春の巨大魚 2
『今日はいい天気だし、絶好の釣り日和だな!』
俺らが住む町から電車に揺られること四十分。
着いた場所はデカイ山と美味い空気が素敵な、ど田舎だ
『相変わらず何も無い駅だな』
『ん? 川とか山があるじゃん。畑もめちゃくちゃあるし』
『そう言うのを何も無いって言うんだよ』
駅前にコンビニすら見当たらない。シティーボーイの俺にとっては何とも面白みが無い町だ
『お、兄貴! 飛行機だぜ? うぉ~うるせ~』
『……ほんと元気だよなお前』
その元気さを兄ちゃんに分けて欲しいよ
『んじゃそろそろ行こうぜ、兄貴!』
『おー』
『気合いが足りないぞ兄貴。私達はこれから強敵と戦わないといけないんだからな』
『分かった、分かった。行くぞ~!!』
『お~!!』
俺と春菜は高々と拳を突き上げ、飛行機雲が伸びる蒼天に向かって叫んだ
「……駅に人が居なくて本当に良かったです。あいつと一緒にいると、テンション高くなってしまうんですよ」
「仲が良いのですね。私の所は、もう姉離れしてしまっているので、少し寂しいです」
「照れ臭いだけだと思いますよ。今度外食に誘ってみたらどうですか?」
「外食ですか?」
「はい。バシッと化粧やオシャレをして、大人の女ってのを見せ付けてやって下さい」
オシャレをして、化粧をした秋姉……
「……むふふ」
「ど、どうかしたのですか?」
「あっ! い、いいえ。ちょっと想像しただけですから」
「想像?」
「あ~、そ、それより僕の話しの続きを聞いて下さい!」
「あ、は、はい! どうぞ!」
「ええと、春菜は……」
駅からガタガタ揺れるバスに乗って一時間。
それから結構重い荷物を担ぎ、山道を三十分歩き……
『や、やっと』
『着いた!』
我孫湖は山の麓にある、周囲長が1キロあるか無いかの小さな湖だ。
一時期、天然のウナギがいるとか居ないで話題になり、人が押し寄せたが、今では訪れる者も少ない
『相変わらず綺麗な湖だよな』
透明って程では無いが、苔も少なく、浅い所なら土まで見える。
時より木々の合間から吹く風と、穏やかな揺れる水が、心地良い
『…………いる』
『は?』
『奴がいるぞ兄貴』
春菜はグイッと袖を捲った後、いきなりショートパンツを脱いだ。
白い生地の左右に小さいリボンが付いた、珍しく可愛い下着を履いていてって
『何してんだお前は!? こんな所で脱ぐな!』
『兄貴が担いでるバックからジーパン出してくれよ。こんなスボンじゃ奴と戦えない』
「周りに誰も居なかったからって、普通躊躇しません? と言うか、せめて先にジーパンを取り出してから脱げよと」
「…………周りに人が居なくて良かったですね」
「居ても脱ぐと思いますよ、あいつなら」
「…………」