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春の無敵 4

「そ、創業十周年企画の初日。カップルデーから凄い二人が現れました……。これは歴史に残る戦いです! お、そのカツ丼は!? 当たり、映像クイーズ!!」


「ハァハァ……ま、またか」


「やったな!」


カツ丼片手に俺の元に来る春菜。当たったんだからもう食わなくて良いのに……


「あちらの画像をご覧下さい」


そう言って出た映像は、部屋の隅でポツンと座っている女の姿って!


「またこの女か!」


「この女性は何をしているでしょうか」


「何って……」


「時間的にこれが最後のクイズになるでしょう。さぁ、映像スタート!」


「止めなくちゃ……止めなくちゃ……」


暗い部屋。電気も点けず女はぶつぶつと呟く


ガチャリ。ドアが開き、若い男が入って来た


「……正也」


「……綾子」


正也と呼ばれたホスト風の男は、綾子の姿を見て表情をしかめた


「……綾子、もう止めるんだ。お前の身体が壊れちまう」


本気で女を心配しているのだろう、悲痛な声だ


「止められないの……」


しかし女は首を振る


「綾子!」


「止まらないの……」


暗くて良く見えないが、手の指に何か細い物を握っている。ま、まさか薬


「カ〇ビー」


「かっぱ〇びせんか!」


「正解! 10000ポインツ! 優勝は貴方がたカップルに決定!!」


「く、くだらね~」


マジになった俺が恥ずかしい


「優勝おめでとうございます! それではスポンサーであるカ〇ビーから全国一部で使える商品券十万円をプレゼント!」


「一部なんだ……。でも嬉しいぜ! やったな春菜!!」


「ああ、兄貴!」


「あ! 馬鹿っ!!」


ざわ……


春菜の一言で、会場はざわめく


「兄貴……ですか?」


静かに尋ねるシルクハット紳士


「あ、いや、ぼ、僕達はその……」


「まさか二人は……」


「す、すみ」

「禁断のカップル!」


「ませ……ん?」


「彼女のような美少女のボーイフレンドにしては死んだ魚の様な目をしているとは思っていましたが、そんな事情が……。それは確かに目も死にますね」


「別に死んでないから、元気だから!」


「事情は分かりました。そういう事でしたら問題ありません。宜しいですか皆さん!」


紳士は会場に居るカップル達に問いた


「ああ!」


「勿論よ!」


「頑張れ二人とも!」


カップル達は拍手と共に暖かい声援を俺達に送った……その時っ!


「ちょっと待つだべ!」


いなかっぺが吠えた!! 


「百歩譲ってカップルだとしても証拠が無いだべさ!」


「んだんだ」


「ぐっ……痛い所をついてきやがる」


「む~、証拠って言われてもなぁ」


言葉に詰まる春菜


……やっぱ騙す訳にはいかないか


「……もう諦めようぜ、春菜。帰りにタイヤキ買ってやるからさ」


「……花月堂のタイヤキ十個だぞ」


「あ、ああ」


高いんだよなアレ……


「むふん。やっぱり証明出来ないっぺね。本当にカップルなら証拠にキスでもするけんね!」


「田作さんスケベだす~獣だす~」


「ふっ。オラが獣になんのは花ちゃんの前でだけさ」


「田作さん……」


「お花……」


見つめ合い、勝手に盛り上がるいなかっぺカップル。もうどうでもいい気がしてきた


「ん? キス? そんなんで良いのか?」


そう言うと春菜は俺の正面に立ち、俺を見上げる


「? どした?」


春菜は背伸びし……


「ん」


「ぶっ!?」


俺にキスしやがった!?


「な、何をするのよ、春菜!」


困惑し、女化するあたし


「何ってキスだろ? それより兄貴の口、カニ臭いぞ」


あたしとは逆に、春菜は平然としていますわ


「……ま、負けたっぺ。キスなんてハレンチな真似は恋人同士しか出来ないだっペンタックス」


「スポンサーだべ~」


「お前ら実はスタッフだろ!?」


「とにかく優勝はアンタらだベがな! おめでとだがや!!」


「最強無敵カップル、此処に誕生です!」


いなかっぺと、紳士の言葉に会場のボルテージはMAX! 


そして何故か胴上げや握手会、果ては記念撮影までして、帰り道


「今日は楽しかったな、兄貴!」


「…………」

「兄貴?」


「あのなぁ春菜、気軽にキスなんかするなよ。キスってのは、本当に大切な人とだけにするもんだぞ」


「ん? 私は兄貴や親父それと母さん。姉ちゃん達に雪の事が一番大切だぜ? まぁちょっと恥ずかしかったけどな!」


「い、いや、そう言う事じゃ無くて……」


「ん? なんだよ?」


「……ま、そのうち分かるよな。焦る事無いか」


俺の妹は、大切な人を恥ずかしがらず素直に大切だと言える強い妹だ。

 コイツがいつ、どんな奴を好きになるかは知らないが、コイツが選ぶ奴ならきっと最高の男だろう。そいつが春菜にキスの大切さと意味を教えてやれば良い


「って誰だ、そのクソ幸せ野郎は! 兄ちゃん簡単には認めませんよ!」


久しぶりに春菜の頭をクシャっと撫でる


「な、なんなんだよ~」


「ま、とにかく。俺もお前が大切だぜ、春菜!」


「い、言わなくても分かってるよ! たく……。 あ、ところで兄貴。タイヤキの約束忘れてないよな?」


「本当に空気読まないよな、お前って……」


因みに商品券は、会場にいたカップルみんなに分けました


「私は、お食事券があれば良いからな!」





今日の食事量



春>>>>>田>>>>>>俺


つづりゃ

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