第160話︰綾のお買い物
カッパとの激闘が終わった翌日。俺は部屋で1人、トラえもんを見ながら傷を癒していた
【そーらを自由に飛びたいなー】
【はい、ヘリコプター】
「…………」
あんま癒えないな
癒し菩薩である秋姉は部活だし、ヒーリングエンジェルは学校の花壇へ水やりに行った
春菜も部活で、2階の悪魔はいるかも知れないが、いたところで癒される訳もなく。ここは大人しくゲームの続きでもするか
「よっと」
ゲーム機にディスクを入れて
チャラララチャラララポッポポピー
「…………」
父の日に雪葉が買ってくれたブッチャークエストΩ。いよいよ最終ダンジョンに突入だ
ポンポコパンポコ
さてやるかってなタイミングで、携帯が鳴った。通知は……綾さん?
「はい、もしもし」
「こんにちは、綾音です。今、お時間大丈夫でしょうか?」
綾さんのそよ風のように柔らかくも涼やかな声が耳に触れ、じめっとした暑さが少し和らいだ。扇風機みたいな人だな
「佐藤君?」
「あ、すみません、失礼しました。綾さんは良い声してますね、聞き惚れてました」
「そ、そうですか? ありがとうございます……コホン。まぁ喘ぎ声には少々自信があります」
「深呼吸でもしたら良いんじゃないですか?」
「す、凄い返しできましたね」
「慣れてきましたから。それで今日は何でしょう?」
「突然のお電話ごめんなさい。お時間大丈夫です?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「では。今日、私とデートしませんか?」
「い、いきなりですね」
「はい、いきなりです。出会って即ハメ♪」
「すみません。俺、世界を救わないといけないんで、そろそろ切りますね」
「ご、ごめんなさい、調子に乗りました! 切らないで下さい!」
「はぁ」
ピコピコピコリン、デデデデデ
「んん、この戦闘音は先々月発売したブッチャークエストΩですか?」
「当たりです、よく分かりましたね。今、最後のボスへ続くダンジョンに入った所です」
「おおー、ついに地下帝国へ! 燃えますねー。分かりました、今日は諦めます」
「諦めなくても大丈夫ですよ。今、止めますから」
セーブして電源落として
「どこに行けば良いですか?」
「胸でイってみます?」
「ではまた来週〜」
「あぁ、番組みたいに切らないで!」
「では本当の目的を言って下さい」
デートじゃない事は最初から分かっている
「うぅ、つれないです……。実は――」
と言うわけで、一時間後。いつもの待ち合わせ場所である噴水前に着くと、ベンチの前で手を振っている綾さんを発見
白いトップスに、あれはフレアスカートってやつか? ……短いな
「お待たせしました」
「20分も前に来ちゃいました。待ってるの楽しかったです」
本当に楽しそうにニコニコ笑っている。よほど楽しみだったんだな
「じゃ、行きましょうか」
「はい!」