第37話:秋の手作り 1
佐藤家次女、佐藤 秋。俺の姉だ
秋姉は学校のミスに選ばれる程綺麗で、スタイルもよく、勉強も出来る
性格は穏やかで、優しく、かつしっかり者。その上、スポーツも万能だ
……非の打ち所がない、我が姉ながら完璧過ぎる。
こんなパーフェクト超人が世の中に存在して良いのだろうか? いや良いに決まっている! 何故なら俺の姉だから!!
…………しかし
「…………いっぱい食べてね」
何故料理だけこんなに下手なんだあぁー!!
さかのぼる事、五時間前。午後一時の事だ
「それじゃ、行ってくるわね〜」
「行って来まーす!」
「お土産期待しろよー」
明日は日曜日。母ちゃんと雪葉そして春菜は、昔お世話になった親戚の家へ泊まりがけで遊びに行く事となった
ついでに有名なレストランにも行くらしく、三人ともおめかしをしている
「春菜が普段着でスカート履くの久しぶりに見たな」
しかも膝上10センチのミニスカート。こんな短くて大丈夫なのか?
「ヒラヒラしてるから嫌なんだけどな! ま、これは短いから動き易いけど」
ちらっとスカートの裾を上げる春菜
「お、お姉ちゃん!」
すかさず雪葉がカバー。雪葉がいれば大丈夫そうだ
「ま、とにかくいってらっしゃい。気をつけてな」
「は〜い。お金は戸棚に置いてあるから、ご飯は出前でも取ってね〜」
「ああ」
ピザ食おーっと
「それじゃお願いね〜」
「あいよ!」
三人を見送って、部屋に戻る。んで昨日買ったゲームを起動
「……ふむ、これが翼子の新しい必殺技か」
PL3専用ソフト、キャプテン翼子5〜そして宇宙へ〜を、数時間プレイしていると、玄関の鍵が開く音がした
この時間なら多分秋姉だろう。夏紀姉ちゃんならもっと遅いはず
何と無く耳を済ませていると、ガチャリと向かいの部屋が開く音がした。やっぱり秋姉だ
「セーブして……よっと」
ゲーム機の電源を落とし、秋姉の部屋へ向かう
コンコン
軽い二回のノック。秋姉は寝ていない限り、これだけで確実に気付く
ガチャリ。ドアが静かに開き、髪をポニーテールに縛った私服の秋姉がどうしたの? と、俺を迎えた
「部活お疲れ様。朝も言ってたけど今日、母ちゃん達いないから何か食べたい物があったら言ってね」
「……あなたが食べたい物で良いよ?」
「秋姉の食べたい物が俺の食べたい物さ!」
ピザ? 忘れたね、そんな物は
「…………やさしいね」
秋姉は優しく微笑み、俺の頭を撫でてくれた
「へへ!」
やっぱ秋姉は最高だぜ!
「……夕ご飯までに決めておくね」
「ああ! じゃ後で」
秋姉と別れて再び自分の部屋へと戻る。んで、ゲーム起動
「さーて。美月が悔しがるぐらい練習するか」
それから麦茶片手に日が暮れるまでゲームをし、遊び疲れた所で時計を見上げる
午後六時六分六秒
「不吉だな……うっ!?」
突然の悪臭。思わず鼻を押さえる
生ゴミ? そんな生易しい臭いじゃない。言うなれば泣きたくもないのに号泣したくなるような不可思議で奇妙な臭いだ
臭いはどうも部屋の外から漂ってくるらしい
「ま、まさか……」
嫌な予感をびしびしと感じながら、俺は部屋のノブを回した
部屋から出ると、異臭は益々酷くなった
どこから臭いが? 一瞬で分かった。
リビングへと続くドアから紫色の煙が洩れていたからだ
……ごくり。唾を飲み込み俺は一歩、また一歩とリビングへ近付いて行く
そしてたどり着いたドアの前。臭いはもはや刺激臭となって、俺の喉や目を痛めつける
……開けたくない。開けたら何かが終わってしまいそうな異様な雰囲気
「………………うぅ」
しかし、いつまでもこうしていても仕方がない
俺は覚悟を決め、ドアノブを捻った