表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/63

3-8 ブロードの尋問

 ――キィィ!


 翌朝。

 重い扉が勢い良く開く音がすると、子供が抗議するように騒ぐ声が聞こえた。


「――って! 待ってってば!」


 それと同時に複数人の足音が廊下に鳴り響く。

 そんな騒音が聞こえて、眠っていた牢屋の中にいた4人は目を覚ます。


――ザッ! ザッ! ザッ!


「待ってぇ!!」


 足音を次第に大きくなり、それと同時に子供の声もはっきり聞こえ、やがて4人がいる牢屋の前で立ち止まる。


「おはようございま~す! 皆さ~ん、調子はいかがで~すか~?」


 ブロード・ハウゼンだ。

 フードの少女と数人の警団を引き連れて、陽気でご機嫌。でも不愉快な間延びした口調で彼はダン、ウィー、ステラ、リアムの4人に話しかけた。


「良かったよ……あんたがここに来るまではな」


「それは良かったで~す」


 ダンの皮肉をニヤニヤと髭を撫でながら流すと


「聞きま~したよ~。貴方た~ち、光の先に行ったことがあ~るそうで~すね~」


「だからそれはあたしが言ったじゃん! それに確認もしたって!」


 フードを被った少女はそう叫ぶ。


「話が違――」


「えぇ。貴女~は私に()は言いませ~んも~んね~。で~すが――」


「――ッ!」


 だが、ブロードはその少女を「黙れ」とでも言うように睨みつけ黙らせる。


「もう一度聞きま~すね~――――貴方たち、光の先に行ったことありますね?」


 鋭い眼光で鉄格子の中を睨みつける。


「そ、それがどうしたよ?」


 威圧するようなそのブロードの態度に冷や汗をかきながらも、ダンは苦笑いする。

 その様子にブロードはフッと鼻で笑うと、


「い~え~ね。今朝、この娘に~その遺跡の情報をお聞きしたんで~すが~驚くこ~とに貴方た~ちが情報元らしいじゃないで~すか~?」


「――――」


「こ~れは~調査をす~るために~も協力いただかなくて~は~と思いま~してね~」


「協力? あの生意気なガキに言ったことが全てだ。他に何を協力する必要があるんだ?」


「シエド村の奥の遺跡」


「?」


「そ~んな~貴方た~ちの妄想した村を言われ~ても行けるわ~けないで~しょ~?」


 ブロードは馬鹿にしたようにダン達を笑う。

 シエド村が妄想なわけがない。

 だが、思い込みの激しいブロードはそのことを信じることはせず、シエド村がダン達の妄言だと高笑いするのだ。


「そんな『嘘』の村~をこの娘に吹きこ~んで~警団を誑かそうとした~んで~すか~? 全く~ひどいで~すね~貴方た~ちは~」


「だぁかぁらぁ!!」


「ん~……?」


 面倒くさそうにダンは顔を顰めると、


「嘘なわけあるわけないじゃんか。俺の――俺達の村を馬鹿にするんじゃねぇよ」


 そんなダンの訴えを意に介さず、ブロードは呆れたようにため息を吐く。


「はぁ……やは~り埒が明きませ~んね~……お前た~ち!」


「ハッ!!」


 ブロードの号令に手筈が整っていたのか、連れてきた警団達はブロードが言わずとも牢屋の鍵を開け始める。

 その警団達の様子にダン達は戸惑う。

 まさか釈放するつもりなんてないことは明白だ。


 それなのに、鍵を開ける?

 一体――、


「な、なにをする気なんだ?」


「い~えね~……こうなるこ~とは目に見えていた~んで~ねぇ~。考えた~んですよ~」


「何をだよ?」


「言葉の通じな~い人に道を聞く時~どうすれば~いいか~?」


「まさか!?」


「一緒に行ってもらえ~ば~いいんで~すよ~!!」


 ブロードがニヤリと口角を引き上げた瞬間、警団が全員牢屋の中に突入してきた。

 警団の数の方が勝り、力も屈強。

 さらに全員突入した瞬間、ブロードによりまた鉄格子の扉は閉められ逃げ場がなくなった。


 ダン達はなす術なく、全員地面に抑えつけられた。


「ん~……どなた~にしましょうかね~」


「は~な~せ~」


「決めま~した~!! では~あの娘にしま~しょ~!」


 ブロードはにやけながら優越感たっぷりの口調でステラを指差した。


「キャアッ!」


「ステラァ!」


 ステラを抑えつけていた警団はブロードの指示に従い、ステラを無理やり立たせると、手枷を嵌め牢屋から出す。

 そして、ブロードにステラを引き渡すと、ブロードはステラのこめかみに銃を向ける。


「いい~で~すか~? 私た~ちが出るまでに貴方た~ちが一歩でも外に出れ~ば~彼女を撃ちま~す!」


 警団に抑えつけられても抵抗していたダンの動きが止まった。

 ブロードが言うことは、つまり警団達がこの牢屋から出るまで、そして彼らを引き連れたブロードが外に出るまで何もするなということ。

 もし破ったら、ステラに向けられて銃は本気で撃つに違いない。


 ダンが無抵抗になったのをニヤリと笑うとブロードは牢屋にいる警団に「出なさ~い」と指示する。


 そして警団全員が外に出たことを確認すると、牢屋の鍵を閉め、


「で~は~、またどこかでお会いしま~しょう~」


と満足気にステラを無理やり連れていった。


「ダン! ダァァァアアン!!」


「ステラァァァアア!!」


 ガシャンと鉄格子が鳴り響くが、頑丈だ。ただの人間の力で再び開くことはない。


 そして再び重い扉が開く音が聞こえ――そのまま扉は閉じられた。



★★★


「まさか……そんな……」


 鉄格子を掴みながら、膝をつくダン。


「…………悪いとは思ってるよ……」


 そう言う女の子の小さい声。


「お前……まだ居たのか……」


 鉄格子の向こうには、フード越しからでも下を向いているとわかる少女の姿があった。


「お前も行かなくていいのか?」


「うん。すぐ行くよ。でも――仕方がないことなんだ」


仕方がない(・・・・・)?」


 少女の言葉をダンは復唱する。

 その復唱に少女はビクッと肩を震わす。

 また激昂するんだろう。また恨まれるんだろう。


 そう考え諦めたようにため息を吐き、ダンの方を見ると、



 ――――ダンは笑っていた。


「限界まで頑張ってないのに、仕方がないことだ、とか言えるかよ!」


「――――!」


 そのダンの言葉に呼応するようにウィーの身体が淡く発光し始めた。


「ウィー! 今度こそだ」


 そしてダンはウィーに拳を向ける。


「ステラを助けるぞ!」


「ウィ!」


「シエド村を――守るぞ!!」


「ウィ!!」


 そしてウィーの拳が重なり――――牢屋内が白い光に包まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ