春の巨大魚 4
夕方になり、あっという間に日は落ちて辺りは真っ暗になる。山の夜は早いのだ
『…………』
『…………』
カップラーメンと魚を食ってから一時間。俺達は一言も喋らず、ただ竿を見ていた
『…………寒い』
もう夏とは言え山の、それも水辺にいるんだ、体感温度は十度あるか無いかだろう
『ん? 寒いのか? ならこっち来いよ、兄貴』
春菜は手招きをする
『お、カイロでもあるのか?』
期待を胸に春菜へ近付くと、春菜は俺の手を取って引っ張った
『こ、こら』
バランスを崩し、転びそうだった俺を春菜は力強く抱き留め、ギュッと優しく抱きしめる
『……ほら、こうすれば暖かいだろ?』
『あ……春菜さん……っておい! 何でそんなに男前なんだよお前!?』
直ぐに離れ、抗議
『何で怒ってるんだ? あ! もしかして兄貴、照れたのか?』
悪戯っ子の様に、春菜はニヤつく
『照れたのは照れたけどさ……』
普通に照れさせてくれ
『たく、しょうがねーな兄貴は~』
春菜は、やっぱり何故か嬉しそうにそう言い、自分の着ているシャツを脱いだ
下着をしていない為、中学生にしては大きめ胸がもろに飛び出し、俺は慌てて周囲を警戒する
『な、何をしてんだお前は!』
『私、あんま寒く無いからこれ着ろよ。私はタオル羽織るからさ』
『お、お前なぁ!』
『また私のせいで兄貴が風邪引くの嫌だからさ』
鼻を擦り、照れ臭さそうに笑う春菜って
『どんだけ男前なんだよお前は!?』
「…………」
「…………お、お兄さん思いなのですね」
「え、ええ。良い妹……なのでしょうか?」
本当は男なんじゃ?
「ですが、お悩みになる事は無いと思いますよ。お話をお聞きしていると本当に仲の良い御兄妹の様ですし、少しぐらい男の子っぽくてもそれは個性で……」
「あ、違います。僕が悩んでいるのは春菜の事では無くて」
「え? それでは何をお悩みになられているのでしょう?」
「巨大魚って何処で釣れま」
ガチャ……ツー、ツー
「…………」
今日の釣りキチ
春>>俺>>>>>>>>>>電
続けたら