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6. 攻略対象、雑魚アディル

4/28 あらすじの一部を削除、前話も最後の文を取り消しました。

「ね。シャロンちゃん、だっけ? すごい噂になってるよ? 強烈なペアが転入してきたって。俺は父さんから聞かされてるけど、他の子からしてみたらネオくんもシャロンちゃんも異質だからね。よろしくね」


 はい??


 午前の授業が終わり、学園の食堂でネオと昼食を取るべく食堂に向かっているところを、誰かもわからないイケメン君に話しかけられた。


「あれ? 俺のこと知らないの? は? 父さんから聞かされてない?」


 はい? さっきから父さんって誰だ?


 私が訝しげに様子を伺っているのを見て、目の前のイケメン君はなぜか頭を抱えている。why? who are you?

あなた、いったい誰? 名乗ってくれないとわからん。


 ・・・・あれ。でもどこかで見たことあるような顔のような・・・・


「・・・・・ごめん。聞かされてないならそりゃ驚くよね。父さん、君らのところの部隊長には俺から言っておくから。じゃあ改めてよろしくね。俺はアディル。部隊長の父さんから君らのこと気にかけてやってくれって言われてるんだよ」

「え?」


 ごめん。もう一回言ってくれない? イケメン君よ。なんかトンデモワードが聞こえたような・・・・・


「あれ? 聞こえなかった? だから、僕の父さんは君らの部隊長で、父さんから君らのことを気にかけてやってくれって言われてんの」


 若干の苛立ちを見せるアディル。


 んー・・・・? なんかこの感じ、見たことある・・・・たしか、一見優しそうに見えて沸点が低い、なんていったかな。


 あッ! 


「雑魚アディルぅぅ!?」

「なんだと!? 雑魚って言った? 今雑魚って言った!? 初対面で最低だね!!」


 はっ! 口に出てた! しまった・・・・そりゃ最低って言われても仕方ないわな。


「ご、ごめん、今のは忘れて!」

「忘れられるわけないでしょ!! さっき雑魚って言ったよね!? 何を根拠にそんなことを!!」


 あ、やっぱり沸点低いのね。


「いや、ざk、オッホン! アディル様の聞き間違いじゃありませんの?」

「今雑魚って言おうとしたよね!? 今更白々しいよ!」


 なんなのこれ? 沸点低いだけじゃなくてめんどくさい男と化してるんだけどこれ。なんなの?


「まあいいよ。今は見逃してあげる。それよりも! 君らのことを任されてんの俺は! とりあえず、分からないことがあったら俺に聞いてくれればいいから」

「そ、そう? ありがとう」


 何がなんだか分からんけどとりあえず、雑魚アディル君に頷いておく。なんかとても大事なことを言われたような気もするけど。


 私が頷くと、アディルは去っていった。




 ーーーーさて。私は、雑魚アディルこと、アディル・ハーバンドのことを知っていた。


 彼は、乙女ゲームの攻略対象である。攻略対象ながら、ユーザーの間では、侮辱的な雑魚アディルというあだ名で呼ばれていたアディルくん。哀れ、アディルなり。彼は、作中で唯一、死亡するルートが存在するキャラクターだった。


 そう。死亡。そのあだ名通り、ザコい死に方であった。


 そのルートを説明しよう。


 アディルが死亡するのは、ヒロインが王子ルートに入った場合である。

 

 魔王討伐は、攻略対象のヒロインに対する好感度は一定以上になることで、成功が確実になる。アディルは魔王討伐戦ではヒーラーとして活躍する。しかし、もし、その好感度が一定に達していなかった場合、結界を張ってヒロインを守る役目であるヒーラーのアディルは死亡する。なぜか。


 それは、あの乙女ゲーム(以降、略して『あいあな』)は、実は魔王討伐というストーリーがあるにも関わらず、RPG要素はあまり作り込まれていなかったためだ。攻略対象の好感度が上がれば上がるほど、攻略対象の実力も上がるという単純仕様であった。

 ヒロインは魔王討伐戦で戦闘に参加することはなく、守られているだけ。つまり、このゲームでやりがいがあるのは、攻略対象の好感度を上げることだけだろう。他の要素が全くと言っていいほどクソだったあいあなは、その好感度上げだけは、レベルが高く設定されていた。


 話を戻すと、王子の好感度が一定に達していなかった場合、実力が十分に無いまま魔王討伐に挑むことになる。そうすると戦いが長引き、ヒロインを守るために張っている結界の使用に魔力を余計に持っていかれ、最終的には魔力が底尽きて死亡、というわけだ。


 だが、なぜか、他のメンバーはなんとか生き残り、王都に帰還。5人も揃って帰還おめでとうハッピーエンド!


 おかしくね? これおかしくない? 1人欠けてるよ? いいの?と前世の私はもちろん思った。


 てかあっけなさすぎて雑魚く見えるだけで、多分、実力はそこそこあったんじゃないかと思う。じゃなきゃ仮にも魔王討伐戦で耐えられないって。


 てなわけで、可哀想、と言うユーザーも少なからずいた。だけど、その沸点が低く、怒ってる描写がよくあったアディルはユーザーの八つ当たりから哀れ、雑魚アディルと呼ばれるようになってしまったのだ。


 ただ、これはあくまで、ゲームの中の話だ。私が今生きているこの世界は、いくらゲームに酷似していようとも、現実である。だが、万が一のことを考える。


 今、本来ならヒロインであったはずの私は推しであるネオにしか興味がない。王子には微塵も興味がないのだ。というかネオ以外の攻略対象全員興味ない。


 もし、万が一、ゲームのシステムがこの現実にも反映されていた場合、好感度0→実力0→魔王討伐失敗→バッドエンドと、私たちは終わりだ。


 まあ、そんなこと今はわかりっこないため、その時がきたらできることをするしかない。




 はぁ・・・・・早くも胃が痛くなってきた・・・・。シナリオに巻き込まれたくなんてないのに、ネオがいれば私はそれでいいのに。












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