SCP-2639 ビデオゲーム・バイオレンス(Video Game Violence)
1ヶ月以上振りでございます。遅くなりました。
その分今回も長くなっています。
エグめの話が好きだとバレてしまったので、この場で堂々と宣言しておこうと思います(笑)
今後もそういう系が多くなると思うのでよろしくお願いします!
オブジェクトクラス:Euclid (元Keter)
SCP-2639は、1辺1kmの空間として顕在化する現象。この空間内には、異常な実体群(SCP-2639-A)とオブジェクト群(SCP-2639-B)が実体化し、1~2時間後に非実体化する。空間を取り囲む不可視の壁によって、SCP-2639-Aはこの範囲から出られない。
ある一定の異常空間ではなく、普通の場所に突然発生するため、オブジェクトクラスが高いのも納得できる。
SCP-2639-A(実体群)は3体のヒト型実体で、異常な武器と防具を装備している。それぞれ超人的なスピード、パワー、持久力、耐性を持ち、苦痛や不快感を表さない。破壊された場合は無傷のコピーが空間内のどこかに出現する。
完全にゲームプレイヤーのリスポーンです。はい。
SCP-2639-B(オブジェクト群)は空間内に散らばる、22タイプの実体を持たない存在。それらは地面から0.1m上を浮遊し、一定速度で回転する。AがBに接触するとBは消失、Aに有益な効果を及ぼす。効果には、新たな兵器の付与、耐性の増加、破壊力の向上などがある。
ある特定のB(弾薬パック)はA個体もしくは非異常の人間が死亡した時のみ出現する。
「非異常の人間の死亡」?嫌な予感がひしひしと…。
「SCP-2639事案データベース」として2009年8月18日に発生した「事案#231」が記載されている。教会を中心として空間が広がり、96名もの死傷者を出してしまった。つまり、約12年の間にこのレベルの事件が200件以上も発生していると…。
SCP-2369-Cは2010年に発見された改造されたデスクトップコンピュータ(持ち主はAの中の1人、グロリア・スタンフェルドである)で、電源もなしに作動している。さらに、大きく改造された「Quake」というオンライン・デスマッチ(FPSゲーム)を1997年からずっとホスティングしている。1997年6月18日に失踪した10代の男女3人が参加者としてホストマシンに接続されており、身元も判明済。
このコンピュータは隔離室に保管され、アクセスはセキュリティクリアランスレベル4以上の職員のみ可能である。実験は現在禁止されている。
一旦ここまでを整理してみよう。
突如発生する異常空間
(ゲームのフィールドが展開する)
その中には3人の武装したプレイヤーが出現
プレイヤーは死ぬとリスポーン
非異常の人間を殺害することで弾薬が出現
(SCP-2369-Bはいわゆるドロップアイテム)
ここからは、財団職員が発見したコンピュータからプレイヤーにコンタクトを取った時のチャットログが記載されている。が、長いため簡潔にまとめる。
チャット参加者
[GRRGRL]:グロリア・スタンフェルド(16)
[WTF_STFU]:ジム・イヤーデン(16)
[BOOGER]:トーマス・ワーデン(15)
( [JBREINER]:ブレイナー博士(財団職員) )
[ログ1]
彼らが行っていたのはプライベートチャットであり、ブレイナー博士が書き込むと「誰?」と混乱する。ジムは結構喧嘩腰に食ってかかってくる(プレイヤー名もWTF=what the fuck、STFU=shut the fuck up(黙れ)だと思われる。気性荒め?)が、グロリアとトーマスは丁寧に退室を促してくる。博士が3人の身元を知っており、「自分が何処にいるか説明できるか」と聞くと、3人は画面以外、タイピングするキーボードすら見えないと混乱し始める。さらに博士は、彼らが1997年に失踪し、現在は2010年だと告げる。そして次のマップを読み込み、動かず攻撃もせずに立っていてくれ、指示に従ってくれと要請する。
3人のプレイヤーは自身がゲームに閉じ込められていると知らずにプレイを続けていた。しかも10年以上も。
[ログ2]
新マップの読み込み完了。彼らには、ゾンビとロットワイラーというモンスターがフィールド上で彼らから逃げているように見える(modの仕様?)。博士の要請により攻撃もせずに突っ立っていると、グラントというモンスターが現れて彼らを撃ち始める。ジムが反撃しようとするが、グロリアが必死に止める。グロリアは衝撃の事実に気付いてしまったのだ。そう、グラントが人間、銃を持った警察か兵士だという事に…。ジムとトーマスもそれを理解し、さらに自分達のいる場所が公園であることにも気付く。その中、博士が彼らの居場所を見つけ、回収班の派遣中だと告げる。
トーマス「どうやって僕らを見つけた」
グロリア「きっとニュースを見るだけで済んだと思うよ」
[ログ54]
博士が新たな実験のためにマップを読み込んで欲しいと頼む。きっとこれまでも数々の実験を繰り返してきたのだろう。彼らの受けた衝撃は計り知れない程であり、財団に感謝はしているものの今実験は流石に…。さらに、ジムは3日間もチャットに書き込みをしなかったようだ。彼らの会話の中で、ジムが唐突に戻ってきて「俺は何人殺した」「俺はその人たちを弾薬のために殺した」「顔も知らない」「死にたい」と書き込む。彼らには時間が必要だということで、博士は一旦去ることにする。
一般のティーンエイジャーが13年もゲームに閉じ込められ、そうとは知らずに民間人を殺しまくっていた。そんな事実は簡単に受け止められるものではなく、心が折れてしまっても仕方のないことだろう。ましてや死んで償おうにもリスポーンしてしまう。想像を絶するような罪悪感に押し潰されており、実験なんてしてる場合ではなくなってしまった。
[ログ59]
博士のみのチャットログ。1ヶ月以上も誰も話そうとしないよう。博士も諦めて「また明日来ます」と行って去る。
[ログ312]
まだ博士のみのチャットログ。「毎週のチェック」ということから、250近くものログの中で彼らの誰1人として反応していないと分かる。上層部も異常とは見なさなくなってきたらしい。ここでとうとう博士は、確認できた死者数は1531だったと告げる。博士自身にも10代の息子がおり、こんなことは不公平を超えていると。そして「君たちのため」に「話し合おう」と。「来週また来る」
財団職員は結構淡白なイメージを持つ人が多いかもしれないが、親身になってくれる人もいる。確保、収容はできても、ただの若者にとって重すぎる事情から彼らを保護はできていない。博士の尽力が実を結ぶことはあるのだろうか…。
以下の文書はレベル4/2639機密情報
承認無しのアクセスは即時懲戒処分の対象に
↓
↓
↓
↓
[ログ551]
前回から200以上のログが過ぎている。
このログは博士による「助けてくれ」から始まる。博士のいるサイト内で収容違反が発生し、職員が殺されているようだった。怪物がホールの外で暴れているから戦ってくれと。リーダーのグロリアは自分のパソコンで、自分のmodで、自分のサーバーで始めたゲームのせいで彼らがおかしくなったと自責の念に駆られてできないと告げる。しかし、ジムに「お前の指示に従うよ」と言われて戦うことを決める。
死ねないから何もしない、と考えていた彼らも、親身になってくれた博士のピンチに駆けつけることにした。誰かのための行動から少しでも立ち直れると良いのだが…。
[ログ553]
彼らが駆けつけて戦ったことにより、博士は助かった。そして戦闘の中で新たな「人」を殺すこともなかった。チャットに戻った彼らは沢山のことを話し合い、その中で財団は彼らを救い出すことはできないだろうと結論付けた。博士もそれを肯定し、コンピュータの電源を落とすという案も出たが、それぞれの接続が絶たれるだけだろうと予測する。彼らはこれからもゲームの中に閉じ込められ続け、いつかコンピュータが壊れたら永遠の孤独と暗闇に取り残されると理解している。今までの罪はなくならず、暗闇で懺悔し続けるのはいつか起きること。それならば、そうなる前に自分達にできることはないのか?と考えた彼らは「人を殺さない」ことを条件に戦いを続けることを決意。なんといっても「俺たちはエンドレスループ殺人祭りの中でお互い10年以上も殺しの練習して過ごした抑止不可能ほぼ不死身のデジタル死神だぜ」「協力プレイの準備はできてる」。
彼らは自身の罪と向き合い、人のためにこれからも戦うことを決意した。どれほどの葛藤をしたかは想像もつかない。
[ログ554]
「許可が下りたよ」
機動部隊オメガ-9(''スクラブ'')
機動部隊オメガ-9は、圧倒的戦力の派遣を必要とする極限状況へのほぼ瞬間的な展開が可能な3体の異常実体で構成されています。部隊の主たる役割は、暴力的・敵対的な異常存在の収容違反に対する即時対応チームです。これら3実体との合意の一環として、機動部隊オメガ-9は敵対的な非人間ターゲットの排除にのみ派遣されます。
(本文引用)
実際に彼らはSCP-3797-ARC(オブジェクトクラス:Thaumiel)において出動している。
つまりどういうこと?
3人の若者が現実を舞台に延々とFPSゲームを繰り返す異常。人間はモンスターに見え、ドロップアイテムもあり。チャットで意思疎通ができる。
現状を自覚した後は挫折も乗り越え財団の機動部隊として他のSCPと戦い始める。
ゲームの世界に入っちゃった系の大変さは分かって頂けただろうか?
またしても胸糞悪い話だなっ!と思ってくれると嬉しい(笑)
「SCP-2639」 The Great Hippo氏作
http://www.scpwiki.com/scp-2639
次回紹介するSCPは、ここの所長い話が多かったから軽めのもので。
皆さんは、自分の知らない言葉を聞いた時に、そんなものはこの世に存在しない!と否定しますか?それとも…?