第45話:花のスイートハニー
「マイスイートハニー、花梨は僕の恋人さ」
虚ろな目で俺は花梨のクラスメート達にそう宣言した
「も、もう! ダ、ダーリンったら。花梨恥ずかしい」
虚ろな目で俺の腕に抱き着く花梨。花梨のクラスメート達はドン引きで、俺は生きているのが嫌になった
何故こんな目に? それを説明するには時間を少し、遡らなくてはなるまい
遡ること一時間前、学校帰りの事だ。
空に爛々と輝く土曜日の太陽。その熱波を我慢出来ず、俺はソフトクリームを買うべく近くにあるコンビニへと向かった
その途中、俺は知ってる奴の後ろ姿を見掛ける
『……なにやってんだアイツ?』
それが一番最初に思った事だ。アイツとは電柱の陰で隠れているソイツ。 スカートが落ち着きなく左右に揺れている
俺はソイツに近寄り、後ろから声を掛けた
『おい』
『キャー!?』
『ギャー!?』
悲鳴を上げ、振り向きざまに飛んできた花梨の爪先蹴り! 俺の弁慶へ八十のダメージ!!
『な、何をするんだよ花梨!?』
『あ、あんたか……ってあんた! いきなり声を掛けないでよね!!』
相変わらず可愛くないガキんちょだ
『何やってんだよ、こそこそと』
『しっ! バカ! 見付かるじゃない!!』
花梨は口許に人差し指を立て、シーっとジェスチャーをする
『見付かるって言われてもな……何に見付かるんだ?』
『…………ストーカー』
『……ああなんだ、アレか』
思春期特有の勘違いって奴だな。俺にもあったぜ
『それじゃ俺はアイス買って帰るよ』
俺は花梨を横切って、向かいのコンビニへ……
『まーちーなさーい!』
『ぐぇ!?』
花梨が襟首を引っ張りやがった!
『変態に怯えるか弱い女の子を無視してアイスですって!? あんた本当に男!!』
『うっ』
夏紀姉ちゃんを彷彿とさせる覇気だ。
コイツ将来あんな化け物になるんじゃ……そうはさせるか!!
『そうだな、ごめん。ストーカーだって? 確かに心配だ。俺に出来る事なら何でもやる、言ってくれ』
じっと花梨の目を見て、俺は言った
『……ぅ…………』
花梨は目を逸らし、地面へと視線を下げた。
……お、怒ってらっしゃる?
『ほ、本当に何でもするの?』
『へ? あ、ああ。どんと来い!』
何を言う気だコイツ!?
『なら……』