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春のカッパ騒動 3

「ほぅ、カッパをお探しですか。ならばこのまま道を進むが良い。そこでは三本の塔と、水の精霊が君達を待つだろう」


焼きそばを食べ終えた俺達に、偽カッパはそう告げた 


「って何ですか、いきなり」


春菜が首を傾げてるじゃないか


「認めた者に道を指し示す。それが私の役割なのですよ」


「そうですか」


よく分からん


「私の元へ訪れたのは、君達が三組目です。カッパはもうすぐそこですよ」


「そうですか」


やっぱりよく分からん


「まぁとにかく行ってみて下さい。イベントがあるらしいですから」


「イベントですか……あ、そういえば今日は綾さんと一緒じゃないんですね」


「彼女は部活です。前にも言いましたが、いつも一緒にいる訳ではありませんよ、恐ろしい」


身震いをする宗院さん。気持ちは分からないでもない


「あにきー、早く行こー。カッパが逃げちゃうぞ」


「だから引っ張るなって、腕が伸びる」


どうせなら足にしてくれ


「それじゃ俺達は行きます。ごちそうさまでした、お仕事頑張って下さい」


「ごちそうさま! カッパ焼きうまかったぜ」


「ありがとう。君達にカッパの導きがあらんことを」


あまり導いて欲しくないが


「じゃ行こうか。……春菜、ここから先は危険かもしれん。俺の側から離れるんじゃないぞ?」


なんて盛り上げてみたりして


「何言ってんだ?」


素で返しやがった!


「な、なんでもねーよ」


「……変な兄貴」


悪かったな!


「それにしても三本の搭って何の事だろう」


「あれじゃねーの?」


誤魔化すように聞くと、春菜は数百メートル先を指差した。遠くてよく見えんが、確かあそこは清掃工場だったかな


「あの工場に煙突が三本あったと思うから、それじゃね?」


こいつ鋭い!


「お前、いつからそんな天才に? 凄いぞ春菜」


「そ、そうか? ……褒められちゃった」


「このまま進めば何かが起きるって訳か」


鬼が出るか蛇が出るか……って、どっちも嫌だわさ


「ただ、宗院さんの言葉だからな〜」


いまいち信用が無い(偏見)


「とにかく煙突が三本見える所まで行ってみようぜ。煙突が三本の所にさ!」


めっちゃドヤ顔だ


「そうだな……って褒めないぞ」


そんな物欲しそうな顔で見られても


「ちぇ」


口を尖らす春菜と暫く歩いていると、ボヤけていた建物の姿が少しずつはっきりしてきた


見える煙突の数は確かに三本で、白い煙を吐く様は壮観だ


「でっけーな」


「なー。たまにこの辺を走ってるけど、つい立ち止まって見ちゃうよ」


「そうだな。……む?」


「どしたの?」


「向こうの川辺に人影があるが……また偽カッパだったりして」


「んー、あれが水の精霊なんじゃないの? なんか水着きてるし」


「水着を? 川で泳いでるんじゃないのか?」


この辺りは深くて水も濁って見えるが、流れは緩やかなので泳げなくはない


「背中に精霊って書いてあるぞ」


「目が良いな」


俺なんか性別すら分からない


「兄貴が悪いだけだろ。ほら、早くいこ」


「ああ」


春菜と共に土手を下って川辺に降りる。人影は確かに水着姿で、どうやら男のようだ


「やっぱ泳いでるだけだろ」


あるいは通りすがりの変態か


「おーい、水の精霊〜」


「ば、馬鹿、奴を刺激するな!」


古来より水の精霊は女って決まってる、奴は偽者だ!


「にゃにゃん?」


「変態だ!? 逃げるぞ春菜!」


「にゃん?」


「何でお前まで!?」


カッパの呪いか!


「いや、書いてあるから」


「あ? …………」


角刈り水着兄ちゃんの横にプラカードが刺さっている。そこには【こんにちは水の精霊です。現在私はカッパの呪いで猫語しか理解出来ません。ご用がある方は、猫語でどうぞ】と書かれている


「…………」


意味が分からん


「私に任せろ。にゃにゃ」


「にゃー」


「にゃん?」


「にゃにゃにゃ」


「にゃーう?」


「にゃにゃにゃにゃにゃー!!」


「う〜ん、なるほど」


「……今ので分かったのか」


横で見ていたら、危ない二人としか思えなかった


「いや全然」


「なんだったんだよ今の!?」


人生の中でもトップテンに入る無駄時間だったぞ


「このままだとカッパを倒せないから、俺の金玉を手に入れて、カッパに投げつけて下さいって言ったんですが」


「普通に話せるなら最初からそうして下さいよ!」


しかもセクハラか!


「そう言われても演出だから……では盟約に従い、金玉を渡しましょう」


「ぬお!?」


「うわっ!? な、なんだ兄貴!?」


海パンの中へ手を突っ込み、まさぐる兄ちゃん。とっさに春菜の目を両手でふさいだ俺、グッジョブ


「すみません、今ポロンっと出しますから」


「てめぇこの野郎! 俺の妹になにを見せる気だ!!」


「なにって……これですけども」


ポロンと出したのは、ピンポン玉大の金の玉。どこにしまってたんだ?


「……紛らわしい事をしないでくださいよ」


「これも演出なので……どうぞ」


「…………」


触りたくないが、差し出された玉を仕方なく受けとる。ほんのりな温もりが、憎らしい


「しかし演出って……俺達は野生のカッパを捕まえに来ただけなんだけどな」


いつの間に変なイベントに巻き込まれてしまったみたいだ


「…………ん?」


春菜が不思議そうな目で俺を見ている


「どうした?」


「兄貴、カッパ信じてるの?」


「信じてるって、そりゃ……あれ?」


なにこの空気


「……たまにいるんすよね、現実と幻想をごっちゃにしちゃう人」


「え!? あ、い、いや、分かってますよカッパなんかいないって! ただ朝のニュースでやってたから、暇潰しに来ただけで」


「兄貴は可愛いなぁ」


「や、止めろ! そんな暖かい目で俺を見るなー!!」


「はは。説明しますよ」


・・・説明中


「商店街が企画したイベント?」


「昨今のカッパブームに便乗してやってるみたいすよ、スポンサー付きで」


「そ、そうだったんですか」


やはり時代はカッパか……


「しかし朝やってたニュースはなんだったんだ?」


「新作映画のPRじゃないすか? この辺りで撮影してたみたいですよ。カッパVSメカカッパ」


わーつまらなそー


「カッパなんかいる訳ねーじゃん。現実逃避はダメだぞ」


「…………」


しばらくオヤツを作ってやらない事が決定した


「……で、カッパはどこにいるんです?」


こうなったら意地でも捕まえてやる


「水の入れ物に間違えられる生き物。彼が答えを知っているだろう」


「……は?」


「これ謎解きアドベンチャーなんすよ。探してみてください」


「そうっすか」


メンドイな


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