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ハッピークリスマス 3

・新谷 涼


その指使いは繊細で緻密。全ての楽器を巧みに操る、音の魔術師


涼やかな容姿の美青年でもあり、大金持ちの息子でもある彼は、社交場でも注目の的だ


とにかくハイスペック。当然モテるが、本人は誰かと付き合う気などないらしく、部活の仲間とよくつるんでいる姿が見られる


どこか儚げな雰囲気を持つ新谷は、学校では王子様扱い。だが、それは新谷の仮の姿に過ぎない


彼の正体はルルイエの主、クトゥルフの使者。夢に潜む影


絶海の門の管理者であり、眠るクトゥルフの夢を変革することが出来る


かつて暗き星ゾスにてクトゥルフを破った者、すなわち恭___(観覧不可)


新谷は属性は秩序、理解し難き正義の固定観念を持つ悪魔。混沌より生まれし彼が、秩序である事は皮肉としか言いようがない。しかしそれ故に太古から現在までの長い時を、同じ存在であり続ける事が出来た。27の指、失われしルルイエの35896645855222663211マドニマドニ……


まぁようするに、恭介を慕っている



・新谷 柚子


動物や昆虫、植物が好きな女の子。金持ちのお嬢様で、その見た目と性格は可憐の一言だ


少し人見知りがあるけれど、それは彼女が気弱ながらも人を気づかう優しい性格からくるもので、こちらも優しい気持ちで接してあげれば、きっと心を開いてくれるはず(なんか後を着いて来るようになれば好感度高め)


しかし、それは柚子のほんの一部に過ぎない。彼女の正体は水の精霊ヤルトルーンから加護を受けた魔術師である


現在、ある国の神聖騎士団に所属しているが、それは国の為ではなく、一人の男を追うのに必要だったからだ


その男とは死せる者を操り、塵に帰す邪眼、死塵眼の持ち主。一億年前、アトランティスが滅んだのはこの男によるものと言うのは有名な話。一説によると万象のルーンすら塵に帰すらしい


まぁようするに、恭介によくなついている


「しかしあれだな。良い家だな」


客室に通され、フカフカのソファーに座り、高そうなカップで紅茶を飲む。うーん、優雅だ


「そうですね。自由に使わせてくれている両親には感謝しています」


「それだけ信用されてるって事だろうよ」


「そうだと嬉しいですね。お茶、もう一杯いかがですか?」


「いただこう」


空になったカップに朽葉色の茶が注がれた。ウッディ系の爽やかな香りが心地よい


「鈴花先輩は」


「私はいらないわ。お菓子がないもの」


俺の向かいに座っている鈴花は、クッキーの箱を手に渋い顔をする


「てか、それさっき新谷が持ってきたクッキーだよな。もう食ったのか」


ほんの数分前だぞ


「15枚しかなかった。紅茶1杯に20枚は必要よ」


コーヒーは30枚必要らしい


「申し訳ございません、配慮が足りませんでした。お二人の分、すぐに新しく用意します」


「いや、いいよ。鈴花も殆ど飲み終わってるから、いらないだろうし」


鈴花は甘いものが好きって訳ではないのだが、甘いものが無いと紅茶やコーヒーが飲めない。そのくせ砂糖は入れないという、変なこだわりを持っている


「そうね。このぐらいの量なら飲めるから、お菓子なんていらない」


大人びた笑みを浮かべているが、どうにも子供っぽい主張で微笑ましい


「分かりました。それでは赤田先輩が戻られましたら、少し早めにパーティーを開始しましょうか」


「それでも良いけど、やっぱ主役が来てからにしようぜ」


まだ今日の主役である柚子の姿を見ていない。出かけているのだろうか


「柚子は今、予約していましたケーキを受け取りに出ています。今年のケーキは柚子が選んでくれたんですよ」


「そうなのか? それは楽しみだ」


「はい」


新谷の顔が嬉しそうにほころぶ。なんだかんだで妹想いの良奴よ


「とは言え、少々遅いですね。このままでは、黄昏が禍時へと堕ちてしまいます」


「場所が分かってるなら、迎えに行くぞ」


「そうですね。それでは5時を過ぎましたら」


その時、部屋のドアが小さく鳴った。視線をやると、僅かに開いている


「……柚子?」


「ひゃっ」


パタン。閉じてしまった


「…………」


今の柚子?


俺のアイコンタクトに新谷は頷き、ドアへ近付いてノックをした


「帰って来ていたんだ」


「は、はい、先ほど戻りました」


「開けるね」


ゆっくりと開くドアの先に、黒の可愛らしいドレスを着た柚子が、気まずそうな顔で立っていた


「どうしたんだい、柚子。マスター達がいらっしゃってるよ」


「よ、柚子。お邪魔してるぜ」


手を上げて挨拶すると、柚子は慌ててペコリと頭を下げ、ドアの陰に隠れてしまった


「こら柚子、マスター達にそんな態度を取っては駄目だよ。塵に還されてしまう」


「柚子より自分の心配をしろや」


まずは貴様を塵に還してやるわ!


「だけど本当にどうしたんだい? 昨日はあんなに楽しみにしていたのに」


柚子の前にしゃがみ込み、心配そうに尋ねる。柚子は不安げな表情で新谷を見つめ、キュッと手を握りしめた


「柚子?」


「ご、ごめんなさい、にいさま。あ、あの、あの……、さ、最近恭介お兄さま方にお会いしていませんでしたから、お顔を見たらなんだか恥ずかしくなってしまったのです」


あら可愛い


「……方、ね。貴方がロリコンになる気持ちも少しは分かるわ」


「勝手に分かるな」


たく。しかし、これじゃまるで初めて会った時のようだ。それは少し寂しいし……よし


俺は立ち上がり、新谷の後ろに隠れた柚子に近付いて


「き、恭にぃ? きゃあ」


いきなり、ひざまづく!


「こんばんは、プリンセス。今宵は素敵なパーティーへのお招き、ありがとうございます」


そして柚子の右手をとって、キスをする振りをした。……ちょっとやり過ぎか?


「え……あ、ぅ」


呆気にとられた柚子の顔は次第に赤みを差してゆき、誰かに助けを求めるかのように首を左右に振った


「…………」


も、もしかして、滑った? だ、誰か助けてくれ!


「……助けてあげたら?」


「ふふ、さすがですねマスター。柚子のあんな顔は久しぶりに見ます」


後ろの奴らは硬直状態の俺達を助けるつもりは無いらしい


「あ、えっと……。き、恭にぃ?」


そんな中、柚子が俺の名前を遠慮がちに呼ぶ  


「な、なんだ」


「う、うん。メ、メリークリスマス恭にぃ。今日は来てくれてありがとう」


柚子は、ぎこちなくも精一杯の笑顔を俺に向ける。……参った、俺よりよほど空気が読めてるぜ


「メリークリスマス柚子、変な事してごめんよ。それにしても……」


「?」


「やっぱ柚子の笑顔は可愛いな。最高のクリスマスプレゼントをありがとう」


雪葉や春菜達からも貰いたいものだね


「っ!?」


「ん?」


何を驚いて……


「……ヤバいわね。何がヤバいって、自分の言動を理解していない、あのおめでたい頭がヤバいわ」


「マスターは意外と天然な所がありますから。しかし……ふふ、マスターを知らない方々が今の光景を見たら、色々と誤解されそうてしまいそうですね」


「面白がってるわね貴方。……まぁ、これからどうするのか、見ものではあるけれど」


新谷達が何か話しているが、よく聞こえん。そんな事より、柚子がなんかプルプル震えているような……


「柚子?」


「あっ! うぅ……き、恭にぃの、けだもの!」


「けだもの!?」


なんで!?


「わたし達は敵同士なんだから、そうやって油断させたって負けないんだから!」


そしてタタタと、早足で部屋を出て行った。困惑して振り返ると、いたたまれない目で俺を見る二人の姿


「けだもの」


「はい、けだものですね。これは僕もフォロー出来ません」


「なんでだよ!?」




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