春のカッパ騒動 15
「さぁ、いよいよラストの9問目」
「9問でラスト? また中途半端だな」
周りを見回すと、残っているのは自分を含めて15人。まだ結構残っているが、優勝者はどうやって決めるんだ?
「では問題です。カッパとラッパは似ていますが、ラッパは忍者の名称であることはご存知ですね」
「ご存知ねぇよ」
そしてカッパはどこ行った
「忍者と言えば山田風太郎。彼の作品に、カッパは出た事がある。○か×か」
「ほぅ、こう繋げてきおるか」
無理はあるが、まぁ努力は認めてやろう
「で、お前はどっちだと思う?」
一応春菜にも聞いてみると、春菜はちょっと悩み、憂いを帯びた瞳で俺を見つめて言った
「私に分かると思う?」
「そんな哀しげに言わなくても……。えっと、山田さんってのは時代劇をよく書いている人なんだが」
実は俺もあんま知らない
「と、とにかく忍者なんだよ、天草四郎とか出てきてさ」
「ふーん。それでカッパは出てくんの?」
「それが分かれば苦労しないんだが」
○っぽい気がするんだけど×も捨てがたい。さてどうしたものか
「○で良いんじゃねーの、勘で」
「お前ね……」
だがまぁ、どうせ分からないんだし、○でもアリか
「花梨達は――」
花梨達は俺達から少し離れた所にいて、見てるとその声が聴こえてきた
「カッパラッパ忍者……カッパ? うーん」
「馬鹿ね花梨。カッパは空想上の生き物なのよ、出てくる訳ないじゃない」
「そんなの分からないでしょ。小説自体が空想なんだし」
「ぐぬぬ!」
向こうも悩んでるみたいだ……そうだ
「なぁ花梨」
近づき、声を掛ける。リサが睨んできたが気にしない
「ううーん……ん? 呼んだ?」
「今から両手出すから、どっちか選んでくれ」
「え?」
言っている意味が分からないのだろう、花梨は戸惑っている。が、すかさず手を出して!
「はい出した、右か左どっち!」
右なら○、左なら×
「え、えっと、こっち! ってなんなのよこれ!?」
「いや、別に」
慌てて触ったのは右手。よしこれで迷うことなく○だ
「花梨達は決まったか? 俺らは○に行くぜ」
「なにを……あっ! もしかしてあたしに選ばせた!?」
おお、鋭い
「流石だな花梨。俺はその鋭さを信じた」
俺より運も良さそうだし
「ち、ちょっと待ってよ! それで間違えてたら、あたしが悪くなっちゃうじゃない」
「普通に俺が悪いだろ。つか最初から○行くつもりだったし」
外れても特に悔いはない
「で、でも」
「本当だぞ。本当だからそんな顔するなって」
暗い顔なんかさせるつもりは無かったんだが……。悪い事をしてしまった
「…………」
「ごめん、俺が優柔不断だった。○に行くのは100%俺の意思だ! もはや誰も俺を止められねぇぜ。さぁ○に行くぞ春菜!!」
「あいよ」
軽いなあいつ
「それじゃ、また後で」
俺達の内、誰かが優勝してくれればいいが、みんな負けたらアイスでも奢るか
「……あ、あたしも!」
「ん?」
「あたしも○に行くわ! いちれんもうだっけ? それ!」
いちれんたくもう? なんかちょっと違うような……
「って、○で良いのかよ? 自信なんて無いぞ」
それにずっと俺を睨んでいるリサの目が、今にも飛び出しそうなぐらい見開いちゃったぞ
「な、あ、か、花梨! 馬鹿花梨!!」
「誰が馬鹿よ!」
「こんな×をメと書き間違えそうな奴に惑わされてどうするのよ!?」
えらい悪口を言ってくれやがるな
「あたしが考えて決めた事よ。それじゃ行ってくるわ」
そう言って花梨は○に向かって歩き出す。振り向く事もなく
「うーん、花梨は格好良いな」
「ね〜……はっ!」
花梨の背をニッコニコで見送っていたリサは、表情を慌てて消し
「あれが格好良い? どこが?」
と、鼻で笑った
「……で、リサはどうすんだ?」
「○に決まってるでしょ、馬鹿なの?」
花梨の最期を見届けてやるんだから。そう言ってリサもまた○へ向かって走って行く
「……素直じゃない奴」
しかし困った。花梨じゃないが、これで×だったら間違いなく俺のせいで全員退場だ
「頼むぜ山田さん」
亀だって忍者になってんだ、カッパの一匹や二匹忍者になってくれてるはず
「後5秒で締め切りまーす」
「あ、やべ! ○に行くぞ春菜」
「ああ!」