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秋の出陣祭 3

「はい、じゃあ間違えた方は速やかにお帰り下さい」


俺がそう言うと、群衆はぶつくさ言いながらも引き上げていった


難しすぎる、クソ問題だ。屍に利き腕なんかあるのかよ。なんて悪口も聞こえてくるが、素直に帰るのだから許してやろう


「そ、そんな、俺がマスターの利き腕を間違えるなんて! もう一度チャンスをマスター!!」


「やらんぞ。ほら帰れや」


塩まいたろか


「ねぇ、私だけでも入れてくれない? いいもの見せてあげるから」


鈴花は体をくねらせながら、甘えた声で言う


「ほら」


胸元を引っ張り、下着をチラ見せ


「生足ちらり」


スカートを軽く上げて、以下同文


何故こいつは色仕掛けに自信が持てるんだ?


「……そう、死にたいのね」


「何も言ってないだろ!?」


「マスター! 体力しか取り柄のない馬鹿赤田や色気0性格極悪な鈴花はともかく、マスターの頭脳であり学園最優秀生徒、そして生徒会長でもあるこの私だけでもご慈悲をー!!」


「貴様ぁ!!」


「コロス」


「ぎゃーっ!? マスターたすけてー」


「はいはい、ほら鈴花、首絞めるのは止めなさい。残りの人らも見てないで帰った帰った」


遠藤は赤田と鈴花に連行され、敗北者達もまた渋々去って行く。まったく……


「さて、気を取り直して。まだ残っているのは」


数は7人。老若男女千差万別、しかし1つだけ共通している部分があった


「……なるほど」


皆、いい面構えをしている


「おめでとう、君らが勝者だ」


「やったぜー!」


「ヒャッハー」


「今夜はすき焼きじゃー!!」


まだ残っていたのか、じいさん


「だが喜ぶのは早い! 俺は5人だけが秋様に会えると言った。しかし貴様らは7人、ならば後2人に消えてもらう!!」


「ふざけんなボケー」


オッサンが吠える


「む、無慈悲じゃ、奴は心のない鬼じゃー!」


じいさんが嘆く


「ワーオ、ビックリダヨヒャッハー」


外国人……なのかあれ? どう見ても日本人しか見えんが、まぁいい。片言のモヒカン青年がシャウトする


「あー静まれ静まれぃ! 秋様をどなたと心得る!! 天上人であらせられる秋様は、貴様ら人間ごときが容易にお会い出来るお方ではないと言っておるだろうがー!!」


俺の言葉に皆は静まり返った。己の愚かさに気づき、涙を流す者もいる(集団錯乱中)


「……分かってくれたようだな。では最後の試験を始めよう」


とは言え、どう減らしたものか


「うーん。……あ、そうだ」


何で秋姉のファンになったか、きっかけを聞いてみよう


「最終試験は『僕、私が持っている、秋様素敵エピソード』にします。秋様にまつわる素敵なお話をお聞かせ下さい。それが素晴らしいものでしたら、秋様のお姿を御目見出来る事でしょう」


そう俺が言うと、全員が無言で手を上げた。流石精鋭、自信があるようだ


「よし! では1番、近所のオッサン」


「……俺か。俺が秋様に心酔した理由、それは――」


4月5日。その日は朝から雨が降っていた


花屋を営んでいる俺は、店に花を並べた後の気だるい疲労を楽しんでいた


雨は客足が遠のく。だが、たまにはそんな日があっても良い


道路に跳ねる水を見ながら、そんな事をぼんやりと思い、煙草に火を


「すみません、その話長くなります?」


「え? 30分ぐらいで終わるけど」


「3分で終わらせて下さい」


皆がまだ終わらんのかと退屈している


「は? あ、だ、だから雨で滑って床に強く尻を打ち、動けなくなった所を通りすがりの秋ちゃんに助けられ、その時、秋ちゃんの髪から桜の香りがしたって話」


「素晴らしいエピソードですが、なんか気持ち悪いのでアウト」


「ちくしょー!!」


「はい、次はそこの少年」


「はーい」


元気に返事をしたのは、小学校低学年とみられる少年。まんまる赤ほっぺが可愛いものだ


「ぼくねーあのねー」


「お前は貴〇花か」


「なにそれー」


知らんか


「ごめん、なんでもないよ。はい、どうぞ」


「うん。……僕の小さな世界は闇に包まれている」


「い、いきなり雰囲気が変わったな」


しかもなんか面倒くさそうな雰囲気がする

 

「あれはそう、落ち葉舞う11月の事だった……」





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