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第36話:雪のお風呂

「ただいまー」


公園からダッシュで7分。ようやく家に着いた頃には濡れ鼠状態だった


「お帰りなさい。あら〜、ずぶ濡れね。傘を持って行かなかったのかしら〜?」


「持ってったけど、忘れちゃったよ」


「うふふ、うっかりやさんね。ちょっと待ってて〜」


そう言うと、おっとりな母ちゃんにしては珍しく急ぎ足で、洗面所へと入っていった


その間に制服を脱いで、軽く搾る


「は〜い、お待たせ〜」


そう言って母ちゃんが持って来てくれたのはフカフカのバスタオルだ。ありがたい


「サンキュー母ちゃん!」


「今お風呂にお湯入れてるから後で入りなさいね〜」


「はーい!」


「制服も直ぐに乾かさないとね〜」


母ちゃんは俺の制服を籠に入れ、リビングの方へ持って行った


俺は部屋に行き、お湯が入るのをひたすら待つ


「…………さ、寒いな」


夏近しとは言え、濡れた身体でじっとしているのはキツイ


「お風呂沸いたわよ〜」


母ちゃんの声だ!


「待ってました!!」


洗面所へダッシュで向かいソッコーでトランクスを脱ぐ


んで、浴室のドアを開ける


「お! 今日は入浴剤入りか」


乳白色の湯と、甘い香り。そして暖かい湯気が心地よい


「う〜さみー」


熱いシャワーを頭から身体に降りかけ、ゴシゴシと全身をしっかり洗う


最後にもう一度、頭からシャワーを被り、いよいよ湯舟だ!


ザパーン! 


多めに入れていたらしいお湯は、俺が入ったせいで浴槽から大量に溢れ、モワッと濃い湯気を生む。だが、それが


「気持ちー!」


……あったまる



暫く目を閉じ、風呂を楽しんでいると、ガラガラと浴室のドアが開いた


「ん? 母ちゃん?」


ドアの方を向くと、タオル片手に驚いた顔をしている雪葉の姿


「お、お兄ちゃん!?」


「おお、雪葉。お前も雨に降られ……ゆ、雪葉?」


「あ……う…………ぅ」


顔を真っ赤にさせ、小さいタオルで身体を隠しながらへたり込み、涙ぐむ雪葉


「ど、どうしたんだ?」


「お、お兄ちゃん……は、はだ…………か」


「? …………あっ!」


そういう年頃か!!


「だ、大丈夫だぜ雪葉! 全然見てねーし!!」


「ぐす……う、……うん」


「に、兄ちゃん直ぐに出るから!」


「あ…………ご、ごめんなさい。大丈夫……だから」


涙を指で拭きながらニコッと笑う


なんか物凄い罪悪感だぜ


「し、しかし……」


「平気だよ、お兄ちゃん」


立ち上がり、怖ず怖ずと浴室内へ入って来る雪葉。若干震えた体が痛々しい


「……兄ちゃん、目閉じてるからな」


「…………うん」


後ろを向いて目を閉じ、身動き一つ取らないで、ひたすら待つ


…………こんな気まずいなら早く出りゃよかった



それから数分。身体を洗い覚悟を決めたらしい、雪葉が呟く


「雪葉も……入るね」


「ああ」


俺はならべく湯舟の端に移動する


ちゃぽんと湯舟が跳ねる音がし、お湯の量が少し増えた感覚


「目、開けていいよ……お兄ちゃん」


「あ、ああ」


言われた通り目を開けてみると、雪葉はまだうっすら赤い顔を逸らしながら、湯舟に入っていた


長い髪が邪魔になるのか、頭にはタオルを巻いている


「無理させてごめんな、雪葉」


入りたく無かっただろうに


「う、ううん。無理なんてしてない」


「……ありがとな」


人を気遣う優しい子に育ったものだ。兄ちゃんは嬉しいぞ



それから微妙に気まずい時間が流れた後、雪葉がポツリと呟いた


「お兄ちゃんと一緒に入るのが嫌だから泣いたんじゃない…………よ?」


「分かってるって」


「…………うん」


軽く微笑んでやると、雪葉もホッとしたように笑った


……取り敢えず落ち着いたみたいだな。俺もホッとしたぜ


「……しかし、こうして雪葉と風呂に入るのも久しぶりだな」


これが最後かな? そう思うと少し寂しくなったりもする


「ごめんね、お兄ちゃん。雪葉なんだか恥ずかしくって……」


「ふふ。気にするな」


雪葉の頭を軽く撫で……


「オッシャー風呂だー!」


突然浴室のドアが開き、春菜がすっぽんぽんで中に入って来やがった!?


「お! 兄貴に雪もいたのか!! さては傘忘れたんだな〜」


そう言うと春菜は風呂椅子にどかっと座り、大股を広げてガシガシと髪を洗い始める


「気持ちー! 兄貴〜背中流してくれよ」


「は、春お姉ちゃん……」


「ん? 早く流してくれよ兄貴」


「……お前はもう少し恥じらいを持て」




今日の思春期


雪>>>>>俺>>>>>>>>>春≧母≧父


つづけや

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