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第十六話 鋼を断つ剣

 半狂乱になったブラスモンキーは、さっきトキさんにやったみたいに腕を振り回して突撃してきた。

 しかし、奴がそうする前に対処は終えた。

 奴の微妙な表情、体重の移動、筋肉の動かし方などから、俺の取るべき行動は既に判断した。


「かかってこい猿!」

「ギャアア!!」

 こうやって挑発すれば攻撃はランダム性を失う。

 当たり前だ、滅茶苦茶に怒っている者が良く考えて攻撃を選ぶことはできない。

「ガァ!」

 奴は跳び上がって両手を握りしめ、ハンマーで殴るように振り下ろした。

 もちろん俺は回避済みだ。

「おらぁ!」

 背後から斧を叩きつけた。今度はめり込んだ感触が無かった。スキルを全身にまんべんなく使ったんだろう。


 振り向きながら腕を振り回す。


「あぶなぁ!」

「ギャワ!?」

 しゃがむのが間に合った。スキルを使っていると急に頭の中にイメージが浮かび上がるので、それに対応できなければあっさりとやられてしまうだろう。


「くたばれ!」

 トキさんを真似て金的を蹴った。

「ホッホー!」

 奴は後方に跳んで避けると、またニヤニヤと笑っている。

 どうやら本当に頭が良いみたいだなこの猿は。しかし、同じことを繰り返すことが出来ないのなら、新しい事を試すまで。

 石を拾って思い切り投げた。

「ウキキッ」

 奴は余裕の表情で躱して見せた。しかし俺には、その回避先が見えている。奴の鼻先の位置を事前に予測し斧を振り上げておいた。

 金属だって斧でぶっ叩けば少しはへこんだり傷がつく。猿は人より鼻が良いだろう。ということは、神経が集中してるはずだ。

「ドンピシャ!」

「ギャンッッ!!」

 奴は鼻血と涙を流し怯んだ。推測は当たったらしい!

「もういっちょお!」

「ウガガァ!!」

 

 腕を振り回し危険を取り除こうとする。

 

 

「おっと!」

 欲張らずに走って距離をとった。

「フーッ、フーッ、フーッ!!!」

 牙を剥いて全身の毛を逆立たせている。奴は今ので完璧にキレたらしい。怒ってくれた方が俺に都合がいい。もっと怒らせてやろう。

「こんなチビにやられて泣いてるよ!あーあ、もう少し優しくしてあげたら良かったかなぁ?ねぇお猿さん?」


「…………」


 奴はピタリと動きを止めた。流石に降参か?

 視界の端で、デレクさんとトキさんが音を立てず距離を取ろうとしているのが見えた。よし、二人はまだ動けるようだし、判断も的確だ。

 俺達は生き残りを賭けて戦っている。勝つことが目的じゃない。逃げた方が良いなら逃げる!

 さぁ、ブラスモンキーよ、お前も怪我をしたいわけじゃないだろ?お前こそ逃げた方が良いんじゃないか?

 不意に奴の情報が頭に流れ込んで来た。それは体を動かすイメージと大雑把な感情ではなく、明確な意志だった。


 負けたまま逃げない。戦って死ぬ。誇りを守る。命を賭ける。


「か、かっこいいじゃん……」


 奴を取り巻く雰囲気が変わった。目に見えないエネルギーがあふれ出し、金属化にも変化が見られた。

 重厚で、美しさすら感じる。まるで博物館に展示してある研ぎ澄まされた日本刀だ。


「フーッ……」


 俺を睨む奴の眼差しには知性が宿っているように思えた。まずい、勝てる気がしない。


 全力での右アッパー。


「フシッ!!」

「うおおっ!!」

 体を後ろに反らしたが、攻撃が掠った前髪が何本か千切れた。


 右腕でひっかく。


「ウガァ!!」

「いっ…!」

 回避しきれず頬を掠め、奴の爪を食らった若木が切断され倒れた。明らかにスピードが増している。

 俺のスキルは身体能力を上げるわけじゃない。ただ事前に分かるだけで、俺の思考を上回る速さで攻撃されたらお終いだ。


 逃がさない。連続でやる。


 「頭使いやがって……!」

 「ゴアアアア!!!」

 王者に相応しい咆哮を放つと、奴は大振りの攻撃を止め、小刻みに爪や拳を振り回した。

 俺がバックステップしてもビッタリと張り付いて攻撃を止めないし、カウンターを挟む余裕が無い。

 どうする、二人はもう限界だ。俺を助けようとしたら死ぬかもしれない。しかし、俺一人でこの猿を倒せる気もしない。

 どうする、どうする!


「ガオッ!!」

「あっ!」

 斧を弾き飛ばされた。俺はもう一本を腰から抜いて構えたが、奴の攻撃を正面から受けると砕け散ってしまった。


 あっさりと武器を失ってしまった。迷いが出たか。


「グルゥゥゥ……」


 殺す。


「俺を、殺す……?」

 覚悟を決めろ、太刀山一志!奴の目玉や口の中は流石に柔らかいはずだ。大怪我してでも攻撃を当ててやる!

「やってみろボス猿!!!」

「ウギャアアアーー!!!」





「騎士剣、デュラハン」


 火花が散り、銀色の線が空を走った。一拍遅れてブラスモンキーの首が地面に落ちる。

 俺は光を失った奴の瞳に見つめられた。


「遅くなったな1969。他の看守へ言い訳するのに手間取った」


「ロジャース、さん」


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