春のカッパ騒動 10
あの有名な小説と間違えるらしく、タイトルを変えてくれないだろうかとのご意見を頂きました。確かにその通りで、反論は出来ません
ですから、もしかしたら近いうちにタイトルが変わるかもしれません。凄く愛着があるので残念ですが……
「ただ今、時間切れとなりました〜。現在こちらにいらっしゃる紳士方が本選出場者となりますので、会場にご案内致します。どうぞ私に着いてきて下さいませ」
橋に来てから30分弱。そろそろ退屈していた頃、ようやくイベントが進んだ
今、いるのは俺達を含めた34人の紳士達と2匹のカッパ。その人数が一斉に移動する
「また歩くのか……ん? 葉っぱ付いてるぞ」
隣にいるリサの頭に触れ
「うきゃあ!?」
「うわっ!」
びっくりした〜。どうしたってんだ?
「勝手に髪を触らないでよ!!」
飛び引き、俺を睨むリサ。猫科の動きに近い
「……あーそうか。ごめん」
花梨に対してもそうだが、つい気軽に触ってしまう。そりゃ嫌だよな、反省しなくては
「恭君」
「どうした千里」
「私はいいよ?」
撫でやすい位置に来てくれたけど
「葉っぱ付いてないぜ。綺麗な髪だ」
「よく言われない?」
「なにを?」
「空気読めないって」
「うっ」
若いのに辛辣な事を言いやがる
「傷付いた?」
「いや別に」
平静を装う俺の横顔を千里は優しげな瞳で見上げ、
「恭君って、弟みたい」
「あ、あのなぁ」
「こら千里! そんなのと話していると呪われるから!!」
文句の一つでもと思っていたらリサがえらい剣幕で俺から千里を引き離し、庇うように抱き締めた
「俺はブードゥの呪術師じゃねーぞ」
だけど使えたら便利だよな〜。毎日姉ちゃんにお茶汲みさせたりして
「いい、千里。私は花梨なんかと違って可愛くて頭良いから分かるの。そいつはロリコン。それも私を本命にしてる、お目の高いロリコンよ」
邪悪な想像をしている間に、俺はお目が高くなっていた。ここまで言われると逆に清々しい
「恭君は私の弟子。侮辱は禁止」
抱き付くリサを手で押し離し、千里は俺を庇う
そういや俺って千里の弟子だったな。なら弟扱いも仕方ないか、釈然とはしないが
「ち、千里? そ、そんな千里まで……あなた千里に何をしたの!!」
「なんもしとらんわ!」
「テゴメにされた」
「うぉい!」
何か俺に恨みでもあるのか!?
「てごめ? 野菜ジュース?」
「テゴメ。日本最大のカメムシ」
「そりゃタガメだ」
「はい、あちらが会場になりま〜す」
下手すれば逮捕されかねない会話をしている内に、会場とやらが見えてきた。そこは町外れにある地元の陸上競技場で、収容能力5500人の中規模な建物だ
「あ〜あ、やっと着いた。この私にドレスを着させといて歩かせるだなんて、失礼にもほどあるわ。高級車でも用意しとけってのよ」
黄色いドレスのスカートを左右に揺らしながら、リサはぶつくさ文句を言った
「確かにな」
高級車とは言わないが、バスぐらいは用意してほしい。暑くて気持ち悪くなってきたよ
「でしょう? 当然、車は外国の。ほらあれ、フェ、フェ……ファ?」
「ファラーリ」
しれっと嘘をつく千里。怖い女やで!
「そ、そう、ファラーリ! 高いのよ、あれ」
「…………」
言えない。あんなに自信満々に答えている子供へ、間違えているぞだなんて俺には言えない
「……ふ、ふ、フェクション! あ〜フェラーリこんちくしょう!!」
「汚い! くしゃみするならどっか行ってやってよ!」
人の気も知らないで……
「はい到着しました、お疲れ様です。それでは皆様、中へどうぞ!」
元気なカッパの後を、疲れ果てた紳士達がついて行く
「シュールだなぁ」
「なんだか頭にドナドナが流れる」
「……ぬぅ」
千里のせいで俺まで流れ始めた
「世界ウルトラ横断カッパクイズ?」
なによこれ。入り口の横に立て掛けてあった看板を見て、花梨が冷めた口調で呟いた。気持ちは分かる
「……リサ」
それを見た千里が、リサの側に寄って、
「ゴニョゴニョゴニョ」
「え? そ、そうなの? まぁ知ってたけどね。しょうがない、花梨にも教えてあげるか」
何かを囁かれたリサは、前にいる花梨の隣へ行き、ふんぞり返りながら言い放った
「花梨ってウルトラカッパクイズの事も知らないの? 馬鹿すぎ」
「……あなたは知ってるの?」
「し、知ってるわよ! あれはそう江戸時代に一人の商人が旅に出て、山や谷を越えて」
「へぇ」
温度を感じさせない目だ。夏なのに背筋が寒くなる
「と、とにかく入ろうぜみんな! カッパはもう目の前だ」
ここは年長者として盛り上げてやらないと!
「お、兄貴がやる気だ。兄貴はカッパ好きだからな〜」
「さ、佐藤お兄ちゃん、カッパ好きなんですか? ……カッパかぁ」
いつの間にかカッパ好きにされつつ、俺達は会場の中へと足を踏み入れた