アルビタ
突如として現れた男たちは
アルビタを見て問いかける。
「お父さんか、お母さんは居るかい?」
アルビタは静かに頷く。
「そうか、ありがとな坊主」
男たちは目配せする、すると何人かはどこかへ
走り去っていく。
「坊主、あがらせてもらってもいいかな」
男はしゃがんでアルビタの目を見つめながら、
そう言う。
「う、うん…」
まさに蛇に睨まれたカエルのような状態だ。
アルビタは怖がりながらも男を家の中へと案内する。
「父親はどこの部屋にいるか分かるかい?」
男は優しい声でアルビタに問いかける。
「あの奥の部屋…たぶん」
男はアルビタの頭を優しく撫でると、
「ありがとな」
そう言って父親の部屋の方へと歩いていく、
アルビタは初めて撫でられた事への不思議な感情と
男へと恐怖の感情が入り交じってどんな顔をしていいのか、分からなかった。
男の背中はとても大きく広く感じたのだった。
「はじめてだ…」
しばらくすると男が戻ってくる。
「待っていたのか?」
アルビタはその問いに静かに肯定するように、
首を振る。
「そうか、母親はどこにいるか分かるか?」
アルビタは、母親の部屋の方を指さす。
「ありがとな、もうすぐ終わるからな」
男はそう言って母親の部屋の方を行く。
(もうすぐ終わるってなんだろう…)
その答えはすぐやってきた。
奥から悲鳴と怒声が混じって聞こえてくる。
アルビタはその声に驚き、腰が抜ける。
奥からは、目が血走った母親が走ってやってくる。
「おまえがぁぁぁ!おまえのせいかぁぁぁ!!」
母親は、腰が抜けて動けないアルビタの首を絞める。
「あ、ぐ…うぅ…」
「おまえは…あくまだ…きえろ…きえろぉぉぉ!」
アルビタは悲鳴をあげることもできず、
意識がゆっくりと遠のいていく。
そして視界が暗転する。
「あらあら…随分と物騒ねぇ」
誰かが話しかけてくる。
「まったく…ギャーギャー騒ぐから
やっちゃったじゃないの…」
アルビタはゆっくりと目を開ける。
そこには、母親だったものが転がっていた。
傍には2人いた、さっきの男の人と、
知らない女性。
よく見ると、男の方は膝をついていた、
しかし、あるべきものが無かった。
頭だ、男には首から上がなかった。
「ひぃ……」
初めて見る死体、まるで全身から血の気が引くような感覚を覚える。
「あら、起きたの?」
女性は、くすくすと笑いながらアルビタを見る。
「貴方のお母さんなら、そこよ」
アルビタは、母親の亡骸を見る。
何故だろう、男を見た時とは違う感情。
「は…はは、天罰だ、俺を…いじめるから!
あの時も!あの時も!おれはっ!辛かった!」
アルビタは糸が切れたように今まで溜めいたものを、
吐き出す。
「まったく…うるさいわね、貴方も同じようになりたいの?」
女性は嫌そうな顔をアルビタに向ける。
「俺は…死にたくない…俺はこの地獄から抜け出すんだ!」
アルビタは、女性を見つめる。
「それなら、力を貸してあげましょうか?」
女性はアルビタに問いかける。
アルビタは、その事に驚く。
「私の力があれば、助けられる
辛かったのでしょう?それなら私といらっしゃい」
女性は、アルビタに手を伸ばす。
アルビタは迷っていた。
しかし、まだ子供だ、少しでも前に進めるのなら、
全てを利用する。
(そして、生きるんだ)
アルビタは女性の手をしっかりと掴む。
その目には確かな希望に満ちていたのだった。
とある家で起きた事件。
黒服の男性数人と家族が殺されたという事件だ。
父親は撲殺、母親は首から上がなく今でも見つかっていない。
子供は首を絞められたことによる窒息死。
今でも犯人は見つかっていない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
よければ、コメントや評価をして頂けると嬉しいです。
では、また次回お会いしましょう!