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芦の三姉妹 13

秋の楓


「ん……」


「そう」


「ん……」


「ふぅん」


「ん……」


「分かった、そうする」


「……うん」


なんであれで話が通じるんだ、あの二人?



春の梢


「春菜」


「あー、なんだよ」


「バナナあげる」


「お、サンキュー! ん? これうめー」


「リンゴもあげる」


「マジで? ほんと良いやつだな梢はさ」


「ミカンもどうぞ」


「いただきー」


「春菜、可愛いの」


よしよしって、餌付けか?



雪の椿


「椿お姉ちゃん、この間はお土産ありがとう!」


「ううん、どーいたしまして。美味しかった?」


「うん、とっても美味しかったよ」


「よかった。あ、雪ちゃんお菓子好きだよね。ちょっと新しいレシピがあるんだ、見てくれる?」


「はい!」


相変わらず姉妹みたいに仲良い二人だ



夏の叔母さん


「夏紀ちゃん、アレ入ったわよ?」


「アレってアレですよね。……うふ」


「ぬふふ、おぬしも好きよの~」


「お代官様には叶いませぬわ。おっほほ」


なんだこの会話?



俺の叔父さん


「久しぶり? ですね叔父さん」


「う、うん……。久しぶり大介君」


「恭介です」


「あ、す、すまない……お、大きくなったな~」


「え、ええ……」


「…………」


ほとんど初対面だった

「恭、そろそろ買い物終わる? 姉さん待ってるかもよ」


「あ、ああ」


梢に睨まれ止まっていた俺の時間は、椿の一声でようやく動き出した。しかし梢の目は未だに尖っていて、隙を見せたら殺られ兼ねない雰囲気がある


「梢はもう買い物はいいのか?」


「今は職務質問中なの!」


ずずぃっと俺に迫る梢。雰囲気的には職務質問と言うより、取り調べに近い


「ぬぅ……。つ、椿、先に外で待っててくれないか? 自分の買ったら俺も直ぐに行くから」


「本なら一緒に買うよ? 後であたし達にも読ませてね」


「いっ!? へ、変な本だからつまらないぞ〜」


俺がそう言うと椿はジト目になり、


「……エッチなやつ?」


「違う! し、将棋の本だ」


「あ、そっか恭は将棋好きだもんね。あとで勝負しよ?」


「あれ、お前将棋出来たっけ?」


「うん。恭ほど上手くないけど」


「そうか、じゃ勝負……ってストーップ!」


「え、な、なに?」


レジ前からこっちに来そうな椿を止め、俺を監視の目で見上げている梢の体を椿に向けて反転


「梢君。君の仕事は俺の監視ではなく、姉のボディーガードではないのかね?」


「……。一理ある」


あるのか


「よし、それじゃ椿の事は頼んだ。外で待っててくれ」


「わかった」


あら素直


「椿姉、外行こ」


梢は椿の側に寄り、くいくいっと手を引いた


「うん……恭、何買うんだろ?」


「コン〇ーム」


「おいこら!」


「えっと……どういうこと?」


「……説明します」


説明中…………。


「と、言う訳なんですよ旦那」


話がこじれるから、俺が箱を壊したって事で説明


「ふぅん。へぇえ」


わ〜冷たい目


「言っとくけど使わないからな。使うような相手いないし」


ふ。言ってて虚しいぜ


「……そ。ま、いいけど。買えば?」


椿は急に素っ気ない態度になり、梢と共にコンビニを出て行ってしまった


「……ハァ」


コンドーさんを見てため息。なんかもう呪いのアイテムだわこれ。さっさと買って出よう


「お願いします」


レジ前に行き、商品を出す。店員さんは椿の知り合いらしいので、微妙に気まずい


「全部で1536円になりま〜す」


「はい、二千円札」


「……ち、これかよ」


にこやかだった店員さんは露骨に嫌そうな顔をする。さすが二千円札、出しただけで人間関係が壊れそうだ


「464円のおつりで〜す。おつりでそこの栄養ドリンクいかが?」


「変な気づかいは止めて!」


購入し、ニタニタ笑いの店員さんから逃げるようにコンビニを出ると、駐車場のところで椿達は待っていた。梢は弁慶よろしく毅然とした態度で仁王立ちしているが、ボディーガードのつもりなのだろうか


「お待たせ」


「うん。……ごめんね、さっき変な態度とっちゃって」


「いいよ。ご苦労だったな梢」


梢の頭にポンっと手を乗せる


「これも仕事なの」


梢はベテラン職人のような台詞を言い、深く頷いた


「うむ、これからも椿を頼む」


椿は人が良すぎるから心配なんだよな。……梢が悪いって訳じゃないが


「あはは。よく分からないけど、あたしを宜しくね」


「うん」


「んじゃ、さっさと帰るべ」


「帰るべ帰るべ」


俺達は家に向かって歩き出す。結構いい運動になる距離だよな


「恭介」


コンビニから少し離れた所で、横に並んだ梢が俺の手をクイクイっと引いた


「ん?」


「後で見せて」


「なにを?」


「コン〇ーム」


「その話まだ続ける気!?」


「実物見たことないの。使うとこ見たい」


「見せられる訳ないだろ!」


「……けち」


「あのなぁ……そのうち保健体育とかでやるから、そこで正しい知識を学びなさい」


正しくない知識を学ぶと、第二の綾さんが出来上がる


「二人とも変な会話しないでよ、恥ずかしいなもう」


「恥ずかしがってたら世界に病気が蔓延するの!」


「既に学習済み!?」


それからも適当な話をし、家に着いた頃にはやっぱり汗をかいていた


「ただいま〜」


家に入ってそのままリビングへ行く。部屋に戻ったのか楓さんは居なく、テレビの電源も切っている


「お風呂入れるね」


「ああ」


さ〜て、チャンプでも見るか


よっこらせっとソファーに座ると、またしても梢が寄って来て、そのまま俺の股の間に座った


「こらこら」


「ここ落ちつく」


梢は目を細めて、俺の胸に頬を擦り寄せた


「はは、くすぶったいって。猫みたいだな梢は」


椿は犬、楓さんは……狐かな


「あと5分ぐらいで入れるよ〜。あ! こ、梢〜」


リビングに戻って来た椿は、俺達を見て不満げな声をあげた


「指定席なの」


「どうもそうらしい」


いつの間にか


「も〜。梢は本当油断ならないんだから」


そう言って椿は俺達の側に寄り、後ろから俺の首をギュッと抱く


「ちょ、こら、離れろって!」


「えっへへ〜」


俺の文句もどこ吹く風、椿は益々密着してきた


「お、おい!」


「…………ずるい」


そして対抗心を煽られたのか、梢は俺と向かい合うように座り直し、やっぱり俺の首を抱く


「お、お前らなぁ」


ここは一つマジに説教を


「大好きだよ恭介」


「恭介……好き」


「…………はぁ」


そんな事言われたら怒るに怒れないじゃないかよ、まったく




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