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月の勉強会 3

十五分後


「か、買って来ましたお姉様」


しかし何故俺は買って来てしまうのだろう?


「遅い! もう飲んでるわよ!!」


その言葉通り、夏紀姉ちゃんと美月の手にはコップがある


「ご、ごめんね兄ちゃん」


「……いいんやで」


美月はな~んもわるうない。悪いのは人の心を持たない鬼だけや……


「ほら、凹んでないでさっさと財布返しなさい」


「はいよ。……DVDサンキュ」


「……ふん」


夏紀姉ちゃんはそっぽを向き、一息でカフェオレを飲み干した


「さてと、勉強の続きをしましょうか」


「ヤー、なっちゃん!」



キーンコーンカーンコーン


近所の学校から微かに聞こえる五時のチャイムが鳴った


「……よし、此処まで。よく頑張ったわね!」


「はい! なっちゃん先生」


元々基礎は出来ていた美月。

 僅かな時間とは言え、夏紀姉ちゃんの優しく時に厳しい熱血指導のかいがあって、横で見ていても中々ドイツ人じゃんってレベルまで成長した


「美月は頭で理解していても、耳が慣れて無かっただけ。今日このぐらい会話を聞き取れる様になったのなら、明日の小テストぐらいなら楽勝よ。後は本当に慣れるまで先生に教わるなり、ドイツの映画を見るなり、あたしに会いに来るなりして勉強あるのみ」


「はい!」


「うん。と、もう夕方だけどご飯食べてく?」


「んーん。家で食べる。今日はコロッケなんだ!」


満面の笑みで答える美月を見ていると、思わずこっちも嬉しくなるぜ


「ふふ、そっか。ならまた今度一緒に食べましょう? 美味しいの作ってあげる」


夏紀姉ちゃんは優しく微笑むが、それは自分で料理を作る人が言う台詞ではないだろうか?


「何か文句ありそうな目ね?」


「……いいえ」


秋姉が居ない今、鬼の機嫌を損ねる訳にはいかない


「それじゃわたし、そろそろ帰るね」


夏紀姉ちゃんに睨まれている間に、美月は手持ち袋に教科書やノートを入れ、帰り支度をしていた


「あ、ええ。ほら、送ってあげなさい」


「ああ」


「え!? 兄ちゃんわたしの家まで送ってくれんの! やったー!」


バンザイをしながらぴょんと跳ね、美月は部屋を出て玄関へと先に行く


「…………あんなにいい子が何であんたに懐いてるのかしらね」


「……夏紀姉ちゃんに懐くよりかは」


「今、何か言った?」


「……いいえ」


「なっちゃん~おじゃましました~」


玄関から美月の声がする「ああ、ええ! ちょっと待って」


夏紀姉ちゃんは慌てて部屋を出て、玄関へと行く


いつも客のことなんざ気にもしない夏紀姉ちゃんにしては珍しい反応だ


「明日は雨か……」


雨で済めば良いけど



「また来なさいよ」


「うん!」


夏紀姉ちゃんに遅れる事数十秒。美月は靴を履いてドアを開けている所だった


「じゃ、送って来るよ」


「ええ。あ、ついでだから帰りに本買って来て」


「はい、はい」


弟=パシリの方程式が、既に出来上がってしまっている。だが、明日からは違うぞ!


内心の笑みを隠し、俺は美月を追って家を出た


「お待たせ」


「うん。いこ?」


美月の家へまで並んで歩くアスファルトの道。太陽は沈んでおらず、空もまだ青い


「それでね……あ」


キャプ翼子やサッカー、ドイツの事で盛り上がっていると、突然美月が足を止めた


「美月?」


何かを見ているその視線を追うと、買い物帰りと見られる中学生ぐらいの男の子と五歳ぐらい離れていそうな女の子の姿があった。

 二人は兄妹なのか、買物袋を持っていない手を仲良さそうに繋ぎながら歩いている



「……兄ちゃん、手繋ご?」


「手?」


「うん。……ダメ?」


「良いぜ、ほら」


左手を差し出すと、美月は嬉しそうに右手で握った


「うっわ~、兄ちゃんの手でっけーなぁ。わたしも高校生になったらこのぐらいになるかな?」


なれば良いなと期待を篭めて美月は言うが……


「多分ならない方が良いと思うぞ」


「そんな事無いよ~サッカーボールとか片手で持ちたいし」


「う~んだけどな、女の子は小さい方が可愛いと思うぜ」


「兄ちゃんは小さい方が好き?」


「え? あ、ああ」


俺よりデカイとちょっと嫌かも


「ふ~ん……」


美月は急に無口になり、俺の顔をじっと見つめる


「どした?」


「ううん、なんでもないよ。……でもやっぱり雪は羨ましいなぁ。わたし兄弟とか居ないからさ」


「そっか」


「兄弟欲しいなぁ。なっちゃんや秋ちゃん。兄ちゃんみたいな」


「……またいつでも遊びに来いよ?」


「うん! ありが……ダンケ シエーン、兄ちゃん!!」


「ああ。ニヒツ ツ ダンケン、美月」


そんな事を言いながら笑い合う俺達は、周りから見たら兄妹に見えていたかもしれない



「ただいま~」


美月を送って、本も買って来た。さーて夕食までDVD見よ~と


「ふんふふ~ん……うわっ!? な、何でまだ俺の部屋にいるんだよ!」


部屋のドアを開けると、夏紀姉ちゃんがベットの上で足を組み、妖しく微笑んでいた


その夏紀姉ちゃんの指が机を指差す。指された机の上には見覚えあるパッケージ……


「あっ! そ、それは!?」


「コンビニの袋なんかに適当に入れておくから姉ちゃん見ちゃったじゃない」


夏紀姉ちゃんは俺がさっき買ってきたDVD【暴力的な姉を従わせる20の方法! これで貴方も調教師】を手に持ち、再び微笑む


この微笑みの意味は……


「覚悟しなさい?」


「し、しないと駄目ですか?」


「さあ? 好きにしなさい」


「ひっ!? た、助けて秋姉~!」


もうじき訪れるであろう死を前に、僕はまだ帰らぬ姉を求め、力の限り叫びました。




今日のドイツ人


夏>>秋>>父>月>>俺


続ければ

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