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第43話:母の風邪

「ただいま~」


シーンと静まり返った玄関。二足しか無い靴


秋姉と春菜は部活だろうし、夏紀姉ちゃんもまだ大学だ。

 雪は友達か何かと遊んでいるのだろうか? 家に居る気配が無い。今は家に居るのは俺と……


「おかえりなさ~い。こほ、こほ」


どてらを着て鼻水垂らしている母ちゃんだけだ!


「か、母ちゃん、寝てないと駄目だろ? それにどてらって……」


暑く無いのか?


「う~ん、でもずっと寝てたし~」


ふらふらとリビングの方へ歩いてゆく


「危ないなぁ」


俺は母ちゃんの横に立って、肩を貸す


「ありがと~」


「ああ。何か食べたい物ある?」


「さっき雪葉が買い物に行ってくれたわ~。キムチ鍋よ~」


「い、良いね。スタミナ付きそうだ」


今は夏ですよ母様……


「と、とにかく今日は俺が作るから母ちゃんはゆっくり休みな」


「ありがと~。母さん嬉しい」


母ちゃんはギュッと俺の首を抱いた


「ち、ちょっと、止めてくれよ」


妙な気恥ずかしさを感じながら、母ちゃんをリビングのソファーへ座らせる


「大丈夫? 母ちゃん」


「平気よ~」


母ちゃんは弱々しく微笑んだ


「とにかく暖かくして……いや、十分暖かそうだね」


母ちゃんの額に浮かぶ大量の汗が物語る


「……どてら脱いだ方が良くない?」


「いっぱい汗をかいて直ぐ治すのよ~」


母ちゃんの細目が燃えている。もはや誰も止められないだろう


「なら……」


洗面所へ行き、タオルをゲットだぜ!


「……ほら。せめて汗拭きな」


「ありがと~」


母ちゃんはタオルで顔を拭き、次にどてらを肩までめくって首筋や背中、胸と体を拭いてゆく


……なんて言うかサスペンスドラマに出てくる温泉の女将みたいな無駄な色っぽさがある拭き方だ


「すっきりよ~」


「タオル、ビショビショじゃんか。もっと小まめに拭かなきゃ駄目だよ」


「は、は~い」


申し訳なさそうな母ちゃん。この顔はレアだな。写メ撮っとくか?


パタン


玄関のドアが閉まった音が、微かにする


「……ただいま」


そしてリビングのドアが開き、心配そうな顔の雪葉が入って来た


「お帰り、雪葉」


「おかえりなさ~い」


「ただいまお母さん。それと、お兄ちゃんっ」


ホッとした顔をして、雪葉はトコトコと俺の傍に寄る


「買い物ご苦労様。偉いぞ」


「うん!」


「さて、と。それじゃ夕飯の仕度をしようかな」


制服の上を脱ぎ、袖を捲る。……秋姉が帰ってくる前に終わらせよう


「はい、お兄ちゃん。雪葉も手伝うね!」


「お! そうか? なら一緒に作ろうな!」


「うん!」


雪から買い物袋を貰い、一緒にキッチンへと向かう


「……うふふ」


そんな俺達を見て、母ちゃんは嬉しそうに笑った

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