第47話:雪の作文
高坂小学校四年、佐藤 雪葉
私の家は、三人の姉と一人の兄。それに、お母さんと今は出張でお留守にしているけど、優しいお父さん。そして私の七人家族です
姉や兄はみんなとっても優しくて、末っ子の私は甘えてばかり。中でも兄には、いっつもわがままを言ってしまって、困らせてしまいます
でも兄は、仕方ないなぁって顔で私のわがままを聞いてくれて、私も、ごめんなさいと思うのだけど、やっぱり兄に甘えてしまいます
ううん、兄にだけじゃありません。いつも勉強を教えてくれる夏お姉ちゃんや、私を暖かく見守ってくれる秋お姉ちゃん。 色々な遊びを教えてくれる春お姉ちゃんに、優しいお母さんにも沢山甘えてしまっています
このままじゃ駄目だ、しっかりしなきゃ。逆にみんなを助けてあげなきゃ
お父さんが居ない今、守られているだけじゃ駄目だ。みんなを私も守らなきゃ
いつもそう思っているけれど、私の出来る事なんて凄く小さい事。
守られて、甘えてばかりの私じゃ頼りにもならない。
だけど、みんなの事が大好きな気持ちは誰にも負けてない! 大好きなみんなの為に、私も何かをしてあげたい
だからお兄ちゃん、お姉ちゃん、お母さん。私に出来る事があったら何でも言ってね。私、一緒懸命頑張るから
最後に、私の家族へ
私は、この家族の元へ産まれて来て、本当に幸せです
お父さんが居なくて少しだけ寂しいけど、みんなが側に居てくれるから大丈夫です。
いつも本当にありがとうみんな。
お仕事大変だろうけど頑張ってね、お父さん
「…………」
「ど、どうだった? お兄ちゃん」
「雪葉っ!」
「は、はい!」
「愛してるぞ!!」
兄ちゃん感激や~!
花マルが付いた雪葉の作文を読み終え、俺のハートは震えた
「お前のでこにキスさせろ、このやろう!」
「あ、あわ、お、お兄ちゃん」
戸惑う雪葉を捕らえ、でこにキス
「あっ……は、恥ずかしいよ、おにぃちゃん」
「良いんや、良いんやで恥ずかしがらなくても良いんやで。俺達は相思相愛やないか!」
雪葉の顔中にキスの嵐だぜ!
「あ、あう……うぅ」
親父の代わりに、俺がお前を守ってやる! そう固く決心し、俺は……
ガチャ
「……何を血迷ってるのかしら? あんた」
ドアから鬼が現れた
「…………ですよね」
いくらなんでもテンションを上げすぎた
「お……にぃ。雪葉、もう……だ……め」
顔を真っ赤にし、力無くくたーっと床に寝転ぶ雪葉
そして我が前に立つ鬼
「……迂闊だったわ。シスコンって妹も対象内なのよね」
「ま、待ってくれ姉ちゃん! こ、これを見てくれ!!」
「あ~ん? 遺書かなに…………か」
夏紀姉ちゃんの瞳から、一滴の涙がこぼれる
「う……ううん…………あれ? 夏お姉ちゃん?」
「愛してる!」
夏紀姉ちゃんは雪葉を羽交い締めにし、やっぱしキスの嵐!
「きゃ!?」
「あたしも大好きよ、雪葉~」
「お、おねぇ……や、やだ止めて、た、助けてお兄ちゃ~ん!」
ガチャ
「な~にをしてるのかしら~」
真の鬼が現れた。細目がギラリと光っている
「ま、待って母さん! これを見て!!」
以下ループ
そして、十分後
俺らは皆、雪葉の部屋で正座をさせられていた
「……みんなハシャギ過ぎ」
「す、すみません」
「ご、ごめんなさ~い」
「ご、ごめんよ秋姉」
「……私じゃなく、雪に謝って」
「うっ」
秋姉は、いつになく怒っている
「ご、ごめん雪葉」
「んーん。ちょっとビックリしただけだから。秋お姉ちゃん、雪葉怒ってないよ? だから」
「…………ん。もうこんな事したら駄目だよ、みんな」
「はい!」
「は~い」
「分かりました!」
一糸乱れぬ返事をし、足の圧迫から解放された俺達は、痺れに苦しむ
その間、秋姉は雪葉の作文を読んでいた。そして優しい微笑み
「……よく頑張ったね、雪。良い作文だよ」
「……えへ」
軽く雪葉の頭を撫でる秋姉。ちょっと羨ましいぜ