第39話:春の特訓
「ほら、もっと早く走れ!」
病院を退院した俺を待っていたのは、春菜による理不尽な特訓だった
「む、無理。もう無理……」
「だらしがないぞ兄貴! そんなんだから何度も入院するんだよ!」
「余計な……っ、フゥお世話……ハァ、ハァ」
「たく、しょうがないな〜。近くの公園で少し休むから、そこまでダッシュ!!」
「うぅ」
それから死ぬ思いで辿り着いた公園。近くはなかった
「はい、十分休憩! しっかり息を整えな」
「あ、ありがとうございます」
公園の温い水をガバ飲みし、石段に倒れこむ
「ふぅ……死ぬ所だった」
「まだ五キロぐらいしか走ってないだろ? 情けないな〜」
「無茶言うなって。つか俺より夏紀姉ちゃんをしごけよ。不規則、不衛生、運動不足と成人病まっしぐらだぞアレは」
「……夏姉に私が何か言えると思う?」
「…………無理だな」
アレに何か言えるのは母ちゃんか秋姉ぐらいだ
「だろ? ……良し、十分経った!」
「え! ま、まだ二分ぐらいだろ!?」
「何となく十分経ったから休憩終了!」
「ひ、酷過ぎる……」
なんて妹だ。親の顔が見てみたい
「ほら、行くぞ兄貴。次はスピードを上げる練習だ! 今までの様な生易しい特訓じゃないからな!!」
確信した。今日、奴は俺を殺す気だ
「……春菜、俺お前の事好きだよ」
「は、はぁ!? な、何だよいきなり!」
「春菜は俺の事、嫌いなのか?」
「べ、別に嫌いじゃ無いけど……ど、どっちかって言えば……って何言わせるんだよ馬鹿兄貴!!」
「別に嫌いじゃ無いんだな? なら俺が何をした〜。何で俺を殺そうとするんだ〜」
「……は?」
「もうヤダ! お家帰る〜」
「…………取り敢えず後五キロ走るから」
「ひ、酷過ぎる……」
その後も春菜のシゴキは続き……
「も、もう殺せ! いっそ殺してくれ!!」
「死にたいのか、クソ虫! なら走れ! 走って走って、走り死ね! ほらもっと走れ! 心臓が破裂するまで走ってみやがれ軟弱ゴミ虫兄貴!!」
「う、薄々気付いていたが今確信した……お前はドS…………ガク」
次の日、高熱を出して寝込んだ事は言うまでも無い
今日のサディスト
春>>>>>>>>>俺
つずく