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月の訪問 2

んでもって家を出て向かう近所の公園


先に歩く俺の後ろで、美月と春菜は器用にリフティングしながらついて来ている


「やるじゃん!」


「春ちゃんも上手!」


僅かな間に随分仲良くなったみたいだな


「もうすぐ広い道路に出るから手で持っときなよ」


「はーい」


美月はボールを数回足の甲でリフティングした後、真上に蹴り上げ、落ちてきた所を胸に抱いた


「…………上手いな」


俺よりも遥かに上手い


「兄ちゃんの方がもっと上手いよ!」


「…………え?」


「翼子一度も勝てなかったもん」


あ、あれはゲームですよ美月さん……


「う〜ん、兄貴はあんまり運動得意じゃないけどな」


「……そうなの?」


つぶらな瞳で俺を見つめてくる美月


「…………上手いよ?」


し、しまった! 思わず嘘を……


「だよね!」


「練習したのか? それなら誘えよ〜」


少し拗ねた様に言う春菜


「お、お前は部活だったしさ」


嘘はこんな風に嘘を呼ぶのか……



広い道路を渡り、木々に囲まれた狭い公園へ


公園の中は人が少なく、場所を目一杯使える


「じゃー先ずはパス回しでもするか」


三角形になる様に8メートル程離れ、春菜は俺にパスをした


「おっと」


ボールをノーバウンドでトラッピングして、美月へ


美月は踵でボールをポンと上げて、春菜に


それを数分繰り返し、なんだ楽なもんだとすっかり調子に乗った俺は、致命的な間違いを起こした


「春菜〜もっと強めに来いよ〜」


「ん? オッケー」


春菜は左足を強く踏み込んで、振り上げたバネのある右足をボールへ下ろした。良いフォームだ。インステップキックって奴だな


そのボールは、俺の顔目掛け弾丸の様に…………………………



「…………はっ!?」


気付くと俺は、公園のベンチで横になっていた


そんな俺を心配そうに見下ろす春菜と美月


「目、覚ましたか? 大丈夫かよ」


「あ、ああ」


起き上がって辺りを見る。…………? き、記憶が飛んでる!?


「な、何が起きたんだ?」


「私のパスを兄貴が顔面で受けたんだよ」


「…………パスで?」


パス…………パス?


「あっ! 思い出したってパスじゃないだろアレ!」


タイガーとかサイクロンとかそんな類いのシュートじゃないか!!


「兄貴が強くしろって言うから……」


「い、言ったけども!」


「あ、また鼻血」


美月がハンカチで俺の鼻を拭く


「兄ちゃん、大丈夫?」


泣きそうな声だ


「あ、ご、ごめんな。大丈夫だよ。ありがとう」


美月の頭をぐりぐり撫で、立ち上がると、頭がくらっとした


「うわっと!?」


「と、危ないな」


倒れそうになった俺の体を春菜は支え、次に背を向けしゃがみ込む


「……どした?」


「背負ってやるよ、兄貴」


「い、いいよ!」


「遠慮するなって。ほら」


「……遠慮なんかしてねっての」


いくら何でも小柄な春菜に俺を背負える訳ねーべさ


「早くしろよ〜」


「……はいはい」


無理だと分かれば諦めるだろう。仕方なしに春菜の背に乗ると……


「よっと。じゃ帰ろ〜ぜ」


いとも簡単に持ち上げやがった!?


「お、重くないのか?」


「うん? 別に」


何者だコイツ!?


「春ちゃん。辛くなったらあたしが代わるね」


流石に無理だろ!?


「サンキュー。でもま、近いし兄貴は軽いから大丈夫だぜ」


…………僕は60キロありますけど?


「昔はこんな風によく兄貴におぶられたよな。これからは私が背負ってやるからな」


「……それ何十年か後に歳老いた親へ言うべき台詞じゃないか?」



その後も力強くおぶられ、何とも言えない恋しさと切なさと心細さを感じつつ家へと着く


人に見られなかったのは幸運だった


「よし、着いたっと。歩けるか兄貴?」


「大丈夫だっつーの」


これ以上情けない所を見せられるかっての


「そっか。じゃお先に! ただいまー」


ドタバタと家に入って行く春菜


「さて、俺達も入るか」


「……兄ちゃん」


「ん?」


「はい、ボール」


美月は持ってくれていたサッカーボールを、俺に手渡した


「ああ。ありがとう」


「うん。……じゃあたし帰るね。今日はゴメンね兄ちゃん」


「へ? 何で美月が謝るんだ?」


春菜ならともかく。てかあいつ謝ってないな!


「あたしが外で遊ぶって言ったから……」


「そんなの美月が悪い訳じゃないって、気にし過ぎだっての。……まだ時間あるなら家で遊んでいきな、そろそろ秋姉も起きるだろうし」


「でも……」


「友達だろ? つまらない遠慮するな」


「兄ちゃん。……うん!」


ハンカチも洗わないといけないしな




今日の鼻血


俺>>>>>>父≧春≧月


ツヅケ

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