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悪役令嬢の専任メイドになったので完全武装(トータルコーディネート)のお手伝いをします

作者: けっき

 この世に人類が生まれてから女が流した涙を全部集めたら、さぞかし大きな海ができることでしょう。

 お嬢様は今日も静かに一人で泣いているようです。扉越しでも啜り泣きの声など漏れてはきませんが、私にはわかります。


 お嬢様──私の主人、侯爵令嬢エリカルネア・ヒースレン様はとても気丈な淑女(レディ)です。何があっても取り乱さず、凛と背筋を正しています。ですから街に出た際にたまたま婚約者のアレスト様とすれ違ったときも、彼が隣に伯爵令嬢ココット様をお連れだったときも、エリカルネアお嬢様は努めて平静に二人にご挨拶なさったのでした。


 ──ごきげんよう、アレスト様。そしてココット様。まさかまたこんな形で出くわすとは思いもよりませんでした。アレスト様におかれましてはつい先日わたくしの訴えた言葉をご理解いただけなかったのでしょうか? わたくしは節度のない交友をこれ以上続けることはあなた方の立場を危うくするだけですと確かにお伝えしたはずですが……。


 ──やれやれ、またお説教か。街へは羽を伸ばしにきたのにまったく我々も運がない。いいかい? エリカルネア嬢、白昼堂々私とココット嬢が出歩いているのは二人の付き合いに恥ずべき点などないからだ。君はすぐに私の不貞を疑ってあれこれ言うが、君が騒ぎさえしなければこんなこと問題にもならないのだよ。いい加減私を監督しようとするのをやめてくれ。ただでさえ君といると息が詰まる。ほら見ろ、ココット嬢だって君に怯えているじゃないか。


 そんなやり取りがあった後、アレスト様はかたかた震えるココット様の肩を抱いてさっさと行ってしまいました。街角に取り残されたお嬢様はしばしの間立ち尽くしていましたが、やがてなんでもない顔で停めていた馬車にお戻りになりました。

 そのときにはまだ「用事を片付けにまいりましょう」とまっすぐ前を向いておられたのですが──。


(……お嬢様……)


 今お嬢様は部屋にこもり、着替えさえ済ませようとしません。こんなことは初めてです。いつもなら泣き伏せるにせよもう一時間はこらえます。度重なるアレスト様の裏切り行為にお嬢様の心は限界なのでしょう。こうして扉の前に立つ私も煮え立つ怒りを抑えきれず、このままでは貴族の館を二軒ほど業火で焼き尽くしそうでした。


 お嬢様は秋田県(とんでもない田舎)からやって来た私を拾ってくださった恩人です。異世界召喚、古風に言うなら神隠しというやつです。

 三年半前、ふと気がつくと私は真夏の秋田ではなく初冬のウォンダン王国にいました。幸運だったのは真夏の秋田から真冬の秋田に飛ばされなかったことでしょう。薄着で凍える私を見つけて「そこのあなた、どうしたの?」と声をかけてくださったのが十四歳になったばかりのエリカルネアお嬢様でした。

 私はお屋敷の広い前庭をさまよっていたのですが、お嬢様は私を不審者とは見なさず、哀れな庶民の娘として雇い入れてくださいました。あまりに奇妙な私のいでたちに「神が遣わせた稀人(マレビト)かもね」とお考えになったようです。


 お嬢様は出会った頃から徳の高い方でした。日々善行を積み、身を慎んで、それらを自慢することなく、粛々と己の務めと思ったことをこなしていかれる方でした。

 私がお嬢様に感銘を受け、敬愛の念を抱くまでにひと月もかからなかったと思います。そうして私はお嬢様への忠誠を誓い、故郷秋田を忘れたのです。


(ああ、それなのに私は全然エリカルネア様のお力になれていない……!)


 一向に開く気配のない扉の前で私はぎゅっと拳を握りしめました。

 渦を巻くのはいつも心の片端に引っかかっている物思い。どうしたら大切なお嬢様が誤解されずに済むのかという深刻かつ恒常的な問題でした。

 エリカルネアお嬢様は、控えめに言って見た目がいわゆる悪役令嬢そのものなのです。


 ド派手にきらめく金髪は一寸の狂いもなくピシリと縦ロールに巻かれ、吊り上がった目はナイフのごとく鋭い睫毛をこれでもかと生やしています。

 せめて瞳が優しいブルーやブラウンなら良かったのですが、お嬢様の双眸は頸動脈を掻き切ったようなスカーレットで、その凄まじい眼力たるや正直私も初めてお会いしたときは「マフィアの娘!? 私もしかして殺されちゃう!?」と動けなくなったほどでした。


 アレスト様はそんなエリカルネア様が気に入らず、お気に入りの伯爵令嬢とばかり逢引きしています。伯爵家の娘と言っても容姿が愛らしいだけで常識が備わっているかどうかは知れません。「アレスト様は強引な方だから弱小貴族は誘いを断れないのよ」とお嬢様は庇いますが、私にとってはお嬢様を傷つける愚物は全員悪ですから。


 アレスト様はエリカルネアお嬢様を性悪女だと侮辱します。金にがめつく、婚約者に自由も認めず、常に周囲を支配せんとする血も涙もない女だと。

 私に言わせればそれはただお嬢様が真面目なだけです。アレスト様の放蕩は今のうちに(いさ)めなければ結婚生活が危うくなるし、過度な自由は身を滅ぼすと真摯に説くのを愚物1が曲解しているのです。

 金銭感覚に関しても、慈善事業を複数手がけるエリカルネアお嬢様のほうがアレスト様よりずっとまともで信頼できます。お嬢様は照れ屋で謙遜が激しく、ご自身の美点をまったく主張しないため伝わりづらくはありますが……。


(そう、だから見た目通りの悪役令嬢なんだって誤解されがち……! 本人は毎朝早くから身を清めて祭壇の清掃とかしちゃう善の優等生なのに……!)


 確かにエリカルネアお嬢様はおっとりした令嬢ではありません。起きているときも眠っているときも真顔です。表情筋に太めの針金でも通っているのかと疑いたくなる日もあります。稀に微笑を浮かべたときさえ圧が強すぎ、耐性のない者はほとばしる威厳パワーにひれ伏してしまうほどです。

 でもそんな圧倒的強者の風貌に生まれついたのはお嬢様のせいではないではありませんか。

 愚物1はお嬢様の内面を知ろうともしないのです。これから長い人生を共に歩んでいこうというのに。自分とはあまりにも対照的なココット嬢を(はべ)らせた彼を見て、お嬢様は張り裂けんばかりに胸を痛めているというのに。


(やっぱり私がやるしかないわ……!)


 静まり返った寝室を背に私は決意を固めました。

 お嬢様が聖女にも等しい善女であること、必ず人々にわからせてやるのだと。

 一日の業務が終わると私は私に与えられた専任メイドの個室へと戻りました。そうして三年半前にこの世界に持ち込んだ鞄をそっと開いたのです。




 ***




 私が召喚されたこちらの世界には、魔法はなくても神は存在するようです。会ったことも声を聴いたこともありませんが、力を感じることはあります。

 開いた小さなクローゼットには洗い替え用のメイド服、お嬢様から贈られた晴れ着と私服のワンピース。それらに紛れるようにして化学繊維のブラウスとフレアスカートが吊られています。


 奥から引っ張り出したバッグは硬めの綿地にフリルのついたカジュアル系のトートでした。トートバッグは頑丈かつ大容量なので荷物が多いとき便利です。私はここにあるものを保管していました。


 こつり、こつり。硬質な音を響かせてそれらを机に並べていきます。手鏡にメイクブラシにファンデーション。チークにシャドウにアイライナーは色数が豊富にあって取り出すだけでひと仕事でした。


 実はこれらのほとんどは私が『召喚』したものです。どうやらここの神様は善行ポイントを貯めると異世界への小ゲートを繋いでくれるようなのです。


 この三年半、私はひたすらメイク用品を集めました。自分に似合うものではなく、お嬢様に似合うものを。いつかお嬢様からお声がかかり、メイク担当に抜擢される日を夢見て。

 ウォンダン王国では女性が化粧を始めるのは十八歳。エリカルネアお嬢様はまだスッピンということです。スッピンなのに睫毛は天高く上を向き、口唇は紅薔薇よりも赤が濃く、眉は細く切れ上がっているのです。


 キツめの美人──それは最高なものですが、お嬢様の人格は決してそうではありません。心無い言葉を吐かれれば真顔のまま固まりますし、周りに迷惑をかけまいと苦悩は隠してしまいます。頼る人のない私を拾ってくださった一事からもわかるように本当にお優しい方です。あの愚物2──いえココット様にまで「わたくしとアレスト様の間でおろおろさせてしまって申し訳ないわ」と気遣いを見せるのですから。

 部屋にこもる前、エリカルネアお嬢様はぽつりと呟かれました。「わたくしがココット様のように温かさや愛らしさを備えていれば、アレスト様にも不満を抱かせず済んだのかしら」と。


 お嬢様を苦しめるものは全部悪です。だから私はお嬢様に不要な誤解を生じさせる高圧的な顔面をなんとかしてさしあげたいのです。

 だって私を秋田県から呼び出したのは心細くて仕方なかったお嬢様だと思うのです。人間を召喚できるほど善行ポイントを貯められるのはあの方を置いてほかにいません。なら私は、私の持てるすべてでお嬢様を支えなければ。




 ***




「今日はわたくし具合が悪いの。食事は部屋でいただくわ。チオ、悪いけれどあなたが運んできてくれる?」


 翌日エリカルネアお嬢様は朝のお勤めが終わるなり私にそう申しつけました。

 瞼が少し赤いのは泣き腫らした痕でしょうか。勤勉なお嬢様がお休みしたいと思うほど参っているのが私にもつらく、愚物への憎しみが強まります。


「一日お部屋で過ごされるので?」

「ええ、そのつもり。少しゆっくりしたいの」


 目を伏せたお嬢様の、憔悴したお姿に私はぎりりと歯軋りしました。もはや猶予はありません。私は不躾なのを承知でお嬢様に問いかけました。


「では本日の装いはすべて私にお任せいただいてもよろしいでしょうか?」


 初めはきょとんと首を傾げたエリカルネアお嬢様でしたが、どうせ部屋から出ないなら好きにさせても構わないと考えてくださったのでしょう。こくりと頷くとすぐに「いいわ」と快諾してくださいました。


「ベッドで横になっていても悪い考えに飲まれてしまうだけだものね。お前がわたくしの身を整えてくれるならせめてソファで過ごせそうだわ」


 お嬢様は私がお嬢様を案じる気持ちを決して無下にせず、こうしてきちんと受け止めてくださいます。このお優しい言葉が相手によっては遠回しな厭味に聞こえてしまうなんて、お嬢様は本当に損をしています。

 私は申しつけられた通りお嬢様の部屋に朝食を配膳し、食事が終わると皿を引き揚げて厨房に返しました。そしてお嬢様のもとへは自室から例のバッグを持ち出してから戻りました。


「お嬢様。本日は十八歳のお誕生日に向けてメイクもさせていただきたいなと思っております。ですのでまずフェイシャルエステから始めさせてもらってもよろしいですか?」

「フェ、フェイシャルエステ?」


 聞き慣れない語句を耳にしてエリカルネアお嬢様が一瞬困惑を露わにします。本当は湯浴みやオイルマッサージも含めたいところですが、あまり大掛かりにすると却ってお嬢様を疲弊させるだけなので今回は慎みました。


 お嬢様には楽なローブをお召しになっていただき、柔らかな布張りソファに横になっていただきました。私は熱めの湯に浸けたタオルを絞り、その蒸気をお嬢様のお顔にそっと当てていきます。こうすることで毛穴が開き、古い角質が落としやすくなるのです。ですがエリカルネアお嬢様はまだ若く美しい肌の持ち主なので、どちらかと言えばこれは真顔のまま固まった表情筋を弛緩させ、リラックスしてもらうのが目的のものでした。


 お嬢様はなぜ笑顔や泣き顔、感情を見せるのが得意ではないのでしょうか。たとえ顔面が強くとも表情次第で印象は変わるものなのに。私には一つ仮説があります。それはそもそもお嬢様のご両親が無表情だということです。


 子供はさまざまな事柄を模倣によって学びます。お嬢様の周囲にはお嬢様に笑いかけてくれる者、涙を見せてくれる者などが極端に少なかったのではないでしょうか。

 絶対零度の空気とは裏腹にヒースレン家の夫妻は子供に愛情深く、お嬢様が八つになるまで乳母も雇わず自らの手で育て上げたと聞いています。であればエリカルネアお嬢様は幼少期に表情筋の動かなさと慈愛を学ばれたのでしょう。家族間では唇の片端さえも緩めずに意思疎通が可能だから矯正はされなかったのだと思います。


 八歳からの教育を担った家庭教師たちも状況を大きく変えたとは思えません。むしろ厳粛な雰囲気を漂わせるお嬢様の前では同じく厳粛であろうと努めたのではないでしょうか。なぜならお屋敷の使用人たちがまさしく「そう」だからです。ほんのわずかでもエリカルネアお嬢様が微笑したり涙したりするようになったのは、私がここに来てからのことなのです。


(お可哀想なお嬢様……! お忙しいお父様とお母様には寂しいと言うこともできず、使用人には距離を置かれて……! 挙句婚約者は無理解だし、浮気者だし、もう、もう……ッ!)


 感情の起伏が指圧に出ないように私はお嬢様のお顔をマッサージしました。冷めてきたタオルを剥ぐと化粧水、美容液を塗りたくります。


「なんだか気持ちいいわね。お前にこんな技能があったとは驚きだわ」

「お褒めにあずかり光栄です。もし皮膚がピリピリしたり、合わないと感じたときはすぐに仰ってくださいね!」


 お嬢様の肌はぷるぷるに潤い、これ以上潤したら泉が湧いてしまうのではと錯覚するほどでした。涙の痕も朝食の間に引いており、ただただ艶めく尊顔が私の目の前にあります。

(ああ! これからこの美のキャンバスに好きな粉を好きなように塗っていいだなんて……!)


 私は歓喜に悶えました。ですがその前に服を選ばねばなりません。化粧してから着替えると布につくかもしれませんから。それにヘアスタイルも、今日はいつもと違う趣にしたいと計画しているのです。


「お嬢様、クローゼットを確認させていただいても?」


 寝室のすぐ隣、衣装室のドアを見やって私は許可を願いました。その奥にはエリカルネアお嬢様が「似合わない」と思い込んで一度も着ていないドレスがしまわれているのです。

 お嬢様が、ココット様と同じように愛らしい装いをしてみたいと思っていること、私はちゃんと知っていました。

 ですので迷わず手に取りました。ふんだんに白いレースがあしらわれ、淡いラベンダーカラーのリボンが腕や腰を引き締める爽やかな夏用ドレスを。




 ***




 それからおよそ一時間後、お嬢様の新たな一面がこの世に具現化されました。


「これが……わたくし……?」


 まるで美容整形のCMのような感想を告げ、お嬢様は呆然と鏡に見入ります。

 姿見に映るのは悪の女幹部ではなく年頃の美しい少女でした。ボリュームがたっぷりすぎて扇形に広がっていた縦ロールは今太めの三つ編みとして肩から緩やかに垂れています。金髪の光度が100カンデラから20カンデラほどに抑えられたことで悪役令嬢オーラも半減、いえ8割カットに成功しています。(※25Wの白熱電球の発する光がおよそ135カンデラ)


 吊り上がっていた眉は眉頭のみを残して大部分を剃り落とし、アイブロウで下向きの自然なカーブを描きました。赤すぎた唇にはまずファンデーションを伸ばし引き、肌と同じ色にしてから下地を施し、仕上げにパープルベージュのぷるんとうる艶なリップグロスをつけました。

 強敵だったのはやはり睫毛です。マスカラ無しでも(とん)がったそれを少しでも落ち着けるべく私はホットビューラーで形を整えていきました。そしてついに、エリカルネアお嬢様を戦乙女から花の女神に変身させるに至ったのです!


「別の人みたいだわ。お化粧って顔を派手にするだけじゃないのね」


 お嬢様は鏡から目が離せないご様子です。真顔のまま胸高鳴らせるお嬢様に私も感無量でした。


「生まれ持ったものだから仕方ないと言い聞かせてきたけれど、初めて自分の顔を好きと思えたかも。ありがとう」


 はにかんだお嬢様の花のかんばせがあまりに眩しく愛おしく、私はウウッと左胸を押さえました。筋肉をやわらげておけばお嬢様も威圧的でない微笑みを浮かべることができるようです。これは今日までで一番の報酬でした。


「生まれ持ったものだからと諦めなくていいんですよ。人間に意志があるのはなりたいものになるためです。だからこんなにたくさんの人の手でたくさんの道具が生まれてきたんです。少なくとも私はそう思います」


 私が言うとお嬢様は少しの間静止して、やがて再び微笑しました。


「……そうね。毎日同じ髪形で、毎日同じ勤めを果たす自分が当たり前すぎてわたくし一人ではそれを変えようなんて思いつきもしなかった。チオ、本当にありがとう」


 透明の矢が無数に私の心臓に刺さりましたが私はまだここで倒れるわけにはいきませんでした。使用人たちにお嬢様を見せびらかしたい! そのためにはお嬢様を部屋から連れ出さねばならないのです。


「ねえチオ、少し庭を散歩しない? お前を拾ったあの庭についてきてくれると嬉しいわ」

「も、もちろん!」


 願いは存外あっさりと叶えられました。何しろお嬢様のほうから誘ってきてくださったのですから。

 お嬢様はご自身の仕上がりに大変ご満足なようです。日射を遮るつば広帽を頭に被せてさしあげたらエリカルネアお嬢様はますます花びらのごとくとなり、私は危うく心の声をまろびださせて「時よ止まれ、汝は美しい!」とゲーテの一節を叫ぶところでした。




 ***




 さて、庭園に出た私たちはしばしの散策を楽しみました。小径に並ぶ陶器のフラワースタンドにはジャスミン(多分)やブーゲンビリア(多分)など夏の花が咲いています。白く可憐なジャスミンに鼻先を寄せるお嬢様、濃いピンクが鮮やかなブーゲンビリアに眼差しを送るお嬢様。どの角度のお嬢様も今日は心持ち嬉しげです。


 私はうっとり眼前の光景を見つめていました。ブルベ夏のお嬢様にはやはりラベンダーカラーが似合う。全体を淡い色でまとめているので夏にふさわしく涼しげです。ああ、奮発してデパートコスメを召喚しておいて良かった。善行ポイントはかなり消費してしまったけれど少しも悔いはありません。


(ふふ、秋田県民だって良コスメを知っているのよ)


 私がそう鼻を高くしたときでした。お嬢様がこちらを振り向き、麗しの唇に似つかわしくないその言葉を口にしたのは。


秋田(アキタ)ってきっと素敵なところなのね」


 えっ今秋田って言いました? 貴族令嬢として洗練されたお嬢様から出てはならない田舎ワードに驚いて、私は数秒完全に思考停止してしまいました。


「す、素敵なところ? 秋田がですか?」


 どもりながらも尋ね返すとお嬢様は「ええ、そうよ」と頷きます。


「お前がさっき使った道具、どれも素晴らしいものだったわ。熱で睫毛の癖をつけ直すなんてウォンダン王国の人間には同じ発想さえできないでしょうね。それに何よりお前という人間を育てた土地なのですもの。高徳な賢王が治めているに違いないわ」


 過大評価に私の身は瞬時に縮こまりました。ホットビューラーは別に秋田の人間が開発したわけではありません。デパートにはぎりぎりシャネルは入っていますがディオールは県外にしかありませんし、今回使用したコスメの多くは都会のものです。


「あのう、別に秋田はそんなに大した土地では……」


 居た堪れずに私は首を振りました。ですがエリカルネアお嬢様はそんな私に凛と告げるのみでした。


「まあ、謙遜しているの? 帰れなくなったと言っても故郷(ふるさと)でしょう。遠慮をせずにいくらでも褒めちぎればいいのよ」


 庭園の木々を見上げてお嬢様が尋ねます。「秋田(アキタ)にはどんな花が咲いていたの?」

 問われて私は唸りました。秋田? 花? 脳内検索をフル稼働させてみても桜ぐらいしか浮かびません。ですが桜は日本のどこでも見られます。秋田県の県花でも答えられたらいいのですが、あいにくそんなものインプットもされておりませんでした。


(秋田市にダリア園があったような……。でもダリアって日本の花というわけじゃないし……)


 考え込んだ私を見てお嬢様は小さく肩をすくめました。ひょっとして花すら咲かない不毛の大地なのかしらと気まずそうです。

 私はとにかく秋田がどういうところなのか説明しようと試みました。けれど秋田は、考えれば考えるほどお嬢様との話題にしたい風土ではないのでした。


(日照量が極端に少ないから冬季うつになりやすくって全国自殺率第1位とか聞かされても困惑するだけよね……?)


 秋田県は高齢化率も全国1位、都市部に比べて地方は新生児の出生率が高い傾向にあるはずなのに秋田だけは真逆を行き、人口はどんどん減っています。異世界人を召喚したいのはむしろ秋田県のほうです。

 お酒と米ときりたんぽは美味しいけれど、異文化のお嬢様には伝わりそうな気がしません。せめてエリカルネアお嬢様が醸造酒を嗜まれる年齢なら『雪の茅舎(ぼうしゃ)』のきりりとした味わいを口述したところなのですが……。


(駄目だわ。あとは海岸近くに無人島があることと、そこを拠点にした某国の工作員の出入りがあって昔は結構危なかったことくらいしか出てこない──)


 そのときでした。庭園に突然誰かの足音が響いてきたのは。


「……ッ!?」


 ぬっと現れた黒い影に私はびくりと全身を跳ねさせました。工作員について考えていたせいで怪しい者かと思ったのです。


「久しぶりだな、エリカルネア」

「まあ、ダイナードお兄様?」


 人影の正体はエリカルネアお嬢様の従兄であるダイナード様でした。上背があって体格もいい、漆黒の髪と鋭い赤目の持ち主です。エリカルネアお嬢様と同じく美貌の人であり、この家ではおなじみの無表情&悪役顔でもありました。


大学(アカデミー)が夏季休暇に入ったんでな。帰省がてら顔を見にきた。元気だったか?」


 ダイナード様は移動で乱れたオールバックの髪を撫でつけて問いかけます。小さな仕草にも迫力が滲み出ており、お嬢様との確かな血縁を感じました。


「ええ、わたくしは元気です。珍しく今日は気分も爽快で、良き日にお兄様と再会できて大変嬉しゅうございますわ」


 エリカルネアお嬢様がいつになく明るい声で答えます。仲良しの年上従兄の来訪はお嬢様に活力をみなぎらせたようでした。


「本当か? 俺の目にはいつもよりお前が小さく映るんだがな」

「あら、それはきっとドレスやお化粧の効果ですわね」


 言われてダイナード様は「ふうん?」とお嬢様を眺めました。冷徹なようでいて温かな目がお嬢様の姿かたちを確かめます。その後すぐにダイナード様は深く頷いて返しました。


「確かに普段と全体的な雰囲気が違うな。いつもお前は常在戦場の感があるが、今日は柔らかな春風のようだ。そうか、お前も化粧をするような歳になったか」


 美しいぞとダイナード様はストレートに告げられます。聞いているこちらが照れてしまうほどです。

 お嬢様は相変わらず表情差分に欠けていましたがそれでも嬉しそうでした。化粧をした者でもされた者でもない第三者に褒められて、更なる自信がついたようです。


「ありがとうございます、ダイナードお兄様」


 お二人は初夏の庭園を回りながら穏やかにお過ごしになりました。

 ダイナード様はお嬢様を気遣ってあれこれ尋ねてくださいます。家に一人の時間が長くて寂しくはないか、婚約者には大事にしてもらっているのかと。


「問題の生じる場合はございます。でも解決に努めているので平気ですわ」


 ご両親にはつい「何も問題ありません」と答えてしまうお嬢様ですが、歳の近い従兄相手にはいくらか素直になれるようです。

 台詞から一抹の不穏を嗅ぎ取ったダイナード様はしばし考え込まれました。そして静かにお嬢様にこう仰いました。


「お前はその真面目なところが却って心配になるんだ。自力でなんとかできるとしても、思い詰める前に周りを頼るんだぞ。俺もいつでも駆けつける」


 ダイナード様は心からお嬢様を慈しんでくださっている様子です。こういう殿方がお嬢様の婚約者なら良かったのに。なぜ侯爵様はアレスト様など選んだのでしょう。まったく見る目がありません。


(アレストなんて日本の医療現場じゃ心肺停止って意味なのよ。永遠に心臓を止めておいてほしいわ)


 名前いじりは良くないと思いつつ、心の中でだけだからとつい悪態をついてしまいます。いけない。私がこんな風ではお嬢様が秋田県を野蛮人の住処だと勘違いなさるかもしれません。秋田にも善良な人は数多く住んでいるのに。


「さて、寮からの荷が着く前にとっとと屋敷に戻らねばな。また来るよ」


 ダイナード様はそう言うと庭先から引き揚げていかれました。別れの挨拶にお嬢様に「今日の装いも美しいが、いつものお前も美しい。次はどんなお前に会えるのか楽しみだ」と告げるのも忘れず。


「……ねえ、チオ。一つ頼んでもいいかしら?」


 ダイナード様を見送るとお嬢様は私を見つめて仰いました。明日もまた同じ化粧を施してくれないか、と。


「この姿でアレスト様にお会いしてみたいの。明日もきっといつものカフェかその近くにおられると思うから……」


 お嬢様の双眸が小さな期待を抱いていること。私にはわかりました。可憐な姿を婚約者に見せたいとはなんと健気な話でしょう。

 正直言ってアレスト様に見せるのはもったいない愛らしさですが、メイドの身で主人の頼みを断れるはずがありません。私はこくりと頷きました。


「明日は今日より清純路線でいきますね……!」

「? ロセン?」

「すみません秋田の言葉です! 県内単線しかないですけど!」


 私は拳に力をこめ、頭の中でコーディネート案を並べ始めました。

 ──絶対にお嬢様を可愛いと言わせてやる。

 私の心はごうごうと強く燃え盛っていました。




 ***




 翌日。お嬢様はベビーブルーのデイドレスでお出かけになりました。

 この衣装はウェストが高い位置にあり、すとんと落ちたベル型のスカートがお嬢様の華奢さを際立たせます。鎖骨のラインより低く据えられた大きなパフスリーブも同様に肩回りと腕の細さを強調しました。

 繊細で儚げなイメージは悪役令嬢オーラを打ち消し、お嬢様の素の優しさを浮かび上がらせるようです。編み込みでボリュームを抑え、ハーフアップ風に整えたヘアスタイルも素朴な雰囲気のものでした。

 ナチュラルメイクに近かった昨日とは違い、今日はロージーベージュのアイカラーも使っています。昨日のテーマを「春風/乙女/穏やか」とするのなら今日のテーマは「純真/街娘/甘やか」でした。


「さあお嬢様、まいりましょう」


 私はお嬢様に手を差し出し、馬車から降りる手伝いをします。

 お嬢様の予測通りアレスト様は今日も貴族専用カフェにおいででした。主な客層は学生ですが、男爵家から公爵家まで様々な方がご利用になるお店です。アレスト様は大抵ここか近くのビリヤード場などにいて、頻繁にココット様を連れ回しているのでした。


(まったく厚顔無恥な男よね。こんなカップル御用達の個室に女を連れ込んで、咎められたら浮気じゃないとか言い張って逢引きを続行するんだから)


 私はカフェ横の車止めを、厳密に言えばそこに停車したアレスト様の豪奢な馬車を睨みました。中に入ると受付担当にアレスト様の部屋へ案内するように言いつけます。ヒースレン家の者だと言えば拒絶はされませんでした。


 私とエリカルネアお嬢様は上階の社交室に通されました。てっきり今日も奥の個室にいるものと思っていたので意外です。ですがやはりアレスト様は一人ではありませんでした。グループごとに楽しめるように応接セットがいくつも用意された部屋の隅にはココット嬢のピンクブラウンのロングボブが見えたのです。


「アレスト様! またこのような場所でココット様と……!」


 お嬢様はお二人を見つけるとすぐにそちらへ足を向けました。今日くらいはアレスト様が一人でいるか、殿方のお友達を連れているかのどちらかであってほしかったでしょう。お屋敷を出たときには明るく弾んでいたスカートが今は動じて引きずられます。けれどこんなときでさえエリカルネアお嬢様の所作は優雅なものでした。


「アレストさ……」

「はあ、まったく君も懲りないな。まさかカフェにまで入ってくるとは」


 二人用のソファにかけたアレスト様がカップから視線も上げずに嘆息します。鬱陶しげな横顔にお嬢様は薄紅に染めた頬をこわばらせました。

 ──わたくしを見て。お嬢様の切なる願いが私の胸をも打つようです。

 ですが結局アレスト様はお嬢様の望む言葉を吐いてはくれませんでした。


「……うん? なんだ君、今日はえらく可愛げな格好をしているじゃないか。まさかココット嬢の猿真似か? ははは、これは傑作だ!」


 急速に空気が冷えて固まりました。少なくとも私は今日のお嬢様を最高だと思っていたのでコーディネートを丸ごと全部小馬鹿にされ、目の前が真っ白になったのです。

 お嬢様もそれは同じようでした。だって愛らしくと願ったのは、ほかならぬアレスト様のためなのです。それなのにこの愚物1はお嬢様の真心を汚らしい土足で踏みにじったのでした。


「……えっ、すごい……」


 凍りついた私たちを光で照らしてくれたのは思いがけない人物でした。

 呟きの出所がどこなのか最初はわからず、私はお嬢様の陰できょろきょろと視線をさまよわせました。


「エリカルネア様、今日とってもお綺麗です……! いえ、いつもお綺麗なのですけれど、今日は戦場の女神ではなく生まれたての水の妖精みたいで……! そのベビーブルーのドレス、本当によくお似合いです……!」


 頬を染めて力説したのはいつもアレスト様の隣で縮こまっている愚物2──伯爵令嬢ココット様。まさか敵から塩の塊が送られるとは思いもよらず、私は目をみはりました。


「あ、ありがとう、ココット様」

「わあ、メイクも素敵です! お肌の透明感すごい……! なんていう工房の化粧品お使いになっているんですか!?」


 ソファから立ち上がり、ココット様はぐいぐい食いついてきます。連れの男がぽかんとしていてもまったくのお構いなしです。髪型から服装から愚物2はとにかくエリカルネア様を惜しみなく褒めちぎりました。苛立ったアレスト様が金切り声を上げるほどに。


「おい! 私を無視して盛り上がるんじゃ──」

「あっ!? ヒースレン侯爵!?」


 ココット様がそう叫ぶとアレスト様はびくりと肩を跳ねさせてソファに身を伏せました。婚約者の父親に見つかればまずいことをしている自覚はあるようです。その隙にココット様はエリカルネアお嬢様の手首を掴み、下階へと足を走らせました。

 私も慌てて後を追います。一体どうなっているのでしょう? この愚物2はいつも肩を小さくしてアレスト様の後ろに隠れるだけだったのに。


 ココット様はカフェを出て、すぐにまた別のカフェに入店します。着席してようやく落ち着いたと思ったら、蕾のような唇からこんな言葉が漏れました。


「こっちは女性専用のカフェなので追ってこないと思います。すみません急に、強引に連れてきてしまって」


 ココット様はがばりとテーブルに額をつけると「ごめんなさい! 今までの無礼の数々、心からお詫びいたします! 申し訳ありませんでした!」と突然謝罪を始めました。

 曰く、ココット様のご実家は名ばかりの伯爵家で権力中枢からも遠く、同じ伯爵階級でも到底アレスト様を拒むなどできない立場だそうでした。その気がないのをやんわりと伝えてもわかってもらえず困り果てていたそうです。


「婚約者のおられるお方が火遊びなんて駄目ですよと説得しても『友人として会っているから問題ない』の一点張りで……。信じてください、アレスト様のことは私、友人とすら思っていません!」


 お嬢様はしばし呆気に取られていました。ですが愚物2、いえココット様が無理やり付き合わされているのは薄々感じ取っていたようです。怒りや疑問を呈することなくお嬢様はココット様に尋ねました。


「事情はよくわかりましたが大丈夫なのですか? こんな風にアレスト様から逃げてきて」

「ええ、そこはご心配なく! 私もう大丈夫になったんです!」


 ココット様は続けます。「付きまとわれてるって相談したら、幼馴染が婚約を申し出てくれたんです」と。令嬢らしからぬふやけた顔で。


「今日も本当はこれっきりにしましょうとお別れを伝える予定だったんですよ。お相手の家が厳しいので友人としても二人で会うのは難しいって。でもこう、お二人のやり取りを見ていたらエリカルネア様に謝るほうが先じゃないかなと思って。それにアレスト様ってちょっと逆上しそうですし、やっぱりお別れは書面で伝えればいいやって」


 ココット様は彼女なりにアレスト様を追っ払おうと努力していたようでした。今までココット様を悪女だと蔑視していたこと。これは完全にお嬢様への愛による私の盲目だったようです。


「あっすみません、エリカルネア様の婚約者を悪し様に……」

「いえ、いいの。彼はああいう人ですもの」


 お嬢様は第二の謝罪は受け取られませんでした。むしろ婚約者の迷惑行為を監督不行き届きだったとお詫びになられます。


「いやいや、そんな! エリカルネア様はいつも私のことはお責めにならずにいてくださったじゃないですか! 私それで感激して、勝手に大尊敬していたくらいで」


 ココット嬢はそこまで述べると口を止め、しばし悩んで告げました。


「……あのう、アレスト様とは別れたほうがいいんじゃないかと思いますよ。エリカルネア様にはもっとお優しい方を好きになってほしいです」


 よく言った──。私は内心ココット様に表彰状を贈っていました。そうなのです。エリカルネアお嬢様には絶対にもっとふさわしい方がいるはずなのです。あんなオンリーロンリー愚物ではなく。


「そうね。決められたことだからと諦めなくてもいいのかも」


 と、お嬢様が静かな声で答えます。先日私がお嬢様に語ったのとどこか似た響きの言葉を。


「わたくし別に恋慕があったわけではないの。でも結婚は、相手があってすることで、その相手には悲しみや怒りを覚える心があるわけでしょう? だからわたくし、互いに誠実でありたかった……」


 でももう駄目ねと呟きが零れます。あの人は変わらなかったと。


「決めましたわ。わたくし婚約を破棄します」


 お嬢様のそのひと言に私は狂喜乱舞しました。いえ、実際には後ろに控えて目を輝かせていただけなのですが。


「ほ、本当に!? だったら私、アレスト様の浮気の証拠を提出します! 結構ちゃんと日記に書き残してるんです!」


 私同様に目を輝かせてココット様が申し出ます。お嬢様は「家が睨まれたら大変でしょう」と固辞しましたが、ココット様は「今までの罪滅ぼしなので!」と譲ろうとしませんでした。

 なんだかいい展開です。ひょっとしたらあと一度くらい私にも大きな出番が回ってくるのではないでしょうか──。




 ***




 屋敷に帰ったお嬢様はさっそくご両親に「婚約を破棄したいです」と決意を打ち明けられました。

 反対されたらどうしようと危ぶんでいたのは杞憂だったようです。旦那様も奥様もとりたててお嬢様を糾弾する素振りはなく、あっさりした態度でした。


「まあ、そう、顔は良かったけど気が合わないなら仕方ないわね」

「お前がすべて白紙に戻したがるなど珍しいな。何かのっぴきならぬ事情でもあったのか?」


 お嬢様は淡々とした口ぶりで二人に説明なさいます。アレスト様の素行不良、根気強く続けた忠告、そして最後に受けた嘲笑。

 侯爵夫妻は真顔のまま眉一つ歪めませんでしたが、室温はどんどん低下してまるで真冬の秋田でした。


「……そうか。宮廷で最も仕事の早い男の息子を相手に選んだのだが、外れるときは外れるものだな」


 旦那様は迷いもせずに「明日先方の家に破談を告げてくる」と宣言します。そう聞いてお嬢様はお顔をお上げになりました。


「お父様、わたくしも参ります。終わりにするならこの手で終わりにしたいのです。それが筋というものでしょう?」


 侯爵夫妻は互いに顔を見合わせます。大人たちが暴言を吐き合うことになるかもしれぬ場所へわざわざ十七歳の少女を連れていくべきか。そういう躊躇があることが私にも感じられました。ですがヒースレン侯爵は、お嬢様の意向を汲んでこの願いを承諾してくださったのでした。


「わかった。お前の誇りに関わる話だ。しっかりと準備するように」

「感謝いたします、お父様」


 そのときです。「話は聞いたぞ」とサンルームから男の声が響いたのは。

 旦那様が抜刀し、奥様が手近な花瓶を手に取ります。しかし物陰から現れたのは曲者ではなく黒髪の御曹司でした。


「昼過ぎに来てたんだが、誰もいないから寝てたんだ。エリカルネアをそんなぞんざいに扱ってたなんて許せないな。明日は俺も加勢しよう」


 敵陣に乗り込むなら強面の男はいくらいたっていいはずだとダイナード様が主張します。我が家のごとく出入りしているダイナード様に呆れつつ旦那様は「まあ人数は多いほうがいい。護衛としてついてきてくれ」と答えました。


「いいのですか、お兄様? こんなことに関わるよりものんびりと夏季休暇を楽しまれては……」

「お前が戦場に出ようというのに屋敷でごろごろしているほうが落ち着かん。後ろでしっかり睨みを利かせておいてやるから安心しろ」

「まあ……! 心強いです。ありがとうございます」


 どうやら明日地上に一つ地獄の門が開くのは決まったようです。瞳を燃やす旦那様やダイナード様を横目に「僭越ながら」と私はお嬢様に尋ねました。


「訪問の際はどのようなコンセプトのコーディネートをいたしましょうか? 可憐・清純・妖艶のほかにも私、悲哀・憐憫などもいけますが……」


 もう少し善行ポイントが残っていれば拳銃でも召喚していたところですが、私にできる善行は祭壇の清掃くらいですので致し方ありません。明日はやはりお嬢様に施すメイクで貢献したいと思います。それにただの使用人の私では、さすがにアレスト様のお宅まではついていけないでしょうから。


「……そうね。お化粧ってなりたい自分になるためのものだったわね。ならば明日は──」


 お嬢様のご要望に私はこくりと頷きました。

 そうです、それでこそお嬢様です。

 これまでは色数を抑えた化粧がメインでしたが明日は腕が鳴りそうでした。




 ***




 この世に人類が生まれてから女が流した涙を全部集めたら、さぞかし大きな海ができることでしょうね。

 でも今日で海を広げる日々はおしまい。わたくしは前を向いて堂々と歩んでいくの。やれるだけのことはきっとやり尽くしたはずだから。


 ヒースレン家の屋敷を発つとき、チオはわたくしにまじないをかけてくれました。

 黒い髪に黒い目をしたわたくしの大切な友人。秋田(アキタ)では悪者や怠け者は鬼の姿をした神が懲らしめてくれるのですと言って彼女は〝ナマハゲ〟なるものの小さな形代をそっと渡してきたのです。気休めの御守りですが、私の代わりに持っていってくださいと。


(チオ、あなたはいつもわたくしの傍にいてくれるのね。異世界アキタの神の加護──あなたの心は受け取ったわ)


 わたくしは手の中にナマハゲ様を握って馬車を降りました。

 見上げるは現婚約者の住まうカディアック伯爵家。ここを出るときあの人は元婚約者となっていることでしょう。


「ひえっ!? どどど、どちら様ですか!?」

「だだだ旦那様か奥様と面会の約束はお済みですか!?」


 門を守るカディアック家の騎士たちはこちらを見るなり青ざめました。でも怯えても仕方ありません。何しろお父様もお兄様も戦意を隠そうともしないのですから。国王の直臣で次期宰相と噂されるお父様。アカデミーでは入学以来ずっと首席で文武両道のお兄様。そんな二人に睨まれてはわたくしだって足が震えます。

 それにわたくし自身も今日はいつもと違いました。チオのメイクでこの顔は、いつもよりずっと勇ましいのです。


 ──そうね。お化粧ってなりたい自分になるためのものだったわね。ならば明日はわたくしがわたくしの思いをぶつけられるように『怒りの相』を施してほしいわ。


 わたくしは昨日そうチオに頼みました。わたくしは自分の気持ちを口にするのが苦手です。特に怒りは封じ込めてばかりきました。幼い頃から黙っていると「もしかして怒っていますか?」と聞かれることが多かったので、否定するうちに怒りという感情そのものを抑え込むようになったのです。

 ですが今日は正直な心を示したいと思います。わたくしは支え合える人とでなければ夫婦にはなりたくないと。


「約束はしていないが重大な用件だ。カディアック伯にそう伝えてくれ」


 お父様はどっしりとした足取りで門を守る二人の男に近づきました。今日は後ろ姿にも覇気を感じてすごいです。ここだけ激戦地のようです。

 お父様と目が合うと一人は泡を吹いて倒れ、一人は膝をがくがくさせて邸内へと飛び急ぎました。それにしても騎士がこの程度の胆力でカディアック家は大丈夫なのでしょうか。今日までの縁の家ですが、いろいろ心配になります。


「す、すぐに旦那様がお越しになるのでどうぞこちらでお待ちを!」


 老齢の執事の案内を受け、わたくしたちは応接間に通されました。縦に長く取られた窓から朝の光が爽やかに差しています。でもそんな風景とは対照的に響いてくる足音はどたばたと騒がしいものでした。


「ヒースレン候! お待たせして申し訳ありません! こんな朝から一体どうなさったのです? お嬢様までお連れになる重大な用件とは……」


 カディアック伯爵はハンカチーフで汗を拭き、乱れた息を整えます。城では上司と部下の関係にあるためか、お父様を前にした伯爵はもう叱られる寸前の新兵同然の顔でした。


「単刀直入に言わせてもらおう。君の息子とうちの娘の婚約を解消したい」


 まどろっこしいのを嫌うお父様は挨拶もそこそこに切り出します。硬直した伯爵はしばし声を失った後、ソファに座すお父様の足に縋って叫びました。


「ななななぜです!? ま、まさかアレストがお嬢様に何か粗相を……!?」


 その通りです。お父様もわたくしも否定は返しませんでした。それで何かを察したか、伯爵はおののいてひれ伏します。


「申し訳ございません! 申し訳ございません! あの、愚息はお嬢様に何を…………?」

「君くらい有能なら耳に入っていると思うが」

「!? もしやカフェの……!? ですがアレストはお嬢様には承諾してもらっていると……」


 伯爵はわたくしに驚愕の眼差しを向けました。ですが驚いたのはわたくしも同じです。自分の親にはそんな風に先手を打っていたなんて。


「一度たりとも承諾した覚えはございませんわね。例のカフェにはわたくしがアレスト様に苦言するところを目撃した方が大勢いらっしゃるはずです」

「……ッ! 申し訳ありません! すぐにアレストを連れてきて謝罪と償いをさせます!」


 伯爵は疾風のごとく応接間を飛び出していきました。丸々として小柄なのに相当走れるタイプのようです。やはり多忙な宮廷ではスピードを要求されるのでしょうか。


「いてて! 父上! 脛を小突かないでください!」


 そのうちそんな喧騒が近づき、応接間の扉が再び開きました。入室してきたアレスト様がわたくしとお父様、ソファの横に控えるダイナードお兄様を見てきょとんとします。彼はまだどうして自分が呼ばれたのかわかっていない様子でした。


「な、なぜここに君がいるんだ? エリカルネア」


 アレスト様はわたくしの『怒りの相』に気がつくと小さく眉を歪めました。この方はわたくしが嬉しいときも悲しいときも気持ちを汲んでくださることはありませんが、怒りに対して最も拒絶的なのです。

 聞きたくない、聞く価値もない、君の不満は不当なもので君の心が狭いだけだ。何度そうして否定されてきたでしょうか。でも彼は両家の父親が揃う今、同じ主張はしないはずです。アレスト様は自分が主導権を握れるときしか強く出ようとしませんから。


「あなたとの婚約を破棄しにきました。あなたの品行には問題があり、婚姻を結ぶのは極めて困難であるというわたくしの判断です」


 たじろぎつつもアレスト様は「品行に問題? 私のどこに?」と問い返してこられます。わたくしは入口付近に留まっているアレスト様から目を逸らし、誰もいない正面を見て答えました。


「問題がないと思っていることが最大の問題なのです」


 わたくしはお父様に目配せし、まとめておいた資料を伯爵に手渡してもらいました。伯爵は厳粛な面持ちでカフェ、ビリヤード場、その他の施設で不貞を働くアレスト様の報告書をめくっていきます。

 一応こちらの一方的な難癖とも受け取れるので信じるか信じないかは伯爵の考え次第ではありましたが、お父様の部下である彼は全面的にヒースレン家を被害者と見なしてくれたらしく、青ざめきって膝をつくばかりでした。


「もはや言葉もありません……。この度は本当に馬鹿息子がご迷惑を……」

「ちょ、父上! こんな言いがかりを──あっいや、エリカルネア嬢の誤解を真に受けるなどおやめください!」


 アレスト様は必死に伯爵を起き上がらせようとします。またそれと並行してご自身の潔白を訴えました。わたくしではなくお父様に。


「違うんです。私が会っていたのはただの友人で、傾いた家の今後の相談など受けていたため個室を選んでいただけで、ビリヤードも上流階級の嗜みとして知っておいたほうがいいだろうと……! エリカルネア嬢には事前に説明し、それなら良いと許可してもらったことなのです」


 この方はよく口が回るので初めの頃は割と信用していたのが思い出されます。状況によってはお父様もアレスト様の弁明を信じていたかもしれません。

 けれどもう言葉は空虚なだけでした。わたくしは手の中のナマハゲ様を強く握り、カディアック伯爵に告げました。


「今朝の郵便物を見てください。ココット様からのものがあるはずです」

「なんですと!?」


 伯爵は老執事に大急ぎで手紙入れを持ってくるように指示します。トレーに載ったお別れ状が運ばれてきたのはすぐでした。


「何々? 某家の令息と婚約したので以後は私をお呼び出しになり、二人きりになろうとするのはご容赦ください。いただいた贈り物はすべて未開封のままお返しします。後日こちらの使用人が届けます……」


 内容が読み上げられるとアレスト様は酷く動揺なさいました。そしてぽろりと真実を口に出してしまったのです。


「な、なんだと……!? ココットに私以外の男が……!?」


 ハッと口をつぐんだアレスト様でしたが、対応は完全な手遅れでした。彼がココット様を女として見ていたのは明らかです。交際しているつもりになっていたことも。


「あ、いや……」


 アレスト様の白い額にだらだらと冷や汗が流れます。伯爵は取り繕いようもないと判断したのか老執事に婚約取交書(こんやくとりかわししょ)を取りに行かせました。

 婚約は契約書の破棄をもって無効とされます。「瑕疵(かし)はすべてカディアック家にあるということでよろしいですね?」と確認し、わたくしはヒースレン家で保管していたわたくし側の取交書を手に取りました。


「はい、悪いのはアレストです……! 本当に申し訳ございません……!」


 返事を聞くやわたくしは取交書を引き裂きました。ビリ、ビリ、と念入りに、紙吹雪にして散らします。


「エリカルネア……」


 アレスト様は呆然とそれを見つめておりました。信じられないという顔で。

 もしかしてこの方は、わたくしが小言を口にするだけだとでも考えていたのでしょうか。有り得なくありません。わたくしはいつもなるべくアレスト様を理解しようと努めましたし、理解できなくなってからもアレスト様のお立場を考慮しないことはありませんでした。

 わたくしは彼にとって無視していればなんとかなる、その程度の相手だったのでしょう。わたくしが疲れ、諦め、小言さえ口にしなくなるのを彼は待っていたのだと思います。意識してか無意識でかは不明ですが、それが彼の支配の方法でしたから。


「アレスト様。わたくしあなたが過ちを犯したから婚約を破棄しようと考えたのではありません。過ちを犯した後もあなたが不誠実だったからです」


 舞い落ちた紙屑を見つめながらわたくしは今こそ胸のうちを明かします。


「あなたはいつも卑怯でした。わたくし何度も傷つきました。そうしてついに気づいたのです。こんなことを一生繰り返すわけにいかないと」


 老執事が取交書を持ってきた気配がしてわたくしは立ち上がりました。扉の間から書面を受け取った伯爵がお父様にそれを委ね、お父様がわたくしの手に委ねます。


「エリカルネアやめろ! 君は私を愛しているはずだろう!?」


 浮気による婚約破棄の噂など流れたらまともな令嬢が寄り付かなくなるからでしょうか。アレスト様は咄嗟にこちらに腕を伸ばし、取交書を叩き落そうとなさいました。──ですが。


「エリカルネアに掴みかかるとはろくな男ではないな」


 アレスト様はあっさりとダイナードお兄様に捕らえられ、床に投げ飛ばされました。手についた埃を払い、お兄様がぎろりと彼を睨みます。


「ひい……ッ」


 ほんの一瞥(いちべつ)でアレスト様は身をすくませてしまいます。暴力は恐ろしいものですから、難を逃れてわたくしはほっと胸を撫で下ろしました。


「カディアック伯、息子の処遇はどうするつもりだ?」


 と、お父様が伯爵に尋ねます。神妙な顔つきで伯爵は答えました。


「勘当すると言いたいところではありますが、そうするとこの愚か者はほかの女性に迷惑をかけそうなので……。自宅に謹慎させて再教育するということでご納得いただけるとありがたく存じます」

「ふむ。年数は?」

「五年でも六年でも!」

「では六年間初等教育からやり直してくれ」


 父もまたソファから腰を上げます。わたくしはまだ書面の形状を保っている取交書を摘まみ上げ、尻餅をつくアレスト様と対峙しました。


 ──お嬢様。最後には是非アレスト様に微笑みかけてさしあげてください。それでもうアレスト様は報復など考えず、少しは心を入れ替える気になられるでしょう。


 思い出したのはチオの言葉。鏡に映る鋭い睫毛、毒々しい瞼や角度のついた眉、血溜まりのごとき唇をうっとり見つめていた彼女の。

 自分の顔が人よりも怖いらしいのは知っていました。ですがわたくしは思うのです。生まれ持ったものだからと諦める必要はないし、生まれ持ったものとどう付き合っていくかこそが自分らしさではないのかと。

 わたくしはチオと二人でこしらえたこの顔で戦えて幸せです。


「ごきげんよう、アレスト様。どうかいつまでもお元気で」


 微笑とともにお別れを告げるとアレスト様はまるで怪物に会ったかのように全身を引きつらせ、バタンと卒倒なさいました。屋敷の使用人の中にも倒れる者は時々いますが気絶者を出したのは初めてです。

 ビリビリビリ! 取交書を引き裂いて床に放るとわたくしは歩き出しました。

 なんだかさっぱりした気分です。こんなに快いのならもっと早く婚約破棄を真剣に検討するのでした。


「よく頑張ったな。俺の助けなど全然要らなかったじゃないか」


 お父様の後に続き、門へと向かうわたくしの背にお兄様が優しく声をかけてきます。


「いいえ、一緒にいてくださったからわたくし勇気を出せたのですわ」


 館の外には晴れやかな夏空が待っていました。振り返れば太陽の光を浴びて眩しく輝くダイナードお兄様の姿があります。

 そう言えばお兄様は、わたくしが嬉しいときも悲しいときも一緒にその心に浸ってくださいました。であれば今度はお兄様のような方を探せばいいのかもしれません。


「しかしお前は日に日に美しくなっていくな。隣に並んで遜色(そんしょく)ないのは王国で俺だけかもしれないぞ」

「えっ?」


 なぜだか急に頬が熱くなってしまい、わたくしは顔を逸らしてしまいました。お父様も「その手があったか」など仰るし、冗談が過ぎるというものです。

 わたくしは赤くなったまま馬車へと足を急がせました。

 早くチオに話を聞いてもらいたくて仕方ありませんでした。




 ***




 朝食後、身支度が整うなりすぐに出かけられたお嬢様たちは昼前に穏やかに帰宅なさいました。万事うまく行ったようです。馬車から降りてきたお嬢様はいつになく晴れやかなお顔でした。

 と言ってもほかの使用人にはただの真顔に見えたでしょう。いえ、盛り盛りのメイクをしたぶん恐怖値は平均より高かったかもしれません。


「おかえりなさいませ、お嬢様!」


 私は屋敷の庭先でお嬢様を出迎えます。お嬢様も「ただいま、チオ」と目を細められました。

 怒髪天を突くイメージでポンパドールにアレンジした前髪は最後まで崩れずいたようです。エレガントなグレーミストのサマードレスもお嬢様によくよく馴染み、出発前より威厳が増した気がします。ブルベ夏が使うとけばけばしくなってしまう濃いパープルのアイシャドウも、敵を制圧する役目をしっかりと果たしてきたようでした。パール入りのものを選んで召喚しましたから上品な印象はそのままです。


(ああ、私も見たかったなあ、お嬢様のかっこいい場面!)


 エリカルネアお嬢様は羽のごとき足取りで邸宅内へと戻られます。私もその美しい背中にそっと付き従いました。


「チオの御守りのおかげで言いたいこと全部言ってこられたわ。ありがとう」

「わあ、それは良かったです!」


 追加召喚したコスメの余りポイントと引き換えにしたなまはげピンバッジも微力ながらお嬢様の支えになってくれたようです。正直これは不要なのではと考えなくもなかったですが、お嬢様はどうやらなまはげをお気に召したご様子でした。


「ねえ、これ貰ってはいけないかしら? 胸の底に神聖な秋田(アキタ)のエネルギーが満ちるのを感じるのよ」

「えっ」


 神聖な秋田エネルギーって何? 私は困惑して返答に詰まりました。

 今回は事が事だったのでゲン担ぎになまはげなんて渡しましたが本来ならばお嬢様は秋田などに関わってはいけない貴族令嬢です。というか秋田グッズを所持するお嬢様というのが激しく解釈違いでした。


「え、ええと……お嬢様がお持ちになっていたいなら私は構わないのですが、もっとこう、お似合いになるものがあるのでは……」

「そうかしら? エキセントリックな造形でとても素敵よ。それにわたくしに新たな道を示してくれた化粧道具も秋田(アキタ)から取り寄せたのでしょう? 今後は祭壇にナマハゲ様をお迎えしてもいいくらいだわ」

「ひええええ」


 やめてくださいと叫ぶわけにもいかず、私は深く後悔しました。お嬢様にはもう軽々しく秋田の話はしないと心に誓います。絶対に何か神秘的で進歩的で永遠の理想郷のような場所だと思い違っているのですから。


「おいおい、さっきから何メイドを困らせているんだ?」

「そ、そんな! 困らせてなどおりません!」


 と、追いついてきたダイナード様が後ろからひょこりと顔をお出しになってお嬢様に話しかけます。そのときにわかにお嬢様の頬に朱色が差したのを私は見逃しませんでした。


(……おおっ? もしかして何か進展があった?)


 にやつきながら私はお二人を見守ります。お嬢様は「ねえ、チオ、わたくしお前を困らせてなどいないわよね?」と強めの真顔で私の腕を取ってきます。


「どうでしょうか? でもお嬢様になら困らされても嬉しいですね!」

「もう! チオ!」


 音声だけは朗らかに笑い声が響く中を私たちはのんびり歩いていきました。


 さあ明日はお嬢様にどんなお洋服を着てもらい、どんなメイクをしてもらいましょう。

 これからはココット様とのお茶会やダイナード様とのデートもあるかもです。日頃からコーディネートのストックをしっかり増やしておきましょう。




  悪役令嬢の専任メイドになったので完全武装(トータルコーディネート)のお手伝いをします(完)



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[良い点] メイクやコーデといった身近でだからこそ誰でもできる変われる力で、状況を変えたのが好き。 可愛く変わる見返すだけでなく、元からの顔つきも活用しての怒りの形相戦うメイクで決着つけたのも好み。 …
[良い点] 他の作品が面白かったのでこちらも読みました 突如現れた秋田県の文字列にもっていかれました こちらの作品もとても面白かったです このサイトでは今までコメディタッチの作品は読まなかったのですが…
[一言] 女子を甘く見すぎましたね! 女子の結束なめるんじゃねーぞ(^^) ダイナード様とつよつよ夫婦でチオと末永く過ごしてほしいです〜!
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