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芦の三姉妹 20

「ありがとーございましたー」


波の時間が終わり、ペコリと頭を下げて元気に去っていくガキんちょ達。一方俺達は疲れ果てていた


「……はしゃぎ過ぎた」


「波、嫌い」


「子供は元気だよね〜」


感想はバラバラだがプールから出たいって気持ちは一緒のようで、俺達は砂浜へと向かう


「カフェで一休みしよっか?」


「いいな」


「クリームソーダ好き」


「うん、決まり。姉さんは何処かな?」


「あっちの方に行ってたけど……あ、いたいた」


人気の少ない場所の木陰で、ぽつんと座っている


「楓さん全然泳いでないみたいだけど、退屈なんじゃないか?」


「そんな事ないと思うよ。好きな人の近くにいるだけでも、結構楽しんだから」


「ふーん」


楓さんが誰かを好きになることなんてあるのかね……ってそれは楓さんに失礼か


「さ、姉さん呼びにいこ」


「そうだな……ん?」


歩き出した椿を追わず、梢はジッと俺を見ている


「おぶろうか?」


「ありがとう」


「あいよ。……どした?」


梢の側に寄り、横抱きしようと腰に手を掛けたが手で遮られてしまった


「スタンダードがベスト」


「なるほど」


よく分からんが、とりあえず頷いておこう


そんな俺の背中に梢は素早く回り込み、ぴょんと飛び付いた


「後ろにぶっ倒れそうなんですけど?」


しかしなるほど、背中でおんぶしろって事か


「よっこらセニョールこんにちはっと」


梢の太ももあたりを抱えて、バランスを取る。うむ、軽い軽い


「ベストなの」


梢は俺の首に腕を回し、強く密着してきた


「っ!? あ、あんまりくっつかないでくれよ」


濡れた胸やその他もろもろが俺の背中で潰れ、何とも言えない生暖かで柔らかな感触がする


「くるしゅうない。ぎゅうぎゅう好き」


「こ、言葉の意味はわからないがとにかく凄い自信だ……」


って、こんなに密着されると流石にウズウズしてくる!


「つ、椿〜」


梢を抱え直し、慌て椿を追う。早く下ろさねばヤバい!


「揺れるの」


「我慢してくれ! 俺も我慢するから!!」


「?」


気を抜くと暴れだしそうな下半身から意識を反らし、早足で椿を追いかける。そして


「追いついた!」


「わぁ!? な、なに?」


「あそこの日陰で下ろすぞ梢!」


「うん」


ぎゅ


「だからそれは止めてー」


暴れん坊が、俺の暴れん坊が将軍に!


「あ! ちょ……本当侮れないなぁ」


椿の呟きを背に、俺は誰よりも早く日陰に駆け込んだ


「はぁはぁ……はぁはぁ」


「ありがとう恭介」


「あ、ああ……」


梢を背中から下ろしても、なかなか鼓動は収まらない


だってしょうがないやん。一応俺だって健全な男やん? 水着であんなに密着されたら誰だって……


「いやいやいや!」


「?」


梢は子供であり従姉妹だ、どうかする方がおかしい!


「ひ、羊が一匹、羊が二匹」


羊でも数えて気を落ち着かせよう


「……へんなの」


誰のせいだと思ってやがりますんだコイツは


「も〜、プールで走ったらダメだよ」


椿は俺達より少し遅れてやって来て注意をする。そして不思議そうに首を傾げた


「どしたの?」


「羊が八……精神集中をしてるんだよ。羊が九匹、羊が十匹メイメイメイっと」


よし、落ち着いた!


「変なの」


「姉妹で言うなよ」


傷付くじゃないか


「ま、いいや。ほら姉さんあたし達に気付いてるみたい、早くいこ」


「物凄く、ダルそうだけどな」


どっかのゆるキャラみたいにダルっとしている


「姉さん、お茶飲みに行こー」


手を振りながら楓さんを迎えに行く椿。う〜ん、爽やかな後ろ姿だ


「恭介」


「……はいはい」


今度は羊を数えながらおぶろう


「よっと。……羊が一匹」


「羊が二匹」


「羊が三匹」


「四匹目は山羊だったの」


「や、山羊が五匹」


「六匹いればセーター出来る?」


「十枚ぐらい出来るんじゃないか?」


「ウールなの」


「ウールだねぇ」


そんな話をしながらも無事楓さんの所に着き、木陰で下ろす


「かたじけない」


「では拙者はこれにて、ごめん」


「こら、どこ行く気」


おさらばしようとした俺の手を取り、そのまま椿は腕を組んできた


「お前なぁ。あんまりくっつくなって」


「やーだ。えへへ」


「えへへじゃねー」


腕を振りほどき、脱出


「あ、もー」


「たく……楓さん?」


いつの間にかスタコラと、店がある方へ向かっていた


「あ、姉さん、待ってよ!」


それを椿が追いかけ


「…………」


「……はいよ」


俺が梢をおぶる。なんだこりゃ


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