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Episode11「堅牢な救世主」

 西暦2325年、地球は度重なる戦争と環境変化に伴い、地球が人類にとって住みにくい星になるのは最早時間の問題となった。だが、人類はコロニー建造や月面基地の開発等、宇宙進出を果たす程の技術を手に入れ、やがて他惑星での移住計画も推し進めた。

 だが、その最中、突如として謎の巨大不明生物が現れ、人類に牙を向け、襲い掛かってきた。人類はその正体不明の巨大生物にありとあらゆる兵器で迎え撃ったが、巨大不明生物はあらゆる兵器も通用せず、人類を食い尽くし、人類はその巨大不明生物によって大半を滅ぼされた。

 やがてその巨大不明生物はデーモンビーストと呼称され、デーモンビーストによって人類の8割が死滅させられたその惨劇は「悪魔の審判」と呼ばれるようになった。それから数世紀に渡って地球はデーモンビースに支配され、僅かに生き残った人類は尚もデーモンビーストの支配に抗ったが、度重なる資源不足に陥り、それを補うために人類同士による争いが頻発に行われ、世界は混沌となっていた。

 悪魔の審判から800年後、西暦3125年、人類は対デーモンビースト用として人間が搭乗出来る巨大人型機動兵器を開発し、デーモンビーストを駆逐し、新たな国家を建設、徐々にその支配圏を取り戻しつつあり、人々は悪魔の審判以前の世界に戻れると確信していた。だが、人類は知らなかった、これから行われることはその悪魔の審判以上の脅威が襲い掛かってくることを…

 北京総督の執務室で、ウー総督は誰かと通信を取っていた。


 「はい! 形状や構造的には奴等の機体にほぼ間違いないかと…


 …しかし何故、あんなところにあの機体を置いたのでしょう?


 …わかっております。もし、万が一の場合はこちらの護衛部隊も派遣して必ず鹵獲します!」


 コンコン、


 その時、ノックする音がし、ウー総督は通信を切った。


 「何事だ⁉」


 「失礼します。派遣部隊の1機がこちらに戻ってきました!」


 「1機だと⁉ 他はどうした?」


 「それが…」


 


 


 


 


 


 


 

 ピチャン、ピチャン。


 水滴の音で目が覚めたラルドは辺りを見渡すと、そこは洞窟の中であり、側には火を炊いたヤマトがいた。


 「気が付いたか?」


 「ここは…? そうだ! 確か僕たち、瓦礫の下に…」


 「いや、まだ通路があったから、咄嗟にそこに逃げることが出来たんだ。ただ、何処に通じているかまでは知らないが…」


 「とにかく助かったんだ…イタッ!」


 ラルドが起き上がろうとすると、左足が負傷して既に応急手当が施されていた。


 「さっきの瓦礫が原因だ。出来るだけの応急処置は取ったが、余り無理をしない方がいい。その状態では機体に乗って戦えない。」


 「でも、オクタヴィス特務大尉やデナム大尉だってはぐれて何処にいるのかもわからないのに、ここでじっとしているなんて…」


 「今の俺たちは機体が無い上に持ってる銃も弾が尽きている完全に無防備状態だ。こんな状況で下手に外に出てまた奴に襲われたら今度こそ、終わりだ。 それに今のおまえは安静にした方がいい。」


 「だからといって、ここでじっとしているなんて…」


 「今はお前の身体が大事だ。」


 「う、うん…」


 ラルドが見たヤマトの姿が一瞬、キールの姿と重なった。


 


 


 


 


 


 


 


 北京総督府で派遣部隊の1機が戻ってきたことはマッカーシーの耳にも届き、報告を受けたウー総督はマッカーシーにその内容を伝えた。


 「正体不明のデーモンビーストに襲撃され、部隊が全滅とは…」


  「報告と僅かに残った映像によりますと、第9号ギラガスだと思われます。」


 「ギラガス?」


 「護衛部隊が回収した肉片から解析して私が名付けたコードネームです。それによるとカメレオンと同じ遺伝子情報を持ち、光学迷彩並みの性能を持っていると推測されます。」


 「神出鬼没で姿が確認されない個体がいることは聞いていたが、それがその個体なのか…オクタヴィス特務大尉とデナム大尉はどうなったんです?」


 「通信を試みてますが、それが一切応じないのです。」


 「これ以上は我慢出来ません! 私が部隊を率いて派遣部隊の救出を‼」


 「特務大佐、でしたら、私の護衛部隊を貸しましょう。まだ量産化はされてないとはいえ、そのスペックは織り込み済みです。」


「感謝します。ですが、総督。このことはくれぐれもヘレナ嬢には話さないように…」


「心得ております。」


 


 


 


 


 


 


 ラルドたちが行方不明な状態を知らないヘレナたちは引き続き、北京中を散策していた。


 「どうだい? ヘレナ。ここはスッゴい活気があるだろ!」


 「こんなに人々が平和に暮らしてる都市なんて見たことない! ゾーンの人々みたいに格差社会になっているメトロポリスと違ってここの人たちは皆平等みたい。」


 「当然さ! ウー総督がここまで復興してくれたオカゲだからね。ここを世界一の都市にしようと財団とホテップ社の資金まで使ったんたからね。ヘレナが議長になった暁にはメトロポリスもここのようにしようと考えているんだ。 だから、ヘレナには頑張ってもらわないと!」


 「わかってるわよ!」


 その時、背後から屈強そうな男がヘレナの肩を掴み、


 「よう! お嬢ちゃん‼ 田舎者にしては随分綺麗だね。いいところ知ってるから、俺と一緒に行かない?」


 しかし、すかさずタオがその手を掴み、


 「うっ…ぐっ!」


 「お嬢様に何か用ですか?」


 「貴様! その手を離せ‼」


 「ナンパなら、他で当たってください。」


 「離せっつってんだろ‼」


  男がもう片方の腕で殴りに掛かるが、タオはそれを難なく避け、蹴り1発で腹に直撃させ、男は悶絶し、ヘレナは唖然としていた。


 「ヘレナ様、お怪我はありませんか?」


 「あ、うん…私は大丈夫。でも、何もここまで…」


 「ヘレナ様に近づく不届き者は排除するよう、総督から命ぜれてますので…」


 「ま、まあ…取り敢えず難は逃れたし、タオさん凄いでしょ⁉ 何たってウー総督の秘書兼ボディーガードだからね! 体術じゃ、あの人に敵う人はいないよ‼」


 「それは知ってるから…」


 その時、上空をマッカーシーの乗るミカエルが北京軍の護衛部隊を連れて出撃した。


 「あの機体ってマッカーシーさんの?」


 「ホントだ! 何で今更出撃なんか…」


 同時にタオの携帯が鳴り、


 「はいっ、総督。」


 「タオか。マッカーシー特務大佐の機体を見なかったか?」


 「はい、今さっき、こちらを通りました。」


 「実はちょっと面倒なことがあって…」


 「その様子ですと、派遣部隊は失敗に終わったようですね。」


 「察しがいいな。派遣部隊を失ったため、こちらも護衛部隊も出さざるを得なくなったが、そうなるとヘレナ嬢を外に出すわけにはいかないからな。」


 「では、一度総督府にお戻りさせますか?」


 「いや、円明園に連れていかせてやれ。」


 「総督が最近、復興させたあの場所ですか?」


 「ああ、彼処なら、ヘレナ嬢を退屈はさせないだろうし、護衛も万全だから、問題ないだろう。」


 「わかりました。そういたします。」


 「ヘレナ様! その格好は目立ちすぎますし、これ以上外の散策は危険です。円明園ならその心配はありませんし、そちらへご案内しましょう。」


 「円明園?」


 「ウー総督が復興、再現した清帝国時代で造られた宮殿だよ! アロー戦争で破壊されてずっとそのままだったけど、あのままにするわけにはいかないから、北京復興のシンボルとして資料を元に再現したんだ。しかも中国風だけでなく、西洋式のバロック建築になっているから、まさに世界一と言っても過言じゃないくらい美しいところだよ!」


 「何だか、素敵ですね。行きましょう! ヘレナさん‼」


 「そ、そうね。ノアが行きたいなら、行くしかないわね。」


 「じゃっ、俺が早速案内するぜ!」


 「あっ、待ってよ! マルコ‼」


 「あの男、少しチャラいが、使えそうだわ。」











 洞窟内でラルドの傷が言えるまで暫く休息を取るヤマトの姿をラルドはじっと見ていた。


 「どうした?」


 「いや、キールさんに似てるなぁと思って…」


 「その人って確か、軍に入隊するまで世話になってた人か?」


 「⁉ どうして知ってるの?」


 「デナム大尉から護衛で一緒になる人間の情報は粗方知った方がいいと大方知ってる。」


 「じゃあ、クトラも?」


 「もちろん、知ってるけど…あいつの情報は非公式な部分が多いから、ブラッディ特務少佐の息子ぐらいしか知らないけど…」


 「もしかして、ヤマトってデナム大尉の元にいたの? 僕のように…」


 「半分、正解だな。俺の家族はデーモンビーストに殺され、生きる希望を失って放浪してた俺を拾って軍で鍛えてくれたのがデナム大尉だった。あの時、何も出来ず、家族を守れなかった泣き虫な俺を鍛え、大切なことを教えてくれたのもあの人だった。」


 (「(いいか、ヤマト! 誰かを守れるようになるには自分が強くならなければならない。だが、誰かを守れるためといって変にカッコつけたり、カッコいい人になろうと思っていくのは間違いだ。それは自分の弱さを否定されるのを恐れて隠し、認めないための自己肯定による思い上がりだ‼

 己の弱さを認めなければ、それを克服することが出来ず、肉体はもちろん心も強くすることは出来ない。他人や家族を守れる力を持つことは自分をカッコ良く見せることじゃない。大切なものを失わないために自分自身を変えることだ。ましてや俺たち軍人は市民を守るための盾だ。誰かにカッコ良く認められたり、憧れたりされるヒーローのような存在ではない‼ 戦場という人殺しの場所で命を掛けてまで市民を必ず守る存在だ!

 では、お前はどういう人間になりたい⁉ 守りたいものは何だ? それがわからなければお前は強くはなれない!」)


 「そう言いながら、あの人はずっと訓練に付き合い、俺は今のような自分になれた。もうあんな弱い自分には戻りたくないために…」


 「ヤマトは強いんだね…セラヴィムに乗れても暴走したり、足を引っ張っていく僕なんかよりずっとカッコいいよ。」


 「これも、デナム大尉が教えてくれたんだが…自分の弱さを認めようとする余り、自分を否定し続けることはただの自虐でしかない。己の弱さを認めるということは己自身を知ることだ。己を知って己を強くする。それが自分自身を変える道だって…

 だから、お前は自分を責め続けるべきじゃない。前だけを進んで生きればいい。それに俺はお前が思っている程カッコよくはない…俺の家族を殺したあいつだけは許すことは出来ない…」


 その時のヤマトは拳を強く握りしめ、その目には使命感と復讐心が宿っていた。


 「ゴメン…僕、余計なこと言っちゃった。」


 「気にしないでいい。そんなことで気にするほど、器が小さいわけではない。」


 「うん! そうだよね。こんなことで立ち止まってるわけにはいかない。行こう! 僕たちの出来ることを探して!」


 「でも、今のお前は立ち上がれる状態じゃ…⁉」


 その時、ヤマトは立ち上がったラルドに違和感を感じた。


 「あの足…いくら応急処置を施したといっても、瓦礫の下敷きになった状態を考えれば、立っていられるだけでもやっとの状態だ。しかも、時間だって1時間どころか30分すらも経っていない。そんな短時間で回復出来るはずは…」


 「どうしたの?」


 「いや、何でもない。そうだよな。いつまでもここにいてもしょうがない。ここが何処に繋がってるか知らないが、今の俺たちがするべきことは一刻も早く北京に戻って救援を求めることだ。」


 「じゃあ、決まりだね。」


 「ああ!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 ラルドとヤマトからはぐれたオクタヴィスはミカエルに搭乗して移動しながら、何度も通信を試みたが、繋がらなかった。


 「クソッ! やはり駄目か。機体はさっきの戦いで右腕をやられたが、それ以外は問題ない。このまま北京総督府に戻り、救援を求める手もあるが、こんな失態を晒しては特務大佐に顔向け出来ない。せめて生き残ったものだけでも連れていかないと…ん?」


 その時、残骸となったラルドとヤマトのアルケーダを見付け、調べた。


 「脱出の跡があるということは2人は生きてるということか…あの2人なら大丈夫だと思っていたが、おそらく今は生身の状態だ。早く見付けないと…」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 洞窟の中を歩き進めるラルドとヤマトは出口を探し続け、ヤマトは洞窟の中に違和感を感じた。


  「この洞窟…自然のじゃない。誰かによって造られた遺跡のようだ。それも1000年以上前の年代もののようだ。」


 ようやく突き当たりに出ると、目の前には壁となっており、その壁には中心を守るかのようにその周囲に4体の獣が描かれていた。


 「この壁画、何処かで…」


 ヤマトが壁画の中心に触れると、突然、洞窟内が揺れ、壁画が崩れ、道が開くとそこは森の中だった。


 「この洞窟…こんなところに繋がっていたのか。」


 「とにかく、僕たち出られたんだね!」


 「まだ安心は出来ない。森の中ということは、まだ俺たちはチベット自治区にいるということだ。となれば、まださっきのデーモンビーストが近くにいる可能性も高い。 それに今の俺たちは丸腰だ。慎重に行こう。」


 歩き進む2人の背後に空間が歪んだような現象が現れ、そこに空間に擬態していたギラガスが待ち構えていて顔の口から出した溶解液を地面に足らしながら、ゆっくりと2人の後を追っていき、地面が溶解していった。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 消息を経った場所に護衛部隊を率いるマッカーシーもアルケーダの残骸を見付け、


 「消息を経ったのはここか…しかし、脱出の形跡があるということはオルスター特務二等兵とハイライト二等兵は無事ということか。となれば、オクタヴィス特務大尉とデナム大尉もか…ん?」


 その時、森の向こう側にASのような黒い影がその様子をじっと見付け、直ぐ様その場から離れた。


 「どうしました? 特務大佐?」


 「いや、何でもない。」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 森の中を歩き進んでラルドとヤマトは持っていたコンパスを便りに北京総督府に向かっていたその時、破棄された基地のような場所に辿り着いた。


 「ここは…」


 「もしかして、オクタヴィス特務大尉が言ってた鹵獲対象の機体がある基地じゃない?」


 「そうか! その基地はチベット自治区にあるから、知らず知らずにその場所に着いたってことか。」


 「じゃあ、もしかしたら…」


 「ああ、その機体を俺たちで鹵獲出来る。それにその機体に乗れば、北京総督府にも最短で行けるし、いざとなれば、戦闘も出来るる!」


 「でも、鹵獲しろって命令だから、余り戦わせることは出来ないかも…」


 「確かに…性能にもよるが、知らない機体にいきなり乗って戦えるとは限らないし、それに乗るにしても1機だけだから、2人乗りになるだろうし、戦って破壊されたら、元も子もないし…」


 「とにかく今はその機体に乗ってここから離れよう!」


 「そうだな!」


 基地に入る2人を擬態しながら後を追っていたギラガスは捕らえる機会をじっと伺って腹の口から無数の舌を出した。基地に入った2人を待っていたのは28mもある重装甲型の機体だった。


 「この機体だ。間違いない!」


 機体を見付けたヤマトとラルドはコクピットのハッチを開け、起動を試みた。


 「どう? 動かせる?」


 「大丈夫だ。 操縦形式は他のASと殆ど大差ない。ただ、見たところ、重装甲で重量もかなり重いから、余り激しい動きは出来そうにないな…」


 「じゃあ、逃げられないの?」


 「装甲の耐久力が高けりゃ、話は別だけど、それがどれぐらいか…」


 その時、基地の入口からギラガスの舌が現れ、ラルドの足を捕らえ、引きずり込んでいった。ヤマトは咄嗟にラルドの手を掴み、取り出したナイフで舌を突き刺し、痛がった舌はラルドを離して引っ込めると入口をぶち開けてギラガスが現れた。


 「あいつはさっきの!」


 「(やっぱり俺たちを探してたのか! しかし、ここに現れたということは丸で俺たちがここに来ることを最初から知っていたかのようだが、デーモンビーストであるコイツがどうやってその情報を得たんだ⁉)」


 ギラガスは再び腹の口の舌を出し、2人に襲い掛かった。


 「(考えている暇はないか!)」


 ヤマトは咄嗟にラルドを抱えて回避し、ラルドを守るようにナイフを持って構え、ギラガスはジリジリとゆっくり近付いていった。


 「やはり、狙いはラルドか…しかし、全ての舌を出そうと思えば、出せるはずなのに敢えて出さず、1本ずつで攻めていってるのは俺たちがASに乗れない生身の状態を理解しておちょくっているのか…大分、性格の悪い奴だな。」


 ギラガスの腹の口から出した1本の舌を蛇のように、地面を這いつくばりながら近付き、ヤマトがそれを斬り裂こうとしたその時、後方から撃った砲撃がギラガスに直撃し、現れたのはオクタヴィスのミカエルだった。


 「オクタヴィス特務大尉!」


 「無事か! 2人とも。」


 「はいっ‼」


 ギラガスは邪魔された怒りでミカエルに襲い掛かり、ミカエルはすかさずライフルで応戦したが、それをものともせず、営利な鉤爪で襲い掛かり、片手でそれを受け止めた。それを見たヤマトは、


 「オクタヴィス特務大尉! 顔の…顔から出す口の舌に気を付けてください‼」


 「顔から出す舌だと…そうか、コイツは口が2つあるのか。しかし、片腕を失った状態でどこまで抑えられるか…」


 ギラガスの顔の口が開こうとしたその時、背後から2本のワイヤーがそれを阻止するかのように顔を塞ぎ、抑えつけ、現れたのはデナムのタイタロスだった。


 「デナム大尉!、生きてたのか⁉」


 「遅れてすまない。コイツは俺が抑える。」


 しかし、ギラガスは必死に抵抗し、ミカエルもタイタロスも抑えつけるのがやっとだった。


 「(あの2機でも、アイツには敵わない…とすると、今、あの機体に乗って戦えば、勝機は生まれる…だが、武装も性能もわからない機体に乗って戦うのはリスクが大きすぎる! どうすれば…)」


 必死に抵抗するギラガスは鉤爪でタイタロスのワイヤーを切断し、尻尾の目が開くと尻尾の先端からもう1本の舌が伸び、タイタロスを捕らえ、思いっきり地面に叩き付けた。

 ミカエルが救出に向かうも、腹の口から出した舌で捕らえられ、同様に弄ばされるように叩き付け、その衝撃による瓦礫が2人にも襲い掛かり、ラルドは瓦礫の下に埋もれ、ヤマトは弾き飛ばされてしまった。


 「ラルド! 無事か⁉」


 「大丈夫…それより、オクタヴィス特務大尉とデナム大尉が…」


 ラルドが身動き取れないのに気付いたギラガスはミカエルとタイタロスを離し、真っ直ぐそのままラルドの方に向かった。ヤマトは助けに行こうとするが、流石に生身で行くのは無理だと感じ、機体に乗り込もうとするも、戸惑いも感じたが、ある怪物の攻撃によって死亡した少女の姿が脳裏に映り、


 「クソッ、ここで俺がやらなきゃ、誰がやるんだ‼」


 迷いを捨てたヤマトは直ぐ様、正体不明機に乗り込み、起動の準備を急いだ。しかし、ギラガスは徐々にラルドに迫り、ラルドはその恐怖で動けず、叫んだ。


 「来るな、来るな…ウワアァ~‼」


 ラルドの悲鳴を聞いたギラガスは一瞬びくつくように怯え、動きを止め、同時に海中を進む巨大な存在がそれに呼応するかのように大陸に向かって泳いでいき、更に財団の北京支部に保管されているセラヴィムにも異常が起こった。


 ビー! ビー! ビー!


 「何事だ⁉」


 「大変です‼ 総督! セラヴィムが起動しました‼」


 「何だと⁉」


 現場に向かうとそこでは整備士が必死になって拘束具の取り付けで抑えていたが、目が赤く発光したセラヴィムはそれに抗うように脱出しようとした。


 「無人で動いた例は聞いてはいたが、これ程とは…丸で機体自身に意思があるかのようだ…原因はどうなっている?」


 「それが…さっきから機体の制御システムが警告を出して、何度操作しても応じないのです!」


  「警告だと…まさか、この機体は何かに察知して勝手に起動しているというのか…」


 ギラガスが一瞬怯んだのに少し疑問を持ったヤマトだが、その機会を逃さず、機体を起動させ、体制を立て直したギラガスが腹の口から出した舌で捕らえようとしたところをヤマトの乗った正体不明機はタックルでそれを阻止し、ギラガスの巨体を突き倒した。


 「この機体…重量の割には意外と小回りが効くんだな。」


  体制を立て直したギラガスは邪魔された怒りでヤマトの乗った正体不明機に襲い掛かり、ヤマトの機体はそれを避けるが、腹の口から出した舌でヤマトの機体の四肢を捕らえて動きをを封じてしまう。


 「ぐっ…しまった!」


 ギラガスは顔の口を開け、溶解液の唾液を含む舌でヤマトの機体を溶解させようと顔を覆い被さり、機体はギラガスの唾液まみれになり、ゆっくり溶解させようとしたギラガスだったが、唾液まみれになったヤマトの機体は溶解するどころか、唾液まみれになっただけで機体の装甲自体は溶けておらず、無傷のままだった。

 ギラガスは何度も何度も顔の口から出した舌で舐め回すが、全く効果はなく、今度は鉤爪で削り取ろうとしたが、それでも機体の装甲に傷を付けることは出来ず、それどころか、むしろ鉤爪の方が徐々に欠けていた。


 「凄い‼ ここまでの耐久力とは…ならば…」


 ギラガスの攻撃が通用しないと見たヤマトはそのまま力付くで拘束を解こうとし、ギラガスもそうはさせまいと抵抗するが、ヤマトの機体は更にそれ以上のパワーを出し、四肢を拘束した舌4本をそのまま引き千木いた。


 ギシャアァ~‼


 舌が引きちぎられ、悲痛の叫びを上げるギラガスをヤマトの機体はタックルで突飛ばし、攻撃の構えを取った。


 「装甲だけじゃない、出力も予想以上だ! いける! これならいける‼」


 ギシャアァ~‼


 怒り狂ったギラガスは鉤爪を振り回しながら、襲い掛かってくるが、ヤマトの機体はそれを両手で受け止め、そのまま鉤爪をへし折った。しかし、ギラガスはすかさず、前足で突き倒し、再び腹の口から出した舌で四肢を捕らえ、今度は巨大な足で踏み潰そうとした。

 ヤマトはそこから脱出しようとしたが、ギラガスは全体重を機体に押し掛け、更にジャンプで徐々に地面にめり込んでいき、脱出は困難を極めていた。


 「パワーはやっぱりまだ奴が上か…この機体には武装は無いのか⁉」


 ヤマトが必死に武器を探すと、両肩に装備されているバスターアンカーが展開し、ギラガスを吹っ飛ばす程の威力を見せ、そこから脱することに成功した。


 「思ったより強力なものあるんだな…」


 体制を立て直したギラガスは敵わないと見てその場から離れようとしたが、側にラルドがいることに気付き、捕らえてから逃げようと腹の口から出した舌で襲い掛かってきた。


 「この期に及んで、まだラルドを狙うか…ん?」


 その時、ヤマトは戦いの衝撃で崩れた基地の周囲に落ちたサブマシンガンに気付き、それを拾って弾切れになるまで執拗にギラガスに撃ち込んでいき、弾切れになるとヤマトは更に機体で人差し指をクイッとしてギラガスを挑発するような仕草を取った。


 「来いよ…」


 それを見たギラガスは挑発に乗り、今度は顔だけでなく首や腹の口近くまで開く程の巨大な口を開け、溶解液の唾液にまみれた舌でヤマトの機体の全身を掴み、そのまま丸ごと飲み込んでしまった。


 「ヤマト‼」


 ヤマトの機体を飲み込んだギラガスは胃の中で消化しようとじっとしたが、ギラガスの全ての目が何かに気付くように開くと、背中が内部からの爆発によって破裂し、そこからヤマトの機体の腕が現れ、ギラガスの身体を突き破って現れた。

 ヤマト・ハイライトはギラガスを内部から破壊するためにわざとギラガスに飲み込まれ、体内でバスターアンカーを撃ち込んで破壊したのだった。 そこにマッカーシー率いる護衛部隊が到着し、


 「オルスター特務二等兵、オクタヴィス特務大尉、デナム大尉、無事だったか⁉」


 「申し訳ありません、私の指揮が至らなかったばかりに…」


 「気にすることはない。どうやら例のデーモンビーストは討伐出来た上にあのテロリストが確保している機体も鹵獲出来たようだが、あの機体には誰が乗っている?」


 「あの機体には…」


 「凄い…この機体なら、どんな相手でも…ところで、この機体に名前は無いのか…?」


  ヤマトがシミュレーターで探すが、機体の名前は何処にもなく、アンノウンとしか無かった。


  「名前は無しか…そうだな。敢えて付けるなら、ロブストハンターだ!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


  円明園を訪れたヘレナたちはそこで宮殿の中を回り、そこにいる使用人によって更に豪華な食事と西洋画の鑑賞やショー等、総督府以上のもてなしを受けた。


 「綺麗…こんな宮殿があったなんて…」


 「私も。記憶のない私でもずっと記憶に残るくらい綺麗…」


 「この円明園は清帝国時代の中国を最も栄えさせた乾隆帝が世界一の建造物としてウー家も協力してヨーロッパの様々な部分を採用して造られたところだからね!

 ところが、イギリス、フランスと戦争になったアロー戦争で破壊されてしばらく復興されずそのままだったんだけど、乾隆帝に謁見を求めたイギリス使節に同行したパラディウス家と関係を持つようになったウー家が何度もパラディウス家を通じて戦争を止めようと懇願したこともあってウー総督が再び甦らせようとして、今の形になったんだ。」


 「メトロポリスでさえ、デーモンビーストに襲われて家族を失った子供たちや地上の人たちから軽蔑されているゾーンの人たちがいるけど、ここにはそんな人たちはいない…まさに私の望んでた楽園のような場所だわ!」


 「良いこというね! ヘレナ。」


 その時、ノアが何かに気付き、


 「どうしたの? ノア。」


 「何か、変な音がするような…」


 「音…」


 「俺は聞こえないけど…」


 そのことを聞いたタオは何かに気付き、


 「ヘレナ様、危ない‼」


 「えっ…」


 タオが咄嗟にヘレナを庇うと、突然、円明園が爆破し、一気に宮殿全体が破壊されていった。


 ヘレナたちは爆破の衝撃で吹っ飛ばされたものの無事だった。


 「ヘレナ様、お怪我はありませんか?」


 「私は大丈夫…えっ…?」


 ヘレナが目の前を見ると、円明園は見るも無惨な姿となり、もてなした使用人とショーの人々は全員死亡し、死体として瓦礫と共に転がっていた。


 「どうして…何で…ああ、ああっ…」


 その時、ヘレナの脳内にヘレナを庇って瓦礫の下敷きになったヘレナとよく似た金髪碧眼の女性が死亡した時のことが浮かび上がった。


 「い、イヤアァ~‼‼」


 「ヘレナ様‼」


 「ヘレナ、どうしたんだよ⁉」


 「ヘレナ…」


 発狂するヘレナを見てノアは悲しげな表情をした。


 To be continued

 次回予告


 新機体ロブストハンターを戦力に加えるも、円明園の爆破テロによってあるトラウマを思い出したヘレナは部屋に閉じ籠ってしまい、ウー総督は報復のため、インドと東南アジアを中心に活動する反連合国テロリストの鎮圧に軍を動かし、前線基地の香港に向かわせたが、それを狙うかのように非常に強力なタイプのデーモンビーストが上海を襲撃、破壊しながら北京に向かっていった。

 殆どの軍がテロ鎮圧で動けない中、ラルドとヤマトはセラヴィムとロブストハンターで迎え撃ったが、そのデーモンビーストもまた不可解な行動を取った。


 次回「破壊の牙」その機体は少年を戦いの運命へ導く。

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