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月の勉強会 2

「さて、本日は夏紀アカデミーへようこそ」


案の定寝ていた夏紀姉ちゃん。

 部屋に叫びながら飛び込んだ俺にボブ・バックランド並のチキンウィングフェースロックをして下さった


技を食らい、悲鳴を上げた俺を慌てて助けに来た美月。

 その時、下着姿で喜々としながら可愛い弟の右腕をへし折ろうとしていると言う、凄まじい姿を美月に見られてしまった夏紀姉ちゃんは、部屋に閉じ篭ってしまう


そして三十分後、則ち、今の姿がこれだ!


「じゃあ、まずは基本からよ」


紺色のリクルートスーツを着て、普段かけない眼鏡を掛け、髪を一つに束ねて薄化粧までした夏紀姉ちゃん


時折優しく微笑むその姿は、知らない人間が見たら知的で優しそうな美女……だなんて、たわけた事を思うかも知れない


だが、この右腕の痛みが奴が人では無く鬼と呼ばれる類の生き物である事を俺に教えてくれる


「ドイツ語のアルファベートの発音は分かるのかしら?」


「はーい! えっと、アー、ベー、ツェー、デー、エー」


「あら、凄いわね。うちの弟なんてアルファベットすら分からないのに」


俺の(怒)ポイントが3アップ


「じゃあ基本すっ飛ばして本題行きましょう。美月は何が分からないのかしら?」


「……うん。ヒアリングって言うんだっけ? ドイツ語の会話を聞くんだけど、上手く聞き取れなくて」


「進学校……じゃないわよね。最近の小学校は凄いわね~。あんた今の時代に生まれなくて良かったわね。日本語だって怪しいぐらいだしさ」


俺の(怒)ポイント4アップ


「そうね~。じゃあ今からゆっくり日常会話をしてみるから聞き取れたら返事してみて」


「はーい!」


「イッヒ フオイエ ミッヒ ズィー ケネン ツー レルネン」


「あ……えっと、えっとゼアー エアフロイト!」


「あら! ドイツ語で返事してくれるなんて凄いじゃない美月!」


「なっちゃんのドイツ語が聞き取り易かったからだよ!」


喜ぶ二人。かやの外な一人


「……ジュース入れてきます」


「あたしミルヒカフェー美月は?」


「へ?」


「あればオランジェンザフトが飲みたい! 無かったら何でも良いよ、兄ちゃん!」


「……もう一度言って貰っても良いですか?」


「カフェオレとオレンジジュースでしょうに。使えないわね~」


「俺の(怒)ポイント8アップ」


「ああん? (怒)ポイントだぁ?」


しまった!? 口に出し出してた!


「い、イカリングだよ! イカリングが食べたいな~って」


「……そういえば、あんた。昔からポイントがどうとか言ってたわね?」


夏紀姉ちゃんはポキポキと指を鳴らす


「あれってもしかして、あたしに対しての怒りをポイントにしているのかしら?」


そして蛇のような舌なめずりをし、ゆっくりと近付いて来る。

 俺の体は恐怖でカエルの様に硬直し、身動き一つ取れない


「シスコンなだけかと思ったら執念深さまであったとはねぇ……駄目な弟を持つと苦」


「ザック ドッホ ゾー ヴァスニヒト!」


「へ?」


突然美月が何かを言い、俺を庇うように夏紀姉ちゃんの前に立った


「み、美月?」


「兄ちゃんはわたしの大切な友達なんだから!」


「美月……。ふふ、そうね。言い過ぎたわ」


夏紀姉ちゃんは、何故か嬉しそうに美月の頭を撫でる


「…………あ~あんたが欲しがってたDVD? オレンジジュースを買いに行くついでに買ってくれば?」


そう言って夏紀姉ちゃんはポケットから財布を取り出した


「は? オレンジジュースなら冷蔵庫に」


「早く買いに行け!」


財布を顔面に投げ付けられた僕は、(怒)ポイントを上げても良いのでしょうか?

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