日常
これは、とある女性の話。
女性には将来を約束した男がいた。
約束と言っても、親が勝手に決めたことであり、
女性にとってその男はどうでもよかった。
「ただいま」
疲れた様子で彼が帰ってくる。
「おかえりなさい、晩御飯出来てるよ」
彼は小さく頷き、自室に行く。
最近はまともに会話もしておらず、
いつの間にか食事も別にとるようになっている。
「はぁ…」
親が決めたこととはいえ、この暮らしに私は、
ウンザリしていた。
「いつまで続くんだろう……」
出会った頃はもっと楽しかった。
あの頃は毎日が楽しみで溢れていた。
「もう嫌だよ……」
私は、静かに涙を流す。
私は、涙を流しながら、自室に行く。
「たく…また余り物かよ……」
彼の小言が聞こえる。
いや、きっと聞こえるように言っているのかもしれない。
「たく…料理くらいまともに作れよ……
こっちは仕事で疲れてるんだからよ…」
彼は文句を言いながら食べているようだった。
(ぐ…ううぅ…)
そんな彼に何も言えなかった。
ほんとなら怒鳴り別れるべきなのだろう。
私にはそれが出来なかった。
言う勇気が無いのだ。
文句を言いながら、私の苦労も知らないで、
彼は私の用意した物を食べてる。
そんな状況を想像するだけで吐き気がする。
「わたしに…勇気があればな…」
そう呟き、私は目を瞑る。
もう全部忘れて自由になりたい。
そう思いながら。
けたたましく鳴り響くアラームで、私は目を覚ます。
「あ!朝ごはん!」
時計を見ると七時を表示していた。
寝坊してしまった、そうだ、お風呂にも入っていない。
(あぁ…もぅ…)
着替えもそのままに、リビングへと行く。
(あれ、なんだろう)
リビングに行くとテーブルの上に1枚の紙が置いてあった。
見てみると置き手紙のようだった。
「朝飯くらい、ちゃんと作れよ、朝飯食い損ねただろ、
あと、今日は遅くなるから晩飯いらないから」
そう書いてあった。
(確かに作れなかったのは私の落ち度だ…けど…)
パンを焼く時間くらいはあったはずだ。
私はその手紙を破り捨てる。
私は、行き場のない怒りをゆっくりと鎮める。
こんなことで怒るより、先にやるべき事がある。
洗濯もそうだし、ごみ捨てに買い物。
やるべきことがまだ残っている。
こんな怒りに時間を費やす訳にはいかないのだ。
私は、自分に喝を入れ、
「今日も1日頑張らなきゃ…」
私は小さく呟くのだった。
心に少しずつ大きくなる闇を抱えて。
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では、また次回お会いしましょう!