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秋の約束 2

大変遅くなり申した……。

「そ、そんな、秋姉がポーピンだったなんて……」


衝撃的な事実を聞き、全米と俺が震えた……って、まてよ? 思い返せば俺は、ポーピン様から気品や知性、そこはかとない美を無意識に感じていた気がする。うむ、きっとそうだ


「だけど、どうして今の時期にバイトを? 部活は休み?」


「……2時から」


「あるの!?」


なんて頑張る姉なのだ!


「昨日、佐藤君とお話をした後、秋さんからもご連絡を頂いたんです。私にも仕事を紹介できませんかって」


「ん」


綾さんの説明に秋姉は頷き、お世話になりましたと頭を下げた


「いいえ、私としては願ったり叶ったりでした。秋さんでしたらパーフェクト・ポーピー・ピンク、略してPPPを演じられると確信していましたので」


「思わず官民連携してしまいそうな名称ですね」


なんだかキナ臭くなってくる


「……私、ちゃんと出来たかな」


「エロさ、可愛さ、気高さともう最高のピンクちゃんでしたよ」


グッと親指を立てる綾さん。とりあえずエロはいらんだろ


「そうね。いつもピンクちゃんをやってる私から見ても、かなり上手かったと思うわよ。最近の女子高生は侮れないわ〜」


感心している婦警さんの言葉に、秋姉が照れ顔を見せた。ナイス婦警!


「君たちも頑張ってくれたし、今日はほんと良いイベントになったわ。ありがとね」


「あ、いえ……」


褒めてくれたが


「迷惑を掛けてすみませんでした」


「どういたしまして。さて、そろそろ片付けに戻るとしますかー」


婦警さんは首をコキコキと鳴らし、伸びをする。30歳過ぎの仕草だ


「お疲れ様でした、横山さん(26)」


「お疲れ。あーあ、ダルい。きっとあいつと仕事しているからね……」


ため息をつきながら部屋を出て行く。お疲れ様っす


「……佐藤君。今の方、横山さんの顔を覚えておいて下さいね」


「ええ」


世話になったしな


「この辺りに出る変質者を取り締まっている方ですから」


「その情報、俺と関係ないよね!?」


見かけたら逃げろってか!


「大丈夫ですよ。たとえ佐藤君が変態でも、嫌いになったりしません。だって私も変態ですもん」


「絶っ対、根にもってますよね!」


もう二度と変態呼ばわりしないから許して!


「もってませんよー(棒)あ、救急車が来たみたいです」


言われて耳を澄ませてみると、確かにサイレンの音が聞こえた


「……病院まで一緒に行くね」


「大丈夫、一人で行けるよ」


これ以上、秋姉に迷惑を掛ける訳にはいかな……うっ!?


「行きたい。……だめ?」


懇願するような瞳で見つめられてしまったら、返事は――


「あいよ!」


「……よかった」


にこ


「グハァ!」


「何で綾さんが!?」


俺より先にダメージを受けていた


「ノリです」


にこ


「にこって……」


いや、可愛いけどね


「うふふ。……おっと、佐藤君を愛でてる場合ではありません」


そう言ながら綾さんは、手に持っていた小さいバッグを開けて、そこから二枚の白い封筒を取り出した


「佐藤君、秋さん。今日はお疲れ様でした」


「……綾さんも」


「お疲れ様です」


次は病院か……。まさか秋姉の料理以外で運ばれる日が来るとはな


「それで、こちらがお給料となります。預かっていましたのでどうぞ」


「あ、ありがとうございます!」


「……ありがとうございます」


貰えないかもと思ったが、さすが国家権力!


「では私も行きますね。また何かありましたら、ご連絡下さい」


「はい! 良いバイトをありがとうございました!!」


どう致しましてと出ていく綾さんを見送り、俺達は何となく顔を見合わせた


「……じゃ、俺達も行こうか」


「ん。……はい、恭介」


秋姉は給料の入った封筒を、そっと俺に差し出す


「え? な、なに?」


「……新幹線代の足しにして」


「え!? う、受け取れないよ!」


そんな恐れ多い!


「……昨日、姉さんと話しているの聞いた。私の為にお金が必要だったんだよね?」


「それは俺が勝手にやってるだけだし……」


その理由が姉の追っかけをする為だと言うのだから、我ながら恐ろしい


「だからいらないよ。大丈夫、十分足りてるから」


いざとなれば、隠し財産(ゲーム機)を売ってやるぜ!


「…………」


「え? あ……」


秋姉は俺の右手を両手で取り、包み込むように握る。その手の荒れ方に、一瞬言葉を失った


「……秋姉」


前に手を繋いだ時よりも、ずっと酷い。どれだけ竹刀を振ればこんな……


「……約束、覚えてる?」


「約束?」


「……うん。約束」


約束、約束……や、ヤバい、全然思い当たらない!


「ち、ちょっと待ってて、すぐ思い出すから」


ええぃ、俺のアホー! 何故思い出せない!!


「……忘れていても、貴方は守ってくれた。だから」


気まずさで下を向いていた俺に、秋姉は封筒を握らせる。その声の優しさに顔を上げると、


「次はお姉ちゃんの番」


子供の頃に見た『お姉ちゃん』の笑顔がそこにあった



今日の記憶力


秋>綾>>>>俺


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