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会の観賞会 2

「それじゃまたな」


「バイバイ~」


「またね、恭介」


二人に見送られながら次の現場へと向かう。次は俺が一番期待している預言者の家だ



二件目、鈴花宅


リオンの家から駅の逆方向へ10分ほど歩くと、15階建てのマンションが見えてくる


鈴花はこのマンションの9階に住んでいるのだが、実際に訪ねるのは今日が初めてだ


入り口の自動ドアを通り、広いエントランスホールに足を踏み入れる。カウンターに居た初老の警備員に頭を下げ、その横にあるインターフォンを、部屋番号を入れて押す


「…………」


これで良いと思うんだけど……


自信は無かったが、余計な事をせず、じっと待つ。するとインターフォン横の電話がプルルと鳴った


電話の液晶には鈴花の部屋番号が表示されているから、きっと出れば良いのだろう


「は、はい、もしもし」


《……貴方が家に来るなんて珍しいわね》


「あ、鈴花?」


本人が出てくれて良かった


「聞きたい事があって来たんだけど」


《そう……。そちらに行くわ》


「いや、電話で大丈……」


切りおった。仕方ない、待つか


それから数分経ち、警備員が俺を気にし始めた頃、ホール奥にある自動ドアが開いた


そのドアから、軽い癖毛の髪を肩の下まで伸ばした、ほっそりちっこい女の子がやって来る。鈴花だ


「よう」


「……センスのないシャツね」


「悪かったな」


そう言う鈴花だって、服のセンスは微妙だ


黒いショートパンツにジャケット。中には白いワイシャツを着こみ、妙な柄のネクタイを締めている


「用件はなに」


余計な会話は要らないと、細められた目が語っていた


「秋姉がテレビ出演したの知ってるか?」


「…………え!?」


鈴花の目は驚きで見開き、興奮した子犬の様にじゃれてきた。可愛いな(小動物的な意味で)


「え、映像を所望します」


「ない」


「……じゃあ、なにしに来たの?」


興奮から一転、凍てつく目で俺を見上げる鈴花。今にも呪い殺され兼ねん、恐ろしき殺気よ……


「お、お前なら録画してるかなと思って」


「放送すら知らなかったのに?」


「す、すまん」


目が怖すぎる


「鈴花も駄目か……。あ、同じ剣道部の赤田ならもしかして!」


行ってみるか


「行きましょう」


「は?」


「わたしも見たい」


「ああ、そう」


「たとえ誰かを傷付けてでも見たい」


「そ、そうか」


「呪ってでも見たい」


「う、うん」


「この手を赤く染めてでも見たい!」


「わ、分かりました、行きましょう!」


こえー。預言者、超こえー


「じ、じゃあ出発します」


「ええ」


こうして預言者を仲間にした所で、俺達は新たな旅に出る事となった



三件目、赤田宅


「……それでいつだったの? 秋様のテレビ出演」


赤田の家に向かう途中の道で、鈴花は俺に尋ねてきた


「何日か前って言ってたぞ」


答えると、鈴花はガックリ肩を落とす


「……そう。うかつだったわ、情報を逃すなんて」


「うむ。しかし安心もした」


「なぜ?」


「学校一の情報通であるお前が知らなかったのなら、大半の人間もまた知らない筈だ」


「……そう言う事ね」


「そうだ。映像が出回れば、それを見た男どもは秋姉の美しさに心奪われ、生ける屍と化してしまうだろう。それだけならまだ良いが、中には本当に死ぬ者も出てきてしまう。……俺は秋姉を人殺しにしたくない」


「そうね。何一つ反論する所がないわ」


「うむ。えっと次の道は……」


「左よ、マスター」


「ありがとう」


それから暫く黙々と歩き、ようやく赤田の住む古びた借家が見えてきた


「……赤田は信者っぽいからマスター設定で」


「設定言うな」


やるけども


「よし、ついた、ついた。さて……?」


木で出来た古い玄関には、インターフォンらしきものが何処にも付いて無い


「声を掛けるか」


「ふん! ふん!」


「む?」


どこからか妙な声がする


「マスター」


鈴花の指差す方を見ると、庭で竹刀を振るフンドシ一丁の変態がいた


「……すげぇな」


「ええ。凄い馬鹿」


何やってんだ、あの馬鹿は


「赤田!」


「ん? ま、マスター! 何故俺の家に!?」


「あ、あー、ええと……。やあ赤田君、君に聞きたい事があってね。少し時間を貰ってもいいかい?」


「何なりとー!」


こちらへ走って向かって来る。本能的には逃げ出したい


「いかな用でございましょう、マスター!」


そして、ひざまづくミスターフンドシ


「う、うむ。実はな――」


説明中・・・


「撮ってません!」


「……けっ」


「役たたずね」


「も、申し訳ございませんマスター。くっ、主君の期待を裏切ってしまうとは!」


猛省しているようだが、フォローはしない!


「これからどうするの?」


鈴花も赤田をガン無視し、次の予定を聞いた


「これからか」


他に持ってそうな奴が思い付かない


「ここからなら新谷の家が近いわ」


「……あいつか」


可能性は低そうだけどなー


「ま、とりあえず行ってみるか」




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