秋の試合 3
「光沢高校先鋒、間渕 鮎美。真田高校先鋒、山田 花」
妹の気に怯えていると、秋姉達の試合が始まった
試合場の中央で竹刀を構える二人の剣士は、身内のひいき目では無いけれど、うちの高校の方が堂々としている様に見える
「開始!」
さぁ試合が始まるぜ!
「一本、一本、いっぽんぽん!!」
秋姉の試合以外は早送り
初戦は秋姉の出番無く、完勝だ
「……うちの高校、結構強いんだな」
キャーキャー喜ぶ雪葉達を横目に、感心した様に呟く
「フフン、知らないのかね君」
「え?」
呼びかけられて振り返ると、ビデオカメラ片手にニヤリと笑う、細顔の中年眼鏡
「光沢高校は、佐藤 秋の名が有名過ぎて他の子達は影に隠れがちだけどね、二年の田宮も、なかな………………………………………………………でもやはり秋さんだね。技、力、気。その全てが郡を抜いている。彼女に勝てる子なんて、そうは居ないんじゃないかな」
秋姉の情報以外は全面カット
「成る程、流石俺の姉。……ところで貴方は?」
「ふ。私は聖南学院の女子剣道部スペシャルアドバイザー、 だ!」
秋姉の名前以外は、削除
「へ~」
「…………スペシャルアドバイザー、 だっ!」
「へ~」
「…………す、スペシャルアドバイザーの……」
「日永 宗院さんね~。覚えたわ~」
母ちゃんがおっとりと呟いた
「お、奥さん……奥さ~ん! ぐぼっ!」
感動で抱き着こうとした宗院さんの鼻面に母ちゃんの左肘。にこやかに微笑みながらやるから恐ろしい
一分後
「こ、今年はうちが頂きますよ」
流れる鼻血をハンカチで押さえながら、宗院さんは言う
「うちの新しいレギュラーで徳永と言う二年が居るのですが、それを秋さんにぶつけます」
「……ほう。しかし俺の……お、俺達の秋姉に二年が勝てるとでも?」
「……うちはね、全国狙っているんですよ。しかしくじ運が悪くてね、去年は二回戦目にそちらの学校に敗北しました。よほど悔しかったのでしょうね、それから一年、主将の竹内を始め、以下部員17名。一人も脱落する事無く、厳しい鍛錬に耐えてくれましたよ。中でも徳永は、書いた私ですら躊躇してしまう程のスケジュールをこなしてくれました」
嬉しそうに話す宗院さん
成る程、中々の自信だ。だけど
「秋姉は勝つよ。間違いなく」
自信なんか無い。これはただの確信だ
「……ふふ。君に話し掛けて良かったですよ」
蛇の様な眼で、下から上へとなめ回す様に俺を見る宗院さん
……ま、まさかホモ
「試合後、またお会いしましょう。私の執念が勝つか」
「俺の信頼が勝つか」
俺達はニコリと微笑み合い、その場を立ち去るって俺が立ち去る必要は無いな
「なんだか主人公っぽかったわ~」
座り直した俺に、母ちゃんが嬉しそうに言った
「ふ。俺はいつでも主人公さ」
「……馬鹿じゃないの?」
「やっと喋ったと思ったらそれかい!」
花梨にツッコミつつ、俺は部員を前に微笑んでいる秋姉に、頑張ってと小声で応援してみた
今日の主役
秋>>徳≧院>>俺>母
つづませる