春のカッパ騒動 14
2問目を自力でクリアした事により調子にのった俺達は、次から次へと襲い掛かる難問を順当にクリアしていった
「第3問、ネズミの国で売ってる普通のカッパの値段は550円である○か×か」
「千里師匠、知恵をお授け下さいませ!」
「うむ。×じゃ」
「あざーす!」
答えは×
「第5問、カッパと言えばえびせんですが、えびせん生産量全国1位は愛知県である○か×か」
「む、難しいな」
「○だぜ、兄貴」
「そうなのか?」
「なんか前、どっかで見た」
「よし分かった、行くぞ!」
これは○。やるな、春菜
「第7問。今は7問目である○か×か」
「馬鹿にしてんのか、あのカッパ!?」
当然○
で、8問目。事態はこの問題で動いた
「第8問。カッパと言えばサソリ座ですが、それは3等星である。○か×か」
「こ、これは」
何を言ってるのかさっぱり分からねぇ。千里は……
「むずい」
おお、悩んでいる! ここは揺さぶってみるか
「俺達は×行こっかな〜」
「その心は?」
「ここ三問連続で○だったろ? いい加減×だって」
「むむむむ。悩む」
「ふふふ、悩め悩め」
とは言ったものの、自信は全くない。ここは春菜と別れるべきか
「どうなの千里。分からない?」
「全然分からない。分からないから二手に別れるべし」
「了解。リサは千里に付いてなさい」
「命令しないでくれない? 私は私の意思で動くんだから」
「あ、そ。ならあたしと行く?」
「え!? な、なにそれ? そんなので私と仲良くなれると思ってるわけ? そうはいかないんだからね!」
「……はぁ」
「なによその溜め息は!」
千里達は随分、揉めてるな。俺達はどうするか
「お前、○の方に行ってみる?」
「兄貴は×?」
「ああ」
何だかんだで人もだいぶ減った。クイズは恐らく全10問、後少しで終わるはず
それなら、ここを乗りきれば優勝出来るかもしれない
「別々かー」
「終わったら先に帰って良いから」
俺がそう言うと、春菜は首を横に振った
「なんだよ?」
「せっかくここまで来たんだから、最後まで一緒にいようぜ」
「そうか? ……まぁ良いけどよ」
俺が居ないと寝ちまいそうだし
「じゃあ×で良いのか?」
「いいよ。間違ってたら今度キャンプでバーベキューな、もちろん雪達も一緒に」
「ああもちろん、って何でだよ!?」
なんか今日の俺、全てにおいて損な話しかなくないか?
「加奈が兄貴と遊びたいんだって。なんか礼がしたいみたいだぞ」
「加奈ちゃんが? うーん」
嫌な予感しかしない
「加奈ちゃんがキャンプに誘ってきたのか?」
「いや、私が行きたいから」
「お前の希望か!」
「残り10秒で〜す」
司会のカッパが、皿を割りたくなるぐらい呑気な声で残り時間を告げた
「や、やべ。取り敢えず×に行くぞ、キャンプ云々は後だ」
「オッケー」
俺の返事を待たずに春菜は走り出す。服に慣れたのか、かなり早い
感心しつつ、俺も小走り。距離は20メートルぐらいだから、まぁ普通に間に合う
「暑いけどな」
ちょっとの距離で汗だくだ
「暑いよな〜。私も胸とか汗すげーよ。ほら」
「胸元を引っ張るな!」
恐ろしい事しやがるなコイツ
「世の中、変態が多いんだから気を付けろよ」
「はーい。あ、そう言えば兄貴も変態なんだっけ? さっき言われてたけど」
「……お前、後で一時間正座な」
「なんで!?」
とことん説教してやる
「それはともかくとして、あいつらは……お」
リサ&花梨を発見。なんだか睨み合ってる気もするが
「お前らは、こっちに来たんだ」
近付いて声を掛けると、二人はパッと離れた
「また揉めてるのか?」
「別に。リサが睨んでくるだけよ」
「花梨が睨むから睨んでるんだけど?」
「あんたが睨むから睨み返してるだけよ!」
「花梨が睨んでるから私が睨んで、それを花梨は私が睨んでるとか言うから睨んでるだけだけど!?」
「ちょ、喧嘩は止めろって」
ゲシュタルト崩壊しそうになる
「ふん!」
「ふん!」
同時に顔を背けるリサと花梨。仲が良いのか悪いのか、さっぱり分からない
「千里は凄いな」
よく二人の間に立てるよ
「第8問の正解は×です! 正解者はおめでとうございま〜す。間違った奴はアホ〜」
お、やったぜ
「きゃーっ、やったぁー!」
「ね、言ったでしょ! 私、こういうのの勘、鋭いんだから」
二人は手を取り合って、ぴょんぴょん跳ねている。やっぱ仲良いなコイツら
「でも、千里が外れちゃったのは痛いわね」
「ええ。でも二人残ったから、最低でも私か花梨は次の問題をクリア出来る」
千里は○に残ったのか。さっき揺さぶったのが、申し訳なくなってくるな
「その千里は……」
×の方を見ると、こちらを見ながら一人たそがれている千里を見付けた
視線が合った俺に対し、右手の親指を立てコクンと頷く
頑張って恭君。そう唇が動いたように見える
「し、師匠……」
貴女の名に恥じぬよう、頑張ります!