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俺のアルバイト 3

「ちゃんと休憩できた? それじゃ後半もよろしく」


婦警さんは俺だけを連れ、外で待機していた園児たちの所へ行く。そして大きな声で言った


「さーみんなー、ここでスペシャルゲストがきたよ! みんなで呼ぼう。せーの、ポーピー君ガールちゃ~ん」


婦警さん&園児達の声に、入り口から走って現れるポーピン。その後ろには、オッサン小学生がいる


「わー、ポーピー君ガールだ!」


「初めて見たー」


俺を見る時の3倍ぐらい目を輝かせ、園児達はポーピンに声援を送った。どうやらポーピンの方が人気あるらしい


「ポーピー君ガールちゃん、あれやって!」


「バクてーん」


着ぐるみ相手に凄い無茶ぶりだ


「…………」


ポーピンは無言で数回よいしょと屈伸をして……バク転!?


「マジでか!?」


ピンクの着ぐるみが華麗に空を舞った


「ん」


続けて側転を連発! この動きづらい着ぐるみで、信じられない……


「す、凄いねーポーピー君ガールちゃん。お姉さんマジびっくりだよー」


さすがに婦警さんも驚いたらしく、顔がひきつっている


シュッシュ、シュッシュ。側転後もポーピンは軽やかなステップとワンツー・パンチを見せた。もはや水前〇清子を越えたと言っても良いだろう


「さ、さー次はお兄さんによる事故の再現をするよー」


今度はデカイ小学生が、ママチャリに乗ってやって来た。園児達が目を奪われている中、婦警さんは俺の隣に素早く立ち、耳打ちをする


「……君は被害者の役。被害者だけど、あいつを殺す気でぶつかって」


「え!?」


「なんてね。うふっ」


舌をペロリと出し、可愛く言う。しかし俺には分かる、奴は本気だったと


「殺す気って言うのは、お茶目なポリスジョークよ。自転車の方からぶつかって来るわ、もちろん軽くね」


「なるほど、分かりました」


軽くなら、お互い怪我もしないだろう


「それじゃ私は信号の役をやるから。君は私に向かって歩いて来て」


「はい」


チリンチリン。警官は、ぐるりと園内を一周してポーピンや園児に手を振る。そしてカゴから本を片手で取りだし、それを読み始めた


「青信号で~す」


婦警さんの合図があった。今だ!


「今日は買い物ランランラン。ん? げは!」


歩いている俺に、自転車がぶつかる。そのままヨロヨロと倒れると、園児達が悲鳴や泣き声をあげた


「や、やった、やってしまった。俺は未成年だから、刑務所よりも厳しいと言われる交通刑務所へ行く事にはならないだろうけど、慰謝料や治療費をガッポリ取られて家は破産、親は離婚して妹や弟は路頭に迷う事になってしまうかもしれない……。そんなのは嫌だ、俺は責任を取りたくない! こうなったらこの国を支配し、事故をうやむやしてやる!」


こらこら


「ヌォオー! 秩序は死んだ、混沌こそが俺の故郷。人類をゲシュタルト崩壊させてやるー」


警察官はヘルメットを投げ捨てる。倒れたままこっそり見てみると、頭にはどす黒い角がはえていた


「ファハー、悪い子はいねーがー」


キャー!


助けてお母さーん


目を爛々と光らせ、園内を徘徊する怪人に子供達は恐怖した。このまま世界は滅ぼされるかと思われたその時!


「そこまでです、怪人オッサン小学生!」


幼稚園の屋上に突如赤い戦士が現れる! あの声は……


「も、もしかして」


いや、そんなまさか


「誰だ貴様は!」


「正義と賄賂を愛するポリスヒーロー、ポーピー君レッドです! えいっ」


赤い戦士、ポーピーレッドは屋上から飛び降りた。3メートルはあるのに凄い運動神経だ


「さぁ、立ってポーピー君。三人であの怪人を倒しましょう!」


「お、オッケー、ポーピーレッド!」


話についていけてないが、とりあえず賛同しておこう


《やっと現れたかポーピーレッド君。ふん、いつも美味しいところを持って行くぜ……、そんなところに惚れたんだけどな》


「ポーピンって男の設定なの!?」


ガールちゃんなのに?


「行きますよ~」


レッドポーピーは怪人へ迫り、軽やかなパンチやキックを浴びせる。そしてポーピンも二段蹴りやドラゴンスクリューなどの大技を繰り出しながら、怪人にダメージを与えていった


「ポーピー君ガールちゃん、あれをやりましょう」


《了解》


二人は怪人を前後で挟むように別れ、その周りをグルグルと回る


「め、目が回る~。おのれ組織の犬どもめ、このままやられてなるものか~」


「次、行きます」


《どんと来い》


二人で首を挟むラリアット! 次にポーピンは片膝をついてしゃがみ、両手を前に出して構えた


「やあ!」


その手を踏み台に、ポーピーレッド君は高く飛ぶ。そして怪人の頭へ、雷のような肘を落とす!


「ギャアアア!!」


園児もビビるリアルな悲鳴! だ、大丈夫なのか?


「ポーピー君、とどめをお願いします!」


「お、俺?」


「わたし達の町と」


《みんなの平和を守って!》


「二人とも……ウオオオオー! この命に代えても、町と子供達の平和を守ってやる! どりゃー」


怪人に走り向かって、ドロップキック!


「ぐえ」 


着地失敗!


「ぐ、ぐわわ~、ジャパニーズポリスにやられた~。さすがは世界一の治安大国だ~、げはー」


怪人オッサン小学生は前のめりにぶっ倒れ、動かなくなった。平和は守られたのだ


「この国に俺達が居る限り、交通ルールは破らせないぜ」


「歩行者にとっては自転車も車です。交通ルールをきちんと知って、守ることを心がけましょう」


《おうだんほどうはてをあげて、くるまやじてんしゃがきてないか、ちゃんとひだりとみぎをかくにんしてからわたろうね》


俺達は一ヶ所に集まり、それぞれ決めのポーズをとる。その瞬間、園児達や先生方、はては様子を見に来た保護者や外で見学していた人達から大歓声が起きた


「はーい、ポーピー君達ありがとうございました~。それじゃみんな~これから交通ルールを書いたしおりを配るから、好きなポーピー君の前に行ってねー」




わー。園児達は大喜びで俺達へと向かって来る。どうせ俺の所に来る子は少ないだろうけ……ど?


「ポーピー君、かっこよかったよー!」


「しおり下さーい」


「き、君達……」


ほとんどの子が俺の所へやって来る。大して活躍しなかったのに、なぜ?


「平和を守ってくれてありがとー」


「僕も将来はポーピー君になるよ!」


ずらりと並んだ園児達が、輝く目で俺を見上げる。その様子を他のポーピー君達が、拍手で称えてくれた


「大人気だねーポーピー君は。はい、しおり。みんなに配ってあげて」


「はい!」


段ボールごと貰ったけど、足りないぐらいの勢いだ


「やったあ、ポーピー君からしおり貰ったー!」


「私、道路ちゃんと手を上げて渡る~。褒めてくれる?」


「ああ、もちろん。偉いぞ」


なでりなでり


「僕も、僕も!」


「ルール守るぞー」


「おーし、みんな最高のヒーローだ! 夏休み、ルールを守って楽しく元気に過ごすんだぞ? ポーピー君との約束だ」


はーい!


「うむうむ」


素直で可愛い子供達に囲まれて、まったく良い仕事を紹介してもらったもんだ。……暑いけど


「それじゃ次はポーピー君との追いかけっこをやるよー。みんな水のんでー」


「追いかけっこ!?」


冗談だろ!


「捕まえたらポーピー君が激しいダンスを踊ってくれるからねー」


「…………」


酷すぎる

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