第152話:会の会合
某日、某時、某所
部活をする生徒の声が遠くに聞こえる会議室。窓は黒いカーテンで締め切り、光の侵入を許さない
その暗黒なる部屋の中に、俺と六人の賢人達は集合していた
「皆様、本日もお忙しい所を集まって下さり、ありがとうございました。本日は【長期休暇に入った今、佐藤 秋様をお守りするにはどうすれば良いのか】をテーマに議論したいと思います」
「なるほど。しかし我らはマスターを除き、秋様とは顔見知り程度の仲。一体我らに何が出来ると言うのか」
議長である岡部が最初にテーマを言い、次に生徒会長である遠藤が発言する。いつものことだ
「我らが指導者、キングブラザーはどう思われます?」
そして遠藤は俺へ言葉を紡ぐ
「……秋姉は太陽、輝く光。雑兵どもがいくら集おうとも光の前ではただ消滅するのみ」
「やはり我らが秋様を守ろうなどとおこがましいかぁああ!」
男子剣道部の主将、赤田が吼えた。残念ながら全国には行けなかったが、ドンマイ黒豹
「まて赤田、結論を出すにはまだ早い。見ろマスターの目が閉じられている」
遠藤は熱くなる赤田を諭す様にそっと言った
「マ、マスターが思案なされておられる! なれば我は只待つのみ」
相変わらず暑苦しいが、直ぐに冷静を取り戻す所は流石だ
「ねーねーマスタ、ぼくのお菓子食べるー? メロンあじー」
我がメンバーの中で唯一の一年、リオンが呑気な声をあげた。だいぶ馴れてきたなコイツ
「リオン、マスターの邪魔をしてはだめだよ? ほらごらん。次にマスターの目が開いた時……四次元への扉が開かれる」
いや、開かないから。てか適当な事ばっか言うなよ新谷。リアクションに困るじゃないか
「……彼、目覚めるわ。ふぁーあ」
おいこら鈴花。今アクビしただろお前
「……ふぅ」
鈴花の声の通り、俺はゆっくりと目を開いた。上座に座る俺を、皆が音も出さずジッと見つめている
ゴクリ
唾を飲む音が、静かな会議室に響く
「……諸君」
「はい」
「うん?」
「はっ!」
「はい、マスタ!」
「なんでしょう?」
「……なに? マスター」
「夏休みどっか遊びに行かない?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「近くの海とかさ。今年が高校生最後の夏休みになる奴らもいる事だし、ここは一つパーっと遊ぼうぜ」
コイツらとも結構長い付き合いだ、最後に思い出みたいなものが欲しい
「……確かに今後は我らがこうして集まることも少なくなるでしょうな。分かりました、時間を作りましょう」
「ウオオオー! マスターの優しさ、痛み入るぅうう!!」
「ぼく賛成ー」
「うん、僕も賛成だ」
「…………わたし、泳げない」
鈴花はいつも余り感情を出さないが、よほど恥ずかしかったのだろう。顔を赤くして呟いた
「そ、それはまた……」
「恥ずかしがることないよ〜。ぼくも少ししか泳げないもん」
「…………無常」
「少し練習すれば泳げるよ、鈴花」
「いやいや、そうは泳げまい。基本的に運動神経がないんだ鈴花は。いや、しかし良い歳して泳げないとは、もはやバカと言っても過言では無いな、はっはっは」
「ちなみに秋姉も泳げないぞ」
「え!? に、人間は陸の生物です。泳ぎが上手いというのは、それだけ進化が遅れていると言っても過言ではないですな。はっはっは」
「……お前、今日足つる。しかも両足」
「ふ、私は生まれてこの方、一度も足をつった事など……う、ウヒー!?」
「ドアホ」
今日の尿漏れ
遠>>>>>>>>鈴≧岡≧赤≧リ≧新≧俺
だめだこりゃ