SCP-452-JP お菓子な世界
今回も結構長くなりました。
ちょっと考察に無理があるかな、とも思いますが1つの考え方として読んで頂ければ。
オブジェクトクラス:Safe
SCP-452-JPは赤、緑、青、黄色の至って普通な成分でできた異常性を持つ飴玉である。いつも通りになぜ異常性を持つのかは不明。
収容当初は32粒、実験に使用したために2014年時点では26粒が収容されている。低危険物収容ロッカーに保存し、担当責任者に申請して警備員2名を伴えば実験可能。
未収容のSCP-452-JPを発見した場合は担当エージェントが回収、流通経路の調査を行う。後述のSCP-452-JP-1を見つけた場合は機動部隊は-2''ヘンゼルとグレーテル''が出動、収容する。脱走しようとしたら実弾で無力化すること。
SCP-452-JPを舐めた人間は誰もが「とろけるように甘い」など、嗜好に関わらず肯定的に表現する。舐めてる途中で吐き出したりする場合は異常性は発現しないが、舐めきった人(SCP-452-JP-1)は眼球が飴玉に変化する。成分は完全に普通の飴玉だが、なぜか視力は維持される。
体温で溶けたりしないのかな?しないんだろうな…
眼球が変異した人は全てのものがお菓子でできていると認識するようになる。そして価値もお菓子と同等だど認識するようになる。収容した暴露者に対して行われた実験記録1では、トンカツ定食がチョコレートソースのかかったあんドーナツ、野菜型のキャンディ、バニラジェラート、キャラメル味のホットドリンクと認識して摂食。
文字だけで気持ち悪くなるくらい甘いな…
さらに、そのものをまるで本当にお菓子であるかのように扱えるようになる。例えば鉄板がチョコレートに見えるならパキッと割れたり…。上記の実験記録1では食器も食べてしまった。また実験記録3では食べられないものばかりを与えたが、チョコレート、ビスケット、キャンディと認識して噛み砕いた。
例えキャンディだとしてもガラス片の形してたら口内傷つけそうだけど…怪我しないのは羨ましいね!
元の味の好みに関わらず、暴露者は周りのものを積極的に食べたくなる。この時、口に入れた瞬間に全てのものがお菓子と同じ成分になり、吐き出すと元に戻る。これは経口摂取に関わらず、毒や危険物などでも食べられるようになる。実験記録5では有害なものを与えてみたが、ラムネ、ゼリービーンズ、カップケーキと認識して食べ、体に影響はなかった。
分析を行った博士は危険物処理に使えるんじゃないかと考えたみたいだけど…やっぱり人権はないんだね。知ってた。
それにしても収容室の壁とか大丈夫なのか?無力化用の実弾も体にめり込んだ瞬間お菓子に…と思ったけどお菓子が秒速400m(拳銃の場合)で体に突き刺さったら死ぬかもしれない。
ちなみに、多くの暴露者は虫歯、糖尿病、肥満、栄養失調になる。
お菓子しか食べてないからね!
しかし治療薬なども投与した瞬間にお菓子に変化するために治療は難しく、多くは死に至る。そのため定期的に運動や健康チェックを行って少しでも延命されている。
暴露者の眼球を摘出した場合は特異性が失われるが、目隠しでは意味がない。
麻酔なし(お菓子になっちゃう)の眼球摘出手術はヤバい…結果が書いてあるからやったんだろうけど…
さて、ここからが不穏な感じになってくる。
今までも結構不穏だったって?まだまだここからだ!
上でも説明した通り、暴露者は周りのものをなんでも食べられるようになる。つまり、生き物も食べられるのだ。
・実験記録8
与えたもの:実験用マウス
暴露者はマウスのことを精巧にできた和菓子として半分齧る。出血したのを見て、ベリーソースだと認識。
ベリーソースの入った練り切り…?私が見たことないだけか??
補遺
20██/██/██、当時█歳の少女と█歳の少年の姉弟が失踪する事件が発生。姉が登校していないために小学校の教員が通報、半日後に近くの森の中の廃屋で姉が見つかった。しかし弟は見つからなかった。
発見時は失踪から3日半経過していたが衰弱している様子はなく、廃屋を食べて過ごしていたと証言。床を手で引き剥がして食べるという異常性が財団へ報告され、廃屋内にあった瓶詰めのSCP-452-JPと共に初めてのSCP-452-JP-1として収容された。少女の両親、小学校教員、発見した警察官などにはBクラス記憶処理がされ、カバーストーリーが適応された。
以下は収容された少女に対しての中山博士によるインタビューを引用する。
<録音開始>
中山博士:それじゃあインタビューを開始します。よろしく、██ちゃん(SCP-452-JP-1の本名)
SCP-452-JP-1:よろしくおねがいします!
中山博士:まず初めに、君はどこであの飴玉を見つけたのかな?
SCP-452-JP-1:森の中のおうちだよ。たぁ君(SCP-452-JP-1の弟)と一緒にかくれんぼをしていた時に見つけたの。かべに穴があいていたから中にはいったら、机の上にキラキラした物があって、それがあのアメだったの。
中山博士:それで、その飴玉を食べたのかい?
SCP-452-JP-1:うん!とってもおいしかったよ!たぁ君は食べられなかったけど。たぁ君はちっちゃくてなんでも喉につまらせちゃうから。
中山博士:じゃあ君だけがその飴を食べたんだね。それで、食べたあとはどうなった?
SCP-452-JP-1:私、気づいたの。自分がお菓子の家にいることに!テーブルも、壁も、床も、全部お菓子でできてて……とてもうれしかった!家だとお菓子なんて食べさせてもらえないけど、そこでは誰も怒らないんだもん!おなかいっぱいお菓子を食べて、喉が渇いたら裏の池のジュースを飲むの!
中山博士:どれも美味しかったかい?
SCP-452-JP-1:うん、どれも食べたことがないくらい美味しかったよ!でも他のよりもずっとおいしいケーキがあったの。甘くて、やわらかくて、幸せで、私泣いちゃった。あれはいったいなんだったのかな。ねぇ先生、わかる?
中山博士:[5秒沈黙]先生にはわからないな。
SCP-452-JP-1:そっか、残念。思い出したらおなかすいちゃった。この机を食べてもいい?
中山博士:ダメだ。お話が終わったらご飯の時間だから、それまで我慢できるね?
SCP-452-JP-1:わかった。[3秒沈黙]先生の言うことちゃんと聞いてたら、ママに会える?私、ママに会いたいな。
中山博士:ああ、きっと会えるよ。
SCP-452-JP-1:ほんと!?とっても楽しみ!私、今ならママに大好きって言える気がするの!
中山博士:[7秒沈黙]インタビューを終了します。
<録音終了>
少女は約3年後に死亡するまでサイト内で収容されていた。
さて、ここからは毎度恒例の個人的な考察である。
報告書の補遺に書かれた姉弟について考えてみよう。
まず、失踪に気付いて通報したのが小学校教員というのはおかしくないだろうか?普通は3日も子供が帰宅しなかったら親が通報するだろう。しかも、小学生の少女と飴玉を喉に詰まらせる程幼い少年の遊び場として、森の中の廃屋というのも違和感がある。つまり、彼らは親によって森に捨てられたのではないだろうか。「家だとお菓子なんて食べさせてもらえない」ことからネグレクトされていたのかもしれない。インタビュー最後の「私、今ならママに大好きって言える気がするの!」も、普段は自分のことを怒る(無視したり暴力を振るったりもしたかも?)ママのことは嫌いだけど、お腹いっぱいならそれでも好きって言えると解釈できるだろう。
森に捨てられた姉弟はかくれんぼをしてるうちに廃屋に辿り着いた。壁の穴から中に入ると姉は机の上にある瓶に入った飴(SCP-452-JP)を見つけた。舐めると眼球が飴玉になり、周りの全てがお菓子に見えるようになる。捨てられてからどのくらい時間が経っていたかは不明だが、日常的にネグレクトを受けていてお腹が空いていた姉は床や壁を引き剥がして食べ、池の水を飲んだ。
では、「他のよりもずっとおいしいケーキ」とはなんだろうか?これは読みながら皆さんが気付いた通り、弟のたぁ君のことだろう。しかし、なぜ姉は弟を認識出来なかったのか?異常性のせいではあるが、インタビューをしている中山博士のことは食べようとはしていないのに。これは弟が衰弱していたからではないかと考えられる。「たぁ君はちっちゃくてなんでも喉につまらせちゃう」という発言とかくれんぼが出来ていたことから、弟は3~5歳程度だと予想される。さらにネグレクトを受けていて栄養が足りていなかっただろう。森の中を歩くうちに段々と衰弱していった。姉が家を食べている間に放置され、もしくは姉の真似をして落ちているものを拾って食べたことで倒れてしまう。喋ることもできず倒れた状態の子供ならば、食べてしまってもおかしくはないだろう。既に息絶えていた可能性もあるが、弟が最期に見たのは、美味しそうに、幸せそうに、泣きながら自分を食べる姉の姿だったのかもしれない…
これを読んだ皆さんはある有名な童話を思い出さなかっただろうか?そう、グリム童話に収録されている『ヘンゼルとグレーテル』だ。(機動部隊の名前もヘンゼルとグレーテルだったしね)
ヘンゼルとグレーテルのざっくりとしたあらすじだが、(知っている人は読み飛ばして欲しい)
木こりの夫婦とヘンゼルとグレーテルという兄妹が暮らしていた。貧しくて食べるものがなくなり、渋る父を押し切って母は兄妹を森に捨てることを決める。しかしその会話を聞いていた兄ヘンゼルが落とした小石を辿って無事に家に帰り着くことができた。
後日再び森の中に置き去りにされた兄妹は、道しるべにパンくずを落としていたが鳥に食べられてしまう。帰れなくなった兄妹はさ迷う中でお菓子の家を見つけるが、人喰い魔女が現れて捕まってしまう。しかし兄妹の機転により魔女を退治、財宝を持ち出した。家では母が病死、父が1人で後悔の日々を送っていたが、ヘンゼルとグレーテルが帰ってきて家族三人幸せに暮らしましたとさ。
似ている。思ったより似ている。
と言うよりもわざと似せて考察したせいではあるのだが。
ヘンゼルとグレーテルの兄妹が姉弟になってしまっているし、父の描写が無いために既に離婚していて母子家庭だったのかもしれない(記憶処理の対象に両親とあるので父も生きてはいるだろう、原作によっては父親が不在のものも存在する)が、前半部分の大筋はほぼ同じだ。
母に捨てられた姉弟がお菓子の家を見つけてなんとか生きながらえるという、犠牲者は出るが辛うじてハッピーエンドなお話…もちろんそんな訳が無い。だって魔女がいないじゃないか。
では、こうは考えられないだろうか?
姉=魔女だと…
弟を食べる姉の姿はまさに人喰い魔女と言える。しかも、収容のために派遣される機動部隊は「ヘンゼルとグレーテル」。童話のタイトルではなく、主人公の名前を表しているとしたら。
インタビューの最後の言葉も意味が変わってくるかもしれない。美味しいケーキになったママなら大好きと言える…と。
皆さんも飴を舐める時は気を付けて…
「SCP-452-JP」 sumiley7氏作
http://scp-jp.wikidot.com/scp-452-jp
次回紹介するSCPは、日本支部屈指の胸糞ストーリー(個人的見解に基づく)。
みんなはどの話が胸糞だと思う?私は今回のも結構だと思うけど…日本支部のSafeは信用してはならない。