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4-23 ダン・ウィー・レンvsヘイテン

 辺りに砂煙が舞い散り、砂が擦れる雑音以外は何も聞こえず。

 ヘイテンはニヤリと口角を吊り上げた。


「ようやくやったか……?」


 人が動いている気配はない。

 あのちょこまかと動いていたガキも近くにはいない。

 当然そうだ。空中で身動きが取れなかったところに最大威力の一撃。

 直接的なダメージを浴びせることはなかったが、地面に叩きつけたことによる衝撃波を受けたのだ。

 近くにいたはずの彼もただでは済まされないだろう。


 だが――、


「作戦開始だ!」


「え? あ、ちょっと待……もうっ!!」


 そんな叫びが聞こえ、強風が吹き荒れる。

 人為的な風により砂煙が晴れ、見えた先には、


「――――!!」


 やった、と思ったダンが白いオーラを纏いヘイテンに向かってきた。

 同時に青髪の剣士がアジトの中へ駆けて行くのが見えたが――、


「いい加減しつこいぞぉ!!」


 ヘイテンの意識は何度攻撃しても倒れない忌々しい野郎に集中していた。

 棍棒を構え、直進するダンの動きを予測して、


「ルーメ……――ッ!?」


 一発を放とうとしたところで、反芻鉄棍が暴発する。

 振り上げていた棍棒はその勢いに耐えられず、腕ごと後ろにもっていかれる。


「隙やりッ!!」


 何故、急に暴発したのか、と混乱している間にダンが目の前に。

 軽く跳躍し、拳をヘイテンの頬にぶつける。

 溜めのない殴打のため、重量級のヘイテンを吹っ飛ばすことはできなかったが、混乱の中の一撃。

 精神的なダメージは大きい。


「痛てぇじゃねか!?」


 だが、それだけでめげるヘイテンではない。

 宙に浮いているダンに向かって、棍棒を薙ぎ払うように振り回そうとする。

 ――が、


「――――ッ!?」


 またもや暴発。

 また棍棒が腕ごと後ろに振られる。


「……ニッ」


 その様子にダンはニヤリと笑みを見せると、地上に着地した瞬間にヘイテンに向かって殴打の連続。

 ガードもままならない状態のヘイテン。

 状況が全く理解できず、ただただ一方的に殴られるだけ。

 何より、


(いったいなんでおらのギフトが……?)


 ギフトの急な暴発。その困惑で動きが鈍る。

 2回も暴発すれば、簡単に反撃することもできない。

 ヘイテンはダメージから逃れるように反射的に後ろに下がる。


「やっぱりデカブツなだけあって、タフだな」


 相手のそんな独り言も全く耳に入らない。

 何が悪いのかわからず、頭でぐるぐると考えることしかできない。


(法則は理解している。ちゃんと数えている(・・・・・)のに……!?)


「――……ん?」


 ふと目の端に映った。

 赤髪の小娘。

 そういえば、自分は彼女を追いかけてここに来たんだ。

 そいつが今まさに構えているスリングショットで額を撃ち抜かれて――……、


(そういえば、暴発する前に棍棒に何かが当たったような……?)


「――お前かぁぁああ!!??」


「うへっ!?」


 絶叫するヘイテンに、レンはドキッとして素っ頓狂な声が漏れる。


――ダダダン!!


 ヘイテンは棍棒を地面に叩きつけると、棍棒を構え直すと、


「ガキぃ!! 邪魔するなぁ!」


 地面を抉ってしまいそうな程のスイング軌道。

 睨んでいる方向は、目の前のダンではなく、レン。


「ひぃぃいい……! ごごごめんなさいぃぃぃ!」


「あ、レン、やめ……ッ!」


 自分を狙っているとわかり、レンは涙目になりながらもスリングショットを4発ヘイテンの棍棒に向かって放つ。

 ダンの制止も間に合わず。


『ギアラ!!!!』


 激しい衝撃音。

 棍棒が地面を掘り進めるのとほぼ同時にレンの弾が棍棒に着弾し、更なる衝撃。

 2倍のインパクト。

 地面は激しく揺れ、抉り出された岩の塊が衝撃を上乗せし、飛翔する。

 その威力は大砲よりも強く、量は最大級。

 殺意多量な弾が全てレンの方向へ放たれた。


(あ……死んだ……)


 レンの目の前は岩のみ。

 避けることも防ぐことも子供のレンでは到底不可能。

 レンがそう悟ってしまうのも無理はない。


 ――だが、それはレンが1人で対峙している場合だ。


「大丈夫か、レン?」


 激しい爆発音で、反射的に目を瞑ってしまったレン。

 一向にダメージを喰らった気配はなく、ゆっくりと目を開けると、目の前にはダンがいた。

 白いオーラを厚めに展開し、レンを狙っていた全ての岩石を受け止めていた。


「た、助かった……?」


「まだ死んじゃいねぇぞ」


 強気な笑み。

 普段はただただムカつく笑顔だが、今の状況では安心感がある。

 無事五体満足であることにほっと胸を撫で下ろし――だが、すぐに思い出し身体を強張らせる。


「あいつは?」


「あいつもまだ生きてるぞ」


「――――ッ!?」


 レンの顔は一気に青ざめる。――まだヘイテンも立っていた。

 ダンの作戦に気付いた以上、ヘイテンは確実にレンを崩しにかかるだろう。

 ダンの守りにも限界があるし、守りだけに集中していればヘイテンを倒せない。

 完全に詰んで――。


「――けど」


 ダンはニヤリと笑う。


「レンのおかげで倒せる!」


「――――!?」


 ダンはバリア状に展開していたオーラを戻す。

 その影響でオーラにぶつかっていた岩が全て地面に落ちた。


「どうやらあいつも2倍の衝撃には耐えられなかったみたいだ」


 そしてヘイテンの方を向いて右拳に左手を添え、オーラを溜める。

 確かにヘイテンをよく見ると、立ってはいるが、閃光弾を近くで喰らったようにふらふらと足元が覚束ず、目も回している。


「そりゃあ意図しない衝撃を近くで受けたらそうなるわな」


 まるで上手くいった、とでも言うような余裕な笑みを浮かべると、


「このまま放っておいてもいいけど、復活したら面倒だし」


 構えた状態のまま右足のオーラを噴出させる。

 急な加速。一瞬消えたように見えるその動きで一気にヘイテンに近づく。


「ここで倒す」


 ダンは右に溜めたオーラを一気に解放し、それと同時に、右足を蹴り、腰を回し、腕を回し、身体全身のバネを活かし、ヘイテンの鳩尾目掛けて放つ。


『竜撃《ドラゴン・インパクト》』

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