秋の出陣祭 2
書き始めて10年を突破しました。本来なら在学中に終わらす予定だったのですが、極遅更新でいつの間にかオッサンに……
読んで下さってる方々、本当にありがとうございます。社畜の私がここまで続けられたのも皆さんのお陰です。完結は必ずしますので、願わくばこれからもお付き合い頂ければ幸いであり申す
「よし、じゃあ1問目は2択クイズだ。そうだな……」
問題を出そうとする俺を、皆は熱心に見つめている
ふ、中々良い目をしているじゃないか。精鋭と言うのもあながち嘘では……おや?
その中で1人、群衆から抜け出そうとする奴がいた。それはどうも見覚えのある雰囲気で
「あれ、燕? 燕も来てたのか」
呼ばれた燕は、猫に見つかったネズミの様にびくりと体を震わせ、気まずそうにこちらを見た
「う、うむ。今日は秋の見送り会があると聞いて訪れたのだが、どうも場違いな気がして……」
なるほど、それで帰ろうとしたのか
「燕はクイズなんてやらなくていいから上がってくれよ」
俺の言葉に、周りの連中が不公平だとざわめいた
「不公平って言われてもな。燕は家族同然だし例外だ」
秋姉の親友であり、母ちゃんとは漬物仲間。下手な親戚より付き合いは深い
「な、燕」
「…………」
同意を求めた俺に、燕は複雑そうな顔を向ける
「どうした?」
「あ、い、いや、うん、ありがとう恭介」
燕は頷き、やはり今日は帰るよと言って微笑んだ
「そうか? 良かった
ら家まで送ろうか?」
調子悪そうだし、クイズは一時間後に再開って事で
「ううん、大丈夫。秋には後で連絡する」
「そ、そうか」
「うん。それじゃあ」
小さく手を振り、燕は去って行く
「…………」
なんか素っ気なかったな
「私が家族になってあげましょうか?」
「恐ろしい事を言うなや」
わりと目が本気だった鈴花をかわし、気を取り直してクイズだ!
「それじゃ第1問!」
俺の一声に皆が押し黙った。一言も洩らさまいと、前のめりになっている
「3択クイズです。秋姉の人差し指は右と左、どちらの方が長いでしょうか。右と思った人は右手を、左と思った方は左手を挙げて下さい。同じだと思った人は手を下ろしたままで」
数秒待たず、全員が右手を上げた
「……ほぅ、流石この程度の問題では脱力者はおらぬか」
面白くなってきたな
「第2問、3択クイズ。秋姉の握力は次の内、どれか。35キロ、52キロ、78キロ。35キロだと思う人は――」
その後、5問ほど出したが脱落者は僅か7人だった
簡単な問題とは言え(一般正解率10%)いとも簡単に答えてくるとは
「やるじゃない」
少し怖くなってきたじゃねぇか。よし、こうなったら
「ここからは難問5択クイズだぜ!」
第8問、秋姉が高校入試で出したテストの合計点は
9問、小学生の時に転んで大怪我した箇所。10問、その時に縫った針の数。11問、治ってきた頃に使った絆創膏の種類、etc.
「う、嘘だろ?」
脱落者0! まさかの0!!
「簡単な問題が多いとは言え、脱落者がいないとは。中々やりますな」
何言ってるのコイツ!?
「か、簡単……だと?」
俺の問いに、赤田以下2名は頷いた
や、やばい、コイツら生粋の変態だ
こんな奴らに秋姉を会わす訳にはいかない。しかしこれ以上の難問なんて……
「…………」
おらー早く問題を出せー!
秋様の時間は有限なんだぞー
次の問題を出さない俺にヤジが飛ぶ
「だ、第19問。あーえーと、2択クイズ。秋姉の弟である俺の利き腕は右と左どちらでしょう。そうだと思った方を上げてくれ」
くっ、こんな簡単な問題しか思い付かなかった。もっと難しい問題を考えなくては
ざわ……ざわざわ
クイズを開始から15分。会場は初めてざわついた
「なんて難問なんだ!」
「日本人の左利きは11%らしいけど、これは引っ掛けかもしれない」
「…………」
色々と複雑だが、まぁ結果オーライか
「お前らにはサービス問題になったな」
俺は赤田達へ優しい視線を送った
「……あ、は、はい。ま、マスターの利き腕ですね、はい」
「ねぇマスター。夜のお遊びはどっちの手?」
遠藤と鈴花は眉間に皺を寄せ、悩んでいた。まさかこいつら……
「貴様らー! 貴様らよもやマスターの利き腕が分からぬなどと抜かす気か!?」
そんな中、赤田が吠えた。そして強く握り締めた左拳を天に突き出す!
「マスターは秋様と同じ左腕よ! 神をも打ち破る黄金の輝きよ!!」
赤田の大声を聞き、鈴花や遠藤。そして大多数の奴らが左拳を突き上げた
「……なんと美しい」
揃い、真っ直ぐに伸びた拳は、まるで向日葵のようだった。理不尽な神に対する人間の反抗、意地を見たようだった
「さぁ、マスター答えを!」
何の曇りもない満面の笑み。はは、まったく仕方ない奴だな
「俺は右利きだ馬鹿野郎」
貴様には秋姉ポイント100をくれてやろう