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魔女紀行記  作者: 魔女
8/10

日常

これは、とある女性の話。


女性には将来を約束した男がいた。

約束と言っても、親が勝手に決めたことであり、

女性にとってその男はどうでもよかった。


「ただいま」

疲れた様子で彼が帰ってくる。

「おかえりなさい、晩御飯出来てるよ」

彼は小さく頷き、自室に行く。

最近はまともに会話もしておらず、

いつの間にか食事も別にとるようになっている。


「はぁ…」

親が決めたこととはいえ、この暮らしに私は、

ウンザリしていた。

「いつまで続くんだろう……」

出会った頃はもっと楽しかった。

あの頃は毎日が楽しみで溢れていた。


「もう嫌だよ……」

私は、静かに涙を流す。

私は、涙を流しながら、自室に行く。


「たく…また余り物かよ……」

彼の小言が聞こえる。

いや、きっと聞こえるように言っているのかもしれない。

「たく…料理くらいまともに作れよ……

こっちは仕事で疲れてるんだからよ…」

彼は文句を言いながら食べているようだった。

(ぐ…ううぅ…)

そんな彼に何も言えなかった。

ほんとなら怒鳴り別れるべきなのだろう。


私にはそれが出来なかった。

言う勇気が無いのだ。

文句を言いながら、私の苦労も知らないで、

彼は私の用意した物を食べてる。

そんな状況を想像するだけで吐き気がする。


「わたしに…勇気があればな…」

そう呟き、私は目を瞑る。

もう全部忘れて自由になりたい。

そう思いながら。




けたたましく鳴り響くアラームで、私は目を覚ます。

「あ!朝ごはん!」

時計を見ると七時を表示していた。

寝坊してしまった、そうだ、お風呂にも入っていない。

(あぁ…もぅ…)

着替えもそのままに、リビングへと行く。


(あれ、なんだろう)

リビングに行くとテーブルの上に1枚の紙が置いてあった。

見てみると置き手紙のようだった。


「朝飯くらい、ちゃんと作れよ、朝飯食い損ねただろ、

あと、今日は遅くなるから晩飯いらないから」

そう書いてあった。

(確かに作れなかったのは私の落ち度だ…けど…)

パンを焼く時間くらいはあったはずだ。

私はその手紙を破り捨てる。


私は、行き場のない怒りをゆっくりと鎮める。

こんなことで怒るより、先にやるべき事がある。

洗濯もそうだし、ごみ捨てに買い物。

やるべきことがまだ残っている。


こんな怒りに時間を費やす訳にはいかないのだ。

私は、自分に喝を入れ、

「今日も1日頑張らなきゃ…」

私は小さく呟くのだった。

心に少しずつ大きくなる闇を抱えて。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

コメントや評価をお願いします。

では、また次回お会いしましょう!

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