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銀河戦記/拍動編  作者: 神崎理恵子
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第五章 Ⅵ 捕虜収容所へ向かえ

Ⅵ 捕虜収容所へ向かえ



 ノーチラス号艦橋。

 敵艦の目前に迫っている。

「敵艦に高エネルギー反応有り!」

「エネルギー反応だと! エネルギー兵器なのか?」

「エネルギー増大中!」

「今更引けるかっ! このまま突っ込むぞ!」

 目の前のスクリーンが真っ白に輝いたかと思うと、突然ブラックアウトした。

 次の瞬間、艦内が青白色の光に包まれた。

「こ、これは!」

 それが最期の一言だった。



 粒子砲が炸裂し、強烈なエネルギーが敵艦に襲い掛かる。

 金属が一瞬にして昇華して消えてゆく。

 ほぼゼロ距離射撃なため、敵艦を破壊した衝撃がこちらにも降りかかる。

 激しく震動する船内。

「だ、大丈夫なのか?」

 ビューロン少尉が尋ねる。

『大丈夫デス。バリアー、ヲ最大ニ展開中デス』

 平然と答えるロビー。

「バリアー。い、いつの間に……」



 敵艦が蒸発四散しても、アムレス号は無事に生き残っていた。

「ふう……。死ぬかと思ったよ」

 ビューロン少尉が、肝を冷やしたような声で言った。

 そして、そんな度胸のある強心臓のアレックスを見直してもいた。

「さて、アレックス様。ソドム基地に向かうのは無理と分かりました。どちらへ向かいます?」

 エダが質問する。

「そうだな……。銀河オリオン腕全域は、ケンタウルス帝国の支配下にあると言っていいだろう。ここに居場所はない。だとすれば我々が生き残るためには、新天地に行くしかないだろう」

「新天地? オリオン腕から渦状腕間隙を超えて、隣のペルセウス腕か射手腕へ?」

 ビューロン少尉が驚く。

「この船は一万光年すらもワープできる船だ。行けないことはないだろう」

「それには燃料をすべて消費すると聞いた。向こうにいけても、ただ漂流するだけだろ? 恒星の重力に引かれて燃え尽きるだけじゃないか」

「言ってみただけだ。ただ、渦状腕間隙のどこかに、対岸に渡れる浅瀬のような箇所があるはずだ」

「探すのか? 無駄な時間を浪費している間に、ケンタウルスの連中に見つかってやられるぞ」

「逃げ回るだけならどうにかなるさ」

「それに向こうに行けても、この船には女性がほとんどいない。滅亡は時間の問題だ」

 イレーヌをちらと見てから尋ねる。

 堂々巡りな水掛け論になってきた。

 エダが助け船を出した。

「多くの女性が囚われている強制収容所があります。急襲して解放して上げましょう」

「それ、乗った!」

 目を輝かせて賛同するビューロン少尉だった。

「そうだな。その収容所へ行こう」

 アレックスも同意する。

「しかし、船の収容人数には限りがあります。収容次第、別の秘密基地に向かいます」

「まだ基地があるのか?」

「もちろんです」

「分かった。取り合えず、その強制収容所に向かおう」

『了解。進路変更! 惑星アンガス、ニ向カイマス』

 ゆっくりと方向転換してゆくアムレス号。



 トラピスト連合王国首都星トランター。

 宮殿謁見の間にて、臣下の報告を受けるクリスティーナ女王。

「概ね国民は平静さを取り戻したようです」

「それは良かった」

 何よりも国民のことを安寧する女王には、その報告が一番だった。

 報告は続く。

「放送局などの公共機関の長官が交代し、コミッショナー側から推薦された人物が就任しました」

「評議会には、ケンタウルスから派遣された議員が自動的に三分の一の議席を占めることとなりました。次の選挙から施行されます」

 そんな人事予算に加え、ケンタウルスに支払う拠出金と合わせて、総額は国家予算の三割に達していた。さらに王室財産の約半分が没収され、女王の別邸でもあったグリンガム宮殿は、セルジオ弁務コミッショナーの執務用に徴用された。

「財産の簒奪、悪辣行為や暴行といったものは起きていません。軍の統制が取れているようです」

「我が国の軍はどうなっていますか?」

「解散はさせられていないですが、当然のごとくケンタウルス軍に編入させられました。但し、将軍職は強制退官ということに」

「処分はされていないのですね」

「はい。退職金や年金なども規定通りに支払われます」

 軍の高官を処分すれば遺恨を残し、反乱の糸口とならないようにとの判断だろう。



 グリンガム宮殿、セルジオ執務室。

 部下からの報告をひとしきり聞いた後で、尋ねるセルジオ。

「ところで、アムレス号の行方は分かったのか?」

「アムレスを追っていたノーチラス号が消息を絶ちました。現在、消滅地点に調査艇を派遣しています」

「やられたのか?」

「おそらく……」

「あの艦長のことだ。ただではやられないだろう。何かしら残しているはずだ」

 その時、部下の携帯端末が鳴る。

「失礼します」

 部下がそれに受け答えする。

「……分かった。引き続き続行せよ」

 端末を消して、

「調査艇からの連絡です。ノーチラス号の残骸を発見しました」

「やはり、やられたか。あの艦長とて勝てないアムレス号って何者だ?」

「返り血ならぬ、ノーチラスの残骸を浴びたのでしょう、残骸の跡が一方向へと延びているとのことです」

「その軌跡の延長線上には何かあるか?」

「捕虜収容所アンガスがありますね」

「よし、艦隊を向かわせろ!」

「かしこまりました」

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