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会の観賞会 6

終わりのない物語に価値はない。終わる物語には夢がない。だが終わるからこそ現実があるのだ



終着点、佐藤宅


「ついた……な」


我が家を見上げ、一人呟く


「いよいよなのね」


「ついに秋様の秘蔵映像が……」


「その言い方だと、エロっぽいから止めろ」


まったく。だがしかし……


「二人とも今までありがとう。お前らがいなければ、俺はここまで辿り着けなかったかもしれない」


「……マスター。俺はマスターに仕えられて本当に良かった」


「認めてあげる。貴方こそが真のキング・ブラザーよ」


「お前ら……誓おう」


「我ら最後まで」


「共に往く事を」


手を合わせ、俺達の心は一つになる。もはや恐れるものはない、ただ進むだけだ


「ただいま〜」


玄関のドアを開け、俺は開戦の雄叫びをあげた


「おかえりなさい、お兄ちゃん」


どこぞの磯野一家のように、俺を玄関で出迎えた雪葉。洗面所にいたらしく、タオルで手を拭いている


「ただいま。これ、学校の友達」


でもないが、まぁ一応


「こんにちは。いらっしゃいませ」


「こんにちは雪葉さん。お邪魔するわね」


「はじめましてマスターの妹よ。我の名は赤田。マスターにはいつも世話に痛っ!? 何をする鈴花!」


「……黙って」


俺の代わりに鈴花が赤田の脇をつねってくれた


「マスター?」


小首を傾げる雪葉さん


「な、なんでもないぞ」


学校で俺がマスターなどと呼ばれている事を、雪葉には知られたくない。何故ならアホだと思われるから!


「そうなんだ。それじゃ雪葉はお掃除に戻るね。鈴花さん、赤田さん、ごゆっくり」


ペコリと頭を下げ、雪葉は洗面所に戻って行く。いい子すぎて、俺の心が痛い


「どうなされたマスター?」


「葛藤しているのよ、そっとしてあげなさい」


鈴花に悟られてしまった……


「い、往こう。聖地へ」


秋姉は直ぐそこだ!



ガチャリンコ。リビングのドアを開けて入ったが、そこに姉ちゃんの姿は無かった


「あれ?」


トイレか?


「おかえりなさい〜」


キッチンから母ちゃんの声がする


「母ちゃん、夏紀姉ちゃんは?」


「友達の所へ遊びに行ったわよ〜。恭介にテーブル見ろって言ってたわ〜」


「テーブル? あ」


テレビ前のリビングテーブルに、一枚のDVDが置かれていた


「……ありがとう姉ちゃん」


後で肩でも揉んでやろう


「さて……」


ごきゅり。DVDを手に取って振り返ると、鈴花の喉が鳴った


「い、いよいよなのねマスター」


「我、今一時のみ心眼を得る」


神妙な顔をする二人に頷き、俺はプレイヤーにDVDを入れた


「いくぞ?」


見るが良い、真の女神を


「ぽちっとな」


《わ、私にとっては最初で最後のインターハイです。悔いが残らない様、精いっぱい頑張りゃます!》


録画は途中からだったらしく、真田先輩がカチコチになってインタビューに答えていた


「噛んだわね」


「昔からあいつはプレッシャーに弱い」


赤田と真田先輩は幼なじみだったりする


《ありがとうございました。では次に女子剣道部部長、佐藤 秋さんにインタビューしたいと思います》


そしてカメラは真田先輩から、秋姉へと切り替わる


「き、来た……ついに来おった!」


「あ、秋様」


「これが……光」


正座をし、凛と強い瞳で正面を見据える秋姉。もはやモダンですら再現出来ない美しさだ


「う、ウォオオオー! 目が、秋様の眩さに我の目がぁああ!!」


「直視するな! あまりの美しさに目が潰れるぞー」


「こ、コピー、コピー! マスター好き、大好きっ!! だからコピーを希望します!!」


「落ち着け貴様ら! ……秋姉が喋る。一言も聞き洩らすなよ?」


二人はコクコクと頷き、テレビ画面にかじりついた


《今回の大会、意気込みを教えて下さい》


《……はい。今回は個人、団体ともに優勝を狙います》


《団体の方は初出場ですが、優勝出来る自信はあると?》


《……はい。部員一同、去年とは比べ物にならないほど強くなりました。心技体ともに高まった今、優勝は出来ます》


《なるほど〜。ところで佐藤さんはすっごく綺麗ですねー》


《……え?》


《何か秘訣はあるんですか?》


《ひ、秘訣?》


《ありますよね? 無いわけないですよね?》


《あ……ま》


《ま?》


《ま、まんだむ……かな?》


「…………ふ」


さすが秋姉


「あ、秋様は何を?」


「わ、分からないわ」


二人は戸惑い、俺に視線を送る


「短い言葉に秘められた秋姉の真意が分からないとは……。情けないぞお前ら」


「……分かるの?」


「ぜひご教授をお願いします!」


「うむ。『毎日の運動。んだ、それだけだぁ。難しいことはありません』。と言っている」


「……訛り?」


「やはり運動か! 秋様は分かってらっしゃる」


一人は疑っているが、一人は納得してくれたらしい


《そうですか〜。佐藤さんの美容の秘訣はマンダムな訳ですね、素晴らしい! では昨年の覇者、麻代 真葉さんについてはいかが思われます?》


《……マジヤベー》


「こ、これはなんて?」


疑いと戸惑いが混ざったような目で、鈴花は俺に答えを求めた。聞こえないのか秋姉の声が


「嘆かわしいぞ鈴花。秋姉は、はっきりと言っている」


「そ、そうなの? ごめんなさい」


「我も、我も分かりません……。く、口惜しい! マスターどうか我らに導きを!!」


「いいだろう、よく聞け。『麻代? そんな人、知りません。女性ですか、鳥ですか? ヤンクルクイナ? ベリーキュートですね』だ」


「あの麻代を鳥扱いとは……。やはり秋様は次元が違う」


「ヤンクルクイナ……もう飼うしかないわ」


今度は二人とも信じたようだ。ふ、手間をかけるぜ


《やっぱり佐藤さんも麻代さんを警戒しますか〜。では次の質問です。今大会で一番のライバルだと思っている選手は誰ですか?》


《……京都の六桜 静流さんです》


《その方の何処に驚異を感じますか?》


《……動きの速さ、鋭さ。それを可能にする足腰の強さです》


《六桜さんと言えば佐藤さんに並ぶ美少女ですが、その辺りの所はどう思われますか?》


《え? ……な、なうい?》


「これはどのようなメッセージなのですかマスター!?」


「う、うむ、これはだな、これは……。な、何を言ってるのですか。う、う〜、うちらは剣道家やでぇ! いいか、剣道家にとって容姿なんぞただの飾りや! だ」


「……途中、悩みました?」


「す、少しな」


こう立て続けだと、さすがに解読出来ん


「変わった質問を矢継ぎ早にされて、慌てちゃったのよ〜。それで苦し紛れに流行りの言葉を言ってみたら〜、インタビューアさんが納得してくれたからそのまま言ってるだけよ〜」


いつから居たのかダイニングテーブルでお茶を飲んでいた母ちゃんが、そんな事を言った


「……マスター?」


「……すまん」


秋姉の奥深さは、俺ごときでは計り知れない……


「ま、まぁ良いじゃないか鈴花。マスター、そんなにお気になさらず」


「う、うむ……ぬ、あ、秋姉が笑顔を見せたぞ!」


「っ! こ、今年のベストショットだわ。……呼ばれるわよ、ハリウッド」


「ウォオオオオー! 秋様の美しさはユニバース!!」


そうだ俺の姉は世界一、いいや!


「秋姉は万物一だ!」


インターハイまで、あと10日。精一杯応援しよう



今日の秋マニア


俺>>鈴>>>>赤>>>>>>新>リ


《では最後に今、一番感謝を伝えたい方にメッセージをお願いします》


《ん。……私は今まで友人や家族、先生方など沢山の人達に支えられて来ました。中でも弟には、特に支えてもらっています。……ありがとう。インターハイ、必ず結果を出すからね》


つつ゛く

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