人間かあるいは外部のテロリストに情報を提供している内部の者がいるとしか…」


 


 「では、反財団派の犯行だと…確かに動機は申し分ないが…」


 


 「それもありますが…」


 


 「何だ? まだ、何かあるのか?」


 


 「5年前の事件のことですが…」


  


 「それがどうした?」


 


 「ポイントネモ…彼処で起こっている正体不明の現象及び彼処に何かあるということを調査させるための前線基地を建設する計画を進め、その前線基地の建設に適した場所である日本を制圧するために統制連合艦隊の部隊が派遣されたが、突然、その部隊が消息を断ち、帰還した生存者が1人もいなかったため、それ以来計画が中止されたそうですね?」


 


 「ああ、それがどうした?」


 


 「公式では部隊が未確認のデーモンビーストに襲撃されたため、それに対抗するための戦力を整えるための新型開発に本国の評議会がウー総督に命じたそうですが、確か、あの部隊を派遣させた上層部の中には総督就任前のウー総督もいたのですよね?」


 


 「何が言いたい?」


  


 「あの事件に関する詳細は内密なことが多い。それより、統制連合艦隊の者からあの時の決定に反対する者が多く、それがキッカケで反財団派の動きが活発したとも聞きます。


 あの事件の真相がわかれば、今回のテロを起こした主犯の目的もわかるのでは? それにあの事件で消息を断った部隊の中には確か、特務大佐、あなたの…」


 


 「それ以上は何も言うな‼ あの事件のことを思い出さないでくれ…」


 


 マッカーシーの怯える様子を見て、オクタヴィスはそれ以上は何も言わなかった。その時、突然、バタバタし、1人の人物が執務室に向かって廊下を走っていった。


 それに気付いたマッカーシーとオクタヴィスはそれについていき、執務室に入るとさっきの人物がタオにあることを話していた。


 


 「わかった…」


 


 「何かあったのですか? 総督代理。」


 


 「どうやら、面倒なことが起こったようだ…」


  


 「面倒なこと?」


 


 「上海に90m超のデーモンビーストが現れ、僅か30分足らずで壊滅し、その後、海に潜った後、この北京に向かっているとのことだ。」


 


 「何だと⁉」


 


 「待ってください! それなら、何故、そのことを香港の前線基地に向かっている総督に報告しないのですか?」


 


 「もちろん、そのつもりだった…だが、妨害電波によって総督と通信が取れないのだ。」


 


 「妨害電波だと⁉ 何故、このタイミングに…それに一体誰が…?」


 


 「早急に原因追求と復興を急いではいるが、デーモンビーストがこちらに到着するまで間に合わないかもしれない。」


 


 「そのデーモンビーストが北京に到着するまで、後どれぐらいなんですか?」


 


 「この速度だと、3時間ぐらいと推定されます。」


 


 「3時間だと⁉ クソッ、それだけの時間では仮に今から香港にいる総督に連絡出来ても、とても間に合わない…」


 


 「特務大佐、私がここに残っている部隊で奴を食い止めます! その間に特務大佐は香港にいる総督にこのことを…」


 


 そこに割って入るかのようにデナム大尉が執務室に入った。


 


 「いや、敵が北京が入ってからでは遅いです。私とハイライト二等兵が奴を足止めし、奴を討伐します! ギラガスを討伐した鹵獲機と私のタイタロスであれば、討伐はそう難しくはないでしょう…」


 


 「ハイライト二等兵がロバストハンターと名付けた例の機体か…確かにあの機体の性能の高さは知っているが、侵攻しているデーモンビーストの戦力が不明な以上、デナム大尉とハイライト二等兵の2人だけで倒せるとは考えにくい…」


 


 その時、タオが口を開き、


 


 「でしたら、セラヴィムも出撃させたら、どうでしょうか?」


 


 「セラヴィムを? 解析は終わっているのですか⁉」


 


 「総督によりますと、あの機体はパイロットの脳波に異常をきたすバグがあるとのことで、香港に向かわれるまでに既に早急に改良されたと聞きます。ですから、問題ないかと…」


 


 「バグ⁉ あの暴走のような奇怪な異常は元からあったシステムではなく、バグだったと…」


 


 「私が聞いた限りでは、そういうことになってますが…」


 


 「特務大佐…」


 


 「総督代理、北京にはどれぐらいの部隊が残ってますか?」


 


 「必要最低限として護衛部隊を残してはありますが、あくまで都市の護衛であって、デーモンビーストを迎え撃つ戦力になるとは言えないが…」


 


 「特務大佐、特務大尉、やはり、ここは私とハイライト二等兵が奴を迎え撃ちます! そして、特務大佐と特務大尉は万が一の場合に備え、護衛部隊と共に北京の防衛を…」


 


 「それはいいのだが、何処で奴を迎え撃つのだ?」


 


 「方向から考えると、奴を迎え撃つには山東半島が適任です。私とハイライト二等兵はそこに奴を誘い込みます!」


 


 「勝算はあるのか?」


 


 「私に全ての指揮を任せれば…」


  


 マッカーシーは一度考え込んだが、腹を括り、


 


 「わかった、指揮はお前に任せる。だが、決して無理はするな。」


 


 「心得ております。」


 


 「では、特務大佐。オルスター特務二等兵は?」


 


 「改善してると言っても、あの機体には不確定要素が多すぎる…それに彼が出てしまってはヘレナ嬢の護衛がいなくなる。」


 


 「ちょっと待ってください。それじゃ、ブラッディ特務二等兵は…?」


 


 その質問にタオが答え、


 


 「彼は別任務です。」


 


 「⁉ 別任務?」


 


 「彼の実力は北京軍に必要な人材だったので、総督にみかねて北京軍が苦戦しているある任務に当たってこちらにはいません。」


 


 「ある任務とは何だ?」


 


 「それは私の口からは言えません。」


 


 「…わかった。デナム大尉、出撃を命じる!」


 


 「わかりました。では、ハイライト二等兵にすぐ出撃命令を…」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 北京総督府にある倉庫で、マルコはロバストハンターの機体調整と更なる武装化を行い、その横でヤマトが見守っていた。


 


 「どうだ?」


 


 「これは凄い機体だね! マグマにも耐えられる程の装甲なんて見たこと無いし、オマケに高火力のバスターアンカーなんて装備してるなんて、連合国軍でもこんな機体、1機もないよ!」


 


 「じゃあ、こいつには武装は必要無いのか?」


 


 「どうかな…確かにこれは高性能だけど、重量がかなりのネックになってるから、機動性はそこまで期待できないし、長期戦には余り向いてないから、短期決戦でいく方が良さそうだね。


 だから、この機体にはレンジアックスやサブマシンガン、バスターライフルまで装備させて遠距離射撃にも対応出来るようにはした。最も他にも武装増やしたり、改善する部分はあるけど、北京軍がほとんど出て、財団の北京支部を扱っているウーさんが不在だから、今出来るのはこれぐらいかな…」


 


 「ありがとう。後はパイロットの技量でカバーする。」


 


 「でも、あんまり無理しないでね。いくら頑丈な装甲だからといって派手に扱うとこれもただじゃ済まないよ。」


  


 「問題ない。お前が思う程、俺は無謀なことはしない。」


 


 「まあ、ラルド程、無茶はしないとは思っているけど…」


 


 「それはそうと、ラルドは?」


 


 「個室にいるか、部屋中をウロウロしたりしてるよ。やっぱりヘレナがあの状態だから、どう答えたらいいか、わからなくなってるかもね…俺もどう声を掛ければいいか…」


 


 「そうか…」


 


 そこにデナム大尉が立ち入り、


 


 「ハイライト二等兵!」


  


 「デナム大尉。」


 


 「上海に現れたデーモンビーストが破壊活動を行い、この北京に向かっているそうだ。直ぐにこの機体に乗って私と共に山東半島に行って欲しい。そこで奴を迎え撃つ!」


 


 「わかりました。直ぐに出撃します。 早速装備してくれた武器が使えそうだな。」


 


 「でも、いきなり実戦で使えるかどうかは…」 


 


 「無いよりはマシだ。ありがとう!」


 


 「ラルドの分まで頑張れよ!」


 


 「元よりそのつもりだ。」


 


 しかし、その様子をたまたま通り掛かったラルドが目撃し、直ぐ様、マッカーシーの元に行った。


 


 「お願いです! マッカーシー特務大佐! 僕も出撃させてください‼」


 


 「駄目だ! いくら改善されたといっても、あの機体は問題が有りすぎる。それにお前まで出撃したら、ヘレナ嬢の護衛が誰がやるんだ⁉」


  


 「そうだけど…でも、このままじっとしているだけなんて嫌だ‼ 何かを守れる力も無いんじゃ、ヘレナや街の皆だって守れないよ!」


 


 「だが、もしまた、あの暴走になったら…」


 


 「いいでしょう。許可します。」


 


 「総督代理!」


 


 「総督不在の間、今、その決定権は私にあります。許可を出しましたのから、出撃してください。」


 


 「しかし! 危険が大きすぎます!」


 


 「特務大佐、ここは彼を信じましょう。」


 


 「オクタヴィス特務大尉まで、何を…?」


 


 「確かに、リスクはありますが、彼は我が特務隊の者です。いつまでも、このままにしておくわけにはいきません。


 ラルド、セラヴィムの問題は解決したが、まだ完全とは言えない…それでも行くか?」


 


 「行きます! いえ、やってみせます‼」


 


 「よし、では、オルスター特務二等兵にも出撃を許可する。特務大佐、ヘレナ嬢の護衛は私がやります。」


 


 「わかってるな、アウダ・オクタヴィス特務大尉。もし、彼に何かあれば、その責任は取れるのか?」


 


 「私が保障します。」


 


 「わかった。ラルド・オルスター特務二等兵、直ちに出撃し、スカル・デナム大尉の指揮に入れ!」


 


 「はい、ありがとうございます!」


 


 マッカーシーの許可も得たラルドはデナムやヤマトと共に自身の機体であるセラヴィムに乗り込み、それぞれ発射ポッドに乗り込み、発射シークエンスに入った。


 


 「スカル・デナム、タイタロス出撃する!」


 


 「ヤマト・ハイライト、ロバストハンター出る!」


 


 「ラルド・オルスター、セラヴィム出ます!」


 


 発射ポッドが出ると、タイタロス、ロバストハンター、セラヴィムは山東半島に向かっていった。


 ラルドがデナム大尉やヤマトと共にデーモンビーストを迎え撃つために山東半島に向かう中、ヘレナは未だに個室に閉じ籠っていた。


 


 「御母様…」


 


 しかし、その個室の扉の前に1人の少年が立ち、不敵な笑みを浮かべた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 山東半島に到着し、住民の避難を完了させたラルドとヤマトはデナムの作戦の詳細を聞いていた。


 


 「目標のデーモンビーストは海を潜行しながら北京に向かっている。奴が北京に向かう航路は2つある。1つはこのまま海を潜行しながら山東半島を遠回りするルート、2つ目は山東半島に上陸して地上を進み、再び海に潜行して最短で向かうルート。


 奴がどのルートを通るか定かではないが、我々は奴を山東半島に上陸させて、そこで奴を北京に上陸させる前に討伐する。


 そして作戦の内容だが、奴が山東半島に近付き、上陸せずに海を進もうとしたしたところを私とオルスター特務二等兵が遠距離射撃で奴の注意を引き付けて、奴を上陸させ、その後、ハイライト二等兵が上陸した奴と戦い、私とオルスター特務二等兵はその援護に回る。


 現状、我々の戦力で一番高性能はおまえのロバストハンターだ。奴の戦力は不明とはいえ、それでも、ギラガスを討伐したロバストハンターなら、奴に対抗出来る。つまり、この討伐作戦はおまえに掛かっているということだ。」


 


 「無論、そのつもりです。」


 


 「そして、オルスター特務二等兵。おまえは私と共に奴の注意を引く役割だ。」


  


 「はいっ!」


 


 「だが、決して無理はするな。セラヴィムの不安要素は取り除かれたとタオは言っていたが、まだ油断は出来ない。もちろん、私もサポートはするが、出来るだけ正面で戦うことは避けるように…」


  


 「了解しました!(今度こそ…)」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ラルドとヤマトがデナム大尉と共に山東半島でデーモンビーストを迎え撃つ中、北京軍率いるウー総督はインドや東南アジア中心に活動しているテロリストの戦力を測るために本拠地のあるシンガポールに偵察隊を派遣していた。


 


 「偵察隊からの報告はまだか?」


 


 「何度も通信を呼び掛けていますが、応答がありません。」


 


 「そろそろ、連絡が来てもいいはずなのだが…」


 


 「総督! もしや、既にテロリストに全滅させられたのでは⁉」


 


 「その可能性は捨てきれない…ヘレナ嬢を狙ったあの悪質なテロに我等が気付くことぐらい、連中も把握しないはずはないだろう。」


 


 「でしたら、ブラッディ特務二等兵をもう一度出撃させましょうか? 彼は先程、ベトナムのテロリストも鎮圧した程ですし…」


 


 「やれやれ、ブラッディ特務少佐の大事な息子にまた仕事を押し付けるのは癪だが、彼に任せた方が一番の得策のようだな…ブラッディ特務二等兵を直ぐにこちらへ…」


 


 「総督!」


 


 「何だ?」


 


 「アウダ・オクタヴィス特務大尉が面会を求めていますが…」


 


 「面会だと? 作戦任務中に一体、何用だ? それに何故、通信ではなく、わざわざこちらに来た?」


 


 「いかがなさいましょうか?」


 


 「取り敢えず連れてけ! ただし、話は手短にな。」


 


 香港前線基地に入城したオクタヴィスは北京軍が香港前線基地に向かっている間の旨を伝えた。


 


 「では、偵察隊との通信が取れないのも、その妨害電波によるものか…」


 


 「総督! もしや、その妨害電波とデーモンビーストによる襲撃はテロリストによるものでは⁉」


 


 「クソッ! テロリストめ! そこまでやるか‼」


 


 「総督! 直ちに軍を北京に引き上げましょう。」


  


 「いや、おそらくそれがテロリストの狙いだ。この混乱に我

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― 新着の感想 ―
なぜデーモンビーストはラルドを執拗に狙うのでしょう。気になります。
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