第30話:月の訪問
ピンポーン
ゴールデンウイークの最終日。リビングで母ちゃんとお茶を飲んでいると、チャイムの音が鳴った
「は〜い」
「俺が出るよ、母ちゃん」
「そお? ありかと。いい子ねー」
頭を撫でようとしてきた手を華麗にかわし、玄関へ
「はい、今出るよっと」
ドアを開けるとナップサックをしょっている美月の姿
「おっす!」
「お、美月! おっす。
雪なら……」
「図書館! 今日は兄ちゃん達と遊びに来たんだ」
「おーいいぜ。上がりな」
「はーい!」
元気よく家へ上がる美月
「秋姉は朝、合宿から帰って来た所だから少し休ませたいんだ。今はナマケモノと暴れ馬がいるけど、どっちと遊ぶ?」
「ナマケモノ? 馬?」
「ああ。ナマケモノ……夏紀姉ちゃんには前に会ったろ? 暴れ馬は俺の妹で春菜って言うんだが、美月と気が合うかもな」
「ふーん。あ、でもまずこれやろ?」
そう言ってナップサックから出したのはPL2のゲーム、キャプテン翼子
熱い必殺技が面白い少女サッカー漫画をゲーム化した物だ
「お、翼子じゃん! 俺、超上手いよ?」
「ほんと!? じゃ勝負だよ!!」
「よし、俺の部屋に着いて来い!」
「はーい」
それから2時間。夢中になってゲームをやっているとぐ〜っと美月の腹が鳴った
「腹空いたか?」
「うん。何か食べさせて?」
クリクリとした目で俺を見上げる美月
「そうだな。じゃちょっと待ってな」
そう言って部屋を出てリビングへ行く
母ちゃんは出掛けたのか、姿が無かった
「何かあるかな?」
冷蔵庫を開けると、焼肉用のカルビとツナ缶。後キャベツ
「ふむ」
キャベツを千切りにし、カルビを焼く
「ほっと」
ご飯を丼に注ぎ、キャベツと焼いたカルビを載せて、ツナを少々。最後にわさびを添え、醤油を少し垂らす
「よし」
美月に持っていってやろう
「はい、おまち」
部屋に戻り、丼とお茶をテーブルに置く
「いっただきまーす!」
両手を合わせ、一口食べる美月。もぐもぐと一生懸命噛んでいる
「うまーい! 兄ちゃん、これ超うまいよ!!」
「そ、そうか? おかわりあるから沢山食べてな?」
「うん! ……兄ちゃんのお嫁さんになればこうゆうの毎日食べれるのかなぁ」
美月はぶつぶつと何かを呟いている
「ん? どした美月」
「……うん、兄ちゃん! 結婚しよう!!」
「ああ! ってなに言っとりますがな!?」
びっくりし過ぎて思わず関西人になってしもうた
「あたしの事嫌い?」
急に潤んだ瞳になる美月。やっぱ女は凄い!
「いや、早過ぎますよ? 僕達はまだお互いの両親にも挨拶していないじゃないですか?」
しどろもどろに訳の分からない説明をすると、美月はニッコリ笑って
「そっか! じゃまた今度で良いや」
と爽やかに言った
「そ、そう?」
ホッと息を撫で下ろし、食べ終えた丼を美月と一緒にキッチンへ片付ける
「はい兄ちゃん」
「サンキュー」
丼を受け取って素早く水洗い
「よし、終わりっと」
「兄ちゃん、兄ちゃん。次は何やろっか?」
「んーそうだなぁ……」
バターン! リビングのドアが突然開く
「腹減ったぞ! なんか作くれ〜」
暴れ馬、もとい春菜が飢えた野獣の目で俺を見据えた
「は、春菜」
「春菜? 暴れ馬の?」
「グルルルル〜!」
唸り始めた!? ヤバイ!
「い、今オムライス作ってやるよ」
「ああ! ……ん? 兄貴の友達?」
俺の横に居る美月の存在にようやく気付きやがった
「うん! 坂本美月!! よろしくね、姉ちゃん!」
「おう! よろしく!」
リビングのソファーにドカッと座った春菜。興味を持ったのか、美月は春菜に近寄る
「姉ちゃんは兄ちゃんの妹なんだよね?」
「ああ、そうだぜ」
「雪や秋ちゃん、なっちゃんも居るし……兄弟が沢山居ていいな〜」
「う〜ん、そうかもな。夏姉は頭良いし、秋姉は頼りになる。雪は可愛いし、兄貴は中々使えるし……」
俺の評価は中々使える程度なのか……
「……出来たぞ」
皿に盛りつけて、キッチンのテーブルに置く
「お〜! サンキュー」
春菜は飛び込む様に椅子に座り、勢いよくがっつく。……男らしいな
「だ〜! うんまー!!」
「そうか?」
美月といい春菜といい、美味そうに食ってくれるから作りがいがあるぜ
「兄ちゃんってほんと料理上手いんだねー」
「か、簡単な物だけどな」
……照れるぜ
「ふー食った、食った」
「早っ!?」
ちゃんと噛んでるのか?
「さーて飯も食ったし、川で釣りでもしてくるかー」
オッサンの休日かよ……
「春菜、少し俺達と遊ばないか?」
「ん? 珍しいな兄貴が私を誘うの。良いぜ、何するんだ?」
「そうだな……美月は外と中、どっちで遊びたい?」
「外!」
「よし。じゃ外でサッカーでもするか」