第33話:母の朝食
その日は朝から夜だった
などと10代には分からない事を言いつつ窓を閉め、真っ黒な曇り空を隠す様にカーテンも閉める
「……まだ6時半か」
ちょっと早く起きすぎたけど、リビングにでも行くか
んで向かったリビング。キッチンのテーブルには制服姿の秋姉と、着替えた雪葉が座っていた
「お早う」
「…………お早う」
「おはよ、お兄ちゃん!」
この二人はいつ起きてるんだと思う程、朝が早い
「おはよ〜。今日の朝ご飯は和食よ〜」
そしてのどかな顔をしているが、母ちゃんもまた朝が早い
「和食か」
母ちゃんは凝り性だから、きっと栄養バランスを考えた素敵な朝食を……
「おみそ汁とカツ丼それにおしんこ〜」
「わー、油っぽくってボリュームたっぷり。朝から健康に悪そーって夕飯でしょこれ!?」
びっくりしながら秋姉と、雪葉を見ると、確かにカツ丼を食べている
「2人ともよく朝から食べれるね」
「……朝ご飯は元気の源」
どこかのコンフレークCMみたいな事を言う秋姉
「今日は春お姉ちゃんのリクエストなんだよ」
もぐもぐ食べながら説明してくれる雪葉
「…………ああ、そう言う事ね」
相変わらず空気を読まない奴だ
「それで春菜は?」
雪葉のほっぺに付いた米粒を取りつつ、秋姉の横に座る
「もう食べて部活行ったわよ〜」
「春お姉ちゃん三杯もお代わりしたんだよ! 凄いよね!!」
満面笑みの雪葉
「……あいつは色々な意味でアホだな」
しかし朝からカツ丼か……
若干うんざりしていると、肉を揚げる良い音がした
次に匂い。醤油や砂糖、みりんや出し汁が混ざった様な甘じょっぱい匂い。そしてみそ汁の匂い
ぐ〜
腹が鳴る
「はい、お待たせ〜」
そんな言葉で出てきたのは銀色に輝き立つ米と、その上に威風堂々と横たわるキツネ色のトンカツ
トンカツは、とろ〜っとした半熟の卵とじに包まれていて、その姿たるやドレスを着た貴婦人の様
俺はその貴婦人をダンスに誘うべく、箸を伸ばす
………………ごくりっ
喉が鳴った
「そ、それでは」
震えた声、震える指
お、俺は緊張しているというのか!?
「……食べないの? お兄ちゃん?」
「ごめん、ごめん。いただきまーす!」
サクッ!!
噛んだ瞬間、俺の口の中で宇宙が広がった
サクサクでふっくら。それでいて柔らかく、肉汁が口一杯広がり、尚且つ暴れる
こ、これは……
「うーまーいーぞー!!」
カツのIT革命や!
「うふふ。いっぱい食べてね〜」
「ああ! 母ちゃん、さすが!!」
箸が……箸が止まらないぜこんちくしょう!
がつがつとカツを食べ、食い終わり、力溢れた所で秋姉と雪葉が家を出る時間となった
「いってきまーす!!」
「行ってらっしゃい雪葉。秋姉も行ってらっしゃい」
「ん。……行ってきます」
「行ってらっしゃ〜い」
二人を玄関で送り出して、再びリビングへ
「こぶ茶飲む〜?」
「うん」
母ちゃんがお茶を入れてる間、ソファでぼーっとテレビを見る
「はい、どうぞ〜」
母ちゃんは反対側のソファーに座り、ガラステーブルへ湯飲みを二つ置いた
「ありがとう」
一つを手に取り、息で軽く冷ます
「…………ふぅ」
飲んだ熱々のこぶ茶は、俺の心をほっとさせてくれた
「おいし?」
「うん」
「うふふ」
「はは」
いつもは慌ただしい朝。こんなふうに母ちゃんと二人きりで、ぼーっとするのも久しぶりだ
「母ちゃん」
「なーに」
「呼んでみただけ」
「あら〜。うふふ」
「……へへ」
なんか落ち着くぜ
んな風な感じで時間を過ごしていると、あっという間に学校へ行く時間
手早く準備をして、いざ学校へ
「それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃ〜い」
笑顔が優しい細目の母ちゃんは、やっぱり玄関まで見送ってくれた
「気をつけてね〜」
「あいよ!」
母の日は何を買ってやろうかなんて迷いつつ、俺は学校へ行く事にした
今朝の胃もたれ(二日酔い含む)
雪>夏>>>秋≧俺>母>>>>>>>父>春
続けな