3冊目<備える事、蓄える事>
「意味がわからない……」
修復の法術を使ったらコトノと私の日記帳だったものが綺麗に消えて私の日記帳だけが残り頭を抱えていた。
「意味がわからないよ……」
「考えてもしょうがないんじゃないかなぁ……」
「そうだけど~、そうなんだけど……」
『導き』の札を引いたら意識が飛んで光球に誘導されるように修復したら私の日記帳だけが残るなんてことを誰が想像できるだろう。
遺物と言われる物が溢れているが未だに構造や製作法が判明していない物の方が多い。
それなのに
「構造や製作法が判明して複製もされているその日記帳で起きる新しい現象が起こるなんて誰も想像しないよねぇ……」
「きっと報告しても誰も信じてくれない、あの時みたいに……」
旅に出るきっかけとなったこの日記帳で、昔負った傷が疼くなんて思ってもいなかった。
「ケイトが見たっていう白昼夢も意味がわからないよねぇ」
もぐもぐと食事を口に運びながらコトノも苦笑い。
「考えるだけ無駄なら一旦横に置いて出来る事すればいいじゃない?」
「……やめた」
「……うん?」
不穏な気配を私から感じ取ったのかコトノの手が止まる。
「今日はお休みにする!考えても駄目なら一回頭の中空っぽにする、してやる!!」
確か、書管施設がここにもあったはずだ。
そこで読みたいもの探して読みふけろう。
「じゃ、夕方には戻ってくるから。」
そうして私は宿を飛び出していった。
「……私、悪くないよね……?」
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書管施設の良いところは貴重な資料や文献、娯楽のための本など幅広く所蔵しているところだ。
文字が読めるようになってからは日が暮れるまで入り浸って怒られていたのも数少ない良い思い出かもしれない。
(さて、この書管にはいったいどんな《お宝》本|が眠っているかな)
私は時間も忘れて目に着いて気になった本を片っ端から手に取っては読み漁っていく。
その中で気になった文献が1つあり、その気に掛かった部分に対して深堀りを始めていた。
(前回の発生は……年前、前々回の発生は……)
関係する文献を集め、情報を整理する。
(これはほぼ一定の周期なのは偶然?完全に一定じゃないのは何らかの誤差?)
調べた限りでは十数年周期でなんらかの災害が発生している。
その全ては自然災害もあれば生きていた遺跡による災害。
そして、生命の《理》ことわりから外れた〝ネクシスタフェロウ|〟の襲来。
明確ではないにしても調べる限り無理矢理、該当しそうな災害は何かしら発生している。
(これが私の誇大妄想じゃなければ次の大災害はここ数年の間に起きるはず……)
どうしても嫌な予感が拭えない。
一旦コトノに相談しよう。
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「ケイトの予想は当たってると思うよぉ」
書管で調べた情報と経緯を私自身の推測を含めて相談したら帰ってきたのが先ほどの言葉だった。
「〝研究者の集い〟でもなんか微妙に焦りみたいなのを感じてたし交渉前の雑談でも色々と備蓄してるような事言ってたし」
天候に左右される事もある私達の主食である植物は天候が不安定だと育ちが悪いというのは誰もが知っている事実で、国や街でそういった時期が出てもそこに済む人達が飢える事を防げるように備蓄しているのが〝当たり前〟だ。
それをコトノが気に留めたくらい違和感のある会話だったのだろう。
「私達に出来る事は―――」
「何もないねぇ……重要な備えはお偉いさんたちが仕切ってると思うし」
「……そうね」
そう、今更私達が気が付いても何も出来る事は―――
「出来る事あるよぉ」
「えっ?」
「いつも通りの遺跡探索♪」
かも当たり前のようにコトノが言った言葉に焦りが支配していた私の思考は一気に開けた。
「そう、だね。私達は私達の出来る事をすれば良いよね」
「そうそう♪明日にでも出発できるくらいには準備しておいたから。それと次に探索できそうな遺跡の情報も」
「―――ありがとうコトノ」
少しだけ気恥ずかしさを感じて急いで寝台に潜り込む。
安心感から直ぐに眠気が来て意識が落ちる瞬間、コトノが何かを言った気がした
「―――私が―――守るから」