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雪のまっくら冒険記 7

1F リビング


「母ちゃん? 姉ちゃん?」


リビングに入り、まず呼び掛けてみた


しかしここでも返事はない。誰もいないようだ


「お、お兄ちゃん、やっぱり変だよ。誰もいないなんて、絶対おかしいよ」


消え入りそうな雪葉の声に、ナンクルナイサーなどと返したものの、確かにおかしい


「ま、まさか山田さんの呪いが……」


雪葉はあまり幽霊を信じてないのに、呪いやゾンビは信じている節がある


もちろん、それをからかう気など無いから


「母ちゃんなら呪いごと倒すよ」


と、返した。まぁ半分本音なのだが


とは言うものの、いつもと違う状況はやはり心配になる。これで秋姉までいなかったら……


「そうだ秋姉。秋姉は家にいるのか?」


「……ここにい」


「秋お姉ちゃん?」


「あ、いや、うーん」


そこいらの小学生より早寝早起きな秋姉が、一言もなく夜出掛ける事はない。もしいないのならば、いよいよ異常事態なのだが……


「まぁ、普通に寝てるか」


これ以上、雪葉を怖がらせたら駄目だよな。先に寝かせてから秋姉の部屋へ行くか


「お兄ちゃん、秋お姉ちゃんのお部屋に行こう」


「え?」


俺が考えていた事を雪葉が言った


「大丈夫、きっと秋お姉ちゃんはいるよ!」


「ゆ、雪葉」


心細いだろうに俺を鼓舞してくれるのか、この妹は……


「雪葉、いや、雪葉隊長! 隊長に俺の命、預けました!」


見えないだろうけど隊長に敬礼!


「……分かりました、お兄ちゃん隊員。ここから先は隊長に続いて下さい!」


「はっ!」


「ではリビングを出ます!」


「ははっ!」


この隊長、凄いカリスマだぜ!


「じゃあ、ドアに……いたっ」


「だ、大丈夫か」


ゴンって音がしたけど


「大丈夫! このくらいで隊長はへこたれないよ!」


「おお……」


タフさも兼ね備えている。とんでもない逸材だぞこれは


「こっちです」


「イエッサー」


隊長の指示に従い、俺はリビングを出る


「ゆっくり慎重に」


「ウィッサー!」


的確な指示は確かな安全に繋がり、俺達は無事に秋姉の部屋へと着いた


「……じゃあ、見てくるね」


「お願いします、隊長」


襖を開く音がし、隊長の足音は遠くなっていった


「お布団がない……。お姉ちゃん?」


「……雪葉」


「うわぁ!?」


なんか俺の背後から声が!?


「って秋姉!? やっぱり部屋にいたんだ」


ほっとしたぜ。……ん? なんで俺の後ろから?


「…………」


何故だろう、秋姉が頬を膨らませているような気がする


「お姉ちゃん? はぁ、良かったー」


「……心配かけてごめんね」


秋姉の美しくも可憐な声が、俺の耳をくすぶった


「秋姉は今どこにいるの?」


「ん……あなたの隣」


誰かに右腕をそっと触れられる。ああ、まるで暖かい日射しを浴びたかのような安らぎ……


「ね?」


「う、うん」


しかし、いつ部屋から出たんだろう


「秋お姉ちゃん、お母さん達が家にいないの。それで秋お姉ちゃんも、もしかしたらと思って探していたんだけど……」


「……母さんと姉さんは停電を直しに外へ行ったよ」


不安そうな雪葉へ、秋姉は優しく答えた


「ふーん、母ちゃんがねぇ。母ちゃんも大変だ」


俺はもう、母ちゃんが何をやっても驚かない


「でも母ちゃんは分かるけど、姉ちゃんは何しに?」


「……手伝い。私はお留守番」


どことなく残念そうだ


「外……。お母さん達、大丈夫かな」


嵐はますます強くなっている。いったい、いつまでこの夜が続くのか


「ちょっと様子を見てくるよ」


明かりがないのが不安だが


「……駄目。母さん達はきちんと準備して出たから心配しないで」


「そ、そう? 分かった」


確かに準備無しでは俺の方が危ない。二人を信じて待つとしよう



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