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放課後の場合Ⅰ

言ってなかったと思うんだけど、僕ら胡翠の生徒は全員寮暮らしだ。そこにAクラスだからとか、Sクラスだからなんて事は関係ない。

どうしてだと思う?それは……僕たちの学校が人里離れたところにあるから。詳しく言うのは守秘義務やら何やらがあるらしくて言えないんだけど、僕らの学校は日本のある港からフェリーで一晩行ったところにある。何でそんな僻地にあるかはまた追々分かってくれると思うから、今は割愛するね。まあ、そんなだからとてもじゃないけど毎日家に帰って通学なんてできやしないんだ。

だから、島の中はちょっとした街みたいになっていて、必要なものは何となくそろうようになっている。通販もあるし、直ぐに欲しいとか思わなければ大抵のものは何とかなるんだ。


午後4時。僕らSクラスの1日の授業が終わる。

校舎から寮までは直通の車が出ているから、そこに向かうよ。……え、他のクラスはそんなものないって?うん、僕らはSクラスだからね。他のクラスはバスが出てるって聞いてるよ。僕らは他のクラスの人と寮の場所が違うから、バスじゃないのはしょうがないかなあ。だからか知らないけど、一人一人の時間希望に沿って迎えに来てくれるんだ。

今日は授業が終わって直帰する予定だけど、そうじゃない日もある。部活やってる棚方とか梧泉は下校時刻ギリギリまでいることが多いしね。そういう人でも申告しておけばその時間に迎えに来てくれるんだ。本当にこの学校は至れり尽くせりだ。他のクラスでも生徒がバスに混まずに乗れるようにAIのシミュレーションの下時刻表が作られてるんだって。そのAIをプログラミングしたのが僕らの先輩らしいけど、凄いよな。


そんなことを言っている間に、ほら、車が見えてきた。一応僕らは寮の場所の関係で車通学ができるから、送迎場所は他の生徒からは余り目立たない所にある。まあ、それもSクラス校舎からはすぐだからそんなに困らないんだけどね。でも、時々職員室とかそういうところに行くときはあって、そのあとに帰るときは少し歩かないといけないのが大変だ。あんまりない事だからいいんだけどね。

車は黒のセダンだ。毎日同じやつで、ナンバーは「さ13-43」。米濱(まいはま)さんっていう人が運転してくれている。乗り心地もすごい良くて、米濱さんもとてもよくしてくれるんだけど…。


「風間様。お帰りなさいませ」


これよこれ。僕の名前に「様」をつけて、丁寧に喋られるのには未だに慣れない。だってこの学校に入学するまでは至って普通の家にいたんだよ。米濱さんみたいな如何にも仕事できます!って人に畏まられるとこっちが緊張しちゃう。


「ただいま米濱さん。…僕に「様」なんてつけなくていいですよ」


だから、毎日こんな風に答えるんだけど。


「その様なわけには参りません。私は風間様のお世話を申し上げるためにいるのですから」


とか言って断られちゃうんだよね。この待遇に慣れちゃったときが今から怖い。もう既に様付けをやめてもらうのは無理かなってちょっと諦めてるし。慣れる日は近い、かも?

そんな米濱さんだからか、僕にはとてもよくしてくれる。って言うかなんていうの、ドラマとか漫画で出てくるみたいな執事みたいだなって思っているのは僕だけの内緒だ。ほら、今だって運転席から降りてきてわざわざ僕の為に後部座席のドアを開けてくれている。そして、さりげなく僕の荷物を回収して飲み物を渡してくれるんだ。


「風間様、こちらです」(ドアを開ける音)

「ありがとうございます」

「いえ、当たり前のことですよ。本日もお疲れ様でございました。お荷物をお預かりいたしますね」

「あ、はい」

「それから、こちらが本日のドリンクのダージリンとなっております。インドの本場から直輸入した最高級品のセカンドフラッシュをご用意いたしました」

「ありがとうございます。……あ、おいしい」

「それはようございました。では、これから寮に戻りますが、どこかにお寄りになられますか?」

「ううん、今日は大丈夫です」

「畏まりました。15分ほどで到着いたしますので、お寛ぎくださいませ」


こう、毎回こんな感じだ。…え、なんかお前この待遇に慣れてるだろって?しょうがないじゃん!毎日登下校のたびに同じ対応されてたら、今更荷物をさりげなく回収されてようが美味しい飲み物を出されようが「あ、今日もだ」って流しちゃう日がみんな来るって。でも、親しき中にも礼儀ありって言うし、これが当たり前って思わないように気をつけようとは思ってるよ。慣れる慣れないは別として、ね。


そんなこんなで米濱さんさんが淹れてくれた美味しい紅茶(ダージリンだっけ?)を飲みながら車で移動すること15分。学校から離れ、景色の良い海岸沿いの道を走り続けると、右側に僕らの寮が見えてくる。学校も結構豪華な造りなんだけど、寮も負けず劣らずの造りだ。僕も米濱さんに聞いただけだから詳しいことは知らないけど、ここはSクラスの生徒用の寮らしくて、他の場所に他のクラスの寮もあるんだって。僕らより絶対頭がいい人たちの寮だからきっと設備も整っているんだろうなあ。やっぱりこういうところを見ると瑚翠って凄いなと思っちゃう。


知らない寮のことはともかく、僕らの寮もきっと負けず劣らずに凄い(はず)だから紹介するね。

まずは外観。ここには3棟の建物が建っていて、学年ごとの寮なんだって。各棟は地上9階建て、地下3階建てになっていて、1階と地下が共用スペース、2階より上が各々の個人スペースになっている。ここで思い出してほしいのが僕らSクラスの人数だ。そう、僕ら8人しかいないんだよね。だから、寮の1フロアを丸々個人スペースとして利用できるんだ。ヤバいでしょ?

玄関(だよね?めっちゃ広いけど!)に近づくと、そこに立っている2人の守衛さん?が両開きのドアを開けてくれる。「お帰りなさいませ」の声も常備だ。2人掛かりで開けるとはいえ、毎回重そうだよなって思っているのは秘密だよ。そんな守衛さん2人に挨拶を返して中に入ると、何故か荷物を持った米濱さんが待っている。そう、ここが本当に毎回不思議でね。だって、ついさっきまで僕は米濱さんが運転していた車に乗っていたわけで。ドアToドアな距離で車をつけてくれるし。そこから30秒もないんだよ。僕がここに来てからの不思議の一つだ。

そんな米濱さんから荷物を受け取るのを毎回やんわりと断られ、彼を後ろに従えたままエレベーターへと向かう。僕の個人フロアはなんと一番上の9階だ。なんで最上階をあてがわれたかは分からないけど、眺めがとてもいい。オーシャンビューって言えば分かるかな?エレベーターを降りるとそれが広がっているんだ。うん、とっても贅沢。他の階のフロアももれなくオーシャンビューだからこの寮に住んでいる限り眺めはとてもいいのは間違いない。

ウォークインクローゼットの中で制服から私服へと着替えてリビングに出てくると、米濱さんが荷物を書斎に運んでくれていた。


「米濱さん、荷物ありがとうございます」

「お気になさらず。こちらでよろしかったでしょうか」

「うん」


もう、米濱さん格好いい。「仕事ですから」ってさらっとこなしていくのってあこがれるよね。ここに着てから米濱さんはずっといてくれるけど、身近な頼れる大人だ。


ここからは夕食の時間までは自由時間だ。みんな多分それぞれの時間を過ごしてるんじゃないのかな。いつもは昼寝をしたり、他の階にいるクラスメイトの所に突撃したりする。逆に突撃されることもあるよ。

……急に突撃したり、されたりして大丈夫なのかって?問題ない。そもそもここは絶海の孤島だから不審者が入ってくる確率はかなり低いし、仮に島の中に不審者がいたとしてもこの寮に入るためには守衛さん含めセキュリティが凄いから入れないようになっているらしい。だから「安心してお過ごしください」って初めて来たときに言われた。それに、他のクラスメイトが本当に邪魔されたくないときは米濱さんが止めてくれるからね。どうやら僕についてる米濱さんみたいな人がクラスメイトにいるみたいで、その人たちで情報交換しているらしい。僕が邪魔されたくないときも、(そんなにないけど)米濱さんが連絡を回してくれているみたい。

今日はどうなんだろう。誰か暇な人いないのかな?


「…残念ながら、皆さま本日はお忙しくしていらっしゃるようです」


あ、残念。みんな忙しいんだ。じゃあ僕は天気もいいし、海まで散歩でもしようかな。


「お供いたします」

「米濱さんありがとう」


よし、部屋から見えるオーシャンビューを見に行こう。といっても全然遠くないんだけどね。海・道路・寮って感じの配置だから、寮の敷地から出ればすぐに海だ。といっても寮の敷地がけっこう広いからちょっとした散歩にはなる。

海までの道を米濱さんと2人喋りながら歩く。僕の話す今日学校であった話とか、米濱さんが話してくれる学生街のちょっとした話とかをポツポツと喋りながら歩いていると、あっという間に海は目の前だ。もう本当に米濱さんには感謝だよね。1人じゃなくて誰かと一緒だから、こんな何ともない日でも楽しく過ごせる。

うわあ、何気にここの海始めて来たけど奇麗だなあ。昔家族で行った海より断然キラキラしてるし、色もなんか青が奇麗だ。あ、あそこにあるのってサンゴじゃない?今まで気づかなかったけど、結構海岸に貝殻とか落ちてるじゃん。何個か拾っていって皆に見せたらびっくりするかなあ。


「風間様、足元お気を付けくださいね」

「へ?…あ、本当だ」


危な。貝殻とかサンゴに夢中になりすぎて波打ち際まで来てたよ。注意されてなかったら波でズボン濡らすところだった。でも、結構拾ったなあ。


「風間様、拾ったものはこちらにお入れください」

「用意してくれたんですか?ありがとうございます」

「お礼には及びませんよ。…こちらで飲み物でもいかがですか?」

「うわあ~、いいですね!頂きます!」

「承知いたしました。では、こちらにどうぞ」


学校終わり、放課後に海でティータイム。こんなことができるのもきっと瑚翠だけなんだろう。

ゆったりとした時間が流れる、こんな時間も案外悪くないかもしれない。



ありがとうございました!

感想・評価していただけると嬉しいです

作者のモチベーションが上がります!


次回は7月24日の20時更新を予定しています!


では。


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